映画『セブン・シスターズ』ネタバレ感想。超一人っ子政策VS七人姉妹!

セブン・シスターズ 映画 サスペンス

原題:What Happened to Monday
2017年の映画
おすすめ度:☆☆☆☆

【一言説明】
七つ子VS世界政府。

セブン・シスターズ 映画

デフォーじいちゃん、マジデフォー!!

『ミレニアム』シリーズ(スウェーデン映画版)のノオミ・ラパスさん演じる七つ子が、名優グレン・クローズさんとガチンコ対決!
……てな知識も前評判もなしに、雨の降るTSUTAYAにてレンタル。これがまあ中々な良作でございました。

女性が主役=ハードな世界観が若干マイルドになる……かと思いきや、冒頭の四コマ通り、「一人が指を失ったなら、七人全部同じにせねばならぬ」と、デフォーじいちゃんが残り六人の指をぶった切るシーンが序盤に流れ、ぬるま湯どころか冷水をぶっかけられた気分になります。
まったく、ウィレム・デフォー氏は最高なのDEATH!

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あらすじ

そう遠くない近未来。異常気象と食糧問題によって国家が滅亡。人々は新たに誕生したヨーロッパの大国に集まるも、遺伝子組み換え食物の影響により、多胎児出生率が激増。人口増加問題が深刻化していた。
そこで政府は、二人目以降の子どもを冷凍保存し、問題が解決する未来まで眠らせるという、超一人っ子政策を開始したのだった。

そんな中、テレンス・セットマンの元に孫娘の七つ子が誕生する。
このままでは六人が冷凍保存行き。
かわいい孫にそんな運命を課すものか!
暴走したじいじはある秘策を思いつく。
七つ子をそれぞれ交代で一日ずつ外に出し、仮想の人間カレン・セットマンを演じさせるのだ。月曜日、火曜日……と各人担当する曜日の名前を与えられた少女たちは七人で一人。
そんな上手く行くか?
  ↓
上手く行った。
実に三十年も一人の人格を演じ続けた七つ子たち。
だがある日……長女のマンデーが、外出先から帰らぬまま、突如として姿を消してしまう。
何がマンデーに起こったのか?
答えが見つからぬまま、翌日を担当するチューズデーは、カレン・セットマンとして出勤することとなるのだった……。

※以下、ネタバレにつき注意



感想

面白かったです。
何にも増して、ウィレム・デフォー氏の存在感よ。
序盤の『指ぶった切り事件』で、余すことなく世界観を表現。死因は明らかではないものの、姉妹より先に他界。それでも彼女たちがカレンを演じてこられたのは、デフォー氏演じるテレンスの深い愛情があったからこそ。
指を切った後に、実は涙を流していたテレンス。
そりゃそーだ。好き好んで孫の指をぶった切るじいちゃんなんぞ、いやしない。
悪いのは、七つ子として生まれた姉妹たちか? 
いいや、違う。命を正しく育むことができない世の中にした、自分たちが悪いのだ。
初めてサーズデーが外に出たときに見せた、額こっつんこ。ここにじいちゃんの愛がすべて詰まっていると言っても過言ではないですね。名・優!

さて物語の本筋としては、出勤したチューズデーの前に怪しい同僚ジェリーが現れ、「カレン……僕は知っているんだ」と口走ることに始まり、どうやら秘密がばれている感が増し増してきます。
相変わらずマンデーの行方はつかめませんが、チューズデーが突然政府に拉致られ、七つ子の事実が向こうにばれていることが確定。児童分配局より差し向けられた刺客たちと、残った五人との死闘が始まります。
ここの展開が、とてもリアル。なにぶん女性故に力が足りず、刺客を殴って蹴って、物で叩いても決定打にならず。

一体マンデーに何があったのか? どうしてばれたのか?
残された姉妹が目にした真実とは……?

色んなところの感想でも見かけますが、原題「What Happened to Monday」は、「何がジェーンに起こったか?(What Ever Happened to Baby Jane?)」へのオマージュなんですね。姉妹が演じるカレン・セットマンのメイクも、こちらに登場するジェーンの白粉こってこて塗りと同じですし。
濃すぎるメイクは、七人がカレンという仮想の人物を演じているという=舞台用メイクであり、七つ子とはいえ、年を経るに従い現れるであろう個人差を覆い隠すためのギミックでもあります。
ギミックといえば、サーズデーのせいで、過去に姉妹は指を切断することになりましたが、あれのおかげで周囲にばれる危険性が減ったのも事実。『片手の人差し指がない』なんて強烈な個性だし、何なら指で判別している知り合いもいたでしょう。実はサーズデー、グッジョブというお話です。

