原題:Hellboy
2019年の映画
おすすめ度:☆☆☆
グロテスク苦手な人が顔をしかめる度:☆☆☆☆☆
※本作はR15指定です。よい子は見てはいけません。
【一言説明】
とりあえず縫っておけ。
世界に名だたるマイク・ミニョーラ氏の傑作『ヘルボーイ』の映画がリブートされた!
かく言う筆者も原作本は数冊手元に置いてありまして、ギレルモ・デル・トロ氏版は二作品とも大好きです。特に二作目『ヘルボーイ:ゴールデン・アーミー』は面白かったですねえ。主演のロン・パールマン氏とヒロインのセルマ・ブレアさんのコンビが大好きでした。続編が作られる予定だっただけに、中止されたのが悲しくて仕方がない……。
からのリブート! ヒャッハー!!
期待を胸に、爆音上映にて鑑賞してまいりました。
新たなるヘルボーイを演じるのは『スーサイド・スクワッド』のデヴィッド・ハーパー氏。そして対する血の女王ニムエ役には『バイオハザード』シリーズでおなじみのミラ・ジョヴォビッチさんが出演されています。
※本作はエンドクレジットの途中に映像が挟まれますが、最後にはないのでスタッフロールが流れ出したら席を立ってもOKですよ。
[adchord]あらすじ
かつて世界は血の女王ニムエの手によって魔物に支配されようとしていた。
だがアーサー王が彼女を不意打ちにしたことにより危機を脱出。聖剣エクスカリバーによって分断したニムエの身体は英国の各地に隠され、封印されたまま長い年月が過ぎ去った。そして現代。
超常現象調査防衛局(B.R.P.D.)の捜査員として活躍するヘルボーイの元に、巨人退治の依頼が舞い込む。
それは世界の命運をかけた戦いの始まりだった……。
※以下ネタバレ。未見の方注意。本作はスプラッター映画であり、気分が悪くなるような表現が含まれますので苦手な方は記事を読まないで下さい。
感想
本国では評判がよろしくなかったという本作。なんでかしらん、と思いつつ見てみると、展開は若干大味だがとんとんとテンポよく進むために退屈するようなことはない。
というか面白い。
じゃあなんで? という答えが、終盤になってわかりました。
グロさがひどい……。
もちろん序盤から残虐さのオンパレードだったのですが、「ちょっとなあ、グロいなあ……」と眉をひそめはすれどまあなんとか耐えてはいました。
けれどニムエが完全復活し、英国はロンドンに地獄から悪魔が召喚されてからがとにかくひどい。
悪魔たちがばったばったと街中にいる人々(主にスーツ姿のリーマン)を殺害していくのですが、この殺害方法が生理的嫌悪感を煽るようなむごたらしい内容なので、正直ここでドン引きしました。
これってヒーロー映画ですよね? 子供たちがワクワクしながら頁を繰るアメコミが原作の映画では?
じゃあだめだろ、この絵面。
原作はこんなにグロくない。というか、グロテスクにならないスタイリッシュさを持っている。
たしかに悪魔の話だし、あちらさんは人知が及ばないような残虐性を持ってるんでしょう。だからこそ、悪魔なのに正義のヒーローというヘルボーイの存在が際立つわけですが。
それにしたってひどい……。
ギレルモ・デル・トロ監督版は、異形の存在にも監督なりのこだわりがあった。美しさがあった。そして肝心かなめの人が死ぬシーンでも、大事なところは映さなかった。
なのに今回はそこが主題とばかりにばっちりしっかり映しまくる。それが好きという人には堪えられない面白さなんでしょうが、一般の観客にはかなり辛いものがありました。
そしてそのグロテスクさ故に、アクションバトルの爽快さも八割がた失われてしまっているような結果に。
巨人を退治するときも自分より巨大な存在をいかにして退治するか、ではなく。最後の一撃を放った後に、それがどのような致命傷を巨人に与えたのかという表現をすることに監督の興味はあるのか、やたらエグい絵面ばかりがクローズアップされ、「ああ、あんなにでっかい相手にもヘルボーイは勝つんだなあ。強いなあ」という普通なら抱くべき感想がどこかに飛んで行ってしまう。
ヒーロー映画としてこれはいかがなものか。まさに「悪かったな。俺がヒーローで」に賛同するほかない有様。
ただ、最後に出て来る悪魔たちのデザインはカッコよかったです。まさに終末の魔物って感じで。
個人的には中央に口があって、なんかメラメラ燃えて腕が放射状にうにょうにょしてるやつがかっけーってなりました。
そして血の女王ことジョヴォビッチさんがとても美しかった……。
あんな凄みのある美女に「こっちゃ来い」って言われたら、ふらふらついていきたくなるんですが、そこはよくぞ耐えたぞヘルボーイ。さすがは主役。
というわけで面白くはあるんだけど、決しておすすめはできない映画でした。
もしカップルで見に行こうとか思っている人がいたら気を付けてや!
