『アイム・ノット・シリアルキラー』ネタバレ感想。Notスリラーbut青春映画。

サスペンス

原題:I Am Not a Serial Killer
2016年の映画
おすすめ度:☆☆☆☆
グロ度:☆☆☆

【一言説明】
シリアルキラーは二度正体を現す。

アイム・ノット・シリアルキラー 映画

作中で死体処理を行っている最中に、臓器がどどどっと台の上に落ちるシーンがあるんです。その時に映される肝臓が……まさにスーパーの精肉コーナーに並んでいる鶏レバーそのもの!
「うわっ……私の肝臓、鶏レバーに似すぎ……!」
ってなくらいに似ている……!!
たしかに同じ器官っちゃ器官なんですが、なんかこう……鳥類と哺乳類なんだから、もっと差異があるんだろうと勝手に思っていました。思わず右腹部に手をやり、「そこにいるのかい……?」と尋ねてしまった次第です。

さて本編ですが、結論から言ってめちゃくちゃ面白かったです。
人によって好みが分かれる映画だとは思いますが、筆者の好みにはドンピシャでござんした。
『かいじゅうたちのいるところ(2009年)』の子役マックス・レコーズ君が主人公を(イケメン!)、彼の隣人を『バック・トゥ・ザ・フューチャー(1985年)』のドク役クリストファー・ロイドさんが演じております。

スポンサーリンク

あらすじ

アメリカのとある片田舎。そこで被害者の臓器の一部がなくなるという猟奇的な連続人事件が発生した。

町の葬儀屋の息子ジョンは、母の手伝いと称して大好きな遺体の処理を喜んで共に行っていた。
一体、犯人は誰なのか……近所の女の子の熱視線よりも人事件が気になるジョンは、今日もいそいそと町を行くのだった。

やがて数週間が過ぎたある日……ついにジョンは怪しい人物を発見する。
ハロウィンの夜、一人コソコソと街をうろつく老人。
怪しい。
しかもそいつはお隣に住むクローリーじいさんと、釣りに出かける約束を取り付けていたのだ。

街はずれ! 二人きり!! 人気なし!!

「これは……らいでか!!


二人の後をつけるジョン。
果たして彼はシリアルキラーの魔の手からクローリーじいさんを救えるのか……!?
若干ワクワクしているように見えるのは気のせいなのか……!?

※以下、ネタバレにつき注意
本作だけでなく映画『ディープ・ブルー(1999年)』のネタバレも含まれております。

 

感想

まさかの中盤でクリストファー・ロイド氏が退場か!? と焦った本作。ポスターにも主役を差し置いてあんなにでかでかと載っていたのに……。
思わず『ディープ・ブルー』を思い出し、名優サミュエル・L・ジャクソン氏が実にあっさりぱっくり食べられた時のような、悲劇の再来に構えた次第。
公開前のインタビューで、インタビュアーがサミュエルに「君が登場したときは場内で拍手がわいたよね!」とか意気揚々と言っていたのにあの末路という。

※『ディープ・ブルー』。1999年のサメ映画。サメの遺伝子組み換え研究をしていたら、サメが凶暴化して研究所内の人々が次々とご飯になる。

Amazon.co.jp: ディープ・ブルー (字幕版)を観る | Prime Video
太平洋上に建造された、海洋医学研究施設(アクアティカ)。そこでは、凶暴なマコシャーク(青鮫)の脳組織から新薬を製造する研究を行っていたのだが、研究を急いだスーザン博士が鮫のDNAを操作したために、サメは巨大化し、高度な知識を持つ新種と化して...

ところが。

たしかに……奴はった。

クローリーじいさん、連れの老人を。


「……なん……だと……??」
ジョンもポカーンだが、視聴者もポカーンである。
なんか今……手が伸びなかったか……? クローリーじいさんの腕がナイフみたいになって、相手のじいさんを刺さなかったか……?

……。
あっ、これ……普通のサスペンス映画じゃねえわ……。

ジョンの観察日記によると、クローリーじいさんはどうも人ではないらしい。宇宙人的なアレであり、殺した相手の臓器を奪って自分の臓器と入れ替えているという。足が悪くて踊れなければ他人の足を、内臓の調子が悪ければ該当する内臓を。めりめりってな感じで自分のを引っぺがし、新しいものをはめ込むのだ → 完全にヤバいヤツ。
普通なら絶対に近づくべきでない案件だが、もちろん我らがジョンには関係ない。
シリアルキラー? 
どっこい、こちとら社会病質者だぜ!
ジョン君は意気揚々とお隣を訪ね、高齢の隣人夫妻を気遣う少年を演じつつ、陰で「お前のことを知っている」的な告発文をさらっと車に書き残す。

陰・湿っ!

おかげで一時期人は止んだものの……クローリーじいさんの体調はどんどん悪くなり、ついにはジョンの身近な人物までが犠牲に……。

さてさて、ジョンVSクローリーの明日はどっちだ!??

