映画『きさらぎ駅』ネタバレ感想。異世界+ループもの=傑作。ラスト考察もあるヨ。

きさらぎ駅 映画 ホラー

原題:きさらぎ駅
2022年の映画
おすすめ度:☆☆☆☆
ホラーだけど怖くない度:☆☆☆☆☆

【一言説明】
線路は続くよどこまでも。

きさらぎ駅 映画

結構前に、Amazon Prime Video経由で配信となった映画『きさらぎ駅』。
インターネットで誕生した都市伝説が、ついに映画化までされたのか……と感慨を抱きつつ見てみれば、めちゃくちゃ面白い → 感想を書くべくブログにログインする → 最終更新日が二年前という、戦慄のコンボをくらった筆者です。

正直、下手なホラー映画より怖かったんだワン。
びっくりだワン。

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あらすじ

神隠し――それはホラー界のロマン。
ある日突然失踪した者が、時を経て失踪時の姿のまま発見……もしくはいつまで経っても発見されない現象である。

その日、堤春奈が訪ねた女性も、神隠しに遭った一人だった。

彼女の名は、葉山純子
異世界の『きさらぎ駅』に降り立ち、無事に生還したという噂の女性。

「あの日、私は新浜松からの電車に乗ろうとして、寝過ごしてしまい……」

純子の語り始めた体験談に、耳を傾ける春奈だったが……。

 

感想

2004年、匿名掲示板「2ちゃんねる」に書き込まれた投稿『きさらぎ駅』を元に作られた映画……ということで、元ネタを知っていると倍楽しいわけですが、知らなくてもまったく問題ない内容となっておりました。

詳しい流れは以下。

1.『神隠し』を卒論テーマに選んだ大学生・堤春奈は、葉山純子(はやますみこ)という、七年間行方不明になっていた女性に話を聞くため、彼女の自宅を訪れていた。

春奈「あなたが、『はすみ』さん」
純子「はい……」
春奈「なるほど……ご自分の名前から葉と純を取って『葉純(はすみ)』。本名もじり型、そこに敢えてのひらがな変換で柔らかさをプラスした……と」
純子「解説しないでいただけます?

純子はかつてネットに『はすみ』というHNで、奇妙な駅に着いたという体験談を投稿していた。

春奈「では、あなたが降車したという、『きさらぎ駅』のことを話していただけますか?」
純子「ええ……あの日、私は自宅に帰ろうとして、新浜松駅からの電車に乗ったのですが……」

2.残業を終え、電車で帰ろうとしていた純子は、家族に駅まで迎えを頼んでいたにも関わらず、何度も寝過ごすという失態を犯し(筆者が家族なら絶許案件)、最終的には新浜松駅から西鹿島行きの終電に乗り込む → 急に無音になったと思ったら周囲の乗客が消失 → 何故か路線にはないはずのトンネルの中を通るという現象が発生。
  ↓
トンネル通過後、それまでの三人称視点から、突如POV手法へと切り替わる画面=わかりやすく異世界パート開始。
周囲には明らかに異変が起きており、
 ・深夜のはずが、窓の外は真昼の田園風景
 ・黒いカーテンで目隠し&施錠された運転室
 ・眠る五人の乗客たち
等々、ホラー開始のゴングが鳴り響く。

ほどなく電車は停車し、純子を含む六人が降車すると、そこには『きさらぎ駅』という、聞いたことのない駅名が記されていた。

3.純子以外の顔ぶれは以下の通り。
 ・女子高生:純子が教える高校に通う。
 ・リーマン:ほろ酔い。ワンカップ片手。
 ・3人組その1:翔太。チンピラ。
 ・3人組その2:美紀。ギャル。
 ・3人組その3:大輔。気弱。
駅の周辺は、田んぼの他、民家が立ち並ぶ普通の風景……かと思いきや、かわゆい女子高生こと宮崎明日香が突如駅を指差し、「い、今、あの壁に……!」と不穏な発言をかます。
  ↓
その壁の下のベンチで寝始めるリーマン。自由か。
  ↓
コンビニを探しに行った三人組のうち、チンピラとギャルが血相を変えて戻り、線路を歩いてここから脱出すると言う。
無人の町に怯えた純子と明日香も同行を決意。
「いや、危ねーから」と一人駅に残るリーマン。
この場合、正しいのは脱出組の行動だが、ただしホラーに限るという前提を忘れるなかれ。現実では絶対に線路の上を歩いたら行けないのだ。
夏休みに死体を見に行った四人の少年たちも平気でほいほい歩いていたが、線路を歩いたら危ないのですよ。

