映画『シュガー・ラッシュ:オンライン』ネタバレ感想。やはりヴァネロペはバグだった。

原題:Ralph Breaks the Internet
2018年の映画
おすすめ度:☆☆☆

【一言説明】
歌は心の水辺で湧き上がる。

シュガー・ラッシュ:オンライン ノウズモア

名作『シュガー・ラッシュ』の正式な続編。前作で幸せを手に入れたラルフとヴァネロペが、今度はインターネットで大暴れ! 予告編で14人ものディズニープリンセスが登場して話題となった本作を、雨降るTSUTAYAにてレンタルしてまいりました。

ラルフの声は名優ジョン・C・ライリーさん。『シカゴ』や『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』でおなじみ。何気に背が高いんですよね、このお方。そしてヴァネロペはサラ・シルバーマンさん。女優&コメディアンとして活躍されているそうな。ヴァネロペはユダヤ人プリンセスだったんですね、知らなかったー。
そして新キャラのシャンクという超カッコよい女性を『ワンダー・ウーマン』のガル・ガドットさんが演じておられます。ハマり役!

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あらすじ

前作から六年。ラルフは親友ヴァネロペと代わり映えしないが幸せな日々を送っていた。
そんなある日、ヴァネロペが『シュガー・ラッシュ』のコースに飽きていることを知ったラルフは、新しいコースを作り彼女を驚かせようとする。ゲーム中に新コースに気付いたヴァネロペは、プレイヤーの意図に反して走り出し、驚いたプレイヤーは誤って操作ハンドルをもぎ取ってしまった。
『シュガー・ラッシュ』は故障扱いとなり、替えのハンドルが高額だと知った店の責任者はゲームの撤去を決定する。
このままでは家がなくなってしまう――。
困ったヴァネロペとラルフは新しく導入されたインターネットの世界で、ハンドルを探すべく再び冒険の旅へと出かけるのだったが……。

※以下ネタバレです。未見の方は注意。

 

感想

のっけから違和感が。
ラルフとヴァネロペ、二人の仲がいいのは当然としても、「六年間毎日ずーーーっと二人で遊んでた」という旨の台詞があり、あれっこの子たちってそんな感じだったけ……と疑問に。
たしかに前作の終わりに友達にはなったけどさ、そんなズッ友みたいなべたべたした関係だっけ? もっとこうお互いを尊重しつつ、個別の生活(ゲーム)も大事にしてる……みたいな感じではなかったっけか。

そして自分のゲーム『シュガー・ラッシュ』にも退屈を感じる……とヴァネロペが言いだし、あらすじの通りに二人はインターネットの世界へ。

このインターネットの描写はめちゃくちゃ面白かったです!!

おおー、なるほど~~と膝を打つ感じ。
広々とした未来都市の様相を成すインターネット界。外部からアクセスする人間=通信パケットは四角いアバターとして表現され、それぞれアクセスしているサイト(AmazonとかGoogleとか)の建物に移動したり、動画の映った画面の前で見入っていたりする様で表現されている。
気に行ったのがポップアップ広告。群衆の間を忙しく動き回り、客引きの要領で「面白い動画あるよ!」「ゲームでお金を稼げるよ!」と宣伝をしまくっている。でもってSPのようなポップアップブロックを擬人化した男性に、「あっち行け」と突き飛ばされて文句を言ったりする。

明日から、ポップアップ広告が許せるような気になってきました。

なっただけかもしれないけど。

あと特筆すべきは検索エンジン『ノウズモア』氏。彼は来る日も来る日もユーザーのために調べ物を繰り返すが、誰からもお礼を言われたことがないと嘆いている。そういえば、検索エンジンには言ったことがなかったなと気づきました。いつも我々のために知りたいことを一生懸命探してくれているのにねえ……そりゃーすまんかった。
一方、iphoneユーザーにおなじみの『Siri』にはお礼が言えます。彼女/彼を利用するとき、心あるユーザーは頼み事の後に「お願い」や「ありがとう」を付け加えているという記事を読み、感銘を受けました。何事にも感謝は大事。世の中には素敵な人がいるものですね!! 筆者も彼らに習って実践しております。「えっ、そんなんできるの」と思ったあなたも今から始めよう。世界は愛でできている!!

さてラルフたち。ネットオークションでハンドルを落札するも、オークションの仕組みを知らなかったせいで、相場が二万円の品物に対して四百万くらい支払う羽目になった二人(ヒイイィィィィ)。オンラインゲーム『スローターレース』のレアアイテムを盗み、それを現実世界のユーザーに売りつけてお金をゲットしよう! と目論むところまでは面白かったです。

けれどその後は冒頭で感じた違和感がむくむくと頭をもたげてきました。
『スローターレース』のボスキャラ・シャンクとカーレースを繰り広げ、その何が起こるかわからない危険な世界にすっかり魅了されてしまったヴァネロペ。無事にハンドルを買えたにも関わらず、ラルフとの待ち合わせ場所にも現れない。

その代りに、『スローター・レース』の世界でシャンク相手に本心を吐露。曰く、同じことしか起きない『シュガー・ラッシュ』の世界には帰りたくない。自分の本当の居場所は『スローター・レース』だと思った。このままここにいたい、と。

この会話を盗み聞きしてしまったラルフはショックを受け、ヴァネロペが『スローター・レース』に幻滅するようにとゲーム内にウィルスを放つ。ところがそのウィルスがゲームを飛び出しインターネット界に出現、ラルフの弱点をコピーしてラルフ・ウィルスをネットにばらまいたため、大騒動が起きる……。

