映画『ウィンチェスターハウス:アメリカで最も呪われた屋敷』ネタバレ感想。精神科医vs幽霊屋敷の結末やいかに。

原題:Winchester
2018年の映画
おすすめ度:☆☆☆

【一言説明】
正統派お化け屋敷ホラー。

ウィンチェスターハウス 映画

年明けに『貞子vs伽椰子』を視聴してから早数週間。そのせいか、Amazon VideoとNetflixのホーム画面が軒並みホラータイトルばかりになって、ヒェッ。
  ↓
おすすめされるままに、数タイトルを視聴。
  ↓
最早怨霊しかいないホーム画面の出来上がり。やめてや。

というわけで、Amazon Videoにて発見した本作『ウィンチェスターハウス:アメリカで最も呪われた家』。
実在する幽霊屋敷が舞台! しかも主演がヘレン・ミレンさん! 超有名なウィンチェスター銃を開発した一族! と興奮ポイントがてんこ盛り。
これはなあー、再生ボタンを押す手を止める理由が存在しないなあー。

共演に、『ターミネーター:新機動/ジェニシス』のジェイソン・クラーク氏と、『プリデスティネーション』のサラ・スヌークさんです。

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あらすじ

ウィンチェスター家は呪われている!
夫と娘を亡くした未亡人サラ・ウィンチェスターは、憑かれたように移り住んだ屋敷を改築し続けていた。
最初は8部屋しかなかったのが、今や立派な七階建て……って、どうやったらそうなんの? 土台とか大丈夫?

そんな筆頭株主たるサラの奇行に戦慄する株主たち
彼らはサラの精神を鑑定させ、結果いかんではその権利をはく奪せんと、精神科医エリック・プライスを現地へと送り込んだ。
やがて送られてくる経過報告。

「ブ ッ チ ャ ケ マ ヨ ウ」

果たして、すべてはサラの妄言なのか? それとも……?

※以下ネタバレです。未見の方注意。

 

 

感想

現存する呪われた屋敷。
最初は八室しかない家だったのが、実に38年もの間増改築を繰り返し、本国でも有名な観光スポットになるくらい広大な屋敷となったウィンチェスターハウス。
聞けば毎日24時間、1日も休むことなく作業は進められたという。
その理由は、ウィンチェスター銃によって命を落とした霊たちの怒りを鎮めるため。
内部はひどくちぐはぐな作りとなっており、外に直結するドアや、天井にぶち当たる階段、恐ろしく角度のきつい廊下など、迷子になるような複雑な構造らしい。
一説では、わざと内部を複雑に作り、幽霊が自分の元へ来られないようにした……という、よく考えると超コワイ解釈もある。

そんな屋敷の真実を暴くのが、この映画『ウィンチェスターハウス:アメリカで最も呪われた屋敷』。「幽霊が出る」というサラの言葉は真実か否か、というのが物語の肝だ。
冒頭で精神科医のエリックが、サラの精神鑑定をするために屋敷に送り込まれてくる。
なるほど。エリック目線に立って進めることで、観客にもまずはサラを疑ってかかるべし……と警告しているのだな、と理解。
これはもしかすると、すべてはサラの妄言とか、もしくは幽霊と見せかけて実は人為的なミステリ方向に舵を取る……とか、あるかもしれんで!
  ↓
そんなことはなかった。
ド直球の幽霊屋敷ものだった。
正直肩透かしを食うくらい、ごくごくふつーのお化け屋敷映画でした。

サラの言う通り、屋敷にはウィンチェスター銃で死んだ霊たちが憑りついており、彼女が増改築を繰り返すのは彼らの鎮魂のため。
毎晩深夜になると、屋敷に設置された鐘が自動でがらんがらんと音を立てる。すると動き出す黒衣の婦人。
実はこれは霊に操られたサラの姿。ある晩、エリックが後をつけてみると、サラは改築したばかりの部屋で紙に何かを書きなぐっている。
  ↓
出来上がったのは、部屋の内装を描いた絵だった。
これはサラに憑りついた霊が生前に住んでいた部屋。それを再現して建てることで、霊の魂を癒し、成仏へと導くのだという。
だが、中には部屋に住み着いて暴れまわる霊もおり、そうなるとその部屋のドアに13本の釘を打ち、霊が大人しく成仏するまで閉じ込めておくことになるそうな。
言われてみれば、エリックが普段通って来た廊下にも、いくつも釘で封印された部屋があった。

……というわけで、結局サラの言葉は真実だったというオチがつく。
しかも、サラの姪とその息子を狙う『あの男』という、ウィンチェスター史上最凶の霊が登場し、ウィンチェスター銃と因縁を持つエリックは、なんとその霊と対決することを強いられるという、結局はゴーストバスターものの様相を呈するのだった。

