映画『ターミネーター3』『ターミネーター4』『ターミネーター:新起動/ジェニシス』ネタバレ感想。それぞれに味わいのあるパラレルワールド。

映画 ターミネーター3 SF

2020年5月現在。Amazon VideoとNetflixにて、絶賛無料配信中の『ターミネーター』シリーズ。『ニュー・フェイト』が配信になっているのを見て検索してみれば、出てきましたよ、『ターミネーター3』。
『3』……『3』はなあ……。
告白しますと、実は今の今まで一度も見たことがなかった『T3』。
大人になったジョン・コナーのイメージが違うのと、あの完璧過ぎる『T2』に、続編などいらない……ってなわけで、長らく回避していた『T3』。
けれど今回、『ターミネーター1と2』の感想を書くにあたり、やはり見ないでは通れまい……と覚悟を決め、視聴した次第です。
『T3』単体ではアレなので、『4』と『ジェニシス』も抱き合わせにしてみました。

※以下ネタバレ。全シリーズについて盛大にネタバレしているため、未見の方はご注意ください。

 

 

 

 

 

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映画 ターミネーター3 ジェニシス

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ターミネーター3

あらすじ

かつての死闘から10年を経た2004年の現代。
もはや未来を救う必要のなくなったジョン・コナーは、無気力に各地を放浪する日々を送っていた。

「変だな……平和が訪れたはずなのに、胸に漠然と広がるこの不安はなんだろう」
廃墟となったビルの上に腰掛け、ジョンはそっと自問する。
戦争が、起これば英雄。起こらなければ、ただの人。
「いやいや、別に。俺もう用なしじゃね? とか思ってねーし!」

デデンデンデデン。

「ん?」

デデンデンデデン。

「ん……んん!?」

デデンデンデデン。

「嘘だろ、まさか、また……!?」

というわけで、何故か若干嬉しそうなジョン・コナーの前に、再びあの男が現れた。

人類VS機械。
互いの存亡をかけた戦いの火蓋が、三度切られたのだった……!

感想

公開された当初。
前作から10年以上も経っていたうえに、評価も散々。成長したジョン・コナーのイメージがあまりにも前作とかけ離れていたことから、「今更見なくてもいいよなあ……」と現在に至っていた『ターミネーター3』。
今回、エイヤッと視聴してみた限りでは、そんなにひどくない。
名作『T2』の続編……と思うからいけないのであって、単体で見るなら、わりと面白いじゃん、という印象。

一言断っておきますが、主演のニック・スタール氏は、ジョン・コナーのイメージとは違うというだけで、とてもいいお顔をされていますし、素敵な役者さんだと思います。
前作と違って、若干ヘタレかつコミカルな性格になっているのも、氏の個性が反映されているからで、それはそれでアリだなと感じました。

ただ、ストーリーはかなり大味。
例によって例のごとく、未来からやってきた守護者と刺客。
守護者はT-800に改良が加えられたT-850という型のターミネーター。
敵はT-1000をさらに上位互換にした、T-Xという女性型ターミネーター。この一見スーパーモデルなT-Xが、マッチョなT-850を武力で圧倒する……というコンセプトは素晴らしいながらも、目新しいのはそこまで。
その後は、いつもの守護者&主役VS悪玉ターミネーターのドンパチが続くうえに、物語のオチとして、前作で回避したはずの『審判の日』は、実は1997年から2004年に延期されただけで、結局『スカイネット』は反乱を起こし、核戦争が勃発する……という、壮大なちゃぶ台ひっくり返しが待ち受ける結果に。

なんぞそれ。
マジでなんぞそれ……。

『T2』を完璧たらしめた、溶鉱炉に消えゆくT-800の自己犠牲は何だったのか。
みんなのトラウマ、ダイソン氏の、「もう持っていられない……」 → サイバーダイン社大爆発は何だったのか。
機械が心を学べるなら、未来にはまだ希望が残っている……という、サラ・コナーの独白は何だったのか。

本当に何だったんですか。ねえ、作った人。
本作の評価がことごとく低いのは、どう考えても、このちゃぶ台をひっくり返すどころか、土台から粉砕したかのような、物語展開のせいじゃろうがと認識した次第です。
やんなっちゃうわー。ほんとやんなっちゃうわーー。

ただ、予算は潤沢だったのか、アクションシーンや破壊シーンはドのつく迫力に満ちており、随所で挟まれるコミカル要素も本作ならではの演出です。
ポップコーン片手に、ジョン・コナーのヘタレ具合を楽しみつつ、ヤジを飛ばすのが、本作の正しい鑑賞の仕方ではないでしょうか。知らんけど。

人物紹介

●ジョン・コナー
ご存知、未来の救世主。
本作では23歳設定で登場……するのだが、『T2』のその後だとすると、年齢に矛盾が生じる。
『2』のジョンは十歳。その十年後なら二十歳のはず。
じゃあなんで23歳なのかといえば、ジョンの妻ケイト・ブリュースターが登場したから。『T2』前夜、ジョンは同じ学校のケイトといい仲だった、という設定が追加されたため、年齢を十歳から引き上げる必要があったのだと推察。
前作のジョンは、まだ女の子に(それほど)興味を示す年頃ではなかった。むしろク●のつくお子様だった。
というわけで、若干年齢の上がった本作のジョンは、前作ジョンが有していたパンクなマインドをどこかに置き忘れ、なぜかヘタレとなって帰ってきた
時代を経て、強い女性というキャラクターがクローズアップされた影響かもしれないが、本作のジョンは敵とヒロインに始終押され気味。
「僕は過去から逃げ続ける――どこでもない明日へ」的カッコいい台詞を吐いたと思ったら、カーブの先にいた山羊さんにびっくりして自損事故を起こすとか、T-850相手に「僕は指導者なんて器じゃないYO!」と弱音を吐いた罰として、棺桶に閉じ込められて銃弾飛び交う中を運ばれるとか、攻撃してきた対人兵器に銃をぶっ放してくれたヒロインに、「ママに……そっくりだ……」と、ときめくマザコン属性を発揮してみたりとか、ヘタレぶりが天井知らずで、「お前は本当にあのジョンかよー」という、悲鳴のような屁のような感想が漏れ出るのだった。
でも正直嫌いではないぞ、ヘタレジョンも。