……ところで、切った指は左手でよかったのだろうか。右なのか左なのかがうろ覚え。間違ってたらごめんなさい。

人物紹介

●マンデー
長女。優等生タイプ。常にみんなの規範となることを求められ、真っ先に指を切られた。
でもって黒幕エイドリアンと相思相愛になり、一人きりの人生を求めたために、姉妹を売った張本人。
解説では『愛を知った故』と書かれていますが、結局彼女が他六人を切り捨てざるを得なかったのは、妊娠したからだと思われます。
通常の女性ならまだしも、妊婦を七人で演じるのは無理がある。それに児童分配局の所業を知った上で、おそらく多胎児だった我が子を全員守るため、グレン・クローズさん演じるケイマン局長と取引をした可能性が高い。
母は強し。そして恐ろし。

終盤に行われるサーズデーとのキャットファイトは、かなり怖い。同じ顔の女性――しかも血のつながった姉妹――が憎しみ込めて取っ組み合っている姿は、とにもかくにもヒェッ……!
最期は、児童分配局の手で撃たれて死亡。サーズデーとエイドリアンたちに、お腹の子を託して息を引き取った。そのシーンは感動的に撮られている……のだが。妹を売るのはいくないと思うよ!
散っていった他曜日たちが、かわいそうじゃろがい。

●チューズデー
臆病で繊細な次女。
……にしては、自分が担当する曜日とはいえ、マンデーがどうなったのかわからない状況で、怖がりつつも出勤して行ったあたり、案外肝は座っている模様。
序盤で児童分配局に拉致られ、おそらく殺されたんだろうな……扱いだったのが、どっこい生きていたことが判明する。
実は、フライデーがハッキングした監視カメラに映っていたマンデーと思わしき人物がチューズデーであり、そこに来てマンデーの裏切りが発覚するのだった。
片目はえぐられたけど(ぬんぎゃー)生き残っていたので、マンデーも姉妹の抹殺までは望んでいなかったのかもしれない。

●ウェンズデー
筋トレ大好き、たくましい三女。姉妹随一の肉体派。非常にかっけー女性のため、彼女が一番好きだという人も多いのでは。
作品ポスターでは中央を飾る=てっきり彼女が大活躍するんだろうと思っていたら、なんと中盤で死んでしまう。
自分を信じて、ビルの間を大ジャンプ……したのだが、向こう側に待ち構えていた刺客に撃たれ、着地できずに落下 → 絶命してしまった。
敵から奪った指紋認証型の銃を使うため、自分の指にぶった切った相手の指を張り付けるという、度胸と応用力のパなさを見せてくれる超かっこいい姉御だっただけに、もっと活躍が見たかったのが本音。
刺客、許すまじ。

サーズデー
唯一の短髪。マインドパンクス四女。
彼女が担当でもない曜日にふらっと抜け出し、スケボーで大怪我して帰ってきたため、全員仲良く左手の人差し指とお別れする羽目になった。
だがこの出来事があったからこそ、姉妹は一つになったとも言えるのではないだろうか。指切断は、ある意味少女時代の秘密の儀式であり、痛みを共有した七人は、あの瞬間、お互いに永遠の忠誠を誓い合ったと推察できる。

そんな四女は、姉妹随一の精神的タフネスを持っているので、最後まで生き残る。
単体で見ると、あまりのワイルドさに、彼女がカレンになっている姿は想像が難しい。が、終盤児童分配局のパーティーに忍び込む際にカツラをかぶった姿は、まさしくカレン・セットマン。女性とは、かくも麗しい生き物ざんす。

フライデー
いわゆるギークな五女。コンピューターのハッキングを担当する有能ウーマン。やはり一人はこういうタイプがいないと、話が動かない。
その腕は天才的で、児童分配局内のネットワークにも易々と入り込み、囚われの身となっているマンデーらしき人物を発見するという手柄を上げる。
なのに刺客たちとの決戦では、頭脳派の自分は足手まといになると感じ、電子レンジを使った爆弾を作成 → サーズデーを逃がすために爆死してしまう。
全然足手まといじゃないだろ!
そんな技術できるの、元海兵隊くらいしかおらん。
タイミング的に逃げられたのでは……と思うが、便利キャラは有能すぎるがゆえに、途中退場を余儀なくされるのが常なのか。ずっと後方支援で活躍してくれてよかったんですがね。