人物紹介
●ヘルボーイ
心優しき正義の悪魔。全身真っ赤で角と尻尾が生えている。が、角は折れており、伸びないように定期的に剃刀で削っている。爪のお手入れじゃあるまいし……。
その正体は怪僧ラスプーチンによってナチス時代に魔界から呼び出された人と悪魔のあいのこ。敗戦濃厚なドイツは彼を使って何かする予定だったが、あいにくそこに伝説のナチスハンター、ロブスター・ジョンソンが現れたため、野望はついえた。
その後は養父となるブルッテンホルム教授に引き取られ、彼の元で愛情と正義感とを教えられ、まっとうに育つ。ちなみに善側に完全転向したのはパンケーキを食べたから。おいしいよね、パンケーキ。
本名はアヌン・ウン・ラーマ。『すべてを破壊するもの』という意味で、予言された終末は彼の右手によってもたらされる予定。
本作ではそこかしこでその名をささやかれ、味方にも裏切られ、なんで悪魔の俺が同胞と戦わねばならんのじゃ、とパパを責めたり、人間臭く悩む姿が描かれる。
強面だが父親思いで弱者の味方。そのため好感度は高いが、秘密を知っている人たちからすれば彼がいるせいで世界が滅ぶ予定なので、暗殺したくなる気持ちもわかる。現にニムエにそそのかされ、悪魔側につくべきか迷ったりもしているので、存在を危険視するのももっともだ。
終盤で聖剣エクスカリバーを手にしたことにより、彼の中の本能が覚醒。魔物の王として軍勢を率い、天に戦いを挑みかけてしまう。
だが霊体となった父親の説得により正気に戻り、ニムエを地獄に送り返して事なきを得た。
破壊の獣として生まれたはずが、いざ人間界に送りだしたらそっちの仲間とよろしくやり始めてしまったので、悪魔側にしてみたらそりゃあ話が違うってなりますよね。
魔界でもはみ出し者。人間界でもはみ出し者。バーバ・ヤーガを含めて敵は多い。
けれど本人は飄々と、タフさを売りに世界を股にかけての大活躍。アメコミ界でも一、二を争う名キャラだと思います。
もしも続編があるなら……次はグロを控えめで頼んます……!
●ニムエ
血の女王として恐れられる魔女。ぶっちゃけ最高に美人。
だが「彼女の豊かな胸に~」なんつー台詞があるが、そんなことをしたらあっという間にあの世行きという恐ろしさも秘めている。そこがたまらん。
特技は握りつぶしらしく、自分に歯向かった魔女と邪魔になった家来とを見えないお手てでにぎにぎした。エグい。
アーサー王が降伏と偽って面会を求め、彼女が油断した隙にエクスカリバーでバラバラにされた。だがそれでも死なず、身体はそれぞれ箱に入れられて英国各地に隠された。
何もない箱の中で千年近く独りぼっちとか、何をして暇をつぶしていたのか定かではない。脳内オセロとかでしょうか。
身体のパーツがすべてそろった後は華々しく復活するのかと思いきや、魔女の手によって針と糸で縫われるというまさかの物理的手段。超痛そう。
血の女王というだけあり、血を取り戻さなくては完全復活とはならなかった模様。かつてアーサー王と対峙した地に血液がしみ込んでいたため、そこに向かう。だが彼女を止めるためにやって来るのがヘルボーイたち三人だけってB.R.P.D.は世界の破滅を防ぐ気はあるんすかね。
彼女の目的はヘルボーイを自分たちの王=アヌン・ウン・ラーマとして覚醒させること。
見事エクスカリバーを手に取らせ、覚醒を促したニムエだったが、アリスの活躍によって養父ブルッテンホルム教授の霊体が出現。彼の説得で自我を取り戻したヘルボーイの手により首を切られ、そのまま地獄の底へと落ちて行った。
●アリス・モナハン
かつてチェンジリングによって妖精にさらわれたところをヘルボーイによって助けられた女の子。
霊媒能力があり、大量に殺人があって間もない場所に行くと極度の頭痛に悩まされる。
「見ないほうがいいわよ」と彼女自身が言った霊媒中の姿については、
触れた遺体の霊を口からエクトプラズム調にして出す
ので、本当に見ないほうがよかった。かわいい子に何をさせるんじゃい。
そして彼女自身は弱いのかと思いきや、魔物相手にパンチをかますと幽体と肉体とを切り離し成仏させられることが判明。
ダイミョウ「そんな技どこで覚えた?」
アリス「妖精界に行ってからできるようになったの」
だがアリスが妖精界に行ったのは生後数か月の時なので、その前後の違いが分かるほど記憶があったかどうかはなはだ疑問なのだが細けぇことはいいんだよ。
B.R.P.D.には山ほど隊員がいたはずなのだが、結局ニムエの元に乗り込むのは彼女を含めヘルボーイ・ダイミョウ少佐の三人だけ。
