映画『ウィンド・リバー』ネタバレ感想。雪原のスナイパーことレナー兄さんが大活躍する名作スリラー。

映画 ウィンド・リバー サスペンス

原題:Wind River
2017年の映画
おすすめ度:☆☆☆☆☆

【一言説明】
雪山は走ったらアカン。

ウィンド・リバー 迷彩服

中年の星ジェレミー・レナー氏ことレナー兄さんが出演したスリラー映画『ウィンド・リバー』。公開当時は歓喜しながら劇場へと足を運び、その渋さ炸裂の内容にこれまた大喜びした記憶がございます。
このたびAmazon Videoの週末百円セールが実施されていたので再視聴。
やっぱりレナー兄さんはかっけーのう。

というわけで、主演はもちろんジェレミー・レナー氏。『アベンジャーズにただ一人混じる一般人』だけじゃないんですよ。『ハート・ロッカー』にてアカデミー賞にノミネートされたという演技派なんですよ、レナー氏は。
そして共演には『アベンジャーズ』のスカーレット・ウィッチことエリザベス・オルセンさん。かわいいのう、かわいいのう。
このお二人が並ぶ絵面が大好きでございます。

余談ですが、この前外出しようとして外に出る前に鍵をかけてしまい、ドアが開けようとしても開かないので「……?」となったところ、「鍵がかかってる!」とめちゃくちゃびっくりした次第です。
よい子のみんな、鍵は外に出てからかけるんだぞ!

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あらすじ

身も凍る雪の大地。
そこを一人駆ける若い女性がいた。
苦痛なのか、恐怖なのか。顔を歪ませながらもひたすら駆け続ける彼女は、なんと靴すらも履いてはいない。
自殺に等しいその行為は、容赦なく肉体から命を奪っていくのだった。

果たして、少女は何故走ったのか――?

※以下ネタバレです。真相に触れていますので、未見の方はご注意を。

 

 

感想

冒頭、まだ生きていた女性が必死に雪の中を走っている。
時折辛そうに足を止め、背後を振り返ることで何かが追ってきている――もしくは何かを残してきたことがうかがい知れる。

一体どうして走っているのか?

その謎は解けぬまま、彼女は翌朝遺体となって発見される。
逃げた道筋に転々と落ちている血痕。
てっきり何者かによる他殺なのかと思えば、検死によって衝撃の事実が明かされる。

彼女の死因は、マイナス30度の雪道で走ったことによる窒息死。
冷たすぎる空気を吸い込むことによって肺が破裂し、逆流した自身の血液により窒息したのだという。
なんつー恐ろしい。寒いところでは絶対に走ったらいかんのですね。
雪山とか、そういえば登山番組で走ってるとこ見たことないや。

そして地元警察より要請を受け、派遣されてきたFBI捜査官ジェーン・バナーは驚愕する。
女性の遺体にはレイプされた跡があった。もしかすると複数の相手によるものかもしれない。
だが、検視結果は他殺ではない。
彼女をレイプし雪道を走らせたかもしれない犯人は、殺人罪に問えない可能性があるのだ。

なんじゃそりゃ。
つまりこれは厳密に言えば殺人事件ではないのか?
個人的にはレイプは殺人とほぼ同罪と言っていいほど胸糞な行為だと思っているので、犯人は血祭りにあげられてしかるべしだと憤っていたところ、いい感じに不穏なやり取りを始めるレナー兄さんことコリー・ランバート。
彼はネイティブ・アメリカンの土地にて地元ガイドとハンターを務めている。そして被害者の両親と懇意の中であり、娘を失って悲観に暮れた父親と犯人を必ず見つけるという約束を交わす。

「見つけたらどうする?」
「FBIには引き渡さない。やるべきことをやる
「……ならさっさと行け」

渋い。超渋い。
口数も少なく、居留地を荒らす獣たちを淡々と撃ち取っていくランバート。
そんな彼が、今度はレイプ犯を標的として野に放たれた。一生懸命事件を追うバナー捜査官に同行しながら、確実に獲物を追い詰めていく。
このランバートの淡々とした姿勢がいい。決して激することはないけれど、内には静かな怒りが燃えている。
話が進むにつれて、この怒りがいずれ必ず加害者を焼くであろうことが身に染みてわかってくる。彼は生粋のハンターだ。獲物に敬意は表すれど、引き金を引く手を止めることはない。

