映画『アンダー・ザ・シルバーレイク』ネタバレ感想。わからないようでわかるようで、やっぱりよくわからないけど面白い映画。

映画 アンダー・ザ・シルバーレイク サスペンス

原題:Under the Silver Lake
2018年の映画
おすすめ度:☆☆☆☆

【一言説明】
わけわかめ。

アンダー・ザ・シルバーレイク オレンジ クラッカー
※サムの食べ方はテレビドラマ『スーパーナチュラル』ディーンの伝説のリス食いを参考にしたよ! 多分シーズン2だったと思うけど定かではないよ!

新感覚ホラー『イット・フォローズ』のデヴィッド・ロバート・ミッチェル監督の作品『アンダー・ザ・シルバーレイク』をTSUTAYAにて借りて参りました。『イット・フォローズ』はめちゃくちゃ面白かったので、期待大!

主演は『アメイジング・スパイダーマン』のアンドリュー・ガーフィールド氏。失踪する美女役に『ローガン・ラッキー』のライリー・キーオさんが出演されています。

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あらすじ

33歳、無職。L.A.はシルバーレイク在住。日々をぶらぶらしながら生きている……というか、収入減がまったくの不明ながらもバーで飲むお金はある男サム
ある日プールサイドで見初めた美女サラと仲良くなることができた彼だったが、翌日、再会の約束を反故にして彼女は突然の失踪を遂げる。

消えたサラを探すうち、サムは深く深く降りていく。
シルバーレイクのはるか底へと……。

※以下ネタバレです。未見の方はご注意を。

 

 

感想

なんぞこれ……。
L.A.やハリウッド、アメリカのポップカルチャー事情に精通していない身からすると、まったくのわけわからん感が満載だった本作。見ている最中は本当に「???」だったのですが、終わった後で一晩おいて考えてみると、なんかこうわかったような気に……ならんかった。
なんだこれ。

だが一番のなんぞこれは、まったくわけわからんなりに、なんというかフツーにとても面白かったことです。
サラを探して街をうろつくサムを追い、熱に浮かされたようにふわふわとした展開と映像とが続く本作。西海岸の夏というだけあって、日が落ちてもいつまでも歩いていられそうな気温というか雰囲気というか、夜と深い夜との境界がぼけている常世の世界に迷い込んだような気持ちになりました。

物語の筋としては、サラが失踪→行方を追う→L.A.の街や文化にちりばめられた暗号を解く→サラを見つけるという単純な流れ。
けれどその過程が普通のミステリとは違い、なんでサムはそんなとこに行くんだ? そしてなんでそこに手がかりがあるんだ? という一見つながってないバラバラのピース的展開が次々と起こるために「???」の連続。
一周目が終わってぽかーんだったので、もう一周。
  ↓
やっぱりよくわからん。
けれど作中の人物が言う通り、「よくわからないものは考えなくていい」のでしょう。そもそもが観客に何かをわからせるために作った映画ではないでしょうし、L.A.という場所に満ちるアメリカンドリーム的な栄光と挫折を含んだ独特の空気感、そしてポップカルチャーへの熱量が感じられれば、それでいいのではないかなと勝手に納得しました。

主人公サムは夢を持ってL.A.に出て来たけれど、挫折してしまった青年。「人生の失敗編を生きているような気がする」と友人に話す彼は、おそらくはミュージシャンを志していたと思われる。
そんな彼が、過去に存在した名曲は実はすべて俺が書いたのだと言う老人=ソングライターと出会う。ソングライターはまったく尊敬もできそうにないような人物で、すべてを金のために書き、しかもメッセージはお前のような人間に向けたものじゃないとまで言われる始末。
ブチ切れたサムは尊敬するミュージシャンのギターで老人を殴り殺してしまうのだが、次の場面で彼は自宅に戻っており、ぼんやりと階下のプールを見下ろしている。
こんな展開が続くため、果たしてサムの経験が妄想なのか現実なのかわかりにくくなるのだが、個人的には映されたことは明確に夢だと表現されているものでない限り現実に起こったことだと判断した。
つまりサムはソングライターを実際に殺したわけだが、捜査の手が伸びてこないのはおそらくL.A.の暗部に関わる存在故に、ホームレスの王のような組織が隠ぺいしたからではないだろうか。
サムはその後も暗号を解き、行方不明のサラ=大富豪が別次元に昇華するための花嫁として地下の墓に生きたまま埋葬されたことを知る。
電話で会話する二人。