サタデー
本作のエロ担当はっきり言って、彼女とエイドリアンの絡みは非常にエロい。一見の価値あり。
奔放そうに見えて、実は初めて……という、どの層を狙ったのかわからないキャラ付けがされている → エロいおねえさんはみんな大好きだからいいんダヨ!
  ↓
だが、なんとエイドリアンと愛し合った翌朝に刺客が襲来し、あっさり殺されてしまう。
  ↓
ク●が!
いくら顔がそっくりとはいえ、最後まで気づかなかったエイドリアンもなんだかなあ……と思わないでもないのだ。

●サンデー
みんなの大好きな曜日の名を冠しながらも、真っ先に死んでしまったかわいそうな七女。優しいお母さんみたいな人物だったらしい。
七人全員生き残れればよかったのだが、ウィレム・デフォー氏が出ている時点で、そうはならないことはわかっていた。
彼女の死を皮切りに、物語はシビアの底を目指して突き進むのだった。

●テレンス
デフォーじいちゃん。七姉妹の祖父。出演時間は二十分もないはずなのに、非常に強烈な印象を残す人。だってウィレム・デフォー氏だかんね。

世界に三人似ている人がいるというが、彼も例にもれず。
 1デフォー : ウィレム・デフォーさんご本人
 2デフォー : ケビン・ベーコンさん
 3デフォー : スティーブン・マッキントッシュ氏
        (『刑事ジョン・ルーサー』イアン役)
似ている人はもっといるのでしょうが、筆者に挙げられるのはこの三人です。

余談ですが、『ボン・ボヤージュ~家族旅行は大暴走~』というフランス映画にて、ロバート・ダウニー・Jr.氏にクリソツな俳優さんが出演されていて、「フランス語も話せるとはさすがアイアンマン」と途中まで感心しきりで見ていたら、別人でしたということがあったんですが、本当に余談ですね。

そんなデフォーじいちゃん。サーズデーのやらかしにより、六人全部の指をぶっつんぶっつん切っていく。でも全員長さをそろえないといけないから、多分サーズデーも後ほど調整されたんだろうな……と思ったら、イタタタタタタ。
切ったテレンスの心労は察するに余りある……余りありすぎ。

●ケイマン局長
児童分配局の偉い人。超一人っ子政策を提唱した女傑。
余った子供を未来まで冷凍保存……とは大嘘で、実は機械で焼却処分していたというエグすぎる事実が発覚する。
おまっ……お前エェェェェ!!!!
死ぬまで会えないかもしれないが、遠い未来で幸せになるのなら……と我が子を託した親の気持ちをこの野郎。まさに鬼の所業。どのつく外道。

最後はサーズデーによって、公衆の面前で事実をばらされ極刑となった。
だが『そうでもして人口を減らさなければ、人類は滅びる』という彼女の言も、一理あるのは確か。ラストに映る大量の眠る赤ちゃんたちは、希望かはたまた絶望か……といったところだが、個人的には希望に一票。万が一続編があったら、五十年後の火星移住をテーマにしたサスペンス巨編とかに仕上がりそうな気がいたします。

●エイドリアン
マンデーの心を射止めた男性。児童分配局の職員で、冒頭でチューズデー演じるカレンに接触するも、誰だかわからないチューズデーに塩対応される。
その後サタデーとのなんやかやの後、サーズデーと合流。ケイマン局長の悪事を暴くことに協力する。
最後はマンデーの残した子を育てる決意をして終わるわけだが、上述のようにマンデーに扮したサタデーに気付くことなく、アーン☆な展開を見せたため、愛を語られても若干の白い目を向けたくなったで。

●ジェリー
予告編にて「僕は知ってるんだ……」の爆弾発言をかました同僚。
「何を!? 何を知ってるんだ、貴様!」とチューズデーは大量の冷や汗をかくはめになった……のだが。ミスリード用のキャラだったため、実にあっけなく児童分配局の人間に殺されてしまう。
ええー……お前……引っ張ってそれかよ、というありがち展開。
演じる役者さんはポール・スヴェーレ・ハーゲン氏。とてもとても背が高く、実にミステリアスで雰囲気のある方なので、素直に騙された人も多いのでは。『特捜部Q:Pからのメッセージ』でも非常に印象的でした。

●監督
トミー・ウィルコラさん。
なんと! 筆者大好きレナー兄さん(ジェレミー・レナー氏)が出演した『ヘンゼル&グレーテル』の監督さん。ヘンゼル~も面白かったし、さすがの手腕。ありがとうございます!

↓Amazon Video にて配信中。七人のノオミ・ラパスさんを目に焼き付けよ……!

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