映画『アメリカン・サイコ』ネタバレ感想。ラストですべてが覆される、考察必須の面白スリラー。

原題:American Psycho
2000年の映画
おすすめ度:☆☆☆☆
茶の間が凍る度:☆☆☆☆☆

【一言説明】
殺人大好きっ!

アメリカン・サイコ 映画

Netflixにて絶賛配信中の『アメリカン・サイコ』。
エリートビジネスマンが、夜ごと町に出ては殺人を繰り返すというあらすじから、とんでも怖い話なんだろうと長らく遠ざけていたのが、この度の再会。
エイヤッ! と見ることになった次第です。

主演は名優クリスチャン・ベール氏。共演にジャレット・レト氏やリーズ・ウィザースプーンさん、ウィレム・デフォー氏にジョシュ・ルーカスさんなど、豪華キャストが顔をそろえていらっしゃいます。

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あらすじ

俺の名刺が惨敗した……。
NYのビジネスマン、パトリック・ベイトマンは打ち震えていた。
エリート界の戦場――名刺バトルにて、自身の自信にあふれた名刺をしのぐ、とんでもない伏兵が出現したのだ。

宿敵の名は、ポール・アレン。
大物相手の取引を独占し、超絶人気店の予約を押さえる男。

「色も書体も完璧……そのうえ透かしまで入っているだと!? 許さん……許さんぞ、ポール・アレン……!」

血涙を流すベイトマン。
この後、彼はとんでもない行動に出るのだったが……エリートの考えることは、ようわからん。

※以下ネタバレ。若干の残虐な描写も含みます。未見の方と、苦手な方はご注意。

 

 

 

 

感想

↑のポスターから伝わるスタイリッシュさ&無機質な殺意。
怖いんだろうなあ、おぞましいんだろうなあ……と戦々恐々としていたんですが……。

存外コメディだったよ、おっかさん。

名刺バトルはもとより、ムーンウォーク入場に濡れ場ポージング、裸チェーンソーに回転ドア銃撃。
ベイトマン君、面白すぎ。
もし実在したら面白いでは済まされんでしょうが、フィクションとわかっていれば、一周回って好きになってくるぐらい、ベイトマンのキャラが立っている。

『アメリカン・サイコ』で画像検索すると、ベイトマン君の麗しきヒャッハー顔が出て来るんですが(※流血注意)、これがもう気持ちいいくらいに本作の特徴を表していて、うふふってなりました。

さて、本作で一番の注目どころは、結局ベイトマンはポール・アレンを殺したのか否か、という点。
公開後二十年近くが経っても、いまだに殺した派とすべて妄想だった派に分かれており、どちらが正しいとも言いきれないようです。

個人的には、『ベイトマンはポール・アレンを殺した』に一票。
とくに前知識もなくフツーに見てて、こんなばったばった殺して大丈夫なんかなーと思っていたら、ラスト弁護士の「ポール・アレンなら、先週ロンドンで食事したよ」発言に「????」となったわけですが、あれが全部妄想だというのは無理があると思うので、やっぱり殺したんだろうなあ……という印象です。

●ベイトマンの妄想と思われる点
・クレカが使えない店での店員への暴言。直後に鏡に映ったベイトマンに切り替わることから、脳内でつぶやくにとどめた。
・ドルシアに当日予約を入れようとした際の笑い声。笑い声の途中でベイトマンは電話を切っているのと、次に電話した時の受付は非常に礼儀正しかったので、あれは普通に断られたのを、脳内で嘲笑に変換した。
・猫を食わせろATMからの下り。あんなメッセージが表示されるわけはないので、この時点でかなり精神にきていた。
おまけにマグナムでもない普通の銃でパトカーが爆発するわけねーずらってことで、そのあたりは妄想が混じっていると思われます。
老婦人と別ビルの守衛、清掃人は実際に殺されたと思いますが、パトカーの銃撃戦は脳内での出来事。
ヘリコプターが飛んでいたので、多分別件でパトカーが炎上しているのを見て、俺がやったのかと混乱 → 時計見て、こんな時間。仕事に行かなきゃ! という混乱の極み……的な……? ようわからん。

●ポール・アレン関連
・先週飯食ったよ、と言った弁護士は人違いしている。みんな人違いしすぎぃ!
・ポール・アレンの部屋にあった死体が消えてる → アレンの居城は超高級マンションにある。もしもそんな場所で事故物件が出たとなったら、不動産価値が暴落しそうなので、管理会社が隠ぺいした。ベイトマンが訪ねて行った際に、案内のおばちゃんが塩対応だったのは面倒を起されたくなかったから。
・裸チェーンソー騒ぎで、あんだけドアをバシバシ叩いたけど、誰も出て来なかった → 聞こえていたけど出なかった=無関心。というか、もしも外から悲鳴とチェーンソーと男のヒャッハー声が聞こえたら、誰かドアを開けるやついんのかっていう。

『アメリカン・サイコ』というのはベイトマンのこと……ではなく、実は社会の恐ろしいほどの無関心さにかかっているんだろうなあ……としみじみ。
トランクに明らかに人積んでるのに、「その鞄どこの?」だかんね。
「ゴルチェだよ」じゃねーわー。そこは律儀に答えんでいーわー。