サラ「間違った選択だったと思う?」
サム「そうだね」
サラ「でももう出られないから、生きてる日々を楽しむことにするわ」

生きる日々を楽しむ。
これがサムの答えではないだろうか。
サラを探す過程で、様々な成功者やポップカルチャーの真実を目にした彼だが、そのどれもが納得できるようなものではなかった。
『シルバーレイクからハリウッドへ』の地図が示す通り、かつてシルバーレイクから成り上がり、ハリウッドへと移り住んだ者=セヴェンスを見つけてみれば、彼はなんだかよくわからんカルト教にはまり、生きたまま地下に埋まって永遠の命を手に入れるつもりでいる。
正直、馬鹿じゃねえの? と思ったはずだ。
結局のところ、自身が勝者か敗者かを決めるのも、ポップカルチャーから何を受け取るのかを決めるのも、自分自身に他ならない。ハリウッドの地下からはい出て、かつての元カノのポスターがマクドナルドのピエロの顔に塗りつぶされているのを見たサムはわかったはずだ。成功なんて一瞬の夢に過ぎないと。
冒頭でコミック・マンの書いた同人誌を読み、「アンダー・ザ・シルバーレイクへ……」と深く地下に潜った彼は、すべてが終わった後、手に入れた道具を並べてテレビを見ている。そこでは古い映画が上映され、主演女優が「上を向いて生きるのよ」と自身に言い聞かせるように繰り返している。
ここで重要なのは上=空ではないことだ。サムはついさっきまで地下に潜っていた。地下から見上げて見えるのは、空ではなく地上だ。
サムは帰って来た地上で、生きる日々を楽しむことにしたのだろう。だからこそ、ホームレスの王も彼を解放したのではないだろうか。
ま、直後にヒモ化するんすけどね。働けや。

エンディングで流れるテロップの横で、犬たちの死体が揺れている。
問題は犬が何を表すかだが、敗者の鬱積で殺されるペットとしての犬のほかに、敗者自身=敗れ去った夢も表しているのではないだろうか。
今しも墓に入ろうとしている成功者が、サムに「誰にも気づかれずに人を葬ることが一番難しい」的な内容を語る。セヴェンスの死は疑問をもたれたが、共に埋葬されたサラたちの死は誰かが疑問を持ったのだろうか。サム以外に?
女優やモデルとして成功を夢見ながら、若さと美しさを消費され、後はただ消えていく女性たち。サムとその友人がドローンで覗き見た泣く女も、かつては下着モデルだったという。だが、『かつて』であって『今』ではない。
そんな名もなき敗者たち=夢の残骸が、ぶらぶらと木にぶら下がって揺れている――なんとも怪しい魅力に満ち溢れている街だ。

『ノワール』という言葉がいまいちピンとこなかったのだが、本作を見てこれかと思いました。ミステリーだと思っていたら、wikipediaは『コメディ』に分類されているし、なんだかよくわからないけど風邪ひいて熱にうなされるときの絶妙なハイ気分を楽しみたい人にはぜひおすすめです。
なんぞこれってなるけどサ。
面白かったです。

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人物紹介

●サム
本作の主人公。33歳無職。
でもって走り方が変。ふつーにとてててって走るときの走り方がとっても変で尾行には向かないと思うんだけど、とりあえずばれてはいなかったようだ。
でも愛車をしょっ引かれそうになった際はめちゃくちゃダッシュでフツーに走ってたので、やればできる子。でもやらない子。

演じるアンドリュー・ガーフィールド氏が超イケメン故に、下半身だけ露出してみたりーの、パジャマかっていう服装でパーティに潜り込んでみたりーの、寝そべってマリオプレイしてみたらめっちゃ上手いーの、とにかくとんでもないダメ男なのに許せるからゴイス。

