映画『キャッツ』ネタバレ感想。猫ではない何かが歌い踊る不可思議空間だが、慣れれば普通のミュージカル。

キャッツ 映画 ミュージカル

原題:Cats
2019年の映画
おすすめ度:☆☆☆

【一言説明】
不気味の谷に耐えられるか否かで賛否両論。

五段階評価でいうと、玉ねぎ

……という伝説の評価を生んだミュージカル『キャッツ』。
日本よりも先に公開された欧米での評判は散々で、やれポルノだの、やれ猫史上最悪の出来事だの、逆に見に行くしかないじゃないかという批評が飛び交った本作。
すでに予告編にて「なんじゃこりゃ」な怖いもの見たさ感がばりばりだったんですが、結局劇場に足を運んでしまいました。
まさに『好奇心は猫を殺す』を地で行く映画ってことですね!

出演者はジュディ・デンチさん、イアン・マッケラン氏、ジェニファー・ハドソンさん、イドリス・エルバ氏……などなど、豪華すぎる人々が名を連ねております。

※エンドクレジット後に映像はありません。

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あらすじ

今宵、一匹の猫が選ばれる。

ロンドンの片隅に捨てられた猫ヴィクトリア
彼女が出会った気ままな猫たち――『ジェリクルキャッツ』は口をそろえて言う。
「今夜は特別な夜――『ジェリクルナイト』」だと。
そこで選ばれた猫は生まれ変わり、新しい生を送ることが許されるのだ。
果たしてどの猫が選ばれるのか?
世紀のニャンダフルナイトが幕を開けたのだった。

※以下ネタバレです。未見の方注意。

 

 

キャッツ 映画 マキャヴィティ

感想

正直そこまで酷評する必要はないと感じる映画でした
ロングランを続けるだけあり、曲と踊りは超一流。特に、最後のジェニファー・ハドソンさんが歌う『メモリー』は圧巻。
『ドリーム・ガールズ』の時もそうでしたが、ハドソンさんに夢破れた人の心を歌わせたら右に出る者はいないと言っても過言ではないほど最高。「自分はこの歌を聞きに劇場に来たんだ……!」と納得できるくらいの迫力と説得力があったと思います。思わず涙ぐんでしまいました。

ただ映画としての出来は、そこそこレベルにとどまる感じでした。
話の筋は単純で、ジェリクルキャッツの仲間たちが次々と現れては歌と踊りを披露 → ジェリクルナイツで選ばれる猫が決まる、という本当にそれだけな流れ。
しかも歌以外にほとんど台詞がないため、各猫のキャラクターを把握できるのは、彼らがソロで歌っている時間しかない。
けれどスクリーンの平面化された画面では、舞台のような臨場感や迫力が今一つ伝わにくいためか、人物像猫像の掘り下げが甘く、愛着が湧く前に「はい、この子の紹介は終わり。次はこっちの子だよ」と次々取り換えられているような感じでとても忙しい。
多分、舞台だったらもっと没入感があり、個々の猫に思い入れできたんじゃないかな、と想像。
加えて、映画版のみで主役扱いとなったヴィクトリアが常に画面に映り続けるため、どうしても印象が『ヴィクトリア>他猫たち』に傾きがち
演じるフランチェスカ・ヘイワードさんはめちゃかわゆく動きも綺麗。だがそれ故に目立ちやすい点が仇となった気がします。美人に気を取られたとかそういうわけでは断じてない。


……とまあ、前置きはここまでとして。
一番の問題である猫のCGについて語りたいと思います。
個人的には慣れるのに5分くらいかかりましたが、慣れた後はごく普通に見られました。
時々、やたら目力の強いマンカストラップ氏の顔が大写しになったりすると、「これ、猫じゃなくね?」と真顔に戻る瞬間はあったりもしましたが、ミスター・ミストフェリーやラム・タム・タガー氏なんかは逆に好み。

