原題:The Nun
2018年の映画
おすすめ度:☆☆☆
【一言説明】
シリーズ異例のホラーアクション。
まさかの!! 横からっ!!!
おまっ……ば、ば……馬鹿……バーカ!!! 誰だ、これ考えたやつ!
死ぬほどびびったでしょうが!!!
予告編で横から来るシーンは見ていたはずなのに(その時もヒェッとなった)、何故か本編を見るときはそれだけぽろっと忘れていたせいで、心臓が天井まで飛び出るほどびっくりした!!! まさに悪魔の所業……!
さて今回は……みんな大好き良質ホラー、死霊館シリーズの最新作! 『死霊館のシスター』をTSUTAYAで借りてきましたよ! 今度はルーマニアの修道院が舞台ですって? 設定だけでワクワクが止まらない!
主演は元祖死霊館シリーズのヒロインを演じるヴェラ・ファーミガさんの実妹タイッサ・ファーミガさん。お姉さんによく似た美しいお嬢さんです。彼女に同行する神父役にはデミアン・ビチル氏。映画『ヘイトフル・エイト』のメキシカン役で出ていらっしゃいましたね! そして彼らを案内する村人役にジョナ・ブロケ氏。映画『ELLE』で主人公の息子として出演されています。ブレンダン・ブレイザーさん系のイケメンで注目株ですわー。
あらすじ
時は1950年代。ルーマニアの山奥にある修道院で、一人の尼僧が首を吊った。
カトリックの――しかも修道女が自殺という大事件に、一人の神父と尼僧見習いが調査に派遣されることとなった。バーク神父「君、ルーマニア出身なんだって?」
見習いアイリーン「え、違いますけど」
バーク神父「ガセネタ!?」けれど
アイリーンがかわいかったから……ではなく多分神様の思し召し的な何かと判断したバーク神父は、彼女を伴い一路修道院を目指すことにした。
途中で遺体の発見者である若者フレンチーを拾い、悪路を抜けてたどり着いた先にあったのは、ゴシックホラー感満載の建物だった。
バーク神父「これ、出るやつじゃん!」も ち ろ ん 出 ま す 。
はたして三人は無事に生還することができるのか……?
※以下、ネタバレ注意。
感想
評価はともかく、興行収入はふるったらしい本作。だが聞こえてくるのは「いつもの死霊館じゃない」という声ばかり。どんなもんじゃいなと手に取ってみれば、なるほどたしかに……。
死霊館シリーズと言えば、安易なグロには頼らず、卓越した演出で観客を恐怖に導く堅実なホラー映画という認識でした。だからこそビビリにも安心して見ることができたんです。
だがしかし……『死霊館のシスター』においては、とにかく相手をびっくりさせれば勝ちだとばかりに、ポンポンぽんぽん脅かしネタを仕込みまくり、もはやびっくりホラーショーと化している感があります。
頻度!
頻度がおかしい! 五分に一回罠がある……じゃないけど、実質十分に一回くらい飛び上がるシーンがあるって、ありすぎでは? 正直そんなにびっくりしたかないわ! あんまりびっくりしすぎて、ラスト近くはリアクション切れを起こしかけたっす……。
しかも最後の地下でのシーン……完全にサイレントヒルではないだろうか。静止してるナースの間をアレするシーンではなかろうか。
死霊館にそんな要素求めてねーから!!
(↓筆者のトラウマ『サイレント・ヒル』。主人公に同行した女性警官が●▽するシーンはモノホンのトラウマ。こんな映画だって知ってたら見なかった……!)