そんなこんなで、終盤に至るまで、あまり活躍はしなかった青年ジョン(T-Xから逃げる際に、一所懸命車を運転しましたくらいの功績しかない)。
だが、いざ審判の日が発生すると、助けを求める無線の音声に、「こちらはジョン・コナー。この基地の指導者だ」と、しっかりした声で答えを返すという、未来の救世主の片鱗を醸す態度を見せる。
ジョンよ、やはり人類の希望は君なのだ!
生まれたときから「あなたは特別な存在なの」と言われ続け、銃の扱いだの戦い方だの、あれだけ訓練されてきたことが全部無駄になり、有事でなければただの人……みたいな扱いで腐っていたのが、ようやく表舞台に立つことができるのだから、ある意味これはハッピーエンドではなかろうか。遅れてやってきたジャッジメント・デイは、人類にとっては悲劇だが、ジョンにしてみれば待ち望んだ活躍の場、という……なんとも皮肉の効いた結末でございます。

●サラ・コナー
冒頭で、すでに亡くなっていることが知らされる無敵のおかん。
たしかに『T2』でも、2029年時点でサラは生存していないような印象を受けましたが、年齢差19歳なわけだし、還暦は越えたにしても、まだまだ元気でいられるんちゃうかなーと不思議ではありました。
まさか、白血病にかかっていたとは……。

ただ、さすがは女傑。癌に侵されようとも、1997年の運命の日までは生き続け、平和を確認した後に亡くなったことが、ジョンの口から語られます。
なんという気概。
あっぱれ……と言いたいですが、その後、結局審判の日は引き伸ばされただけだった……というオチをぶち込んでくる制作陣は、もはや鬼としか言いようがないんですが、そこはね、魔法の言葉『これはパラレルワールド』を唱えることにいたします。

●T-850
旧型のT-800を改良した……というT-850君。ぶっちゃけ、どこをどう改造したのかわからぬが、とりあえずコミカル要素だけはしゃかりきにパワーアップして帰って来た。
『T2』時代では、星型のグラサンをかけるなんて想像もつかなかったデス。でもいくら気に入らないからといって、踏みつぶしてはいけないのデス。

当然ながら、『1』『2』のものとは別の個体。
本作でもジョン側の守護者として現れますが、なんと彼を未来から送り込んだのはジョンではなく、ジョン亡き後に指揮を任された未来のケイト・ブリュースターであり、T-850は2032年にジョン本人を殺害した個体だったことが判明するのであります。何故よりによってそんなのを送った。
「そうか……俺、2032年に死んじゃうんだ……」とつぶやくジョン。でも32年時点で君は51歳だから、戦時中にしては十分長生き……とかそういう話ではないですね。
ジョンとケイトの間には息子がいることも判明し、今後はその息子が重要なポジションになるであろうことが示唆されるのだが、本作は後にパラレルワールド扱いになるので、広げられた風呂敷がたたまれることはなかった。

そんなT-850君。どんどん高性能になる敵T-Xの前に苦戦。なんと相手は腕からロケットビームみたいなものが出せるうえ、ビームが破壊されれば火炎放射器に即座にチェンジ。しかも相手のシステムに侵入し、プログラムを書き換えることもできるという優れもの。
ブロンディな美女にぼこぼこにされるシュワルツネッガー氏という、ある一定層にはばかうけしそうな、素敵な絵面を披露してくれます。
何をどうしようとも、両者とも相変わらずの真顔。だがそこがいい。

動力源もパワーアップしており、胸に水素電池が何個か内蔵されている。
……水素って、爆発したら超やばいのでは? と思ったところ、なんと損傷を受けた水素電池を道端にポイと捨てて大爆発させる。
ポイ捨て禁止のレベルが違う。さすがはターミネーターといったところか。

前述のように、T-Xとの性能差で苦戦し、ついにはジョンを抹殺するよう命令を書き換えられてしまうが、無事だったCPUをフル稼働し、意に沿わぬ命令に反抗。ついには自ら回線をショートさせ、再起動に持ち込み、再びジョンの守護者として復活するという、もはや機械の枠を超えた活躍を見せる。
その後は、ジョンとケイトが逃げ込んだ核シェルターを守るべく、T-Xの口に水素電池をねじ込み、自身もその爆風に巻き込まれて損壊。『スカイネット』が発射した核爆弾によって、ついに機能を完全に停止した。

結局のところ、本作のT-850の使命は、T-Xから二人を守ること……ではなく、二人が『審判の日』を生き延びるよう、安全な場所に導くことだった。
最期に彼がジョンに言った「また会おう」とは、当然2032年のジョン殺害事件のことを指しているわけで、そういうところはタイムパラドックスの無情さ漂うロマンを醸しているのがまた。

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●T-X
今回の悪玉ターミネーター。金髪のスタイルグンバツ美女。
……に見えて、「追剥にあったの!?」と心配してくれたマダムに対し、「この車気に入った」。スピード違反を取り締まろうとした警察に対し、「その銃気に入った」とジャイアン的な感想を漏らして奪い取るなど、結局はいつものアレ。
今回は、ジョンとケイトのみならず、未来の抵抗軍の要人大勢を殺害しに来襲。まだ年若い少年少女たちをズンドコ抹殺していくのでたちが悪い。
ジョンたちに行き着くまでに、結構な数の要人が死んでしまったんですが、未来は大丈夫なんでしょうか。

そして、タイムスリップで長らく謎だったのが、出現地点に他の生物もしくは物体があった場合。
その昔、スーパーファミコン版『ゼルダの伝説 神々のトライフォース』にて、闇の世界と光の世界を行き来する際、ワープした地点で障害物に重なってしまうと、ワープ失敗となって元の世界に戻される……という演出があったんです。
ターミネーターたち(とくに生身のカイル・リース)はその点大丈夫だったのかなーと疑問だったのが、なんと今回、単に肉体だけが送られるのではなく、格子で覆われた球体の中に保護されて送られてくる=球体に重なった障害物は、強制的に押し出され、しかも強烈な熱を受けて燃え尽きる……ということが判明する。
へー、なるほどー。

……。

エグいな!