サラを探す過程でなんやかやあったわけだが、結局シルバーレイクに居座るようなのでもしかすっとここから名を上げるかもしれない。
だが家賃は払え。

●サラ
本作のヒロインもしくはファム・ファタール的な位置づけの女性。
サムと仲良くなった晩に地下に潜る合図らしき花火があがり、翌朝には家財道具一式とともに姿を消した。

L.A.には富裕層のみが知るカルト教が存在し、その教義は『地下に墓を作り、その中で半年程度享楽にふけって過ごすことで自身を宇宙的な存在に昇華し、永遠の命を得て楽しく暮らす』的なやつ。空間的に半年も空気はもたないと思うので、半年経ったら換気を止められるとかそんなであろうか。
サラは有力者セヴェンスの三人の花嫁のうちの一人として選ばれ、サムが捜査をしている間に地下に埋められてしまった模様。なんとか行方を探りだした彼と電話で会話するも、もう二度と地上には戻れないため、残された人生を楽しむ旨を伝え、別れを告げた。

「オレンジジュースとクラッカーは誰も知らない魅惑の取り合わせ」と言いながら、リス食いでもっさもっさクラッカーを食べる姿がめっちゃかわいかった。わざとクラシカルにしたメイクもお似合い。
土に埋めんでもよかばいよ……。

●サムの友人
バーで会ったり自宅で会ったりと仲の良い友人。だが何をしてる人なのかこいつもよくわからん。
ドローンで美女宅を覗いたりしているのでなんちゅーかね。

●サムの彼女
いつもコスプレ姿で尋ねて来る女性。女優なのか女優の卵なのかはわからんが美人。でもスカンクの匂いに耐え切れず出て行ってからは音沙汰なし。

●コミック・マン
『犬殺し』や『フクロウのキス』など、L.A.にまつわる都市伝説についての同人誌を描いている。サムが興味を持って自宅を訪ねた翌日、自殺しているのを警察に発見された。
彼の死についての扱いも曖昧で、自宅に設置された監視カメラにはばっちりとフクロウの仮面をかぶった女性が映っているのだが、警察は自殺と断定しているしどっちなのかわからないようになっている。
個人的には秘密を知り過ぎたので謀殺されたに一票。秘密の地図に付属していた菓子だかフレークだかは五年も経っていたのでさすがに腐っていた模様。腐ってなかったらそれはそれで問題。トゥインキーかよってなるわ。

●ミリセント
セヴェンスの娘。パーティに紛れ込んだサムと共に貯水池に入り、彼にサラのしていたブレスレットを渡した直後に射殺される。
まさか彼女が殺されるとは思ってなかったので、いきなりの展開にポカーンだったが、やはり秘密に近づきすぎたので謀殺されたとかでしょうか。
というか謎や陰謀うんぬんがサムの妄想だったら、『犬殺し=人殺し』の図式でサムはとんでもない連続殺人犯だった的なオチもつくんじゃないのかと想像するのもまた一興か。

●ホームレスの王
その名の通り、紙で作ったような金色の王冠を被る王様。地下はもとよりL.A.の暗部に深く関わっているようなそぶりを見せる。
きらびやかに見えるハリウッドを裏で牛耳るのがホームレスという、本作の象徴ともいうべき存在。
あれかな。手下が24時間見張ってんのかな、ジェームズ・ディーンの胸像。
ニュートン=重力、つまりは地下とかそういうやつなんすかね。

●三人娘
少なくともサラたちセヴェンスの花嫁組に加え、終盤でサムが対峙するどっかの富豪の三人娘、そしてバルーン・ガールを含む三人娘が存在する。
バルーン・ガールたちもいずれは地下に埋まってしまうんでしょうねえ。美女埋めんでもねえ。

●ジーザス
いかにも怪しく出て来る『ジーザスと三人の花嫁』だかそんな名前のバンドのジーザスさん。
別になんら怪しい人物ではないのだが、見た人にはわかる印象深いシーンの生みの親。だがなんで映した。

●監督
デヴィッド・ロバート・ミッチェル氏。
凡人にはよくわからない映画でしたが、とても面白かったです。ありがとうございます。

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