結末として、自分のウィルスを目の当たりにしたラルフはヴァネロペに依存していたことを認め、彼女が新しい道を見つけたことを受け入れる。
ヴァネロペは『スローター・レース』の世界へ。シャンクがゲーム内に彼女のコードを書き加えてくれたことで、正式にゲームのキャラクターに。
ラルフは自分の家へ帰り、他ゲームのキャラクターたちともっと交流を図ろうと新しい日々を送りだした。そして物語は終了。

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……。

うーん……。

なんだろう、この納得いかない感。
話としてはとてもよくできているし、『好奇心旺盛な女の子が退屈な毎日に嫌気がさし、新しい場所で自分の本当の夢と居場所を見つける』ってのは王道とはいえ素敵なテーマだと思う。
加えて『同じ毎日を望む男性が別の夢を見つけた親友と対立するも、最後は相手の選択を受け入れて依存から脱却。新たな自分の居場所を独力で見つけようとする』というラルフサイドの物語も良い(ウィルス・ラルフは恐怖でしかなかったが)。

だけどそれは、ヴァネロペがゲームのキャラクターでなければの話だ

前作は『与えられた役割を受け入れる』話だったが、今作は『与えられた役割からの脱却』がテーマなのだろうか? ルームウェアでくつろぐプリンセスたちはその象徴? 

けれどいくら擬人化したところでヴァネロペはデジタルデータであり、ゲームというルールに縛られたキャラクターであることが前提ではないのか。
擬人化されたキャラクター=人間ではないはずなのだ。
なのにヴァネロペの価値観はまさしく人間のそれであり、行動もまるで人間の女の子そのものだから、違和感を覚える。

そりゃあ六年間も毎日同じコース走って同じアクシデントが起きて、同じ友達とつるんでそんなに広くない街中でぶいぶい言うのが関の山だったら、飽きて町を飛び出したくなるのもわかるよね。普通の子なら六年ももたないだろう。

だけどそれってヴァネロペに限らずみんながそうじゃないのか?
みんな同じように同じような毎日を繰り返している。とくに『シュガー・ラッシュ』の世界には、ヴァネロペと同年代の少年少女がたくさんいるし、ヴァネロペ一人が特に多感というわけでもなさそうだ。
そんな彼らがヴァネロペのように行動しないのは、生身の人間ではなく、あくまでゲームのキャラクターだからだろう。例えばロボット三原則のように、『どんなに綿密にプログラムされても、いつかは同じパターンが出現するであろう』ゲームという宿命に飽きることがないようプログラムされているのではないだろうか。

前作ではそれが大前提だった。
画面の向こうにあるゲームの世界では、キャラクターたちが自分の意思を持ちつつ、ゲーム界の掟に従い行動していると言うメタフィクション的な楽しみが根幹にあった。
ラルフは二十七年も悪役として迫害され続け、ヴァネロペはバグ扱いで仲間に入れてもらえなかった。けれど二人が出会い、大冒険をし、最後は自分の役割に戻って行ったのは、それがゲームキャラクターの宿命だからだ。
人間のように生き生きしているが、人間ではない。彼らには彼らなりのルールがあり、それに従って動いている。
第一作目で製作者と観客の間に共有されたこの前提を、本作のヴァネロペは木っ端微塵に打ち砕いた。それが違和感の原因だ。

「私は十六人いるキャラクターたちの一人にすぎない」

と作中でヴァネロペは言ってのける。『シュガー・ラッシュ』の主役である本人が、だ。そしてその一言が象徴するように、実にあっさり彼女は『スローター・レース』への移籍を完了させる。故郷のみんなとのお別れのシーンもなし。
まあ本人と周囲が納得したならいいか……と思いたいが、14人のプリンセスの前でヴァネロペは
「私もプリンセスなのよ!」
と主張してみせるのだ。そう言わなければつまみ出される寸前だったとはいえ、結局彼女はモブなのかお姫様なのか、本人の中での認識はどうなってるんだろう。そういう一本筋の通らなさが、ヴァネロペを自分勝手な印象に見せてしまい、物語としては失敗しているように思う。

さらに納得いかないのが、自分の本当の居場所=結局はカーレースの世界だということ。オンライン故に毎日新しいことが起こり続け、シュガー・ラッシュよりもスリリングな世界設定。そこに惹かれた。
でもいくらオンラインといえど、所詮はカー・レースというジャンルに限定された世界。いつかは再び飽きが来るのではないか。
そしたらどうする? また別の場所に居場所を求めるのか?
そんな意地悪な疑問が湧いてしまう。

「私はこの世界の姫。だけど自分の居場所を見つけたから出ていくわ」
足かせをかなぐり捨て、親友の同意もつかみ取り、一見自分の足で歩き出したように見えるヴァネロペ。だが後に残すものに何のけじめもつけず、結局シャンクという他者に手助けを受けて居場所を作っている。果たしてそれが『自立』と言えるのか。納得のいく演出で表現してもらいたかったと思うのが本音だ。

ラルフやシャンクがいくら認めようと、映画の世界観でいくと結局ヴァネロペはバグでしかない。意地悪い見方をすれば、ラルフたちは彼女のバグに感染してしまっただけ、とも言える。
ゲーム・キャラクターたちが主役である『シュガー・ラッシュ』の世界で描くべきテーマではなかったように思う。

 

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否定的な感想にはなりましたが映画としては面白かったし、インターネットの世界を表現する手腕は本当に素晴らしかったです。楽しい時間をありがとうございました。

↓『シュガー・ラッシュ』シリーズ。Amazon Videoにて配信中。ヴァネロペの衣裳は日本のKAWAIIをリスペクトしているそうな。