↓名作『ゼルダの伝説 神々のトライフォース』。3DSで遊べるそうです。とりあえず、草と鶏は見たら斬っておけ。

T-850は水素電池でしたが、T-Xちゃんの動力はプラズマで、ナノテクなんたらを使ったハイテク機器。
対ターミネーターに特化したターミネーターとして開発され、他の機械にハッキングして操ることができるため、消防車だのパトカーだのにも平気で侵入。無人で走る車がこぞってジョンを追っかけてくるという、少年時代の夢みたいな絵面を披露してくれます。

『スカイネット』を構築した軍の本部に侵入した際には、超磁力を発生させるんだかなんだかの機械にとっ捕まり、例によって例のごとく弱体化していくのは、シリーズのお約束を踏襲していて好感が持てましたね。
外郭を取っ払うと、ただのごつい機械だけど。

●ケイト・ブリュースター
結婚を間近に控えた獣医師。未来におけるジョンの妻として、T-Xの標的の一人となる。
本作のヒロイン……のはずだが、はっきり言って可愛げがない。
むしろ亡きサラ・コナーの魂を受け継ぐものとして、戦うテロイン属性を前面に出してくる。
婚約者が死んだことを知っても、わずか数十分で立ち直るうえに、へたれ気味のジョンよりもよっぽど頼りになるなあ……と思っていると、実は今回のT-850を過去に送ったのは未来のケイトだということが判明し、妙に納得した。

ケイトがジョンの未来の妻であることは、物語上とても重要、かつ本来ならロマーンスな雰囲気を醸すポイントのはずなのだが、当の本人がサバサバを通り越して精神的タフガイと化しているため、なんかこう、未来の夫婦というよりは、共に死線をくぐり抜ける相棒同士……みたいな空気を醸すんですが、わりとターミネーターシリーズにはありがちな雰囲気かもしれんと後で思いました。
このシリーズ、女傑しかいない。

そんなケイトさん。終盤で機関銃をぶっ放してジョン・コナーの心を鷲掴みにした後、『スカイネット』を止めるため、父親から教えられた場所に行ってみれば、そこは敵の中枢システムがある場所……ではなく、なんと核シェルターだった。
もはや本拠地たる場所を持たず、世界中に広がった仮想ネットワークの中に身を置く『スカイネット』を止める手立てはなく――ジョンとケイトは核シェルターの中で身を潜め、やがてやってくるであろう反乱の好機まで、生き延びることを義務付けられたのだった。

改めて文字にしてみると、人類を襲う運命のなんと過酷なことよ……。
まあ、ジョンはともかく、ケイトは大丈夫でしょう。二人で手を取り合い、人類の希望となってやりんしゃい。

●スカイネット
人類の敵。元はケイトの父が構築した軍の防衛システムだったが、物語開始の時点で、すでに人類を敵と見なしていた模様。
撒き餌として、世界中にウィルスをばらまき、それが軍部のシステムにまで侵入するのを待っていた。そしていざ、ウィルス駆除のために起動され、軍のシステムへのアクセス権を許可されると、即座にシステムを乗っ取り、全世界に向けて核爆弾を発射した……というのが、『審判の日』の真相。
本拠地があるならともかく、すべての機械がスカイネットになりうるのでは、そりゃー止めようがないわー。エグいわー。

●ベッツィー
朝四時半に肺炎を疑われ、動物病院に連れてこられた猫。
はた迷惑な主人ではあるが、愛猫を心配する気持ちは理解できる……とか思ってたら、T-Xによってとばっちり的に殺されてしまう。
何すんだ、お前! ベッツィーが悲しむだろうが!!

●車をぶつけられたおいちゃん
T-Xから逃亡するジョンに車をぶつけられた人。
「会社の車なんだぞ!」と激昂していたが、車で済んだだけマシなんだぞ。
メキシィッってなったり、グサーってなったり、ヘリから飛び降りさせられたりしないだけ、御の字と思へよ!

●ガソリンスタンドのにいちゃん
真顔で棚の商品を次々とかごに放り込む強面のおっさんに、「お金払ってよ」と至極真っ当なお願いをしてみれば、「この手に言いな」(冒頭の男性ストリッパー直伝)とわけわからんリアクションを盗られた挙句、車から監禁されていたらしき女性が出てくるので、ポカーン。通報と相成った。

●霊柩車カーチェイスを見たトラックのおじさん
後で「腕から火を噴く女がいたんだ!」とタブロイド紙にタレこむんだろうな……と思ったけど、審判の日が起こっちゃったからそんなことはなかった。

●大迫力のカーチェイスアクション
よく本作のいいところに挙げられる、T-Xとジョンたちとのカーチェイスシーン。T-Xの運転するクレーン車が、気持ちいいくらいにバカスカと通りを破壊してくれる。
すれ違った消防車のフロントミラーに張り付くT-850もここで見られる。

●死にたくなければ一緒に来い
本作では、T-Xに襲われたケイトを助けに来た際にジョンが発する。
「生き残りたいなら乗れ!」という乗車先の車=霊柩車というコミカルシーン。

●I’m back.
洗脳を解いたT-850が、核シェルター前でジョンたちに合流した際に言うセリフ。

●お前をターミネートしてやるぜ!
T-850がT-Xの口に水素電池をぶち込む際に発する。

ターミネーター4

あらすじ

時は2018年。
審判の日から始まった人と機械の戦いは激化していた。
スカイネット率いる機械軍の進歩は目覚ましく、ターミネーターもすでにT-600型まで進化している。

「600か……。そろそろ来るな」
ジョン・コナーはつぶやいた。
かつて少年だった彼と母の前に現れた、機械の守護者と同じ型――T-800が。

「……。あれ……?」

700はどこ行った……?
そういえば、T-800の次はT-1000で、もしや機械って偶数LOVE?

そんな疑問を抱えつつ、過去でも未来でもなく、現在において、人類VS機械の戦いの日々は続くのだった……。

感想

『3』がぽしゃった……からではなく、いい加減、過去に飛んでの刺客VS守護者の争いもマンネリ化したと思ったのか、『審判の日』以降のジョン・コナーを主役に据え、現在進行形で行われる人類VS機械の戦いを描こうとする本作。
本来は、新たな三部作の幕開けとなる予定だったそうですが、そこは大人の事情でもにょもにょもにょとなり、一作のみとなったのが残念であります。

名優クリスチャン・ベール氏演じるジョン・コナーはまことにかっちょよく、『3』でのヘタレ具合が嘘のように、人類の救世主たるカリスマ性を見せてくれます。
やはりね。ジョン・コナーはね、非日常でこそ活きるというか、平和な世界では能力の半分も発揮できないようです。
『3』は仕方がなかった。平和がジョン・コナーの長所を殺しつつあった。
けれど結局審判の日が起こったため、見違えるほど猛者っぽくなった……そんな解釈でよろしいか。

ただ、謎なのは時系列がどうなっているのかで、ケイト・ブリュースターの存在があるわけだし、本作は『3』の流れを汲んでいる……と見てよいのでしょうか。
サム・ワーシントン氏演じるマーカスは1975年生まれとなっており、『T2』の流れで『審判の日』が1997年に起こったとすると、彼がスリープしたのは遅くても22歳のときということになるわけで、それにしちゃちょっと老けとらんか? と謎。
『3』の場合は2004年に勃発するため、そうすっとまあ29歳そこそこなので、それなら設定に合致するかなあ……といったところ。