というわけで、とてもとても面白かったです。
何事も突き詰めると笑いに到達するという事実を認識した映画でした。
万人におすすめはできんけども。

人物紹介

●パトリック・ベイトマン
超絶美男子。社長の息子。腹筋1000回可能な無敵のシックスパックを持つ男。
完全無欠……かと思いきや、無欠が行き過ぎて百回転くらいひねられた性格。

ポール・アレンの透かしが入った名刺に打ちのめされ、浮気相手にヤクを投与して人気店だとごまかし、街角の女性を伴った三人でのくんずほぐれつでは、鏡を前に自身の上腕二頭筋にうっとりするなど、笑いでこちらの腹筋を1000回振動させるアクションを取りまくる。やめれ。

いそいそと着込んだレインコート姿で、ムーンウォークしつつリビングに入場してきたときはどうしようかと思いました。
一見とっつきにくい人の、案外親しみやすい顔を見た……と思ったら斧をフルスイングするから、やっぱりとっつきにくかったデス。

ポール・アレン君殺害後は、アレン君を名乗って彼の部屋でやりたい放題。もろ自分の声で勝手に留守電にメッセージを吹き込むわ(よくばれなかったなお前)、服の代わりに●体を吊るすわ、またまた女性を連れ込むわ、「ほ~らほら、チェーンソーが上から君を狙っているぞ~」じゃねえよ。

そんな大暴れのベイトマン君だったが、あんなに殺人を繰り返したにも関わらず、結局みんなそのことに無関心で、冒頭で言っていた本当の俺はどこにも存在しない……が真実だったということに思い当たり、何がしかの悟りの境地に達して物語はジ・エンド。
うん……まあ……エリートのやることはようわからん。
お前が犬を殺したことは忘れんぞ。

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●ポール・アレン
完璧を謳うベイトマンの上位互換。名刺のセンスも住まいも上。超絶人気のレストランに、よりによって金曜の夜に予約を入れるという快挙を見せ、見事死亡フラグが確定した。
有能だったというだけで、別に殺されるほど悪いことはしていない……と思うのですが、登場からずっとベイトマンをハールスタム呼ばわりするうえに、「ベイトマンは無能だぜ」と本人に言ってくるので、まあなんちゅーか。

そう思うと、少なくとも作中では律儀に全員の名前を正しく覚えていたベイトマン君は、相当いいヤツなのではなかろうか……と思ったけどそんなことはなかった。

●ジーン
ベイトマンの秘書。仕事に適した服装をしているのに、「俺はその服装は好かないね」と上司に強要され、彼に好意があるゆえに、その通りにしてくるめんこい女子。
作中の良心といってもいい存在。なのに、ベイトマンは彼女の頭にくぎ打ち機をぶち込もうとするんだからこの野郎。
最後は上司のスケジュール帖に描かれたサイコな画像を見て戦慄。
多分そのまま恐れをなして辞めると思うけど、万が一「あなたには治療が必要よ」とか言い出したらどうしようと思わないでもないデス。

●イブリン
ベイトマンの婚約者。彼と同じで自分のことしか考えておらず、横で婚約者がチェーンソー刺さった女性の絵を描いてもどこ吹く風。
なのに演じるウィザースプーンさんの力ゆえか、めちゃくちゃかわいく映る不思議。
作中では別れたっぽいですが、多分ベイトマンの毒牙にかからないのは彼女だけだと思うので、お似合いのカップルだったのになー。

●ルイス
ポール・アレンに続き、名刺バトルでベイトマンに勝利する。
思わずその足でトイレに出向き、ルイスの首に手をかけよう……としたその時。なんとルイス君、ベイトマンに気があることが発覚。
衝撃のあまり、手袋をしたまま手を洗うという行動に出るベイトマンがほほえましい。
「TELして」じゃねーわ。

●ベイトマンの愉快な仲間たち
いつも誰かと誰かを間違えている人々。
食事の代金を「たったの六万円かよ」と言ったり、女性の顔に関して談義したり、庶民のハートをピリつかせるのが大得意。
正直どいつの名刺も同じに見えるYO

●キンボール
ポール・アレンの行方を追っている探偵。名優ウィレム・デフォー氏が演じているので、こいつは絶対曲者だぜ……と思っていたら、例によって誰かをベイトマンと間違えている人間がアリバイ証言をしてくれたため、あっさり引き下がってその後出番なし。
なるほど……そういう趣向で来るか、ふふ……と思った人は大分デフォー氏に洗脳されている。

●ハロルド
ベイトマンの弁護士。
ポール・アレンが生きていたと証言して観客を混乱に陥れるうえに、罪の告白電話を「ウケる」の一言で済ます奴。
しかもベイトマンをディビッドと間違えるうえに、「ベイトマンは●ソだぜ」と言ってくるから、ウォール街はどうなっとるんだってなる。

●クリーニング店
しょっちゅうクランベリージュースをこぼしたシーツが持ち込まれる店。
お前どんだけクランベリー好きなんだよ。

●別ビルの従業員
笑っちゃいけないけど笑ってしまう、とんでもないとばっちりにあった人々。
とくに清掃員。回転ドアぐーるぐる……あっ、人いるじゃん。戻って撃っとこ、的な。やめたって。

●監督
メアリー・ハロンさん。まさかの女性とは……!
御見それしました。とてもとても面白かったです。ありがとうございます。

↓Amazon Videoでは現時点で未配信のようですが、ベール氏がかっちょよいので貼っておきます。