何かこう、38年間1秒も休まず……というものすごい設定の割には、非常にこじんまりと平凡に収まってしまった感が否めない。
せっかく魅力的な題材なのだから、サラの過去や人格にもっと深みやドラマを持たせて、実は夫と娘が死んだ時の状況にサラの過失が関わっていた……的な要素をつけてくれてもよかったし、どうせ幽霊物にするんだったら、もっとこう怖さを深く深く追求したものにしてくれたら……と。もったいないなあ、と感じました。

ただ、お化け屋敷ホラーとしてはびっくりして「ぎゃっ」と叫ぶ部分もあり、何より屋敷の中はこうなっているのか~と内部を見られた喜びも大きく、お話としてはそこそこ面白かったです。
何よりボス幽霊の正体には一ひねりが加えられ、「おまえかよ」という驚きもあり。
幽霊屋敷としては、24時間常に家人以外の誰かがわやわや作業してくれているというのは、個人的にものすごく心強いだろうなあ……と思ったんですが、現実には内部で起こる霊現象に対して、外で作業している作業員はまったく頼りにならないというのが笑えました。
確かに、遊園地のアトラクションでも外に人はたくさんいれど、中で叫んでいる人の悲鳴は聞こえないもんなあ……と納得。お化け屋敷あるある。

 

ちなみに、似た感じの屋敷が出て来る小説に、小野不由美さんのゴースト・ハントシリーズ『鮮血の迷宮』というのがあります。
舞台となるのは、何人もの行方不明者を出す山奥の屋敷。一見普通かと思いきや、内部は迷路のように入り組んだ作りになっており、家を増築したかつての持ち主は囁いたという。
「あいつが、来るんだ……」と。
これがまあめっちゃ怖いのなんの。漫画版もあるんですが、酒に酔って読んだ晩は、「あいつが来るー、あいつが来るー」と真面目にうなされたくらい怖かったっす。
↓小説版と漫画版。シリーズものですが、単発で読んでも十分面白いです。

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人物紹介

●サラ・ウィンチェスター
屋敷の持ち主にして、ウィンチェスター社の筆頭株主。
老年に入ってますます麗しい美貌の持ち主だが、夫と子の鎮魂のため、今も尚喪に服している=まさに未亡人で麗し度最高潮
ごく普通の屋敷だった家を、数十年かけて増改築を繰り返し、なんとも奇妙な館へと作り替えた。
そんな姿が株主たちにはアカン感じに映り、精神鑑定を依頼されるに至る。
だが結局、幽霊の呪いは本物だった。ウィンチェスター銃がある限り、銃による犠牲者は増え続け、サラは彼女の命が尽きるその時まで屋敷を増改築し続けるだろう。

……と、フィクションのサラはそれでいいとして、実際はどうだったかというと甚だ疑問。
個人的には、フォースは存在するけど幽霊はいない派なので、霊媒師だか占い師だかに乗せられただけじゃないのかと思う。結局のところ幽霊も元は人だし、真に恐ろしいのは人の心、という言葉が浮かぶ。

●エリック・プライス
何やら過去持ちの精神科医。
登場時は休暇中と称し、患者なのかなんなのか、美女を集めてきゃっきゃうふふしている。小手先の手品を披露し、「やだやだ、どうやったのぉ」と歓心を買うなど、中々の色男ぶり。目力がパない。

そんなエリック君。大企業の株主たちに請われ、サラの精神鑑定をしに屋敷へと出向いていく。そこで天上に突き当たる階段や、釘打ちされたドアなどを奇妙な建造物を見て「これはアカン」と思うも、極め付けが『関節痛を患う夫人のため』と称した『確かに角度は膝に優しいかもしれんが、距離がまったく優しくない階段廊下』
やたら長ったらしく入り組んだ廊下を、夫人の後をついてせこせこ歩くエリックを見た時は、正直コントかと思いました。毎日通ってたら大変じゃない?

さて。問題の屋敷には、サラたちのほかに使用人が多数いる。けれど幽霊を実際に目にするのは、サラとエリックの二人のみ
サラは当然として、何故エリックも霊を見るのか?
答えは、エリックは過去にウィンチェスター銃で撃たれたことがあり、3秒間だけ死亡したため。
精神衰弱した妻がエリックを撃った後に自殺。エリックも3秒間心臓が止まった=ウィンチェスター銃で殺された=屋敷に憑りつく霊と同じ存在になった、という認識らしい。
微妙にノーカンではあるまいか……と思うのだが、霊は細かいことはキニシナイ。
その時の、体内から取り出された銃弾をお守りとして持っていたエリック。
いや捨てろよ……という感想が普通なら出そうなところを、なんと対ボス幽霊との切り札として使用。見事霊を退治し、屋敷を救うことに成功するから、あっぱれ。
最後は『サラの精神鑑定は正常』という結果を株主に送り、笑顔で屋敷を後にした。