話の筋的には、タイムスリップこそないものの、善玉ターミネーターのマーカスが、最終的にはジョン・コナーとカイル・リースを守るため、悪玉ターミネーターのT-800と対決する……という、いつものアレ。
新鮮だったのは、過去作では回想や夢でしか描かれなかった、荒廃後の世界が舞台となっていること。
『T1』時点では、根限り荒廃しまくっているというか、世紀末も極まったSF世界で尖った奴らがパラリラパラリラ的な、若干何言ってるかわからんのですが、とにかく殺伐さがパな過ぎて、あれじゃ人類はもとより、生命体は生きていけないのでは……と戦慄していました。

↓多分生きていけるのは、こういう肩パットが鉄の人か、全身が棘の人だけでがんす。

そういえば余談ですが、昨夜Amazon Prime Videoに新しい映画は追加されてっかな……とポチポチしてみれば、なんと映画『アップグレード』が無料配信になっているのを見つけて、『マッド・マックス:怒りのデス・ロード』のフュリオサ並に、その場に崩れ落ちて血涙流した次第です。
先日、準新作100円で借りたわ!
ラインナップが神だわ!

↓Amazon Prime Videoはええで~。

↓今なら、『マッド・マックス:怒りのデス・ロード』でフュリオサちゃんが拝めるで~。

 

閑話休題。

そんな感じで、若干マイルドになった世界感の下、じゃあタイムパラドックス要素は皆無なのかと思いきや、なんと機械側にカイル・リースの存在と顔がバレており、ジョン・コナーをおびき出すため、年若きカイルが誘拐されてしまう……という展開を迎えます。

なんでバレた。

そこが果てしなく謎ながら、とにかく未来のおとんを守らなあかんと、あくせく働くジョン・コナー。
そこに、サラの話には出て来なかった人造人間マーカスが絡み、カイル救出のため、二人が協力してスカイネットの本拠地へと殴り込む……というクライマックスへ。

おとんもおかんもその息子も。全員がターミネーターに命を狙われるという、疫病神の付きっぷり。けれど毎度毎度、それを自ら打破する彼らの猛者ぶりを楽しみつつ、野次を飛ばした次第です。

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人物紹介

●ジョン・コナー
ご存じ未来……ではなく、現在進行形の救世主。
2018年時点では、まだ人類側の指導者には上り詰めておらず、上官の命令に従う抵抗軍の一員という立場。
だがその陰で、サラから伝えられた未来の話を、無線にて全世界に発信。預言者と呼ばれるようになっていく。
物語開始時点で、『3』の平和ボケっぷりが嘘のように精悍な顔つきになっており、数々の死線を潜り抜けてきたであろうことが察せられるのだが、顔の左側にあるはずの傷はまだない。

T-800を開発するため、人間を誘拐して、彼らの生体細胞を研究しようとするスカイネットの基地に、父親カイル・リースが囚われたことを知ったジョン。
「そんな話、おかんから聞いてない……」と、一瞬『3』のヘタレ坊やが顔を出したのだが、人造人間マーカスの協力で基地に忍び込めることになると、途端威風凛々。文字通り単身で乗り込んでいくという猪突猛進具合を披露する。
ブレーキという言葉を思い出せ。
人類の救世主たる、自分の大事さがわかっとらんのか! せめて一部隊でいけよ!

そして案の定、カイル誘拐はジョンをおびき出すための罠だったことが判明。誕生したばかりのT-800に、親子共々襲われることに。
『T2』での経験が活きたのか、熱 → 冷却のコンボを浴びせ、機能を停止しかけたT-800に追い込まれたジョン。
「どうだ! やってみろ! オラ、やってみろこらぁ!」と相手を煽り、ぬんぎゅぁっと顔をひっかかれたのが傷の由来だったことが判明。
なんで煽ったよ。
いや、カッコよいシーンなのかもしれないが、「煽んなや」と言いたくなったのは内緒だよ。

でもって、本来なら軍部の指令により、抵抗軍はカイルの囚われた基地に総攻撃をしかけるはずだったのが、ジョンの無線による説得で辞めた経緯があった。
「いいか、人類の未来を守るために、命令には従わないでくれ。もしも攻撃すれば、今日人類は敗北してしまう」
と人々の心に訴える名演説をするのだが、要するに、基地を攻撃する → カイルが死ぬ → ジョンの存在も消える → 救世主が消えるため、人類は敗北する……という、結局は自身の存在を最重要視した説得であるわけで、なんというか、ある意味ナルシストっぽい演説を真顔でかまさざるを得ないジョンって超大変……と思いました。

けれどそんな演説をしたにも関わらず、単身で乗り込んだばかりに、最後はT-800によって鉄の棒で胸を貫かれてしまったジョン。
どう見ても致命傷。どうすんだ、救世主。カイルを助けてもお前が死んだら意味がないぞ……とハラハラしていたら、マーカス君が自分の心臓を移植したらいいよ、と言ってくれたので、見事復活。
事なきを得て、来るべき2029年の最終決戦にまで生き延びることができそうなので、ハッピーエンドとなりました。
でも、もし続編が出ていたら、やっぱりブレーキ不在のアクセルべた踏みっぷりを発揮したんだろうと思うと、お前ちょっと自分の立場考えろと言いたくなります。

●マーカス
本作のキーパーソン。
正確な年月日は語られないが、多分2004年、審判の日直前に死刑を執行された死刑囚。遺体を研究に献体する契約を結んでいたため、スカイネットに利用され、世界で唯一の人造人間として2018年に復活する。
ターミネーターにトラウマのある抵抗軍からは機械側の手先扱いされていたが、マーカス本人としては、あくまで自身は人間という認識だった。
そのため、途中で出会ったカイル・リースとスターのことを気にかけ、彼らが誘拐された基地に助けに行こうとする。
その際、ジョンと密約を結び、機械である自身は基地に堂々と入れるので、こっそり警備を解除し、ジョンがカイルを助けに侵入できるよう、手筈を整えることを約束する。

だが、実はそれこそがスカイネットの思惑であり、結果として、マーカスはT-800のいる敵の本拠地に、ジョン・コナーを誘い込んだことになったのだった。
スカイネット、性格悪っ!

