映画『フッド:ザ・ビギニング』ネタバレ感想。スタイリッシュを極めた新感覚ロビン・フッドはアクションがすごい!

フッド ザ・ビギニング 映画 アクション

原題:Robin Hood
2018年の映画
おすすめ度:☆☆☆

【一言説明】
隠す気ないやん。

フッド ザ・ビギニング 正体

みんな大好きロビン・フッド。すでに映像化されること十作以上のこのアウトローを、『キングスマン』シリーズのタロン・エジャトン氏が演じるとあって、慌てて劇場へと駆け込んでまいりました。
エジャトン氏といえば、『ロケットマン』での見事な歌唱力が記憶に新しく、生え際を抜いて挑んだというぽっちゃりボディも記憶に新しく、とても同じ人とは思えないのですが、同一人物です。

↓映画『ロケットマン』の感想はこちら。

脇を固めるのは『Ray/レイ』の名優ジェイミー・フォックス氏。ヒロインに『ブリッジ・オブ・スパイ』のイヴ・ヒューソンさん。そして敵役のノッティンガム公には『ローグワン』のベン・メンデルソーン氏が出演されています。

※エンドクレジット後に映像はないよ!

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あらすじ

「マジかよ……」
四年の兵役からようやっと故郷に戻ったロビン・ロクスリーは地面に崩れ落ちた。
たった四年。されど四年。
不在の間に領地は没収され、あれほど居心地のよかった居城は肝試しスポットもかくやと化し、将来を誓った恋人は他人と結婚している始末。
「俺の訃報が届いたのが二年前だから……ざっと一年半?」
ずっと待ってる=一年半だったことに衝撃を受け、やけっぱちになった青年は決心する。
「盗られたものは盗り返す!
かくして昼は領主、夜は盗賊。
『ロビン・フッド』が爆誕したのだった。

※以下ネタバレしております。未見の方注意。

 

 

感想

公開当初、Yahoo!大先生にて「3.16点」をたたき出していた本作。「Oh…」と思いはしたものの、エジャトン氏はかっけーし、ロビン・フッド大好きだし、まあとりあえず見に行くか……と劇場へ。
ところが予想を裏切って、序盤はめっちゃ面白い。弓を主とした戦闘は大迫力でかっちょよいし、物語のテンポも悪くない。これはかなり面白いんじゃないか……と期待したら、英国に帰還してから失速気味に。
なんというか、作り込みが甘いんですね。各々のドラマに深みがない。せっかく最高の役者さんたちをそろえているのに、演出が薄いせいで盛り上がりにイマイチ欠けるんです。
ロビンが義賊になるのも迫害された民のためではなく、マリアンが結婚しちゃって自棄になっているからにしか見えないし、そのせいで後半の演説シーンに身が入らない。もっとこう、恵まれたお坊ちゃんが過酷な環境に落とされ目を覚まし、民のために奮起して立ち上がるぜ的な側面を強調してほしかった。
アラビアで十字軍によって息子を殺され英国に渡って来たリトル・ジョンが、ロビンを義賊に仕立て上げる動機付けも弱く、昼は領主で夜は義賊という設定をやりたいだけの展開にしか見えないのが難点。お金の流れを追うだけなら、領主としてノッティンガム公に信頼されるよう動けばいいだけなので、もうちっと上手い理由付けがあればなあ……と。
序盤は面白かったとはいえ、アラビア軍に捕まってしまった仲間が例えばマリアンの兄だったとか、もっと濃い設定にしておけば彼を見捨てられないことにも説得力があったし、それにロビンの家族がまったく出てこないところも気になる要素。本作のマリアンは平民なので、領主と平民との身分違いの恋に反対があったとか、とてもおいしいはずの展開が一切そぎ落とされている。
息子を兵役に取られたなら、悲しむ両親はいなかったのか……? そもそもロビンが領主だったなら、後継ぎもいないのだし徴兵の対象になんのけ……? とか。
多分本作は売りとする『スタイリッシュ』さを強調するため、余分な部分を限界までそぎ落としてしまったのではないかと思われます。なのに中途半端に虐げられた民の指導者としてのロビンも描こうとするから、どっちつかずの印象に。
重税に苦しんでいるはずの民の衣裳が妙にスタイリッシュなため、お前ら本当に苦労してんのか? と聞きたくなってしまう。彼らの貧困描写がほとんどないので、終盤で反逆ののろしを上げる動悸に共感しにくいんですね。