4.何があったのと尋ねる純子に、渋々口を開くチンピラとギャル。
「大輔は……血管のようなものに襲われたんだ」
  ↓
血管のようなものって何さ。
  ↓
突如ギャルの携帯に着信。
「大輔からだ!」 → 添付の画像を開く → 右目が2つに増え、顔に血管が張った大輔の顔が映る。
本当に血管だった。
  ↓
まさかの、敵は血管……?
というか、なんかこう……画像、雑くね……?
実は映像がPOVになったあたりから、画面全体にチープな気配が漂い出していたのだが、ここにきて、そのチープさはCGにも適用されるのでは……という懸念が出てくる。
  ↓
どこからともなくドンドコと太鼓の祭囃子が聞こえ始め、四人を追ってきたリーマンが登場。
「太鼓=人がいるんじゃね?」という希望も虚しく、突如リーマンの顔に血管がはびこり、膨張したと思ったら爆散。
  ↓
突然のリーマン爆散に戦慄する純子たち。
だが視聴者としては、爆散のCGが何か途方もなく雑&チープだったことに戦慄を覚えるのだが、そこはまあ予算の関係

5.線路をひたすら進むも、疲労からギャルがギブアップ。
「翔ちゃん、休もうよ」
「うるせぇ、俺に指図すんな!
「乱暴はやめなさい!」
「うるっせぇ、俺に指図すんな!
なんだコイツ。
  ↓
そこに突如声が響き渡る。
「おーい、危ないから、線路の上歩いちゃだめだよー」
下を見ると、もう一方の線路に杖をついた老人が立っている。
  ↓
「おーい、危ないから、線路の上歩いちゃだめだよー」
危ないという割に、自分も線路の上に立っているおじいちゃん。
  ↓
「おーい、危ないから……」
「うるせぇ! 俺に指図すんなぁっ!
何なんだコイツ。
  ↓
ふと目を離した隙に、突如純子たちのすぐ後方に移動している老人。
「おぉぉーい、危ないから、線路の上歩いちゃだめだよぉお」
鳴り始める太鼓。
「そういえば、大輔が襲われた時もこの音が……」との証言通り、どうやら何がしかの魔の手が迫ると太鼓が鳴り出す仕様の模様。
  ↓
老人爆走。
逃げる純子たちの前に、突然血管顔になった大輔が姿を現し、もみあった末、ギャルが老人に捕まった……と思ったら、二人共炎に包まれて消失。大輔もいつの間にか消え、取り残される純子と明日香、チンピラの三人。

6.「俺、わかっちゃったんだ、ここで生き残る方法……」
携帯していたナイフを構え、不穏な笑みを浮かべるチンピラ君。
「生贄を捧げればいいんだよぉ」
  ↓
ナイフを振り回すチンピラに、バッグとボールペンで応戦する純子。
「先生!」
「あなたは先に逃げなさい!」
  ↓
決死の覚悟で生徒を逃し、手を負傷しながら、チンピラの足にボールペンを指して機動力を奪う純子。
ボールペン強っ。
  ↓
チンピラを置いて進むと、目の前に「伊佐貫」と書かれたトンネルが見えてくる。
「絶対に、二人で元の世界に戻ろう!」
決意を新たに、明日香と二人でトンネルに入っていく純子。
果たして、彼女たちは無事に下の世界に戻ることができるのか……?