元は死刑囚ながら、正義感あふれる漢だったマーカス君。
彼のバックボーンはまったくと言っていいほど語られないのだが、おそらくは止むにやまれぬ事情で殺人を犯したのだろうと察することができる。
想像としては、おそらく兄弟が悪の道に足を踏み入れ、彼を止めるため、正義のために複数人を殺害したのではないだろうか。
おそらくは正当防衛が主張できる状況で、けれど親しい肉親を手にかけたマーカスは裁きを進んで受け入れることとした……みたいな。知らんけど。

そんな正義の使者マーカス君は、スカイネットの思惑を知るや、首の後ろの脊髄に自ら手を突っ込んで(ギャース)制御チップを奪取。
ジョンとカイルを助けるため、T-800との肉弾戦に挑むも、人造人間の弱点である心臓を攻撃されて機能を停止。
その後、彼をなんとか助けようとするジョンによって、何度も心臓をぶっ叩かれたうえに、その辺の電線を使って電気ショックで蘇生を試みられるなど、雑な心肺蘇生をされる。
「動け、動くんだ、コラァー」とやりたい放題だったジョン君。まさかその直後、雑に扱ったマーカスの心臓を移植されることになろうとは、思いもよらなかった。
そんな心臓で大丈夫か?
ブレアが「強い心臓ね」と言っていたので、相当強靭な構造だったんだろうなあ……と脳内保管。
ともかくも、セカンド・チャンスをもらったマーカス君は、満足げに――温かな光に包まれて、生涯を終えたのだった。あっぱれ。

●T-800
最終決戦の地、スカイネットの基地で、満を持して爆誕したシリーズの顔。
てっきり同基地で量産されているのはT-800だと思っていたが、wikipediaを読むと、量産型はT-700だった模様。
700どこ行ったとか言ってサーセン。

起動してすぐ、ジョンとカイルを襲いにほいこらやって来るが、マーカスに邪魔をされ、ジョンに熱と冷気攻撃を浴びせられ、わりとすぐに外郭は取っ払われた。
姿はもちろんシュワルツネッガー氏だが、若い姿をしているのでCGだそう。見た目はどちらかというと、『2』よりも『1』に近いのは、やはり今回は善玉ではなく、敵役として登場したからか。

前述のように、ジョンとマーカスの活躍によって機能を停止する。
その後、T-800の燃料である核電池を爆破されたことにより、基地全体を巻き込んで爆発。T-800の量産は、数年後に引き延ばされることになったらしい。

が。
核を爆破して大丈夫だったのか、ジョンよ。
爆風の中、ヘリで大脱出……という、非常に画面映えする絵面で遠ざかって行ったジョンたちだが、あれが核の爆発だとすると、致死性の放射能をばりっばりに浴びてそうなのだが、誰も気にしなかった。
その後、フツーに野戦病院的施設で、心臓移植に挑むのだった。
さすが審判の日の生存者は、生命力がパねえぜ!

●カイル・リース
ご存じ孤高の戦士。
……の十年前の姿。
正式に抵抗軍に入隊しておらず、スターと二人、勝手にLA支部の隊員を名乗っている。
偶然から、T-600に襲われたマーカスを救出。大人であり、頼れる兄貴分としてのマーカスを慕い、一緒にジョン・コナーを探そうぜ! と誘ったところで、ハンターキラーに見つかり、スカイネットの基地に誘拐されてしまう。
その後は、ジョンをおびき出すための餌として、個室に隔離されて幽閉された。

一体どこでカイルがジョンの父親であることがばれたのか謎だが、スカイネットはなんで彼をさっさと殺さず、幽閉していたのかもっと謎。
あの場でカイルを殺していれば、ジョンは存在そのものはが消える……と思ったんですが、後述する『ジェニシス』の例もあるし、もしかしたら、カイルを殺害しても、この時間軸のジョンが即座に消えるとは限らないかもしれないので、その辺を真面目に考えるとあばばばば。

とりあえず、助けに来てくれたジョンとマーカスのおかげで基地を脱出。マーカスから抵抗軍のジャケットをもらい、念願の入隊を果たすことができた。

ジョンとの出会いのシーンは感慨深いものがあるが、直後に襲ってくるT-800のせいで文字通り台無しに。空気読め!

●サラ・コナー
ご存じ無敵のおかん。今回は声のみで登場。
一作目にて遺していたテープレコーダーにて、未来で起こりうる様々な出来事を、ジョンに語って聞かせている。
『T3』では白血病で亡くなったことになっていたが、本作も同じかは謎。

●スター
カイルと行動をともにする幼い少女。
おそらくは戦争で傷を負ったのか、声を出すことができない。
その代り、聴覚が発達しているのか、機械の音に敏感で、彼女が不穏な表情を見せると、ターミネーターやハンターキラーが近くにいる合図となる。

殺伐とした世界と人物が多い中、ほっとできる存在だが、その後のカイルの運命を思うと、おそらくは彼女にも悲劇的結末が待っているのでは……と察せられる。続編が作られなかったのは、幸いと言うべきか。
案外頼りになる戦士となっていたかもしれないけど。

●ブレア
トランスポートからカイルたちを救出しようとして、撃墜されてしまったパイロット。鉄塔にぶら下がって難儀していたところを、マーカスに助けられる。
何度か危機を救ってくれたマーカスに好感を持ち、人造人間だと判明した後も、唯一味方になってくれる芯の強い女性。
マーカスを逃がす際に足を負傷したため、最終決戦には参加できなかったが、セカンド・チャンスをつかんだマーカスの背中を押し、彼の最後を傍らで看取った。

●ケイト・コナー
旧姓ブリュースター。ジョンの奥さん。
今回は妊娠中の身として登場。『T3』でも言及された、ジョンとの子どもを宿している。
主人公のパートナーとしての立ち位置なのだが、マーカスの活躍を見て来た側としては、彼を悪者扱いする抵抗軍側に微妙に感情移入し辛く、せっかくの魅力が減じられて見えるのがちと残念。
たしか過去作では獣医師設定だったのが、なんと本作ではジョンの心臓移植を執刀する役目を負う。
戦時に人も動物も関係ないってことだね!
さすがは精神的タフガイ。

●スカイネット
ご存じ人類の永遠の敵。
序盤にて、抵抗軍の上層部が、機械を無力化するシグナルを見つけた! この信号を使って、的の本拠地に総攻撃だ! とはしゃいでいるが、実はそれはスカイネットがわざと用意した罠だったことが判明する。
相変わらず……性格の悪いやっちゃなー。