でもやっぱり駄目な人にはダメなんじゃないかと。

予告編ならまだしも、本編はどこを向いても猫、ねこ、ネコ。リアル頭身猫
CGで毛が生えているとはいえ、ほぼほぼ裸体にタイツを着た程度のリアル猫たちが、時には画面に向かって大股を開いたり、手も足も使わずに舌で皿の中のミルクを飲んでみたり、ゴキ●リ食ってみたり、やたらクネクネしてみたり。
間違ってもお茶の間=金曜ロードショーあたりで流してはいけない。
正直、万人にはお勧めできず、無理に劇場で見ることもないのかなとは思うのですが、かといってお茶の間でこれを見てる後ろを家族が横切ったらアカンことになるわけで、劇場に見に行かなくてもいい作品だけど、見るなら劇場が推奨という、大いなる矛盾をはらんだ……つまりは結局のところ世紀の問題作という、やっぱ『キャッツ』ってゴイスだぜ! という感想を抱くに至った次第です。

冗談はさておき、ジェニファー・ハドソンさんと、個人的にはイアン・マッケラン氏のじいちゃん猫が最高でしたよ。

ちなみに酷評が相次いだ欧米ですが、あちらはやはりキリスト教の文化圏。
過去に有名なトイレ製品メーカーのTOTOがウォッシュレットを売り出そうとした際、お尻をアップにした広告を街中に置いたら、「おいお前ふざけんな。あの破廉恥なものを今すぐ下げろ」と苦情が殺到し、結局戦略を練り直さざるを得なかったとか。
アメリカなどは一見オープンなように見えて、性的なものが公衆の場に出ることに関しては非常に厳しいようです。
そりゃーあの猫もどきには眉をひそめますわー。
日本では『不気味の谷』現象やゴ●ブリの方が話題になっているようですが。この辺の感性の違いも面白いですね。

百聞は一見に如かず。
まだ見てないという人がいたら、ぜひご自分の目でお確かめあれ。
めくるめくニャンコの世界がすぐそこに待っているんだニャン!

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人物紹介

●ヴィクトリア
本作の主人公。突然路地裏のゴミ捨て場に捨てられてしまった可憐な子猫。
というか、冒頭の女性はこんなめんこいニャンコを捨てるとか何考えてんだ。
しかも麻袋に入れやがって。滅せよ、外道め。

ジェリクルキャッツの前に現れたよそ者として、観客目線に立つ役割を負う。
中盤までソロがなかったが、新曲『ビューティフル・ゴースト』にて美声を披露。希望を感じさせる歌と言葉をもって打ちのめされたグリザベラに手を差し伸べ、彼女を再び立ち上がらせる優しさを見せる。
ジェリクルナイトを超えた後は、彼らの仲間として迎えられ、野良猫として力強く生きていくことが示唆される。幸あれ。

●マンカストラップ
目力がパないジェリクルキャッツのまとめ役。
捨てられたヴィクトリアにすぐさま声をかけ、ジェリクルキャッツの仲間に誘うという面倒見の良さを見せる。
歌も踊りも大層上手だが、ようやくCGに慣れた目を再び覚まさせる顔を持っており、本編中に何度も「自分は何を見ているんだろう……」的な哲学的思いを心に起こさせる存在となっている。好き。
オールド・デュトロノミーさんの側近なのか、気が付けば支えるように側に立つ姿が男前。

●オールド・デュトロノミー
ジェリクルキャッツの長老的位置づけの雌猫。幾度となく生まれ変わってきたという伝説を持つ。
『ジェリクルナイト』では、候補者の中から彼女が選んだ一匹だけが新しい生を得ることを許されるという。
その座を狙ったマキャヴィティさんにより、あれやこれやが起こったわけだが、無事に選抜は終了。町の広場にて、みんなと並んで朝日を見つめていたところ、突然『第四の壁』を超え、観客に向かって『猫のトリセツ』を解説し始める。
キャビアはないだろーが。
キャビアは無理だわー。高望みだわー。むしろ人が食べたいわー。