という感じで、進んでいく本編。
画質やCGは妙にチープながらも、テンポよく、六人の登場人物たちもそれぞれ分かりやすくキャラが立っており、まったく怖くはなかったものの、とても面白い映画でした。

本作は構成が神がかっており、前半は純子を主人公としたPOV形式での異世界脱出までの物語。
そして後半は、純子の話を聞いて『きさらぎ駅』に到達した春奈が繰り広げる三人称視点での脱出劇と、同じシチュエーションを二度繰り返す、いわゆる『ループもの』になっております。

純子編の結果は、冒頭から純子しか生還できなかったことが分かっているわけですが、彼女から情報を得る=最初から二週目状態で異世界に行った春奈がどう行動するか、というのが後半の肝。
まさか有名な都市伝説をループものに落とし込んで、こんなに面白い映画を生み出してくれるとは、本制作者の方々には感謝しきりでございます。

もしまだ未見で気になっているという方はぜひ。
CGのチープさがいい味出しているため、ホラーだけど怖くないヨ!

人物紹介

●堤 春奈
主人公。民俗学を専攻する大学生で、『神隠し』をテーマとする卒論の取材のため、葉山純子の元を訪れる。
卒論を「ありきたりな内容にはしたくない」と言う通り、研究姿勢は熱心で、体験を語り終えた純子の当日の行動を検証した結果、『きさらぎ駅』にたどり着くためには特定の手順で複数の電車を乗り継ぐ必要があることを発見。純子宅を辞去した時間もちょうどよかったことから、その足で手順を再現、見事異世界への扉を開き、『きさらぎ駅』へと到達する。
そこには、純子の話に聞いた通りの五人が乗っており、また、彼らの行動やセリフが事前に聞いていた内容と同じものだったことから、次々と襲いくる危機を回避、チンピラ以外をトンネルの先へと誘導することに成功する。
しかしその後、四人を生存させたことで展開が変わり、最終決戦の舞台が神社から洋館へと変化=初見の状態で挑むこととなり、結局は元の世界への扉を前に、明日香と二人、どちらが先に扉に入るか=純子と同じ選択を迫られることとなる。
純子の話では、異世界の追手を純子が抑えている間に明日香が先に扉に入ったが、実は扉は罠で、中に入った明日香が爆散すると同時に、純子は元の世界へと帰還したということだった。
同じ状況になった春奈は、そのことを思い返し、自分が助かるために、明日香を先に扉へと入れる。
これで助かった――安堵したのもつかの間、明日香は扉ごと元の世界へ消えてしまい、異世界に取り残された春奈は、全身を血管に覆われ、爆散してしまうのだった。

つまり、純子は春奈がこの先取るであろう行動を見越し、わざと逆のことを彼女に教えた → すべては明日香を救出するために純子が仕組んだことだったという事実が判明する。
「『きさらぎ駅』に行けるのは一度きりのようで」と証言した通り、純子は帰還後、明日香を助けるべく、何度も異世界に行く手順を実行したと見られる。だが、経験者の自分は行けない → 他人を送り込んで明日香を助け出す、という計画に変更せざるを得ず、そこで白羽の矢が立ったのが春奈だった。
おそらく、春奈以前にも、取材に来た相手を利用する機会はあったと思うが、「信じてくれない人が多くて」とこぼした通り、眼鏡にかなう人物がいなかったのではないか。
下手な人物を異世界に送り込み、万が一にも生還してしまった場合、異世界脱出の条件が世間に知れ渡る可能性があり、そうなったら明日香救出はほぼ絶望である。
春奈の場合は探偵を使って調書を取り、おそらくは周囲への聞き込みもしくはバイト先を訪れる等、こっそり人物像を伺った結果、行けると踏んで実行したと見られる。
神隠しへの好奇心と、学業に対する向上心、四年間同じバイト先に勤めることから伺われる責任感やバイタリティなどを総括――かつ、明日香のような自己犠牲精神の持ち主ではないと見てのGOサイン。
そう、純子は春奈が『窮地に陥った際は他人を犠牲にする人物』だと見なして彼女を送り込んだのである。
純子、怖っ。
本作で最もホラーなのは、彼女のこの観察眼であると言っても過言ではない。まさにミス・マープルばり。

実際のところ、春奈は先の障害となるであろうチンピラをさっくり切り捨て、異世界側の人物である車の男を石で殴り倒し、「この人、アレだから」で済ます女傑である。
一度『きさらぎ駅』行きの電車に乗っちゃったら、帰るのは七年後だというのに、好奇心からサクッと乗っちゃう肝っ玉っ子である。
筆者も同じ立場になったら、やはり明日香を犠牲に自分が助かろうとするだろうし、春奈の行動は別に責められるべきものではない。
ただただ、純子が一枚上手だっただけである。