●ベン
今回の元凶。ウィンチェスター家に憑りつく最凶の幽霊
当初は屋敷に仕える使用人の姿で登場。相手が幽霊だとは気づかないエリック(&観客)に、普通に使用人としての扱いを受ける。
だがよくよく考えると、彼に反応しているのはエリックのみ。他の使用人と会話している様子はない。
しかも食卓の席で「ワインを注げよ」というエリックの指示を無視したりと、伏線は張ってあった(周囲には見えてなかった)。

南北戦争にて、兄弟がウィンチェスター銃によって死亡。その復讐のためウィンチェスター社に銃を持って殴り込み、大勢を銃殺した後で、突入してきた警官たちによって殺害された。
エリック到着時にサラが作らせていたのが彼の部屋だった。
宿る場所を得て力を増したのか、ベンはサラの姪の息子ヘンリーに憑りつくようになる。頭にずた袋をかぶり(ベンが会社に乗り込んだ時にかぶっていた)、建設途中の高層階から飛び降り自殺させようとするも、下にいたエリックが受け止めたために未遂。
その後も虎視眈々と機会を狙い続け、サンフランシスコ大地震で屋敷が崩壊したのをきっかけに、正体を現してサラを襲撃。
だが間一髪で突入してきたエリックが、例の銃弾を撃ったために倒された。
生前と死後と、二度もウィンチェスター銃によって終わりを迎えるという、ある意味伝説の男。

驚いたのが、正体を現すシーン。
生きている人間だと思っていた相手が、振り向いた瞬間には幽霊の形相と化しており、「ウィンチェスターは死ぬべきなんだぁー」と叫んで突然消える。
それまでの姿と幽霊姿とがあまりに剥離していたため、「えっ、今の誰? 使用人はどこに行ったの?」と一瞬ぽかんとしてしまった。
何かこう……今まで一緒にいた人が、急に激昂して裏の顔を見せた、みたいな。
違うか。

●マリオンとヘンリー
サラの姪とその息子。夫が亡くなったため、サラの屋敷に身を寄せている。
一族の末裔として、ベンに狙われたヘンリー。ベッドで母親と寝ていた……と思ったら、次の瞬間にはベンの部屋に続く階段の下で、ずた袋を被って「あの男が来るよ」と恐ろしい台詞を吐く。
その後もベンに操られ、やっぱりずた袋を被って三階か四階あたりから飛び降りたところを、間一髪でエリックに救われるなど危険な目に遭う。
だが十歳前後の少年が三階以上から飛び降りたら、大の男でも下でキャッチできるものなのか甚だ疑問。あれか。エリックおいちゃんはがっしりしているからか。さすがはジョン・コナーなのか。

ベン襲撃の際は、屋敷に憑りつく霊に囲まれ、あわや……というところまで追い込まれる。
からの、マリオン覚醒。
「私は母親よ!」
は、かっけーー! ってなった。有事の母ほど頼れる存在はいませんね。
最後はエリックの活躍によって無事にベンの脅威からも解放され、二人仲良くおじさんを見送った。

●使用人たち
わりと大勢いるようだが、幸運にも誰一人幽霊を見るものはいない様子。
トラップ屋敷みたいな職場で大変ですね。

●大工さん
我らが『インシディアス』のタッカー役、アンガス・サンプソン氏が大活躍。
大地震が起きた際も、サラを心配して残ってくれた。
だが最後は……やっぱり死んじゃったのでしょうか。いい味出していただけに残念至極。

●ウィンチェスター銃の犠牲者
屋敷に憑りつく大勢の霊たち。みんなウィンチェスター銃で撃たれて死んでしまった。
だが冷静に考えると、呪うべきは撃った本人なんでねーの、っていう。
日産の自動車に轢かれて、ゴ●ン氏呪う人おんのけ? と聞きたい。

●温室の幽霊たち
とてもとても意味ありげに映された温室。なんかあるんだろうなあ……と思っていたら、エリックの死んだ妻の霊がいた。どうやら事件は温室で起こったようだ。
自殺もカウントするとか、サラも大変。
そしてエリックをぐるりと囲んでいた霊たちはなんだったんだ。

●株主たち
ごく普通の一軒家だったのが、しばらくして訪ねてみれば、七階建ての部屋数が五百もある何かと化していれば、そりゃビビる。
多分エリックの報告書を見て、「ほんとかよ」と首を傾げただろう。
……というか、株主たちは何故エリックを選んだのだろうか。来歴を見たら「アカン」と思うのではないでしょうか。謎ん。

●監督
スピエリッグ兄弟。wikipediaを見てビビったのだが、なんと『プリデスティネーション』を撮っていらっしゃる……。
SFはなあ……SFはなあぁぁ……!!
SFはともかく、本作は面白かったです。次回作も楽しみにしております。ありがとうございます。

↓『プリデスティネーション』の感想はこちら。SFの中のSF。

↓本編はAmazon Videoにて配信中。右端の未亡人は幽霊じゃないよ。サラさんだよ。