層が……薄っ……。
●ダイミョウ少佐
B.R.P.D.の少佐。『LOST』『HAWAII FIVE-0』でおなじみダニエル・デイ・キム氏が演じる。
規則に忠実な真面目君であり、当初はヘルボーイを敵視していたが、まあなんやかやあって最終的に彼を認めた。
作中で時折何かの禁断症状に襲われるシーンがあり、なんじゃいインシュリン切れかと思っていたら、なんと過去にジャガーの怪物と戦った際に爪でひっかかれ、自身も同じジャガー人間と化していたことが判明する。
ニムエとの決戦でその姿を披露してくれるのだが、ズボンが破れたはずなのに変身が解けた後は復元されているという少年漫画のお約束のような展開に。
なんだよ、ダイミョウさんマッパかよ、と思って戦闘を見ていただけに納得がいきません。もちろんマッパになられても困るっちゃ困るんですが、なんでや。
その後はアリスとともにヘルボーイの愉快な仲間枠に収まった模様。
そして韓国系なのに名前がダイミョウというのが解せないっす。
●ブルッテンホルム教授
ヘルボーイの養父。B.R.P.D.の偉い人。
数十年前にヘルボーイが召喚された場所に居合わせ、彼を保護。人類の味方となる好漢に育て上げる。
霊媒師に不老の身にされたため、実際は超高齢のはずだがおじさんのまま容姿が変わらない。
復活したニムエがB.R.P.D.本部を襲った際に拉致されてしまう。
その後は最終決戦の場において、ヘルボーイの目の前で殺害されてしまうが、前述の通り霊体となって世界を守ることに貢献する。
死してなお息子の拠り所となる素敵なパパんだった。
●ロブスター・ジョンソン
1900年代前半に活躍した伝説のヒーロー。倒した相手の額にカニの手みたいな刻印を押すという、なんとも容赦のない行動が特徴。
すでに故人だが、ヘルボーイ誕生の場には居合わせており、エンドクレジットの中盤で邂逅を果たす。
好々爺な姿が最高に決まってるイカしたお方。ヘルボーイのみならず筆者もサインがほしいけど、カニはやだ。
●レディ・ハットン
B.R.P.D.ロンドン支部にいる盲目の霊媒師。教授と同様不老の身。
ヘルボーイを敵視していたようで、巨人狩りと偽って彼をおびき出し、暗殺しようとしていた。
ニムエの最後のパーツが支部内にあったため、それを取りに来たグルアガッハの手で殺されてしまう。
アリスによってエクトプラズム化した。美人なのにもったいない……。
●グルアガッハ
豚しゃんの魔物。ヘルボーイを逆恨みしてニムエを復活させたりする超粘着質君。
箱の封印を解くには聖なる言葉を唱えなくてはならないのだが、魔物の君がどうやって口にすんの……と思ったら、壮絶にエグい手段をとってきやがった。
このあたりで、ああこの映画はこういう方向がずっと続くんだな……と覚悟したけどお前まさか七つ全部その手段で切り抜けてきたのかぬぎゃーー。
最後は結局利用された形でニムエ自身に始末されてしまうのだが、哀れと言うには所業がひどすぎたのでしゃーない。
●バーバ・ヤーガ
かつてヘルボーイに目を射抜かれ、異次元追放の身となったことをこちらも根深く恨んでいる。
あちこちで恨みを買いまくりだな。
ニムエの情報を教える代わりにお前の目を寄越せという。その際、ヘルボーイの目の色を●●に例えるという異次元のセンスを発揮。さすが異次元住まいは違いますね。
そして誓約のキスと称して、映画史上最高に汚いキスシーンを披露してくれる。
なのにヘルボーイは彼女の前では決して口をぬぐったりしないのだ。まさに漢の中の漢。
●悪魔たち
ニムエが呼び起こした地獄の使者たち。計五体くらいいたような気がする。
多分召喚した場所がロンドンのシティだったんですかね。彼らの犠牲となったのがことごとくスーツを着たリーマンばかりなので、監督はリーマンになんか恨みでもあんのけと思ってしまった。
終末ヒャッハー! とばかりに喜々として暴れまわっていたが、ニムエが倒されたことで扉が閉じ、いやいやしながら地獄に戻されていった。二度と来んなよー。
●監督
ニール・マーシャル氏。『ディセント』とか『ドゥームズデイ』とかを撮っていらっしゃるお方。
最近ゲーム・オブ・スローンズを見始めたのですが、彼が監督したエピソードは心して見なくてはと思いました。
面白かったのですが、次回作はグロは控えめに頼みます……! ありがとうございます。
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↓マイク・ミニョーラ氏の絵は最高っす!