そんな春奈ちゃんは、エンドクレジットの後、純子の姪が『きらさぎ駅』に行った際、明日香の代わりに乗客として眠っている姿が映し出され、物語は終了となる。
つまり、新たに異世界に迷い込む人物が現れるたび、かつて死んだ乗客たちが復活、電車内に集められ、再び一人しか助からない死の脱出ゲームが繰り広げられる――という流れ。
ゲーム開始の際に記憶はリセットされるようなので、春奈は自分が死亡した前ループの体験を忘れ、純子の話を聞いて『きさらぎ駅』行きの電車に乗り込んだ直後の記憶を持っていることになる。
すると、
 ・明日香がいない
 ・純子宅で会った姪っ子が同乗している
という、純子の話とは異なる状況にいる自分を発見する。
春奈は頭の回転が早い女性なので、明日香がいない=生還した=自分は脱出に失敗した、という事実に速やかに思い至るはずだ。でもって、自分を客観視できるなら、『明日香を助けようと先に扉を通るはずがない』=『純子の話は嘘だった』という事実が容易に浮かび上がって来る。
もしかすると、最後の扉にたどり着くまでに死んだのでは……と考えるかもしれないが、そこは前ループで周囲をチャキチャキっと仕切った春奈である。スムーズに危機を回避していく自分を見て、「あ、少なくとも他の人より先に途中で死ぬはずないな」と思い当たるに違いない。
するとやはりたどり着くのは『純子の話は嘘』という結論であり、扉を通る正しい順番が導き出されるため、今ループで彼女が助かる確率はかなり高くなる。
ただ一つ障害となるのは、同じように純子の話を盗み聞きしていた姪っ子の存在であり、彼女がなぜ春奈がここにいるのかに疑問を持ち、正しい答えにたどり着いたとしたら、待ち受けるのはただ一つの扉を目指して二人がしのぎを削る展開であり、なんというか、やはり人間が一番怖いという普遍の感想に達するばかりである。

本当によくできた映画ですね。あっぱれ。

●葉山 純子
回想パート&裏の主人公。冒頭、どこかの草原を歩く姿が映し出されるが、実は異世界から帰還した直後の姿であったことが後の展開から推察される。
教え子を救えなかったショックなのか、時間経過のせいなのか不明だが、2022年時とPOV時でのキャラ変が顕著。POV時は新任ドジっ子高校教師、2022年時はマスター・コマンドーみたいな齟齬があるんだがなんぞこれ。POVは本人の主観だから虚構の可能性。
明日香を取り戻すために春奈を異世界に送り込み、見事奪還に成功。例の草原で異世界から帰還した彼女を出迎え、如何に前ループで明日香が勇敢だったかを語り、ハッピーエンド。

