映画『ねじれた家』ネタバレ感想。一族の性格の悪さにびっくりする、古典派ミステリは犯人がヒェッ。

原題:Crooked House
2017年の映画
おすすめ度:☆☆☆

【一言説明】
じいちゃん死んだ。

ねじれた家 映画

全世界で聖書レベルの読者がいるという、アガサ・クリスティ女史の作品『ねじれた家』が初の映画化。
遠い昔に読んだ覚えはあれど、展開や犯人は、はるか彼方の記憶の底……というミステリあるあるに救われ、ほぼ初見と同じ感覚で物語を見ることができました。

主演は『セブン・シスターズ』の名優グレン・クローズさん。共演に、『イエスマン “YES”は人生のパスワード』で『YES』の力を印象的に謳っていたテレンス・スタンプ氏と、名優ジェレミー・アイアンズ氏の息子マックス・アイアンズ氏。それに我らが『ジョニー・イングリッシュ 気休めの報酬』のジリアン・アンダーソンさんと、『SHERLOCK』のアマンダ・アビントンさんという豪華キャストです。

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あらすじ

大富豪のアリスタイド・レオニデスが亡くなった。
ミステリ界の掟として、大富豪が死ぬ=遺産目的の殺害=容疑者はその家族と執事がお約束。

例によって例のごとく、毒殺だったアリスタイド。
彼の孫娘であり、元カノでもあるソフィアから、依頼を受けた探偵のチャールズ君は、屋敷に乗り込み、一族の捜査を開始するのだったが……。

みんな性格悪すぎて、泣きそうです、父さん。

※以下ネタバレ。犯人と結末まで言及しています。未見の方は注意。

 

 

 

 

感想

緩と急のうち、急がまるっと抜け落ちているため、終盤近くまでは少しだれる印象があった本作。
展開は、古典も古典。
大富豪が死ぬ → 依頼を受けた探偵が屋敷に乗り込む → 関係者一人一人を事情聴取 → 第二の殺人が起きる、といった具合。
けれど、これが。
性格悪いんだな!
原題の『ねじれた家』は、クリスティ女史の好む『マザー・グース』の童謡『ねじれた男がおりました』に由来。ねじれた男がねじれた家で、みんな仲良く暮らしていた……というのが歌詞。
ねじれ=crookedには、『ひねくれた』という意味があるそうで。だから『ねじれた家』=『ひねくれ者が暮らす家』という解釈ができそう……なんですが。
『ねじれ』というよりは、単に直角に曲がる=性格が悪いだけなんじゃないかな!
態度が悪いのは探偵相手だけかと思いきや、中盤の夕食シーンの居心地の悪さときたら……仲悪いな、お前ら! と逆に感心してしまうレベル。

そんな彼らが何故一緒に暮らしているかというと、支配力の強いアリスタイドの影響があったから。
たしか原作では、アリスタイド氏は一見問題のある性格に見えて、非常に頭のよい人物。ひねくれた一族それぞれの性質を的確に見抜き、あえて手元に置くことで、彼らがバカをやらないようコントロールしていた……ということだったような。
たしかに、長男夫妻も次男夫妻も、それぞれ問題児ばかりで、上から押さえつけていたほうが、結果オーライな印象。
そしてアリスタイドに一番似ている=優秀なのが孫娘のソフィアなため、遺言では彼女一人に遺産が残される=「お前が一族の手綱を取るんだよ」と将来を任される結果となるわけです。

残念なのは、本編中にアリスタイド氏の登場がなかったこと。
見ている方は、遺された家族の言葉から、彼がどんな人物だったのかを推察せざるを得ないのですが、各個人の性格のひねくれっぷりばかりが目につき、アリスタイド御大の魅力をまったく伝えきれてない。ただの身勝手なじいちゃん、みたいになってしまっている。
唯一、チャールズの味方となりそうなソフィアでさえ、ブレンダへの嫉妬からか彼に対してあたりが強く、かつあくまで容疑者の一人(しかも中々に有力な)として描かれているため、感情移入がし辛く。

その中で、グレン・クローズさん演じる大伯母イーディスはさすがの魅力。庭にて、猟銃をモグラにぶっ放す、豪放磊落なキャラクターは気持ちがいいの一言。
けれど役者の格的に、一番怪しいのは彼女。
話の筋をすっかり忘れていた自分としては、一番怪しい人が犯人……と見せかけて、実はそうじゃない展開が来る……かと思いきや、他の人が犯人と言われても力不足感が否めないし、やはりイーディス伯母が犯人なんじゃろか……と思っていました。

ところがダヨ!