そのかわり、弓バトルは大迫力で面白かったです。弓ってイマイチ……みたいに思われがちですが、銃のない中世においてはかなりの威力を発揮する強力武器。それを自由自在に操るフッドさんは超かっけー!  間に挟まれるジョンとの特訓シーンもテンポよく、強さに説得力が生まれているのもポイント高し。
お子ちゃまが見たらロビン・フッドごっこをやりたくなる出来栄えではなかろうか。

加えてノッティンガム公の治める領地の景観がめちゃくちゃ壮大でわくわくします。水辺に突き出た陸地の上に作られた城塞都市。そこから橋で渡った山際には、赤々と常に火が燃える鉱山街があるとか、ファンタジー好きでなくともたまらんものがある素晴らしさ。
いいなあ、一回住んでみたいなあと思わせたら勝ちですよ。

というわけで色々と不満はあれど、スタイリッシュ弓アクション映画としては面白かったのも事実です。
弓の特訓が大変だったであろうエジャトン氏が本当にいい仕事をして、カッコよさを余すことなく披露されていらっしゃるので、その雄姿を目に焼き付けるのもよろしいかと。
本作ではシャーウッドの森に入るところで終わっているため、もし続編があるならドラマ部分を濃厚にして帰ってきてほしいですね。楽しみにしております。

人物紹介

●ロビン・ロクスリー
主人公。ロクスリーの領主様。
彼回りはほぼほぼマリアンしか登場せず、家族や使用人が出てこないので育った環境がどうなのかよくわからん。だが本人が言っているとおり、苦労を知らないお坊ちゃんではあった様子。
その割に、戦場に出た途端非常に有能な歴戦のアーチャーみたいな振る舞いをする。四年の間に鍛えられた……のか? 苦労がしのばれる。

敵に捕まった仲間を最後まで見捨てようとしなかったり、捕虜の処刑を命の危機を犯して止めようとしたり、熱いハートを持っている。
一応序盤でそういった部分は示されていたわけだが、英国に帰ってきた途端、マリアンの尻を追っかけるだけのポンチキと化すため、お前もっと民のこととか考えろよ……ってなる。
多分彼なりに貧困に苦しむ人々のことで心を痛めたりしていたような気がするような……なのだが、ジョンが捕まりノッティンガム軍が押し寄せる段にあたり、マリアンに「君を取り返したいだけだったんだ」とのたまうのでやっぱりか。

それでも最後はきちんと人々のために立ち上がり、戦場で力尽きていく彼らを見過ごせず「俺がロビン・フッドだ! お前たちの目的は俺だろう!?」と大衆の面前で頭巾を取ってわが身を差し出すのだが、とっくに正体は知られてたと思うで。

『正体不明の義賊』というのが売りなのに、それがまあ面白いように素顔がポロリしまくってたもの。というか、顔を隠すのに布一枚を鼻の上から巻いただけとか、隠す気あんのかよとツッコみたい。
弓でバカスカ戦うのでしょう? いっぱい動きまくるのでしょう? ポロるに決まっとるだろうが。場合によってはフードまでポロっていたので「Oh…」ってなる。
「これを巻け」「この布は、あんたの息子の布じゃ……」と感動的なやり取りがあったけど、そうじゃない実用性を大事にしよう。

↑まさかの同一人物なんすよ。役者さんってゴイス!

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●リトル・ジョン
アラビアでロビンと敵対関係にあった兵士。戦闘の最中に左手を切り落とされてしまい、捕虜となる。
だが上層部の命令により数名の捕虜処刑が命じられ、彼の息子が連れてこられてしまう。命乞いのために自軍の情報を漏らそうとするも、既知の情報だったため願いはかなわなかった。
彼のすごいところは単なる復讐心に燃えず、問題を根本から解決しようとする点にある。英国に渡った後は、息子を助けようとしてくれたロビンと手を組み、敵であるノッティンガム公が徴収する戦争税の行方を調べようとする。
税金が不正に使われていればそれを暴き、結果無益な戦争が終わるというアラビアにとっても利となる結果が訪れるわけで、どこぞの女性の尻ばかり追いかけている青年とは見ている方向が違うなと感心しきり。

個人的にはジェイミー・フォックス氏のジョンはビジュアルもかっちょよいし、左手を失わずに英国兵相手に活躍してほしかったところ。でもそうなると強さでロビンを上回っちゃうので仕方ないのか。