……とは行かないのが、ジャパニーズ・ホラー。
なんと彼女の姪である凛が春奈との会話を盗み聞きしており、動画配信しながら『きさらぎ駅』行きの電車に乗り込み、異世界行きを果たしてしまう。
後は春奈の項で書いた通り、春奈VS凛の図式で脱出バトルが発生するのだと思われるが、ここで問題なのは、異世界と現世との時間軸のズレである。『きさらぎ駅』世界での一晩が現世での七年に当たるとすれば、春奈とのバトルに凛が勝利したとしても、彼女が帰還するのは最速でも七年後になる。
凛の残した動画と友人の証言から、姪が『きさらぎ駅』に行ったことを純子が知るのは確実として、では純子は姪が戻ってくるかもしれない七年後まで、何もせずに待っているだろうか?
んなわけがない。
単純に考えれば、再び嘘の情報を与えた生贄を電車に乗せ、凛を生還させる……なのだが。
問題は、凛が動画配信をした時点で、『きさらぎ駅』行きの手順がネットに公開されてしまったことだ。
異世界では電波が届かないため、トンネルに入った時点で配信は終了しているはずだが、それが逆に異世界に行ったことの信憑性を高めたと見る人もいるだろうし、また、配信仲間の友人が、凛がそのまま行方不明になったことを広めないとも限らない。
こうなると、『きさらぎ駅』に不特定多数の乗客が到達するのは時間の問題となり、数が増えればそれだけ先の展開に変化が起きるため、凛の生還する確率は時間とともに低くなる。
では、純子が取るべき手段は何かと言えば、それは凛の父親=兄を異世界に送ることではないだろうか。
そもそも娘が行方不明になったら親として黙ってはいないだろうし、妹が過去に行ったという『きさらぎ駅』を目指して娘は消えたのだ。詳しい事情を根掘り葉掘り聞かれ、じゃあ自分が助けに行く、となるのは必然と言えるだろう。
それに、兄ならば事前に詳細な情報を共有でき、かつ居合わせる乗客たちのパターンを念入りにシミュレーションできるため、少なくとも凛生還の確率は非常に高くなる。
そして、第三者の干渉を防ぐため、異世界に行くのは早ければ早いほどいい。おそらくは、凛が行方不明になって数日の間に、兄は『きさらぎ駅』行きの電車へと乗り込んだはずだ。
後は、『きさらぎ駅』行きを試みた凛がそのまま行方不明になったことを広め、かつ光の扉についての嘘の情報を拡散させ、興味本位で電車に乗り込む人物を増やし、兄が生還するための確率を上げるのが純子の役目である。
凛や兄以外が生還するにしても、少なくとも七年の間は、光の扉についての正しい情報が世間にバレる心配はない(考察の末にたどり着く者はいるかもしれないが)。

そもそも、姪が異世界に行く羽目になったのは、教え子を助けるために無関係の第三者を巻き込んだ純子への罰=因果応報の結果である。
そこへさらに姪も助けようとして画策するわけで、そうすると因果の螺旋はどこまでも複雑に絡み合い、果てしなく伸び続けていき……『きさらぎ駅』大勝利。血管たち大喜び。

疑問点としては、純子が『きさらぎ駅』行きの電車に乗っている際、『はすみ』としてネットに書き込む機会がなかったように見受けられることだが、映画冒頭で数々の行方不明者の記事に混じって、投稿の画面が一瞬映し出されていたので、多分本作では「路線にないはずのトンネルを通った」あたりまでは、映されていないだけで書き込んでいたのでは……と推察する。
異世界到達後は電波が通じていない描写があったので、元ネタ通りではない模様。

また、春奈来訪時は外が明るかったが、辞去時は真っ暗になっていた → 彼女がその足で『きさらぎ駅』行きの手順を実行できるよう、取材の時間を調整して誘導した → 怖ェ〜〜〜。

●宮崎 明日香
純子が異世界で出会った女子高生。
勤務先の学生という縁もさることながら、母親に「自分に恥じる行為はするな」と言われて育ち、どんな境遇に陥っても他人への配慮を忘れないという、有り体に言って最の高が過ぎる少女。
酔っ払いの●ロ吐きリーマンすら、「このまま見捨てたら、あの人どうなるんですか!」と駆け戻り、足を負傷した純子に「先に行きなさい!」と言われて一度は彼女を置いて行くも、チンピラ襲撃のピンチに駆けつけ、「先生!」と手を差し出す姿はもはや地上のエンジェル。純子でなくとも、誰もが「この子を絶対助けたらぁ!」と覚悟を決めた瞬間である。
そのあまりの天使っぷりに、彼女を助けられなかった純子は深く後悔し、前述の末恐ろしい計画を実行、成功させてしまう。
一応、純子としては、教師とその教え子という立場もあり、余計に守ってやなねばという庇護欲と責任感が湧いたわけではあるが、そんな理性はどうでもいいくらいに誠に天使。マジかわいい。

同じ高校に在籍する間柄ながら、互いに面識がなかったのを、純子は赴任して一年目、かつ受け持ちの学年が違う上に担任ではなく副担任であるせい、と納得していたが、明日香の服装が1月8日と真冬にしては軽装であることを考えるに、彼女は純子よりも数ヶ月〜数年前に『きさらぎ駅』に迷い込んだと見受けられる。
また、一晩で七年経過するはずが、なぜ明日香が現世に戻ったタイミングドンピシャで純子が迎えに来られたかという疑問については、無職の純子は毎日草原に通い詰められたとか、純子が明日香大好きをこじらせてストーカー気味になっていたとか、そういうわけではなく――多分なく、明日香失踪を2003年頃、本編を2022年頃と見積もって、二晩=七年✕2=十四年以上がすでに経過していたので、異世界滞在義務帰還の禊は終えたと見なされ、春奈が『きさらぎ駅』に行った翌日に帰還したためと解釈できる。

