映画『新感染 ファイナル・エクスプレス』ネタバレ感想。釜山行き特急列車は死の臭い。

新感染 ファイナル・エクスプレス 映画 ホラー

原題:Train to Busan
2016年の映画
おすすめ度:☆☆☆☆

【一言説明】
ゾ●ビ特急、発車いたしま~す。

新感染 ファイナル・エクスプレス 映画

Netflixにてしばらく前から見かけていたものの、タイトルから漂うイロモノ臭に、長らく手を出さなかった『新感染 ファイナル・エクスプレス』。サムネイルを見る限り、密室と化した車内で、頭文字Zのヤツらがパンデミックするんだろうなと推察され。
Zが好きか嫌いかでいったら、もちろん好きだよという、自分の気持ちに正直になる → 再生 → めっちゃ面白い → 邦題……。
の四連コンボです。

主演はコン・ユ氏。韓国映画はほとんど見たことがなかったのですが、非常にしゅっとしたイケメンさんでした。彼の娘役の子役さんもかわいらしく。
個人的には、戦うお父さんことサンファ氏を演じられたマ・ドンソク氏がドストライクだったことをご報告申し上げます。かしこ。

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あらすじ

映画界にヤツらが登場してから、早一世紀近く。
様々に――手を変え品を変え、数多の手法で取り上げられ、今や一大ジャンルを築いている、人類のアイドルスター。

なりたいか、なりたくないかでいったら、Zッタイになりたくない系のアイドルながら、今回は、韓国は釜山行きの特急列車内にて、大発生しやがったみたいです。

生き残れるかなぁ……。
電車はなあ……。
狭いしなあ…………!

※以下ネタバレです。若干のグロテスクな描写を含みます。未見の方と苦手な方はご注意を。

 

 

 

 

感想

食わず嫌いしてごめんナサイ。
めちゃくちゃ面白かったデス。

それこそ星の数ほどありそうなZ映画にて、戦いの舞台は電車関連施設のみという潔さ。あんな狭い車内でパンデミックとか、一体どうやったら生存できるんだというハラハラ感が面白さに大貢献。
そして今回修復されるのは、関係が壊れそうな現カノもしくは過去に壊れた元カノ……ではなく、親子の絆というのが、なんともハートウォーミング。これぞ韓国映画ってな具合。

二時間弱の尺の中に、親子愛や家族愛、友愛、恋愛、姉妹愛など愛を詰め込み、ホラーあり、アクションあり、ほろりあり。ついでに内臓もぽろり……はしなかったけれども、パニック映画にはつきものの、本当に怖いのは人間……という普遍的なテーマもきちっと描き、一大娯楽大作に仕上がっているのは本当にお見事です。

ジャンルはどう見てもZ映画ながら、作中では一度も『Z』という単語は出てこず。感染者とか、あいつらとか、他の言い方に置き換えられていました。
宣伝の場でも、俳優さんたちは『Z』という単語を直接口にしないように気をつけられたとのこと。
たしかに、どちらかというと本作の『Z』は、動く死体というより、『ワールド・ウォーZ』のような、とにかく他者を感染させることに命をかけていそうなパンデミック重視型。凶暴性と俊敏さも同様で、生きてる人間めがけてわしゃしゃしゃーーーっと数で襲いかかってくる絵面は迫力満点。
そりゃー、あっという間に都市が陥落もするわ。
ワクチン開発とか、絶対ムリだね、こりゃ。

どこぞのサイトで見ましたが、日頃からゾンビ映画に親しみ、終末への意識を高めている人は、なんと今回の新型コロナに対してもある程度の心構えが出来ていたのだとか。
メメント・モリとはよく言ったもので、死を想え。終わりを想え。Zを想え。
『Z』映画の意外な効能に驚いた次第です。はい。

人物紹介

●ソグ
ファンドマネージャーとして、世間をブイブイ言わせている系の主人公。
自己中の中の自己中。キング・オブ・他人どうでもいい男
軍のコネを使い、自分と娘だけこっそり助かろうとするわ、ドアを閉めてサンファさんを見殺しにしようとするわ、過去に贈ったのも忘れて、娘の誕生日に二台目のWii本体をプレゼントするわ、正直、中盤くらいまではコイツ死んでもいいやと思っていました。

が、その後他人と協力しつつ、娘を守る過程で改心。シュッとしたイクメン風の外見に中身が伴ってくるに連れ、ああやっぱり死んでほしくないなあ……スアンと二人、無事に釜山に到着し、続編でも活躍してほしいな……と思っていたのですが。

死んだ。
死んだ……。

ですよね。

作品の煽り文だかに、『愛しい者が感染したとき、人は一体どうするのか』的な内容があったので、娘がいる時点で、父ちゃんが感染すんだろうなあと思っていたら、案の定だったよ!