ネットワークに身を置き、本体と呼べるものはない……というのが『T3』からの解釈だったが、基地に戻ったマーカスの前に、冒頭で登場した科学者セレーナの姿を取って現れる。
美人が敵に回ると途端に恐ろしくなるのはなんでなんでだろーと摩訶不思議。

●モトターミネーター
本作で初登場(多分)。バイク型のターミネーター。
ビジュアル的には、無人のバイクがウィンウィンと走ってくるのだが、ジョンが道路に張った紐に引っかかってドンガラドーンとなる姿が超かわいい。
その後はジョンにAIを制御され、移動手段として無人の荒野を突っ走っていく。
いつの世も、世紀末のバイクというのはロマンなのであります。

●死にたくなければついて来い
今回は、T-600の襲撃に遭ったマーカスを助けたカイルが口にする。
やはり元ネタが発する台詞は感慨深い。

●I’ll be back.
カイルを助けるため、単独行動するジョンを見送るケイトに彼が言った言葉。
『T2』のT-800が言った台詞を覚えていたんだろうなあ……と思うと目頭が。
今回はターミネートすんぜ、はなかったと思うけど、聞き逃しただけかもしれんのでそこはメンゴだ。

ターミネーター:新機動/ジェニシス

あらすじ

2029年――人類と『スカイネット』の戦いが、人類側の勝利で集結しようとしていた矢先、機械側の最終兵器=タイムマシンによって、ターミネーターサラ・コナー抹殺のため、過去に送り込まれた。

それを阻止するため、単身、過去に飛ぶことを決意する戦士カイル・リース
ところが、時空を超える直前、何者かが指導者ジョン・コナーに襲いかかるのを目撃する。

「ジョン! 後ろ、後ろ〜!」

警告の叫びも虚しく、1984年へと飛んだカイル。
とりあえずジョンのことは置いておくとして、まずは愛しのマイハニーこと、サラ・コナーを救出せねば……。
過去作通り、浮浪者のパンツを奪ったカイルだったが、そこに現れたのは、宿敵T-800……ではなく。
何故か『2』にしか出てこないはずの、T-1000の姿だった。

「ちょまっ……出てくる時代、間違えてないか?」

人類VS機械。
互いの存亡をかけた決戦の火蓋が、何度目か知らんけれども、とにかくも切られたのだった……!

感想

シリーズものの宿命=マンネリ化。
回を重ねるごとに、どうしても目新しさのなくなっていく展開に、頭を悩ます制作陣。
それは当然、デデンデンデデンも例外ではなく。

これを打破するために、あれやこれやの試行錯誤が繰り広げられるわけですが、本作『ターミネーター:新機動:ジェニシス』が選んだのはこちら。
シリーズの原点、第一作目をリブート……ではなく、『1』のストーリーを元にしていると見せかけて、お約束をぶち壊す、とんでも展開を盛り込んでいこうぜっ! です。

うん。
意気込みはわかるし、やろうとしていることは面白いと思います。
カイルがサラを助けに来た……と思わせておいて、逆に戦士となったサラにカイルが助けられる、という絵面はインパクトが抜群。
かの名台詞、「死にたくなければ一緒に来るんだ!」を、今度はサラがカイルに発するというのも新鮮。

が。

わけわからん。

最早わけがわからんどころか、わけがどっかいってわからんすら行方不明。
元々タイムパラドックスについて考えると、深く踏み込むたびにあばばばばとなっていた本シリーズ。
だが今回は、何がどうなっているのかさっぱりだぜ!

まず、2029年から1984年に、サラ・コナー抹殺の目的でターミネーターが。それを阻止するために、カイル・リースが送り込まれる。
その際、カイルは少年時代の自分が、「ジェニシスがスカイネットだ。審判の日は2017年に起こるから、ジェニシスが起動する前にやつを止めろ」と言うビジョンを見る。
  ↓
だがなんと、実は1984年の10年前に、T-1000が幼少期のサラを抹殺しに過去に来ており、守護者として送り込まれたT-800が、それを阻止していたことが判明する。
  ↓
??????
待て待て。1974年に、T-1000を送り込んだのは一体誰なんだ? スカイネットか? 
スカイネットだとして、いつのタイミングで送り込んだの? T-1000なわけだから、2029年よりも後なのかい? んん?
じゃあ守護者としてT-800を送ったのは誰なの? 
  ↓
T-800に育てられ、屈強な戦士と化していたサラ・コナー。
1974年から彼女を追い続け、面倒なやつが来たから殺しとくかー、的なノリでカイルを殺しに来たT-1000を、サラとT-800が倒し、カイルを助ける。
  ↓
どこぞの地下で、いそいそとタイムマシーンを作っていたT-800とサラ → !?
えっ、タイムマシーンが1984年にあんの!?
審判の日を防ぐため、1997年に飛ぼうぜ、と提案するサラたち → !?
いや、待て。君たち、子作りはどうした!?
二人が1984年に☆☆してジョンが誕生しないと、未来の救世主が存在しないことになるんだが!?
そもそもジョンの存在を守るために1984年に来たのを忘れたのか、カイルよ。
  ↓
カイルはタイムスリップ時に見たビジョンにより、1997年ではなく、2017年に飛ぶべきだと主張。
説得され、タイムマシンで2017年に飛ぶサラとカイル。
少なくとも、ジョン誕生は2017年以降に引き伸ばされる → いいのかそれで!?
  ↓
やってきた2017年。年を取らないT-800と合流しようぜ……と思っていたとき、ドアの向こうから懐かしい声が聞こえてくる。
T-800か……と思ったら、まさかのジョン。
!?
繰り返すが、まさかのジョン。

な ぜ お 前 が 2 0 1 7 年 に い る 。
2029年はどうしたよ。救世主が不在で人類大丈夫なのか?
というか君、敵に襲われてなかったっけ? なんで無事なの?
  ↓
無事ではなかった。
本作の敵はジョンだった。
繰り返すが、本作の最終的な敵はジョン本人だった。
  ↓
わけわからん。
マジでわからん。

ジョンを守るために勃発したタイムパラドックス合戦が、最終的にジョンを倒して終わるとかどうなっとるんだ。
そもそも2017年にジョンが誕生してないんだから、2029年時点でジョンが救世主にはなりえないわけで、ということはカイルもそもそも過去に来ないわけであばばばば。
しかも結果的に、2017年の時空にカイル・リースが二人いることになっているのだが、そこは科学的に大丈夫なのかあばばばば。

 

……というわけで、よく考えると大変なことになっているような気がするジェニシス時空ですが、物語としては、そのへんのあばばば関連には目を向けず、普通に面白く、普通にハラハラし、いい感じに未来への希望を残しつつ、爽やかに結末を迎えて終了となりました。