純子の証言によれば、明日香の母親は、未だに娘を探し続けているとのこと。どんな感動の再会が待っているのかと想像すれば、純子が多少怖かろうと、春奈が多分にアレであろうと、そんなことはどうでもよくなるような気が……しないんだなぁ。怖いんだなぁ。

●岸 翔太
柄シャツを来たチンピラっぽい茶髪の青年。
絶対指図されたくないマン。
初対面の相手をお前&使えねー呼ばわり、見知らぬ場所ではとりあえずコンビニ、仲間がやばくなったら一目散に逃げ出し、いよいよやばくなったらサクッと錯乱、ナイフを構えて「生贄にすんだよぉ!」からのボールペンで撃退、トンネル内での頭が血管「あ……あ……」と、ホラーにおけるチンピラキャラのお手本のようなムーブをかますため、春奈(&視聴者)からは、早々に「こいつなら犠牲にしてもいい枠」に指定され、二週目では大輔の代わりに民家前で血管に襲われ、線路上ではナイフで腹をぶっ刺された挙げ句、爆速爺さんに捕まって炎上死亡する羽目になった。

ある意味ホラーには必須のキャラと言えるが、まだ若く更生の余地はあるわけで、彼にだって現世で待っている人物がいるはずである。しかも血管に襲われた際は、逃げていく仲間を見つめながら「助けて……助けて……」と訴える可哀想さ。だからいずれは助かったらいいんじゃないかなぁと思うのだが、暴力を振るう割には小心者なところが見受けられるため、徹底的な悪を貫くには至らず、やっぱり助かる確率は限りなく低いんじゃないかなぁ……と同情してしまう。

●松井 美紀
茶髪のギャル。チンピラ君と仲が良い。
一見気が強そうだが、血管が襲ってきたときの「もう帰る!」発言や、歩き疲れて「もうだめ」と弱音を吐くなど、要所要所でKAWAIIを見せるナイスギャル。
残念ながら、純子ループ時は爆速じいちゃんに捕まり炎上 → 死亡してしまったが、春奈ループ時は終盤まで生き残る。
前ループでのチンピラ君の行動を本人とは知らずに聞き、「そういうやつが一番嫌いなんだよね」とのたまう。
が、大輔君からの着信には怯えて出られなかったのが、チンピラ君からの着信には「翔ちゃんからだ!」と即座に出るなど、やはり気持ち的には『翔ちゃん>>>>大輔』なところがなんともKAWAII。
なのに、最終決戦の場である洋館では、突如現れた翔ちゃんに大輔共々捕まり、結局三者炎上 → 死亡することとなった。

この三人が助かるには、翔ちゃんが改心してキレイな翔ちゃんになるくらいの劇的な変化が起きないと多分無理。
が、キレイな翔ちゃんが見たいかというと、ちょっとどうだろう。

●飯田 大輔
翔ちゃんとギャルと三人で徒党を組む。公式サイトで『おとなしい男』と記載されるままの印象の人。
純子ループでは、「コンビニを探しに行く」という翔ちゃんを止めたせいでボコボコに殴られ、それでも心配して追いかけて行った挙げ句、血管に襲われて大変なことになるという不憫さを見せる。
春奈ループではチンピラ君が先に犠牲になったため生き延び、怯えるギャルに「大丈夫だから!」と突如しっかりした言葉をかけ、「え……大輔ってこんな頼りがいあったっけ」的瞳で見られるも、結局怨霊と化した翔ちゃんのせいで死亡する羽目になった。
多分彼とギャルと翔ちゃんは幼馴染で、幼い頃は乱暴ではあったけどまだ仲のよかった翔ちゃんへの情を捨てきれず、かつギャルへの秘めた感情的なものもあってなんやかや青い春的な経歴があるっぽいが、本作はホラーなため、誰も気にしなかった。