たしかにがんばってたはいました。
けれども。
腕は守ったけど、手のひらは守ってなかったからなあ!
『ワールド・ウォーZ』のジェリーさんを見習っていただきたかったですね。腕をガムテで保護するなら、手のひらで攻撃を受けなくてもいいようにしておけ、という。
車内だから雑誌の調達が難しかったんでしょうが、脱いだスーツを腕にぐるぐる巻いたら行けたのではないでしょうか。
行けないか。そうか。

最終決戦にて、ラスボスと化したおじさんに噛まれて感染。娘スアンが生まれたときの喜びを思い出しながら、凶暴化する前に自ら身を投げ、娘の命を守って散った。
あっぱれ……だが、冷静に考えると、地面に落ちたあとで『Z』として起き上がったんだろうなと思うと切ない。
だがそのエグさが『Z』の長所でもあるわけで、好きか嫌いかで言ったらやっぱり好きだわー。と告白してみます。

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●スアン
ソグの一人娘。仕事人間の父親に放っておかれ、誕生日にせめて母に会いたいと列車に乗り込んだら、とんでもねー目に遭った不憫な女子。
父親のために歌を練習 → 発表会に父来ない → がっかりして歌うのをやめる → 動画を見た父に「最後までやり遂げろ」と説教される → ソグこの野郎。

だがさすがは主人公の娘。なんのかんのと最後まで生き残り、無事釜山へとたどり着く。
そこで防衛隊に殺されそうになるものの、父を想い、彼のために練習した歌を口ずさんだことで、相手が生きている人間だと確信した軍が保護に向かう → エンドクレジット、という感動的結末を迎える。
続編は数年後が舞台だそうですが、もしかすると成長したスアンがヒロインとして登場するのか? だったら見るのはやぶさかではないのだが? ほーん?

●サンファ
ソグたちと同じ列車に乗り合わせたスーツの男性。
どう見ても堅気ではないような気がするのだが、多分堅気。

妊娠中の妻がトイレに入っているところで、感染者に襲われ、慌てて妻とともに車両を移動。ドアの向こうにいるソグに一瞬見捨てられかけるも、なんとか入り込んだ。
その後、同じシチュエーションかつ逆の立場で居合わせたときは、即座に「こっちへ来い!」とソグを助けてくれるので、顔は怖いがめちゃいい人。
しかも見た目通り武闘派で超強いとくるので、惚れた人多数ではなかろうか。

が。いざ車両を超えて妻とスアンを助けにいくぞ! となった際、なぜかスーツを脱ぎ捨て、たくましい二の腕をむき出しにして決戦の場に赴くという謎の行動を取る。
噛まれたら終わりなのに、噛まれる場所を増やしてどうするの?
  ↓
噛まれる前に殴りゃいいんだよ!
なんという脳筋漢気。

だが結局、押し寄せる感染者たちを足止めするため、自らが犠牲となってドアを守っているうちに、むき出しのままの手を噛まれてしまう。
たしかに手のひらまでぐるぐる巻きにしたら、作業しづらいし、とっさの行動も取りづらいしでアレなんですが、なにか他にいい手はなかったのだろうかと考えてしまう。
最期はソグに妻とお腹の子を託し、「子供の名前はソヨンだ」と言い残して死亡。
……でも多分というか、確実に感染者の仲間入りを果たしたのだろうと思うと、やはり『Z』はそこがロマンなのだ。そうなのだ。

●ソンギョン
妊娠中のサンファの妻。
お腹は大きいが、まだ臨月は遠いのか、感染者に追われて全力疾走したり、荷物棚によじ登ったりと、アクロバティックな動きを要求される。
お腹の子は大丈夫かと心配になるが、わりとけろっとしているので母は強し。

夫が犠牲となったあとも、スアンをフォローしつつ、ソグとともに釜山行き最終列車に乗り込む。
その際は、背後を山盛りの感染者軍団に追っかけられながら、足場の悪い砂利道を全力疾走 → 走っている列車に乗り込むという、あんた本当に妊婦さんかいという活躍を見せる。
まさにこの夫にしてこの妻あり。
最後は無事に釜山に到着。スアンとお腹の子を含めると、生存者わずか三名という結果を残し、なんともやるせない……けれど温かなエンディングを迎えるのだった。あっぱれ。

●ジニとヨングク
部活動に参加中、列車に乗り合わせた高校生の爽やかカップル。
次々と高校の仲間が感染していく中で、二人だけ生き残るも、二度目の釜山行きに乗り込む途中で離れ離れに。
無事にソグ組に合流したヨングクと違い、他生存者組に合流してしまったジニは、感染の恐れがある人間は、たとえ生存者でも見捨てようとする人間の醜い部分を目の当たりにする。
その後、無事に再会できたものの、エゴ組の代表ともいうべきおじさんのせいで、ジニが感染。彼女を残していけなかったヨングクも、ジニの手で感染……という悲劇をたどる。好感度の高いカップルだっただけに、この結末は切ない。

ちなみに、ソグ、サンファと合流したヨングクは、おじさん二人が脱ぎだす中、一人だけきっちりジャンパーを着込んでいたので、さすがは今どきのZ事情に精通しているというべきか。
やはりZ相手にむき出しではいかんのだよ。