●グリザベラ
昔はセクスィにゃんことして名をはせたが、今や落ちぶれて歓楽街をさ迷っているという猫。
まさに身をやつす、という言葉にふさわしいが、猫世界にもそんなんあるんすね。
あんなにボロボロになってるんだから、「フシャーッ」とか言わずに受け入れてやりんしゃいよと思うが、猫世界にも色々とある模様。
『ジェリクルナイト』に参加できずにいたところを、ヴィクトリアに招き入れられ、そのパワフルかつ情感豊かな歌声で、他猫の反発心を消してみせた。
その後は気球に乗って天上へと昇っていったが、結局どういうシステムなのかはよくわからん。また猫になって生まれてくるのかな。

●マキャヴィティ
ジェリクルキャッツ界のお尋ね者。誰もが恐れるならず者キャット。
当初は毛皮のコートを着ており、怪しさをかもすも、あふれ出るマッチョ臭は覆い隠すことに成功していた。だが満を持してボンバリーナが登場し、彼女に絡んで歌声を披露する際、ついにコートを脱ぎ捨ててしまう。
現れる、げにたくましき裸体ニャン体。
なんで脱いだ。
こんなマッチョな猫がいてたまるか。
エルバ氏は大好きですが、キャット・エルバ氏も好きかと聞かれたら、そりゃあもう大好きですと答えざるを得ないわけですが、それにしてもマッチョマッチョ。
天上に登りたいがため、ライバルたちを「マジカルニャンニャン!」と誘拐し、チャーターした船の上に閉じ込めていた。
猫が船をチャーターってお前。
でも結局悪だくみはばれてしまい、最後はグリザベラを乗せた気球に根性でぶら下がるも落下。広場のとんでも高い像の上に取り残されて困り顔を披露する。
きっと後日、通報を受けたレスキュー隊によって救出されるのであろう。
そしてきっと野良猫を不憫に思った消防士の一人に引き取られ、『マッチョ男&小動物』というとんでも素敵コンセプトなチャリティカレンダーの表紙を飾るのであろう(と思ったが、件のカレンダーはオーストラリア産ダタヨ)。
たくましく生きなんし。

●ミスター・ミストフェリーズ
マジカルにゃんこ。ヴィクトリアにホの字な好青年。
一見気が弱そうだが、デュトロノミーが誘拐された時は皆の期待を一身に背負い、「魔法でデュトロノミーを助けてよ、マジシャン!」的な目で一斉に見つめられて困った
多分プレッシャーにも弱いタイプ。
だが愛するヴィクトリアが音頭を取り、その場の全員に優し気な眼差しで『マジカル・ミストフェリーさん』の歌を歌われたら、そりゃ頑張らざるを得ないってなもんですよ。
意図した場所とは別のところにデュトロノミーを呼び出してしまったが、結局は成功したわけで、やればできる子YDK!
ジェリクルナイトの伝統を守った立役者。

個人的に、楽曲の中では『ミスター・ミストフェリーズ』が一番気に入りました。がんばれミストフェリーズさん。

●ガス
劇場猫という触れ込みのじいちゃん猫。
もうわしの芸は枯れた……しおしお……みたいな反応をしていたが、一度歌えばまだまだいけることを証明。やはりイアン・マッケラン氏の声は超最高である。
みんなと一緒に船に囚われたときはどうしようかと思ったが、無事に帰って来てよかった。

●ジェリクルキャッツ
ガスのほかにもジェニエドッツさんやラム・タム・タガーさんなど、個性豊かな猫たちが登場。みんな歌とダンス上手猫。
特にテイラー・スイフトさんのボンバリーナはとんでもキュート。登場からしてオシャレだニャンニャン。

●猫は犬にあらず
ですよねー。全然違いますねー。
長年犬派でしたが、最近猫を拾う機会に恵まれ、犬猫と同居しております。
猫があんなに伸びるとは知らなんだ。
そしてプレーリードッグ状態になるとは知らなんだ。
なのにめっちゃ丸まる。猫ってすげー。犬もすごいけど。

●監督
トム・フーパー氏。『レ・ミゼラブル』や『英国王のスピーチ』などを撮っていらっしゃる方。
摩訶不思議な猫ワールドをありがとうございました。次回作も楽しみにしております。

↓Amazon Videoにて、大好評配信中だニャン。百聞は一見に如かずだニャンニャン。

↓サントラが出てるでー。

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