やはり彼らが生き残るためには、キレイな翔ちゃんが出現するか、大輔君が「てめぇこんな時でもコンビニかよこのコンビニ中毒が!」と叫んで北斗神拳を放つくらいの変化がないと無理なようだ。まあ、北斗神拳を放てる人は、大抵の場所で生き残りますけどね。

●花村 貴史
ワンカップ片手に電車に乗り込んだリーマン。
登場時すでにほろ酔い状態だが、手にしたワンカップが割れるか否かで、血中アルコール濃度のみならず、生存フラグまで変化させる。また、彼の場合は飲みすぎて寝過ごしたせいで『きさらぎ駅』への切符を手にしたことが明らか。
純子ループでは、線路の途中で突然太鼓が鳴り出した……と思ったら、顔が膨張して爆散死する。
一体何が起こったのかぽかーんだったのが、春奈ループで、実は線路のレールを伝ってやってきた血管に襲われたことが判明(初見殺しが過ぎる)。ゲ●は吐いたが、結果血管を避けることができたので、春奈グッジョブ。
だがその後、トンネルを抜けた先で車の運転を担当。きちんとシートベルトをつけていたのが災いし、敵に襲われた際に脱出が遅れ、捕まって炎上死亡した。

常に酒臭く、トイレがないなら「その辺ですっか」発言等、一見図太そうに見えるが、一人駅に置いていかれると慌てて追いかけて来たり、上述のようにきちんとシートベルトをしていたりと、案外根は小心者なのかもしれない。
だからこそ、世間のシガラミに疲れて酒の力を借りているのかもしれず、全体として憎めないおっちゃんである。

●線路の老人
突如下の路線に現れ、まったく同じセリフを延々と繰り返す杖をついた老人。
危ないから線路に乗るなという自分が線路に乗っているという、ホラー界にあるまじき矛盾を突きつけ、それまでチープなCGに耐えてこれはホラーなんだと自分に言い聞かせていた筆者の限界を打ち破り、腹筋を死滅させた。
反則が過ぎる。

●車の男
純子たちがトンネルを抜けた先で出会った男性。
「病院行きます?」「ここは比奈です」等、こちらの問いかけに対し、真っ当な受け答えを返し、助かったのだと安堵する……が、車に乗り込んでしばらくすると、「安心してください、大丈夫ですから」を繰り返すNPCと化し、突如白目を向いて襲ってくるラスボス。上げてから奈落に突き落とすスタイル。
どうやら彼の追撃をかわして逃げ込んだ先がラストステージ認定されるらしく、純子のときは神社、春奈のときは洋館だった。
石で殴打しても、車で轢いても復活し、木製とはいえ野球バットでボコボコにしても何度でも立ち上がるしつこい不屈の人。

●葉山 凛
純子の姪。進学先の高校が近いため、純子宅でお世話になっている。
好奇心の強そうなKAWAII少女だが、なんと数時間に及びそうな純子と春奈の会話をずっと立ち聞きしており(足腰強いザンス)、生還条件を誤認したまま『きさらぎ駅』行きの電車に乗り込んでしまう。
おそらく異世界に行ったという叔母の体験に長い間興味を抱いていたと思われ、彼女を守るために口を閉ざしていた叔母心なんぞどこ吹く風で、負の神隠しスパイラルを続行させた罪深き子。
ガッツはありそうだが、なにせ相手は「この人、アレだから」の春奈である。初回ループでは死亡する公算が大きい。
だが味方に春奈を上回る女傑=姪を奪還するまでどんな手を使っても諦めないであろう純子がいるので、いずれは生還すると思われる。

●大園 葵
凛の友人で、一緒に動画配信をしている。
春奈が取材で純子宅を訪ねた日に凛を訪ねており、おそらくその際に、叔母の会話を盗み聞きする算段を二人で立てていた模様。
たまたまじゃんけんで負けたために『きさらぎ駅』行きを免れたが、もし彼女が凛の代わりに異世界に行っていたとしたら……純子的には何の問題もなかった
もちろん、凛は自分も異世界に行く……的主張をするはずだが、純子の手によって異世界に対する強烈なトラウマを植え付けられる等、決してここには書けない手段で異世界行きを断念させられたと思う。
実際には凛が神隠しに遭ったので、やはり原因を作った一員であるこの子も純子によって☆☆☆
多分凛を助けに行けとか言われて問答無用で異世界に☆☆☆