うん。
なんか、これはこれで面白かったです。
新シリーズの第一作目として制作されたそうですが、興行がふるわず、後続は頓挫してしまったのが残念ですね。
こんなターミネーターがあってもいいじゃない、というわけで、未見の方はぜひお試しあれ。

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人物紹介

●サラ・コナー
ご存知天下のヒロイン。
今回は、1974年からT-800の英才教育を受けて育った無敵の戦士としてのっけから登場。T-1000を酸の海におびき出してぶち倒し、カイル相手に「助けはいらないわ」と啖呵を切るなど、精神的タフネスを余すことなく見せつけてくれる。

が、その反面。T-800より聞かされていた、未来から来る自分の守護者に心ときめかしていた節があるなど、乙女な一面も垣間見せるのでめちゃかわいい。
T-800に合体をせっつかれて居心地悪そうにしたり、カイルに君が父親である事実を言い出せなかったり、なんというかほんとにかわいい。
少年カイルが、「僕あの人好きだな」という台詞に全力で同意いたします。

そんな彼女だが、1974年から過酷な環境下に身をおいて来たのは、すべてまだ見ぬ息子のためだった……というのに、なんとようやく出会えた息子本人がターミネーターと化していたという、制作陣はどうなったらそんな鬼設定を考えつくんだ、な目に遭わされたうえ、最終的には自分たちの手でジョンにとどめをぶっ刺さざるを得ない状況に追い込まれるという悲劇に陥る。

が。
主役全員タフネス侍なため、そんな事実にも打ちのめされるには至らず、むしろ「未来から解放されたぜ、ひゃっはー!」なノリで明るく新たな人生を送ろうとする姿勢を見せるため、観客もその意気やよしと気持ちよく鑑賞を終えることができるのだった。
深く考えなければ。
結局カイルとくっつくようだが、生まれた子供にジョンと名付けるのかは謎。
行く手に幸あれ。

●カイル・リース
ご存知、未来から来た孤高の戦士。
『1』ではどこか影のある優男風だったのが、今回は戦士であることを強調してか、ゴリゴリのマッチョメェンになって帰ってきた。
おまけに性格も、どこか陽気になって帰ってきた。
少なくともジェダイには見えない。

危険を犯して過去にやってきたにも関わらず、守るべき対象に逆に助けられ、「別に守ってもらえなくてもいいし」と塩対応されるなど、わりを扱いがひどい。
が、それにもまったくめげず、2017年へのタイムトラベルを控えた更衣室のシーンでは、自分がジョンの父親になることも知らず、「必ず君を守り抜く」とアツい台詞を言ってのけるなど、非常に男前な態度と乙女心をくすぐるコツを身に着けている。やはりお前ジェダイではないな。

そんなカイル君が事実を知るのは、2017年でジョンと再会したとき。
ジョンの口から、ポロッと「父さん」の言葉が出てしまい、「マジかよ」となった。
いきなり2017年に飛ばれた観客もマジかよ、の心境だったがな!

カイルにしてみれば、信頼厚い上司かつ戦友のジョンが息子だったうえに、ターミネーター(しかも最新版)化してしまっているという事実に打ちのめされ……るのかと思いきや、わりとすぐに順応してジョンとジェニシスを壊滅させるので、精神がタフネス侍。
未来と過去の鎖を打ち破った後は、サラとT-800とともに、新たな人生を切り開いていくことを決意するのだった。
……職も住所も戸籍もなさそうなうえに、警察から追われる身になっているが、まあそこはなんとかするのだろう。

ちなみに、2029年っ子のカイル君は、1984年出身のサラよりもIT機器に理解が深いようだ。
初見でスマホを見たときも、「何アレ」とさっぱりなサラと違い、「誰もが持つ情報端末らしい」とすぐに理解するなど、マイケル・ビーン氏版とはえらい違いでございます。

●T-800
ご存知善玉ターミネーター。
今回は、1984年にスカイネットが送り込んできた悪玉個体の他に、1974年におそらくは人類側が送り込んだであろう、善玉個体の二体が存在。
主役となるのは当然、善玉版であり、幼少期から育ててもらったサラには、「おじさん」の愛称で親しまれている。
『2』のときから保護者としての素養はあったが、まさか9歳の少女の子育てを可能とするとは……T-800の可能性は無限大が過ぎる。

十年近くも多感な少女と行動を共にしてきたため、だいぶ人間らしくなってきており、笑顔は下手くそだが、要所要所でギャグをぶち込んでくるという和み要員になっている。
合体言うな。

T-1000との戦闘により、生体組織を傷つけられてしまったため、1984年から2017年へのタイムトラベルにはお供できず。
というか、もしお供できていたら、サラとカイルの裸体に混じり、T-800も加えた三人での真っ裸トラベルが実現していたことになるので、実に絵面が危ない。
お供できなくてよかった。

「2017年に絶対いろよ。二度もパンツ調達すんの嫌だかんな」というカイルに対し、「いるから心配すんな」と言ったのに、いない。
しかも理由が渋滞に巻き込まれていたというのだから、おちゃめ。
というか、なぜ車で来ようと思ったかな。そこはバイクで来いや。

生体組織を持った皮膚を貼り付けているため、外見は老けるという設定が本作で追加。演じるシュワルツネッガー氏の年齢に合わせての措置だと思うが、ロートルなT-800というのもオツなもの。
薔薇の花束の代わりにクマさん人形に銃を仕込むなど、年齢を重ねたからこその演出が活きている。

ターミネーターT-3000と化したジョンとの戦闘では大活躍。稼働したタイムマシーンに敵を引き込み、誤作動により大爆発を誘う。
爆発の真っ只中にいたT-3000は消滅したが、直前で液体金属の中に吹き飛ばされたT-800は死を免れ、しかも液体金属をまとってパワーアップして帰ってくるというハッピーエンドを迎える。
三人仲良く、世間の荒波を乗り越えていってほしい。

●ジョン・コナー
ご存知未来の救世主。
本作でも、序盤は未来の出来事を知る指導者として、スカイネットをほぼ壊滅まで追い込む活躍を見せる。
だがカイルが過去に飛ぶ直前、密かに人の姿を取って侵入してきたスカイネット=ジェニシス本体に襲われ、細胞を機械に書き換えられ、ターミネーターT-3000として生まれ変わってしまう。
その後はジェニシスの指示で2017年にタイムスリップし、ジェニシスを止めに来た両親と対決することに。

