映画『エスター』ネタバレ感想。サイコホラーに名悪役誕生。養女が幼女で超怖い。

原題:Orphan
2009年の映画
おすすめ度:☆☆☆☆

【一言説明】
おしゃまな少女だと思ったか?

十年も前の公開ながら、今なお名作として評判の高いホラー『エスター』。当時見た時は、冒頭の夢のシーンがひたすらヒェッ……という印象でした。
それがNetflixにて配信になっているから、感想書くかと再視聴。
  ↓
やっぱ夢シーン怖ぇや。

主演は我らが『死霊館』のヴェラ・ファーミガさん。タイトル・ロールのエスター役には、本作で一躍有名になったイザベル・ファーマンさん。共演に、『マグニフィセント・セブン』のピーター・サースガード氏が出演されています。

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あらすじ

第三子を死産してしまった経験から、新しく養子を迎えようと決めたケイトジョンのコールマン夫妻。
訪れた孤児院で、彼らは一人の少女と運命的出逢いを果たす。

「あなたの名前は?」
「エスター」
9歳だという少女は、見事な絵を描き、難聴の義妹のために、あっという間に手話まで覚える賢い子どもだった。

「あなたが来てくれてよかった」と微笑むケイト。
だがまさか、その笑みが、あんな形で凍り付くことになろうとは……。

※以下ネタバレ。何も知らずに見た方が、一億倍楽しい映画なのでご注意。

 

 

 

 

 

エスター 映画

感想

才能ある少女だと思って迎えた養女が、実は……という展開な本作。
邦題が『エスター』だし、ジャンルはホラーだし、今回の怪物=エスターで間違いはないはず。
というわけで、エスターを警戒しつつ構えていれば、最初は利発ないい子という印象だったのが、だんだん不穏さ……もとい性格の悪さを増してくる彼女。

うん。これは、邪悪……というより、性格が悪い。
悪魔とか、幽霊とか、そういうやつに憑りつかれている系……というよりは、単に性格が悪い系な印象を受けるのだが、どういうこと?
  ↓
それもそのはず。
エスターの実年齢は、なんと33歳。
ホルモンの異常にて、発育が十歳前後で止まってしまったという彼女。
つまりは少女ではなく、少女の振りをした大人の女性だったのだ。

なるほどね! とめちゃくちゃ腑に落ちました。
それまでは、エスターが何なのかわからなくて、『オーメン』のダミアン=悪魔系なのか、何がしかの悪霊に憑りつかれた系なのか、それともただ単に根限り邪悪を極めた早熟系なのか、どんなオチで来るのかなーと身構えていたのが、『実は大人の女性でした』なら、今までの出来事にものすごく納得できるんです。

・出会ったときから、やたらとジョンに懐いている → 同年代の恋愛対象としてロックオン!
・ケイトに敵意バリバリ → 恋敵だから当然だぞなもし。
・ダニエル=小●垂れが! → 守備範囲外への塩対応。
・ブレンダを突き落とす → 目上への対応がなっとらん!
・シスターを☆☆☆☆ → 隠ぺい。
・マックス → 小道具。

特にケイトが感じていたエスターの扱い辛さについては、女性VS少女ではなく、女性VS女性なのだから、そりゃ当然。しかも彼女の夫を狙っているという時点で、即泥レスに発展しないのがまだマシってな具合。

道理でねー。性格悪いなーと感じるわけですわー。
9歳にして早熟すぎる少女、ではなく。全部わかっててやってる大人、ですものー。
そう考えると、エスターのダニエルやマックスに対する振舞いは、控えめに言っても相当大人げないものではないか……と、ひたすら反省を促したくなります。
アカンじゃろーが、君。33歳が10歳いじめたら。

そんなわけで、本作はホラーというよりは、サイコスリラーと言ったほうがしっくりくる気がします。
計算されつくしたエスターの行動の中に、大人の性格の悪さが滲み出ており、怖さというよりは違和感が勝り、提示された回答にて、すとんと腑に落ちる……という。ミステリみたいな爽快感がありました。

エスターの立場になってみれば、外見はともかく、中身はきちんとした大人の女性なわけで、当然人間の三大欲求も普通に存在し、けれど容姿のせいで望む経験が得られない……という悲劇。
過去には、そういった特殊な性癖を持った人間を相手に満たそうと試みたかもしれませんが、おそらくはエスター自身がそんな奴はごめんだと、嫌悪感を抱いたのではないでしょうか。
……というか、化粧を落とし、フリフリの洋服を脱いでシンプルな服に着替えたエスターなら、なんちゅーか普通にイケると思ったのは多分筆者だけではないと思うのですがどうなんでしょう。
身体は小さいけど、フツーにかわいい女性じゃねーの? っていう。変に厚化粧して、逆に幼さを際立たせる服を着て迫るからアカンのではないのかね。
というか、素顔を隠す=普段も厚化粧なのに、さらにその上から、「あっ、この子、メイクに気合い入れとるな」という印象を抱かせる化粧を施してくるとか、●outubeで動画配信したら、絶対バズるのではないかと思ったんですが。本人は、絵も音楽もめちゃくちゃ得意で、豊かすぎるほど才能豊かキャラですし。