最後は息子を侮辱したノッティンガム公を自らの手で倒し、有言実行を果たした。あっぱれ。

●マリアン
ロビンの恋人。めちゃんこかわゆい女子。初登場時は顔を隠していたが、胸の谷間が隠しきれておらずロビンはイチコロだった。
映画で「あなたの帰りを待っているわ」と女性が言ったら、五割は待っているが残り五割は違うという現象の悪い方に転んだ例。
なんかなー。なんかなー。結婚適齢期だったのか? 女性の四年が長いということは理解できるが、徴兵される前は多分二十歳前の設定だったと思うので、そうすると四年経っても二十代前半のはずだが、昔だから結婚早いしそうなっちゃったんすかね。
多分ロビンが兵役で土地を離れた時点で前から彼女に目をつけて来た奴らがモーションをかけてきて、二年後ロビン死んだとなった後、足しげく慰めに通って一年半くらい経って結婚……の流れだろうか。
『キャスト・アウェイ』でも四年経ったら恋人は結婚してたしなあ……。
動揺するロビンに対し、マリアンのほうは再会してもどっしり落ち着いた態度で接してくるところがまた辛い。さすが女性はそういう部分が強かじゃのう。

そんな彼女は重税ばかり課す領主に不満を持っており、民のために立ち上がろうとする女傑。夫のウィルはできた奴かと思ったら終盤で小物と化したため、結局ロビンとの元サヤへと収まる。
何はともあれ無事でよかった。
ロビンの変装を一発で見破ったとき、「なんでわかった?」「わからないと思ったの?」と答えたが、ごもっとも。

●ノッティンガム公
初登場時の悪役っぽさがパない代官。最早全身全霊で「私悪役ですよー」と言っているところが逆に好感。
だがその正体は教会からさっさと税を集めろとせっつかれている中間管理職。胃が痛くなりそうなポジションに加え、どうやら孤児院出身で教会の連中に虐待に近い指導を受けていた過去があるのでまことに不憫。
同情しそうになるが、ジョンに対し「息子は最期の瞬間まで泣き喚いたそうじゃないか。お前らの信仰なんてそんなもんだ」と煽ってくるので普通に性格は悪い模様。それが仇となり、ジョンの手によって葬られた。

代官だけあり彼のお召し物はとてもお高そうなのだが、後任に決まったウィルがまったく同じ服装で公衆の場に登場したため、なんと制服であったことが判明する。
たまたまサイズが合っちゃったとかなの? どうなの?

そして領地を没収され、兵役帰りのロビンがやたらに羽振りがいいのに何の疑問も抱かないとかどうなんだ。
そのお金どこから出てるの? → 最近よく盗賊が出るなあ → もしやロクスリー=盗賊……?
とならないところが親切な性格。最後のロビンの正体が判明したときも、「お前がフッドだったのか」的なリアクションをちゃんと取ってくれるのでよくできた悪役さんだった。

●タック修道士
人の好さそうな修道士。中盤あたりまでノッティンガム公側に位置し、枢機卿とかそっちの指示を聞いたりしているが、性悪集団の中で明らかに浮いているのでまあそういうことよねと思ったらそういうことだった。
本人的にはもちっとスパイ行動をしたかったようだが、枢機卿にお目通りしたかったロビンに巻き込まれ、教会追放の目に遭ってしまう。
でもその後、「あの時は悪かった」「いいよ」のやり取りで許してしまうのでほんといい人。

●ウィル
マリアンの夫。虐げられる民衆側の指導者として政治的立場の向上を狙っており、いざ鉱山に軍が迫る段になると「政治生命が断たれたら困る」と叫び、小物臭を露わにする。
そのため最終的にマリアンにフラれた。
だがその後ノッティンガム代官の後釜に座り、まさかの敵となった模様。
前代官とお揃いの服を着ているが、これはこれで似合っているので元々素質があった……とかそういう話ではないですね。

ロビンに頼まれて民衆を先導した結果、顔の左側に大やけどを負った挙句、足元で妻が別の男とイチャコラしてやがったので、闇落ちもまあ無理はないYO。

●教会の方々
本作の黒幕。
十字軍には英国王も参加しているはずなので、戦争を長引かせればその間に国を牛耳れる、ひゃほー! 的な算段をしていた模様。
揃いも揃って性格の悪そうな面子ばかりで逆に楽しくなる。
ノッティンガム公は倒されたが後釜がすぐに据えられるし、教会には打撃を与えられていないので戦いは長引くようだ。

●ギスボーン
徴兵時代にロビンが属していた隊の隊長。
ジョンの息子を助けるために刃向かったロビンに傷を負わせ、国に戻るきっかけを作った。
見るからに悪そうな顔をしてるし、ジョンの息子を処刑した張本人だし……で死亡フラグがうなぎのぼりかと思いきや、過去にロビンの命を救ったためにとどめを刺されず生き残った。
続編があったら出てくる。多分。

●監督
オットー・バサースト氏。TVシリーズで活躍されていらっしゃる方だそうです。
華麗な弓バトルを楽しませていただきました。続編も期待しております。ありがとうございます。

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