というわけで超おすすめ……ではない。同じ死霊館なら二作目の『エンフィールド事件』を推薦するけれども、とりあえずびっくりしまくって怖いのは確かだった本作。なかなか面白かったです。記事冒頭の横入りシーンのように、今回も一際目立つ秀逸な恐怖シーンが存在していましたしね! あくまでスピンオフとして楽しめばいけると思います。
人物紹介
●アイリーン
ルーマニア出身で土地に明るいから……という名目でバーク神父に同行させられるも、まったくそんなことはなかった主人公(結局彼女を推薦したヴァチカンの思惑は謎のままだった。なんでや)。
元祖ヒロインのロレイン同様、幼いころから不思議な力があり死者が見える。何らかの血縁関係あり……なのか? わざわざ実妹を起用したのも製作者の意図ありと見るべきか。
中盤から出てくる修道院内の尼僧たちは、実は全員すでに死亡しており、アイリーンの目にしか見えていなかったことが後に判明する。つまり死者に囲まれて飯食ったり眠ったりをしていたわけで、冷静に考えると怖すぎるので考えないようにしている。でも考えちゃう。こっわ。
可憐な容姿であるにも関わらず、墓に埋められた神父をスコップでやっせやっせと土を掘って助け出したり、背中に悪魔の力でペンタグラム型の傷をつけられても祈るのをやめなかったり、最後はヴァラクと水中戦に挑んで勝利したりと、これでもかとたくましさを見せつけてくれる。
たくましいと言えば彼女の腹筋。ヴァラクに憑依されかけたときにマイケル・ジャクソンばりの前傾姿勢を見せてくれる。『風の谷のナウシカ』で宮崎駿氏がメーヴェのベルトを細く描き過ぎて「ナウシカ腹筋すごすぎぃ」と発言したらしいが、多分バッキバキに割れてないとあの姿勢で長時間キープするのは難しい。さすがヴァラクに一泡吹かせた女傑やで!
彼女が神への誓いを立てると言ったときは本当に残念でした。フレンチとフラグを立てたと思ったのになー。思ったのになあーー!
●バーク神父
ヴァチカンから依頼を受けて調査に派遣された神父様。渋い男前。有能……そうに見えて、実は最後までほとんど役に立っていない人。というかお前はほいほい罠にはまる以外に何かをしたか……?
そ し て 正 直 死 ぬ と 思 っ て た。
だから最後に生還したときはまさかの心境でした。えっ……あなた生き残りなさるの? 過去に少年の悪魔祓いに失敗したとか、完全な死亡フラグを引っ提げていたのに、えっ、生き残りなさったの? ほんげー。
生存権を勝ち取ったのは見事だが、なんというかもう行動がアホ。
だって深夜だぜ? しかも尼僧が自殺した曰く付きの修道院。そこにあの日あの時救えなかった確実に死んだはずの少年・ダニエルが現れたら、普通ツイテイキマスカ? イキマセンヨネ? しかも墓地だぞ!?
それ絶対怖い目に遭うやつ!!
素人だってわかることを、何故こいつはのこのこ歩いていきやがるんだ!? どんだけホラーあるあるだってんだ! 急にIQも警戒心も目減りするってどうなってんだ!
ああ、そうだよ! おまえらがほいほい行かないと、怖いことが起こらなくて観客は退屈だよ! でも行ったら行ったで怖いことになるに決まってるじゃねーか! そして案の定怖いことになったじゃねーか! くそっ!!!
……というジレンマを求めて人はホラー映画を見るのではないでしょうか。
彼がダニエルだと思った何かに襲われて、あらかじめ掘られた墓穴に背中からドーンって行ったときは、怖いの通り越して逆に笑った。
あとこういう映画での十字架パワーというか、神様パワーの設定がいまいちわかりません。「悪魔出てくんなや」と修道女たちが必死に祈っていたわけですが、果たして効いてたのか……? 効いてないっすよね? よりによって修道院に悪魔が爆誕してるわけだしね?
他の映画でも結構な頻度で、教会に悪魔が現れ神父さんや牧師さんが惨殺されてたりするけど、それって教会の意味あんのけ……? 信仰心が足らんのだよ、とあちらさんならあっさり言いそうですが。
まあ今回は『元々悪魔のいた場所に修道院を建てた=そもそも土地が呪われていた』という図式だからしゃーないという扱いなんでしょうな。
というかヴァチカンもヴァラクが封印されてることを知ってたなら、過去に悪魔祓いに失敗した神父を寄越すなと言いたい。人事部が仕事してない。
●フレンチー
「チー」と伸びてる字面のせいで、怖いシーンでも字幕でちょっとだけ和やかになる……ねーよ。
てきり本名なのだと思っていたら、「モーリス」という名前が別にあると判明する。パリのアメリカ人ならぬルーマニアのフランス人だったから「フレンチー」と呼ばれてたんですね。へー。
死霊館ファンには「モーリス」が相当衝撃ポイントらしいのですが、細かいところをすっかり忘れてたからなんのこっちゃでした。
モーリス=一作目の冒頭で、エドに悪魔祓いされていた人物その人。
ああ、あの動画!!
エドが講義の最中に、「実際に悪魔に憑かれた人ですよー」と紹介していたのが、このフレンチーことモーリスだったんですね! なんかもう別人っていうか、別人が演じてるんだから当然だけど、全然わからなかった……!