舞台はネイティブ・アメリカンの保留地であり、広い土地の中に警察は数名しかおらず、法の手が届きにくい場所であることが示される。
そんな閉鎖的かつ過酷な大地ではランバートのような強者のみが生き残り、弱者――特に若い女性が鬱積する負の感情の犠牲となっていることが描かれる。
ランバートも三年前に娘を殺されており、いまだその犯人はわかっていない。
そして今、娘の友人だった少女が、やはり家から何十キロも離れた雪の中で死んでいたのだ。

事情が明かされるに連れ、犯人の明日が奪われることは明白となってくる。
ランバートにズドンって撃たれるんでしょう? かわいそうになあ、なんぞと思っていたところ……

ドクズだった。

何の同情もいらなかった。
むしろ「先生、やっちまってください」の域だった。

真相は完全なる胸糞展開で、女性を女性というだけで食い物にする輩が閉鎖的空間で暴力をエスカレートさせていった結果だったことが判明する。
恋人の命を懸けた手助けにより、一人逃げ出すことができた少女。
けれど混乱の最中に靴すら持ち出すことはできず、いつやって来るともしれない追っ手から逃げるため、そして助けを呼ぶために、肺が破れるまで駆け続けた少女。

ランバートによる裁きが下された後、観客の心は再び冒頭の少女が走る姿へと戻っていく。
今度は『何故走ったのか』を思うのではなく、裸足で駆け抜けた十キロに――彼女が生きるために走り抜いた雪道の重みに、思いをはせるために。

構成が素晴らしい。
最初はただの被害者にしか思えなかった少女が、家族が登場し、その足跡を追っていくに従い、身近な肉付けされた存在へと変わっていく。
その過程でランバートの過去も明かされ、バナー捜査官との間に生まれる絆らしきものにも説得力が生まれていく。
話としても単純に面白いし、何よりレナー兄さんが最高級の演技を披露してくれています。
未見の方はぜひ。
雪用の迷彩服を着たレナー兄さん最高。

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人物紹介

●コリー・ランバート
主人公。のっけから白い迷彩服に身を包み、羊を食べようとする狼を銃で仕留めるという存在感を見せつける。
普段は寡黙にして感情を表に出さないため、遺体を発見したときの表情からなんかあるんだろうなーとは感じていたが、まさか亡くなった娘の親友だったとは思わず。
おそらくは遺体発見と同時に犯人抹殺を決意したのであろう姿に正直ヒェッとなった。怖っ。

事の真相は以下。
亡くなった少女には白人の恋人がおり、死ぬ直前に彼の元――山の上にある発電所か何かの施設を訪れていたことが判明。当初は恋人以外不在のはずだったが、逢瀬の途中で仲間の職員たちが帰ってきてしまう。
内一人がドクズだったため、酔っぱらったこのアフォが「女だ、女だ」と騒ぎ立て、恋人激怒。彼女を守ろうと手を出したところで、普段より鬱積していた残りのアフォたちの感情が爆発。少女に乱暴を働くも、恋人の手助けにより彼女だけはからくも脱出。恋人は殴り殺され、遺体はその後雪山に捨てられた。

最終決戦の場として、この発電所の施設内にバナー捜査官と地元警察が出向くも、ランバートは一人別行動。保身から銃撃戦になり、味方が大ピンチに陥ったところで、裏山から発射される弾丸がアフォどもを次々と仕留めていく。
何せ迷彩服を着ているので、どこから撃って来るのかまったくわからない。
反撃しようとしても無駄。
室内に隠れようとしても無駄。
しゅぱーーっという発射音とともに、次々と倒れていく無法者軍団。
爽快……というより、怖っ。兄さん、怖っ!

そして運命のいたずらによって一人生き残った問題のドクズ男。あっさりランバートに拉致された彼は、凍える雪山の頂上で目を覚ます。
「俺をどうする気だ」との問いに、「走れ」と答えるランバート。
彼は手を下さない。山が相手を裁く。
十キロを耐えた少女に比べ、わずか数百メートルもいかないうちに、己の血で窒息死する男。
ランバートはすべてを見届けた後で友人宅に戻り、事が済んだことを報告する。
おそらくは両者の娘が子ども時代に乘ったであろうブランコのそばに並んで座り、無言で思いをはせる二人。
渋い……!
見てよかった。ほんとよかった。

迷彩服もさることながら、雪原のカウボーイ姿を披露してくれる兄さんは何を着てもかっけーのう!
ただ一つ謎なのが、常に胸に提げている鞄らしきもの。ネイティブ・アメリカン的な装飾がされているので、彼らの伝統的装具なのかなとは思うんですが、当初はずっと湯たんぽなんだと思ってました。
お腹と背中を温めると冷えないって言うしさ。ちゃぷちゃぷお湯があったけえなーとか、違うか。