物語も終盤。それまで行方不明だった『急』が、ここに来て突然前面に走り出て来る。
でもって、『グレン・クローズさんが犯人』というインパクトを軽々と超える真犯人を提示してくれるのだ。
そこからはもう、ノンストップ、ノーブレーキ!
怒涛の結末に向かってアクセルべた踏みで突っ走り、あっという間に『The End』の文字が。

そこで……そこで終わるんかーい! ってなったんですが、正直、終盤はかなり面白かったです。
グレン・クローズさんの配役は神!
彼女と合わせて、やはりアガサ・クリスティ女史は最高なのでしたよ。

人物紹介

●チャールズ・ヘイワード
主人公。元恋人のソフィアに請われ、レオニデス一族の屋敷にやって来た探偵。
曲者ぞろいの親族に揃いも揃って塩対応されるも、一向にめげる様子がない。
いくら依頼されたとはいえ、他人の家のどんな場所にも、お構いなしにずかずか入っていく、まさにアイアンズ=Irons=鋼マインド有している模様。ソフィア父に、「ここお前ん家かよ」的感想を言わせるレベル。
探偵はそのくらい図々しくなくてはなのだ。

そんなチャールズ君だが、やはりポアロやミス・マープルのような名探偵と並ぶにはまだまだ若造なのか、謎解きをするには時間が足りなかった模様。
イーディスに先を越され、彼女の残した手がかりを見て、ようやく真相へとたどり着く。
父親は警察の要職についていたようだが、何がしかの事件に巻き込まれて死んだそうな。そっちの内容も気になる。

●アリスタイド・レオニデス
複数の会社を経営する大富豪。インシュリンの注射に混入されていた毒物によって死亡した。
当初弁護士が保管していた遺言書は、なんと無署名。おそらくは親族それぞれにうま味のある内容だったと思われるだけに、じいちゃんてば、やることえげつなっ。
感想にも書いた通り、実際には『ミス・マープル』のラフィール氏のように、一癖ありつつも魅力的な人物だったようなのだが、登場は邸内に飾られた肖像画のみとなっているのが残念。
けれど演出的に、すべてお見通しだったであろうことが示唆されている。
犯人の気質についても気づいていたはず。もしかすると、殺される予感もしていたかもですが、原作はその辺がうろ覚え。

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●ソフィア・レオニデス
アリスタイドの孫娘。チャールズの元恋人。
義祖母のブレンダに嫉妬したり、まだ彼に心があるように見えて、抱擁は拒んだりと、煮え切らない態度を取る。曰く、「あなたを家族から遠ざけるために別れた」とのことだが、あの面子じゃしゃーないわ。
一応はヒロインなのだが、真の遺言状にて全遺産を相続したり、祖父の回顧録を燃やしたりと、もしかすると犯人……な可能性も無きにしも非ずなので、一晩一つ屋根の下にいても進展はなかった。
原作ではその後復縁すんじゃろなーという流れだった……はずだが、本作はとんでもねーところでぶつっと終わるため、その後二人がどうなったかは定かではない。
演じるステファニー・マティーニさんがめちゃんこかわゆく、どうか犯人ではありませんよーに! と始終祈っていたことを告白いたします。

●イーディス・デ・ハヴィランド
アリスタイドの前妻の姉。ソフィアの大伯母にあたる、カラッとした性格の女性。
アリスタイド氏とは、やいのやいの言いながらも気が合う同士だったようで、そうでもなければ一緒には暮らすまい……という、豊かな関係性が見え隠れする。

レオニデス家で銃声が鳴り響いたら、モグラ撃ちの合図。モグラって銃で退治するんですね。知らんかった。

役者としての格と存在感故に、犯人候補の大本命かと思われていたが、そんなことはなかった。
おそらくはチャールズよりも先に犯人を疑っており、本人の部屋で証拠となるノートを読んで確信したのだろう。腫瘍により余命数か月との宣告を受けたこともあり、犯人とその家族を大切に思うがゆえに、最後は自分の手で始末をつけた。
ラスト数分の決死行は、涙を禁じ得ない名演技。
でも数十年前=車の性能が大したことない=ゆっくりめのカーチェイスだったため、崖を目指して飛び込んでいった際も、何回転かして底にずぞぞーって転がる程度かな……と高をくくっていたら、存外立派な爆炎が上がってびっくりしました。あれは助からないですね……。
ソフィアの号泣が悲しいラストでした。