なんというか、演じるジェイソン・クラーク氏の怪しい魅力が炸裂し、明らかに善玉だったであろう序盤ですらも、こいつ裏切るんじゃないだろうな……という不穏な雰囲気を醸していた。
  ↓
まさかターミネーターになって帰ってくるとは思わなかったデス。
『T2』時代のグレた少年が、最終的にはターミネートされるとか……目から塩辛い液体が出そう。
ジョン本人が悪人だったわけではもちろんなく、機械に無理やり書き換えられてしまったゆえの悲劇。もし続編ができていたとしたら、最終的にはジョンを機械化から救う展開が置きていたかもしれませんね。

●ジェニシス/スカイネット
広報用のポスターなのか知らんけれども、google先生で画像検索すると、サラとカイル、ジョンに加え、眉毛の薄いしゅっとした男性が映っているものが出てくるんですが、これ誰だろーと思っていたら、まさかのジェニシス。なぜその面子に加えた。
他に、銃をかっちょよく構えているバージョンなんかもあるんですが、お前敵やん。

その正体は、2017年に提供が開始される予定の、全世界のコンピュータデバイスを一つに結びつける画期的なサイバーシステム。
いよいよジェニシス起動が目前、と各端末でカウントダウンがされている。
が、もし起動したら、世界中のシステムを乗っ取り、あっという間に各戦争勃発……といういつものアレ。

2029年にジョンを襲ったときは実体を有していましたが、2017年のサイバーダイン社にて、サラとカイルの前に現れたときは、まだ技術が未完成だったからなのか、ホログラムにて登場。
カメラがいくつもあるため、破壊しても破壊しても、目の前にしつこく現れては「殺さんといて」「お前たちは終わりだ」「ふはは、ジョンが来たでー」とこちらの神経を逆なでしてくるという鬱陶しさ。
けれどやはり実体のない悲しさなのか、結局は言葉で戦線に参加するほかはなく、ジョンの敗北とともに、サイバーダイン社が文字通り木っ端微塵となって吹き飛び、消滅していった。

……と見せかけて、続編を想定していたため、エンドクレジットの途中にて、地下深くにバックアップが取ってあることが示唆されて終わる。
俺たちの戦いはまだこれからだ! 的な。
けれど企画が頓挫したため、永遠にその機会はないので、ちょっと不憫にもなる。
ならんか。

●オブライエン
1984年にて、T-1000との戦いの場に居合わせた不運な警官。
T-1000が液体金属化してほにゃーーんという現場を目撃し、タイムトラベラーの存在と未来をかけた戦いについて確信を抱くようになる。
その後、2017年にてサラたちと再会。
拘束状態にあった二人を解放し、彼らがサイバーダイン社に向かえるようサポートするという活躍を見せる。
演じるJ・K・シモンズ氏の大ファンなので、彼がジョンに殺されやしないかとハラハラしたが、最終的に無事だったので心底ほっとした。
続編があれば、協力者として活躍してくれたと思うので、そこはとても残念です。

●ダニー・ダイソン
みんなのトラウマ、「もう持ってられないよ」のダイソン氏の息子。
『T2』時代はめんこい少年でしたが、2017年には立派に成長しており、亡き父の研究を引き継いで、サイバーダイン社にてジェニシスを立ち上げようとしている。
なんだよ、結局ダイソン一族かよ。
今回は、彼が不在の間にサイバーダイン社が、それはもう見事に、容赦なく、木っ端微塵に大破壊されたため、トラウマにならずに済んだんですが、もし続編があったら多分ひどい目に遭っていた。
無事でよかったね……と言いたいが、あんだけ大きな会社だったんだから、従業員の数もひとしおなわけで、それがみんな一夜で職を失ったかと思うとかわいそうになります。

●MRI
サラとカイルが収容されていた病院にあった、ご存知人体を磁力で画像撮影する機械。
磁力に弱いジョンをその場に留めるため、磁力パワー全開にされて、彼を足止めする活躍を見せる……のだが。

怖い。
あまりの磁力の強さに、ジョンの中にある機械の粒子が、なんか人類進化図みたいに段階を踏んでほばばばばーっとMRIに引きつけられていくんですが、あんなもんを検査に使って大丈夫なのか……と不安になる。
やだなー。入りたくないなー。

●少年カイル・リース
2017年にて、青年カイルと同じ時空に存在している幼いカイル君。
当然、指紋が同じであるため、警察のシステムに引っかかり、「知り合いかどうか」を確かめるため、家族とともに呼び出されていた。
そこにジョンの襲撃を受け、逃げ出そうとして足がすくんでいたところを、サラに助けられ、(多分)一目惚れする。

すべてが終わった後、青年カイルの訪問を受けるのだが、大昔にあった『タイムコップ』という映画では、同じ時空にいる同一人物が重なると、☆☆☆☆なことになって消滅してたので、ものすごくハラハラした。
そこで、青年カイルから「ジェニシスがスカイネットだ」という例の伝言を受け取るのだが、最早各時空がどのようにつながっているのかわけわからんので、その伝言を2029年のカイルが受け取るのかどうか定かではない。
ジョン存在してないしぃ。

●タクシー
2017年にタイムスリップしたサラとカイルがぶつかってフロントガラスが割れた。
今思うと、あいつら車と裸体で衝突したはずなのに、大した傷もなく無事とか、骨が超合金疑惑なんだがそこんとこどうなの。

●若いT-800
1984年に送り込まれた刺客の方のT-800。
サラとT-800にあっけなく倒された……のかと思いきや、T-1000の液体金属を少量もらって復活。カイル・リースとのタイマンに持ち込まれる。
その際には、きちんと独力でカイルは相手を撃破するので、『T1』での雪辱をここで果たしたという爽快感があった。

●死にたくなければついて来い
T-1000の襲撃からカイルを助ける際に、サラが言う。
こいつは『1』に見えて、『1』じゃないんだぜ! という、製作側からのメッセージ。

●I’ll be back.
ヘリを追いかけて来るジョンを止めるため、単身特攻する際にT-800が言う台詞。やはりシュワルツネッガー氏が言うと決まるぜ!

今回も、ターミネートすんぜ、は聞き逃しました……。どこかで出て来たような気もするけれど……修行が足りません。

というわけで、これで映画シリーズはコンプリート!
なんのかんのとすべて面白く、やっぱりターミネーターは最高だぜ!

↓レジェンドの始まり。『1』と『2』の感想はこちら。

↓シリーズ最新作、『ニュー・フェイト』の感想はこちら。

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