何はともあれ面白かったです。
エスターのオリジンを映画化する企画もあるそうで、楽しみにしております。

人物紹介

●ケイト
主人公。かつてはイェール大でピアノを教えていたが、第三子ジェシカを死産したのをきかっけにアルコール中毒になり、退職を余儀なくされた。
依存からは回復したが、心の傷を癒すため&ジェシカの鎮魂のためにも、新たな子を迎えて幸せにしようと、孤児院からエスターを引き取った。
  ↓
結果ひでー目に遭った。

最初は猫を被っていたエスターに騙され、ジェシカの話を聞いて涙する姿を見て感動したりと、ほだされていたのが、深夜に台所でジョンとアハーン☆しようとしたのを彼女に見られたあたりから、どんどんおかしなことになってくる。
だが素直に考えて、台所はアカン。
スリルがどうこうとかいう問題じゃねーずら。もし降りて来たのがマックスだったらどうすんじゃい。

立て続けに起こる不審な出来事の中心に、必ずエスターがいることで彼女を怪しみだし、なんとか正体を掴もうとするも、ポンチキな夫ジョンは「とってもいい子だよ」と糠に釘。
それでも、以前の孤児院に書類が一切残っていないなどの事実を突きつけるも、「僕の前では反抗的な態度を見せたことはないよ」とのたまってくるので、お前の脳●そに釘を刺してやろうか! ってなる。

ダニエルがICU入院後に心肺停止に陥ったのを見て、エスターのせいだと激昂。病院内で彼女をぶっ叩いたため、鎮静剤を打たれ、緊急収容 → その間にジョンはマックスとエスターを連れて家に帰る → エスターがジョンに迫るも拒否されたため、37564を決意 → 目が覚めたケイトの元に、エスターが以前入院していた精神病院から電話がかかってくる → 「あの子、33歳です」 → 最終対決へとなだれ込む。

慌てて駆け付けた自宅にて、ジョン死亡 → 生き残ったマックスを守るため、温室の天井を突き破ってエスターを直撃 → 倒した……と思ったら、どっこい生きているというホラーあるあるにより、凍った池でのキャットファイト! ファイト! → 「助けてよ、お母さん」という地雷をぶち込んでくるエスター → 会心の一撃。見事エスターを氷の池に沈め、物語は終了となった。
多分というより、確実に死にましたね。『エスター:リベンジ』みたいなタイトルで帰ってくることはない……と思いたい。いやほんと。

演じるヴェラ・ファーミガさんは大層麗しいのですが、本作はファッションがとにかくかわゆく、シンプルながらもさらりとおしゃれという、ベストでマストバイな参考コーデが満載。だと思われる。多分。

しかし、家に電話する前に、警察にかけたらいーんでねーの。そしたらジョンも助かったんでねーの。

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●ジョン
ケイトの夫。一家の大黒柱。
……のわりにアフォ。かなりのアフォ。
住まいを見るに、かなりな高給取りのようだが、中身はポンチキ。
ケイトがどんなに訴えても、エスターのいい子ちゃんぶりに騙され、未亡人に誘われれば、子どもの前にも関わらずにやついた笑みを浮かべ、妻よりもカウンセラーの意見を信じ、口論の末、まさかの十年前の浮気が発覚するなど、お前の脳●そ、糠かよ! な父ちゃん。
なのに、病院から戻った居間のシーンでは、「家族がバラバラになりそうなんだ……」と顔を覆って泣くなど、いやほんとお前の以下略。

ただ、エスターを家族として愛そうとしていたのは確かなようで、ドレスアップして迫られた際には、「君への愛情は子どもに対するもので、男女のそれとは違う」ときっぱり断る。見直したぜ……と一瞬思いかけてしまいがちだが、これは不良がちょっといいことをしただけで株が上がるという、普段ハードルを爆下げしているからこそ起こる現象なので、ごく一般の男性が持つ普通の感性を口にしているだけという事実は念頭に置いていただきたい。

以上のように、中身はちょっとアレだが、イケメンなのは確か。
そのせいでエスターに見初められ、引き取るように仕向けられた挙句、フラれた逆恨みで殺されてしまうという、気の毒な人物。

●ダニエル
ケイトとジョンの実子。エスター(の見た目)より少し年上の少年。
同年代のエスターが突然家庭に入り込んできた挙句、両親の関心を軒並み奪っていくため、最初から彼女には反発していた。
ペンキ銃で遊んでいた際、いたずらで撃った鳩が瀕死に。そこをエスターに見とがめられ、「楽にしてあげなさい」と石を渡されるも拒否。代わりに容赦なく手を下したエスターを見てドン引く結果に。
その後も「あいつはおかしい……」と警戒。エスターの隙をついてマックスに接触。彼女がシスターを殺した証拠がツリーハウスにあると聞かされ、忍び込むも、先回りしていたエスターの手でハウスに火をつけられ、逃げ遅れて落下 → 頭部を強打し頸椎損傷 → ICUに入院していると、口封じにやってきたエスターに枕を押し付けられて心肺停止という目に遭う。
一応、駆け付けた医師たちの手によって、即座に心拍が戻って来たようなので、多分脳の損傷もなく無事に回復すると思われる。
思われるのだが。
エスターひでぇ。
ガラスの十代も、33歳の女性には勝てなかった。