●フィリップとマグダ
長男夫妻。ソフィアの両親。売れない劇作家と女優……という建前の、その実はお家でごろごろしているニートな二人。フィリップに至っては、「生きるために働くなんて冗談じゃない」というたいがいな台詞を吐く。
そりゃー父ちゃんも遺産を残すまいよ。
でもマグダには、どこかかわいらしさを感じる不思議な魅力があると思います。
ソフィアなら、彼らの要求をばっさり切りつつも、素敵なゴロゴロライフを実現してくれそうです。

●ロジャーとクレメンシー
次男夫妻。
支配力の強い義父に辟易していたクレメンシーは、彼の死をきっかけに屋敷を出ようとする。乳母が死のうとおかまいなしに。少しは追悼の意を表したらどうなんじゃい。
夫のロジャーに至っては、何故か遺言ショックの憂さ晴らしに、母の肖像画を蹴りつけるという凶行に出る。あれが何でなのかさっぱりわからないぜ! なんか恨みでもあったんかいな。
フィリップ組共々、性格はねじ曲がっているが、犯行に至る度胸も頭脳もなさそうなので、彼らを疑う人はまずいまいと思われます。さすがにミスリードされなかったで!

●ユースティス
ソフィアの弟。病気の影響で、若干足が不自由な少年。
年頃らしく、ロックが好きで口が悪く、チャールズにも生意気な態度を取る。
が、チャールズはチャールズで、彼の大事なレコードを、何故か足元にバァンと落としたりするので、お相子か。
そもそも「入っていいよ」と言ってないのに入ってくるし、そりゃ態度も悪くなりますよ。
遺言発表の場での態度は男前。なんのかんの言っても、やはりお姉ちゃんは大切らしい。なふふん。

●乳母
レオニデス家の乳母。ソフィアとユースティスを育て、現在はジョセフィンにかかりきり。気難しい一族の中にあって、生意気なジョセフィンに手を焼きつつも、よく世話をしている。

……と思ったら、なんと二番目の被害者となってしまった。
ジョセフィンが飲むはずだったココアを飲んで死亡。
彼女を殺して何の利が……? と首をひねっていると、犯人の動機に打ち震える結果となる。

●ジョセフィン
ソフィアとユースティスの妹。事件の犯人。
若干12歳ながら、中身は無邪気かつ冷酷な殺人鬼。
彼女の動機は実に子供らしく安直で、バレエを禁止したからといって祖父を殺し、嫌いだからといって乳母を殺す。
サイコパス……と言うよりは、善悪の観念が欠落しているのだろうか。それとも、問題児ばかりの一族間で暮らした弊害なのか。
まだ12歳という年齢もあり、更生の余地はあったのかとも思うが、個人的には、ねじれた家=ねじれた家系の末端として生まれたのがジョセフィン。つまりは、怪物だったと考えるのがしっくりくる。
おそらく、このまま彼女を野放しにしていれば、さらなる犠牲者が増えただろうし、多分両親にも手をかけただろう。
真相を知ったイーディスが拉致した車内では、年相応に怯えた表情を見せていたが、彼女の異常性は、普通の少女の顔と殺人者の顔とが、まったく矛盾せずに同居していることにあるのだろう。
おそらくは成長しても道徳心は芽生えないし、知恵をつけてさらに狡猾な犯罪を重ねるだろう。
そう考えると、後日談のない、いささか唐突にも思える終幕は、実にふさわしい最後だったと思われる。

●タヴァナー警部
チャールズの父と親交のあった警部。
彼に配慮するように見せかけて、ひそかに密偵を送ったりと、なかなか抜け目がない。
乳母殺害にあたり、屋敷の出入りを規制するも、配置された警官はまんまとイーディスとジョセフィンという、老女と子どもの組み合わせを通してしまう。
普通は誰も疑わないだろうから、仕方ないことではあるが、その後は爆発した車をなんと説明したのだろうか。

●監督
ジョン=パケ・プランネール氏。
これぞ古典ミステリという作品をありがとうございます。

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↓原作もあるよ! 読んだはずが、すっかり内容を忘れていたよ!