●老姉妹
同じく車内に乗り合わせた老年の姉妹。
二度目の乗車時にやはり離れ離れになってしまい、ジニ側にいた妹は、姉の生存は絶望的だとあきらめムードだった。
が、ソグたちが車両へとやってきた際、その中に姉がいることを知らなかった妹は、乗客たちが彼らを締め出すことに反対せず → ドアの向こうの姉の姿に気づく → 自ら感染者に取り込まれる姉を目撃 → 絶望。

それだけなら、まだ悲劇と言ってよかった。
が、その後。ショックを受けた妹は、何を思ったのか自らドアを開け、生存者たちのいる車両に感染者たちを引き入れるという所業に出る。
お前……。
気持ちはわからんでもない……と言いたいが、そーれーはーあかんだろーーーと思いました。
エゴに走った生存者組には因果応報、という展開なのかもしれませんが、ちょっと自己中心的すぎやせんかなー。

●ヨンソク
ソグたちの合流を拒否した生存者組の一人。
最初は若干の鬱陶しいおじさんだったのが、生き残るのに手段を選ばない姿勢がどんどん強くなり、こいつが合流者を締め出そうとしたせいでサンファが感染 → 車掌を餌にして感染者から逃げる → こいつが逃げ込んできたせいで、ジニが感染する → 列車を確保しようとしていた運転士を感染者の軍団に巻き込む → ソグたちが命からがら乗り込んだ列車にすでに乗り込んでおり、しかも感染していたため、ラスボスと化して襲ってくるという、大半の悲劇はコイツが元凶。
ソグはこいつに噛まれて感染したわけで、笑顔で疫病神の称号を贈りたいレベルでひどい。
まさに憎まれ役。
だが、もし自分が同じ状況に放り込まれた場合、命惜しさに似たような行動を取らんとも限らんので、なんとも考えさせられるキャラ……と言いたいが、それにしてもひどい。

●運転士
何気に作中一番の重要人物。彼が釜山を目指してひた走ってくれたおかげで、スアンたちは助かったと言える。
本編のほとんどを運転席で過ごし、後部車両がどんな状況になっているのかまったく不明な中、「私、車両を確保し、釜山に向けて走らせたいと思います」と無線で呼びかけ、有言実行する男前。
だがヨンソクのせいで感染した。
マジでヨンソクお前……。

●ひげの男性
列車に乗り込む前に、市中の燦燦たる有様を見てきたらしく、トイレに隠れてガタブルしていた男性。
その後、ヒエ~と言いながらもソグたちと行動をともにし、絶対に音を立てたらだめな状況で、案の定音を立てるという損な役回りを務める。
観客のイライラを集めやすいポジションだったが、最後は身を挺してスアンとソンギョンを助けてくれたので、最終的な株価は上昇傾向のまま終わったと思われる。

●列車の職員
感染者に食べられるためにいたような人々。
とても具合の悪そうな女性を介抱したのが運の尽き。新幹線は新感染と化して、物語の幕が開いた。
それにしても、真っ青な制服は、あまりおしゃれとは言い難いと思うのですが、なんで列車の制服ってああいうのが多いのだろうか。有事の際に目立つからかな?

●ソグの母
電話口にて、「かゆ うま 」並の恐怖を与えてくるソグのおかん。
彼女の言葉にて、ソウルが壊滅したであろうことを観客に知らしめてくれる。

●元凶の会社
冒頭にて、ソグとその部下が裏工作して存続させた何かの会社。これが問題のウィルスを漏洩させてしまったために、今回の悲劇が起きた。
じゃあソグたちが悪かったのかというと、そうでもない。でも、もし救済しなかったら、今回の悲劇は起きなかったのではと聞かれれば、違うとは言えないのが『Z』映画だなあぁ。

●鹿
冒頭にて、ウィルスにかかったらしき描写のある鹿。
動物にも感染するだと……?
鳥とかネズミとかにも感染するとしたら、かなりやばい。
せめて、犬と猫はやめたって。

●釜山
『Z』映画にはつきものの、清浄の地。多分続編では壊滅しているか、壊滅するかのどっちか。
スアンのおかんは無事だろうか。連絡がつかないけど。

●感染者たち
本作の『Z』。古き良き、動きゆっくり、のんびり死体……ではない。『ワールド・ウォーZ』のような、増殖することに命かけてる系かつ、とんでも動き速い系であり、鬼のように生存者めがけて突っ走って来る、非常にはた迷惑な『Z』ちゃんである。
多分、時間と共に筋力は衰え、いずれは動きもゆっくりになるんだろうけど、噛まれて一分程度で発症するため、列車などの狭い場所で発生した場合は、感染爆発を防ぐ手立てはほぼ皆無。
果たして何がどうしたらこんな奴らが生まれるのか、皆目わからん。
生物兵器開発の目的とか……?
あまりに無理ゲーすぎて、昔はよかった……と昔話をするおじーちゃんみたいな気持ちになっております。昨今の『Z』界隈は殺伐としとるのー。

●監督
ヨン・サンホ氏。とてもとてもおもしろい映画をありがとうございます。次回作も楽しみにしております。

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