●異世界
純子たちが迷い込んだ世界。どこまで行っても人がいない以外は、ごくふつーの田舎の駅という見た目。
明日香の欄で一晩=現世での七年と書いたが、ループを繰り返すごとに七年ではなく、一度行ったら七年という認識が正しい気がする。だから異世界で何度ループしても、帰還するのは最短七年、それ以上は身代わりとなった人が異世界に行った日の翌日、となる予想。
ちなみに、ループ自体は新たに乗客が来なくても、全員死んだら次のループ開始……というパターンもあるが、春奈が十数年後に乗車したときも乗客の面子に変化がなかったのと、日本には『七人ミサキ』の言い伝えがあることから、やはり新しい乗客が来たらループ開始説を個人的には推したいデス。

また、『きさらぎ駅』=異世界の正体として、襲ってくるのが血管&最後に春奈が死亡した際、空に巨大な目が浮かんでいたことから、かつて新浜松の地方で信仰されていた、異形の神様の胎内……的なやつかと思われます。

※七人ミサキ
四国地方に伝わる伝説。海や川などの水辺に、七人一組で現れる亡霊の集団。
これを見たものは高熱を出して死ぬ → 七人ミサキの一人が成仏する → 空いた枠に死んだ人が補充される → エンドレスループ。
怖ぁ。

●太鼓の音
純子たちに危機が迫るたび、どこからともなく響いてくる祭囃子。
当初は誰か人がいるのでは……と思わせたが、後半は鳴り響く度に身構える不吉の予兆となった。
こちらの不安を煽る目的……というより、異世界側のテンション△によって打ち鳴らされているタイプと見た。上述の異世界=神様の胎内説だと、太鼓ではなく実はテンション爆アゲの鼓動の可能性あり。

●純子兄
2004年の深夜に駅まで迎えを頼まれた挙げ句、何度も寝過ごされた人。
その後、まさか帰宅まで7年間も待たされようとは、誰が考えるだろうか。ドびっくりである。
とりあえず、23時過ぎに駅で待機していたにも関わらず、「寝過ごしちゃった☆」→「またまた寝過ごしちゃった☆☆」と送られた彼はキレていいと思う。

個人的な考察として、彼が異世界に行くのでは……と述べたが、純子と凛の年齢を考えるに、現在四十代〜いっても五十代前半くらいなので、体力的にもまだまだ現役。生還する可能性はあると思いマス。

●CG
コンピュータグラフィックスの略。2Dと3Dがあるが、ここでは3DCGのこと。
はるか昔、CGによる映像が世に出始めた頃、人々は現実では不可能な表現を可能とする技術に熱く拳を握ったものだったが、本作におけるCG表現は、2022年制作にも関わらず、何故かその黎明期時代を彷彿とさせる懐かしさを持っている。
いや、別にディスっているわけではなく。
決して、出来が雑だとか、チープだとか、1990年代に逆戻りしたかのようなタイムスリップ感を味わえるとかそういうことが言いたいわけではなく。

……予算……? 予算なのか……?

だが本作のCGは、上記に挙げるような印象が逆に物語を勢いづかせ、CGに頼らなくてもめっちゃ面白いホラーは作れるという事実を視聴者に強く印象づける効果をグンバツに上げているので、なんつーかこう、本当に素晴らしい映画ですね!

●監督
永江二朗氏。主に不穏な感じの題材映画を撮っておられるお方。
大変たいへん面白い映画をありがとうございます。
今Wikiを見たら、2023年公開タイトルに『リゾートバイト』の記載があったんですが、絶対見に行くぅっ!

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大学で民俗学を学ぶ堤春奈(恒松祐里)は、卒業論文で十数年来、ネットで現代版”神隠し”と話題になっている都市伝説「きさらぎ駅」を題材に取り上げることにした。リサーチの結果、「きさらぎ駅」の原点となった書き込みの投稿者『はすみ』ではないかとされ...

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