●マックス
ジョンとケイトの実子。ダニエルの実妹。
難聴気味で、補聴器を利用。手話と読唇術を会得しているめんこい少女。
一番の被害者。
言葉で話せないのをいいことに、エスターが実にやりたい放題。
ブレンダを突き落としたのを黙認させ、シスター殺害の際には、車を止めようと道路に突き飛ばし、☆☆☆☆な所業を目前で繰り広げ、挙句に「見ていたお前も共犯だ!」発言。
でもって、ロシアンルーレットに誘うわ、車のサイドブレーキを解除して、マックスを乗せたまま逆走させるわ、兄ちゃんをツリーハウスごと燃やすわ、止めを刺そうとするわ、「話したらおかんを殺す」と言って口止めするわ、お前の血は何色だよ状態。
マックスの心の傷が心配です……と思っていたら、池での最終決戦にて、ついに義姉の足元に銃弾をぶっ放して氷を割る、という反撃を見せた。
グッジョブ!
事件後はさぞや大変でしょうが、ケイトとダニエルの三人で、仲良く暮らしていってほしい。
13年後に池の氷が解けて、冷凍保存されていた殺人鬼が復活とか、そういう展開はやめていただきたいですね。本当にね!

●エスター
本作のタイトル・ロールにして、裏の主役。サイコホラーの歴史に堂々と名前を刻んだ名悪役。
彼女の悪の履歴書としては、
・精神病院脱獄後に引き取られた家庭に放火、一家死亡。
・書類を偽造。「ロシア出身デス」。
・孤児院だかどこかで、いけ好かない少年の顎にハサミが刺さるように誘導。
・同級生のブレンダを、子供向け遊具のてっぺんから突き落として骨折させる。
・自分の経歴を詳しく調べようとしたシスターを、ハンマーで☆☆☆☆マックスを共犯にしたてる。
・ブラックライトでしか見えないペンキを使い、自室の壁に、じかに禍々しい絵を描く → 後でケイトが発見してぎゃーーってなるやつ。鬼か。
カウンセラーをだまくらかす。ついでにジョンもだまくらかす。
・プレゼントと称し、ジェシカのバラを軒並み切り取ってケイトに渡す。鬼や。
・ケイトに折られた風を演出するため、万力で自分の腕の骨を折る。ケイトはポパイか何かかい。
……等々。その後は、サイドブレーキ解除、ツリーハウス放火、ジョンに迫って拒否られヘル化……という展開に。
とにかく悪い行動がてんこもりなわけですが、エスターさん、実はかなり才能豊か……というより、天才の域に達しているような気がしないでもない。
絵やピアノは、わざと下手に見せることができるほどに上手だし、手話もあっという間に覚えてしまう。エストニアを脱出してから、およそ一年程度しか経っていないにも関わらず、英語も達者。
もしも発育しない身体への悩みを克服できていたのなら、人生はいかようにも開けていたのではないか……と想像してしまう。

ただ、ここまで書いてきて、おそらくエスターが育った環境の中には、彼女の見た目を好む悪徳な奴が存在したのではないか……と思えてきた。
そいつのせいで、育つべきエスターの才能が歪んだ方向に行ったのではあるまいか? と思うと、彼女には深く同情したくなる……ような、案外そうでもないような、とにかく続編のオリジン物語を楽しみにしております。

●ブレンダ
ホラー映画にて、学校に一人はいる、やな感じ系の女子。
例によって例のごとく、触るな危険の人物をいじってしまったゆえに、ひでー目に遭う。
なんで君たちは、そうフラグを立てるのが大好きなのかね。

●カウンセラー
ケイトをアルコール依存症から救ったできる女性なのかと思いきや、エスターにころりとだまされてしまった。そこは彼女が二流だったとかいうわけではなく、エスターが一枚も二枚も上手だったということなんでしょう。
だがジョン。おめーは駄目だ。

●シスター
孤児院にて、エスターの手続きをしてくれたシスター。
「あの子はいいこですよ」と太鼓判を押したにも関わらず、次に会った時は「間違いだった……」と死亡フラグ発言をする困った人。
いかに相手より体格が優れていようとも、不意打ちと悪意に負けることがあるといういい見本。

●監督
ジャウム・コレット=セラ氏。スペインのお方。
『ロスト・バケーション』『フライト・ゲーム』など、名作多数。
本作もとても面白かったです。ありがとうございます。

↓エスターちゃんの悪行は、Amazon Videoにて好評配信中。このいたいけな少女……には見えないご面相が怖っ。

↓『ロスト・バケーション』の感想はこちら。非常に面白い映画でしたよ。