実はフレンチー氏、ヴァラクに首をつかまれて柱にぶっ飛ばされた際、憑依されていたというオチがつきました。
本編より数年後、悪魔憑きとして大暴れ。その後はエドとロレインによって無事に救われたようですが、今度はエド夫妻がヴァラクに目をつけられた模様。
エドには「農夫だから教養もないよ」とか言われて散々ですが、本編の彼は普通に頭がよさそうに見えました。
三人衆の中で一人だけ聖職者ではないため、フレンチーは物理攻撃担当。何せ死霊を銃でぶっ飛ばすからすげーぜ!
銃効くんだ!?
映画というよりゲームにしたほうが面白かったんじゃあるまいか……。
アイリーンとはフラグが立ちそうで立たなかったけど、続編が作られるようなので、またこの三人が出てきてくれたら嬉しいですね。期待しております。
●ヴァラク
みんな大好き、エンフィールド事件での怖がらせ担当。その存在感故に人気が出過ぎて、ついにスピンオフまで作られてしまった悪魔さん。何故尼僧の恰好をしているのかという謎が本作で解明されます。
はるか昔……このあたりの領主が悪魔信仰に傾倒し、ついにヴァラク召喚に成功した。だが間一髪でヴァチカンの騎士たちが間に合い、キリストの血を垂らして悪魔を地下に封印。城の跡地に修道院を建て、尼僧たちが日々の祈りによってそれを抑えていた。ところが戦争で爆撃を受けたことをきっかけに封印がゆるんでしまい、ヴァラクがその隙を逃さぬはずがなく――悪魔は生き物に憑依しないと現世で行動できない。だから尼僧に憑りつきその体を奪った……というのが一連の流れ。
解せないのは、尼僧に憑りついたのならさっさと修道院を出てしまえばいいのに、なんでそうしなかったのか。アイリーンがたどり着いた時点で修道院内が全滅していたのであれば、彼を抑えようと祈りをささげる人間もいないし、とっくに外に出られたのでは?
それとも力のある人間に憑りつこうと、アイリーンが来るのを待っていたということなのか。……それにしては最後に憑りついたのはフレンチーことモーリスだし、よくわからん。
多分、アイリーンの機転によってキリストの血をかけられたために本体は地下に再封印。モーリスに残されたのは小さな窓みたいなもので、本作のように大っぴらには出てこられないけど、彼を操ってちょこちょこ悪さはできるよ……的な感じなのだろうか。推測の域ですが。
●修道院長
いざ修道院の中に入るも「誰もいないなー」と首をかしげる面々の後ろに、いつの間にか椅子に座って登場する怪しい人物。ローブの中が絶対に見えないのが、『ロード・オブ・ザ・リング』のナズグルさんに似ていてカッコいい。
他の尼僧たち同様、彼女もまた死人だが、この人のみバーク神父とフレンチーにも存在を認識されている。おそらく幽体ではなく、遺体を直接ヴァラクに操られていたためだろう。すべてはアイリーンを地下へと導くため。ほぼ白骨と化した肉体にローブをかぶせ、傀儡さながら死後も肉体を凌辱したのだ。さすが悪魔。やることがえげつない。
●尼僧たち
冒頭の二人以外、全員死者として登場する。最初の一人がヴァラクに乗っ取られ、以後次々と、おそらくは一人ずつ殺されていった模様。修道院長も早い段階で命を落としたのだろう。最後はアイリーンが見た幻覚の通り一堂に会して祈りを捧げるも、ヴァラクの猛威によって全員が死亡してしまった。
地下のアレを見るに、彼女たちの魂はヴァラクによって囚われている。おそらく死霊となってアイリーンの前に現れたのも、彼女をヴァラクの元におびき出すための悪魔の策略だったのだろう。
だが、それでも幾たびかアイリーンを危険から救ってくれたように、死後も魂は戦い続けている。ラストの平穏はまさに救いと言える。
●資料館のシスター
間違って上記の単語で検索をかけても、ちゃんと『死霊館のシスター』の検索結果が表示される。google先生って素晴らしい……というか、一定数いるってことですね、『資料館のシスター』勢が。
なんとなく戦時下で貴重な文献を守ろうと戦い抜いたシスターのハートフルコメディを想像してしまうのは自分だけでしょうか。それはそれで面白そうだYO。
●監督
コリン・ハーディさん。新進の監督さんのようで、作品に『ザ・ハロウ/浸蝕』というのがあるらしいが未見です。
なんのかんのと、飛び上がったり飛び上がったり悲鳴をあげたりで楽しませていただきました。ありがとうございます!
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