●ジェーン・バナー
要請を受けてやってきた新人FBI捜査官。超がつく寒冷地に来るのに、薄着かつソング型のショーツをはいてきちゃったりするドジっ子捜査官。着替えるシーンでほんの一瞬だけお尻が映るのだが、そのわざとらしくない絶妙な配分が素晴らしいとか自分は何を解説しているのでしょうか。だがまあかわいいからイインダヨ。
仕方なく現地にて借りた服はランバートの亡くなった娘が着ていたもので、外に出て来た彼女の姿を見て彼が一瞬ハッとするシーンが映る。娘と思うには年が若干上だが、それでもやはり最終的に彼女を守り抜いた姿には思うところがあった様子。

一見すると可憐な女性だが、そこは捜査官。ジャンキーの巣窟にて突如銃撃された際もきっちり対応。最終決戦の場でも防弾チョッキのおかげとはいえ、一人だけ生き残った。
負傷していたせいもあるが、逃げた犯人を追うようランバートに依頼。彼が相手を法の手にゆだねないことをわかっての判断だった。
その後病室にて、亡くなった少女を思い涙を流す。ただの被害者だった存在が、家族の悲しみに触れ、足取りを追ううちに重みを増した。
そして同じ相手の暴力に倒れ、彼女は生き残ったが、少女は死んだ。
ジェーンの流す涙は、観客の涙だ。
一時は生存が危ぶまれたが、無事に回復するようなのでほっとした。

●ナタリー
被害者の少女。19歳。
三年前に亡くなったランバートの娘の親友だったが、同じような状況で死んでいるところを発見される。
真相は上述の通り。せめて施設の場所がもう少し人里に近い場所だったなら助かったかもしれないと思うと切ない。
闇の雪原を駆ける姿がひたすら印象的だった。

●マーティン
ナタリーの父。ランバートとはかねてから親交が深かった様子。
無作法に踏み込んできたジェーンの前では感情を出さないが、親友の前では涙を流した。
「娘を思い出せ。そうすれば彼女を失わなくて済む」
というランバートの言葉を受けてなお自死の道を選ぼうとしたが、数年ぶりに息子からの電話を受け、命をつなぐことになった。
「死化粧してみたけど、教わってないから適当にやった」との言葉はちょっとした笑いを誘うが、伝統的文化が薄れつつあるという問題提起でもあるのでどこまでも渋い。

●コリーの家族
別れた美人妻とめんこい息子がいる。
ランバートもマーティンも息子がいるから救われた身。息子にはすくすくと力強く育ってほしい。

●ナタリー兄
閉塞的な地に嫌気がさすも、出て行く気力はなく麻薬をやりながら自堕落な日々を送っていた。
だが寝耳に水の妹の訃報を聞き、真相解明への有益な情報を提供する。
その後警察から疎遠だった父に電話をかけ、ようやく更生への道を歩み出した模様。

●ナタリー恋人
年の差はあったが、彼女をこの土地から連れ出そうとしていた頼りがいのある男性。従軍経験あり。
暴力性をむき出しにした同僚から最後まで恋人を守ろうとし、そのまま死亡した。遺体は無残にも山の中腹に遺棄され、野生動物に食い荒らされていたところをランバートたちに発見された。

●保安官
バナー捜査官に協力する地元警察。
恰幅がよろしく、人好きのするナイスな保安官だったのに、最後は銃撃戦にて凶弾に倒れてしまう。なんでや。死なせなくてもよかったんじゃナイカナーー!

●施設職員
ナタリーの死のきっかけを作ったアフォたち。
酒が入っていたとはいえ、その後は証拠隠滅のために遺体を遺棄したり、ジェーンたちと銃撃戦を繰り広げたりと擁護できないクズっぷり。
半数は銃撃戦の末、残り半数はランバートの手によって死亡した。

●アフォ男
すべての元凶。回想シーンにてオメーもういい加減黙れよと思ったが結局黙らなかったのであんなことになった。こいつがあそこまで絡まなければ、ナタリーは間の悪い思いをしたくらいで解放されていたはずなのでこのアフォめが。
銃撃戦にて一人生き残ったのだが、運がいいとはとても言えない。
最後は自分の血に溺れて死んだが同情はせんぞ。

●監督
テイラー・シェリダン氏。『ボーダーライン』の脚本も手掛けたとのこと。あちらも超面白かったです。ありがとうございます。次回作もめちゃくちゃ楽しみにしております。

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