人物紹介

●ジョン
花の16歳。長髪が鬱陶しくもお似合いなティーンエイジャー。まだ免許を持っていないのか、移動手段はチャリか徒歩という等身大のミラクルボーイ。
地元警察が足踏み状態に陥っている最中、シリアルキラーの正体をただ一人目撃する。
「通報? しないね。何故なら僕は、社会病質者だから!」

しろよ……。
したら秒で解決したと思われるぞ。

だがしかし。何せ相手は宇宙人。その戦闘能力は未知数ゆえに、地元警察はもしかすると37564の憂き目に遭ったかもしれず、やはり社会病室者としては己が手で引導を渡さねばなるまい。

映画の予告編では「シリアルキラーvs社会病質者!」と大々的に煽っていたので誤解しがちだが、実はジョン君、根はまとも、かつ正義感もある普通の少年。
「僕はいつも逃げてきたけど、一番逃げなきゃいけない状況でどうしても逃げ出すことができない」とのたまう彼は、普通を通り越して、とってもいい子。
自分のせいでカウンセラーが死んだことを知り、クローリーじいさんとの対決を覚悟する場面は本気で熱い。

その死体ラブ具合から将来が心配されていたものの、最後は母親とともに、正体を現したクローリー=宇宙人と戦い勝利。共通の秘密を母と分かち合い、心を通わせたジョンはもう大丈夫。ラストの笑顔がそれを証明している。
おそらくは仲たがいした友達とも仲直りできるだろうし、ジョンサイドはハッピーエンド。

●クローリーじいさん
ジョンの良き隣人……かと思いきや、実際には『良き』でも隣『人』でもなかった宇宙人。まさかの宇宙人。
互いに正体を知った&知られたことがわかった後、教会のシーンにおいて、驚愕の距離の近さを披露する。さすがノット地球人。パーソナルスペースの概念が皆無だZE!

海外版ポスターで、雪の中を歩くジョンの向かい側から化け物みたいな影が伸びてるやつがあるんですが、「なるほど、これはシリアルキラーの内面を視覚化しているのだな?」と思っていたら……そのまんまだった。内面じゃなくて外面だった。
察するに彼は液状化できる寄生型の宇宙人で、血液の替わりに血管に入り込んで神経系統を奪うことによって被害者に成り代わるみたいなタイプなんですかね。知らんけど。

本作のジャンルは、ジョンを主軸に据えれば青春映画だが、クローリーを主軸にするならラブストーリーと解釈できる。
一人の女性を愛し、彼女のそばにいたいがために、他人に手をかけ続けた男。
若い肉体に乗り換えようと思えばできたのであろう。でもしなかった。あえて年老いた肉体にとどまり続けたため、必要以上の犠牲者を出す羽目になった。
何故か?
別人になったのでは意味がない。それでは妻に愛されない。彼女と共にあるためには、どうしても彼はクローリーで居続けなければならなかった。だからした。
エゴ満載。
タイトルはそんなクローリーの必死の訴えであるとも言える。
「俺は人鬼ではない」
快楽じゃない。愉悦のためでもない。
愛ゆえに殺すのだと。
だから人鬼などと呼んでくれるなと彼は謳う。

実に身勝手。だがその身勝手さがいい。
彼が若い頃の妻と出会い、彼女を愛していると気づいたときの下りは、涙なしには語れない名場面だ。

名場面と言えば、ジョン友の父親をしてハラワタを引きずり出すシーン。ヘッドライトの中で臓器を一心不乱にもぎっているお姿は、もはや狂気を通り越して神々しさすら感じたYO。
やはり、クリストファー・ロイドさんは最高なのだ!

●ジョン母
葬儀屋として日々死体を処理するおっかさん。猟奇な死体にも眉一つ動かさず淡々と解体する姿はまさに職人。
常々息子がアカンと思っており、いよいよ最近アカンことになってきたと思うようになり、これはアカーンと思ったら、地球外生命体の襲撃を受けた人。でもそれを退治した人。母は強し。

●ジョン父
わずかな時間で本人の出演がないにも関わらず、一家三人を失望させるその手腕に乾杯どころか出てくんなバァァカ。
出番がないのにヘイトNo.1という、ある意味伝説的人物。

●ジョン姉
本編にはあまり関わらなかったけどなんか印象深いお姉ちゃん。兄弟仲は悪くはない模様。

●ジョン友
ズッ友だと思ってたジョンが思惑ありで自分とつるんでいたことを知り、傷ついて追い出す青春の一幕を見せつけてくれたナイスボーイ。ちょいぽっちゃりなのもナイスなボーイ。はよ仲直りしろ。

●ケイ
クローリーじいさん最愛の人。結局最後まで何も知らなかった。
善良なご婦人なのに夫は宇宙人だわ、隣の少年に自宅に侵入されるわ、挙句鈍器で頭を殴られるわの憂き目に遭う。
クローリー亡き後もしっかり生きていくことを誓う元気なシニア。その魅力、宇宙レベル。

●カウンセラー氏
めちゃくちゃ不憫ないい人。
ケイを殺したと勘違いしたジョンが電話をかける → ジョンを探して回る → クローリーじいさんに出くわす → 一巻の終わり。
会うと不気味なことしか言わないジョンを煙たがっていたのかと思いきや、雪の中、寝間着姿で必死に彼を探し回るという優しさを示す。
心臓要員。
ジョン母とフラグを立てたかと思ったが、そんなことはなかった

●警察
まったくと言っていいほど描写されない町の警察。ジョンとクローリー氏が主題であるため、あえてそこは省いたのだろうが、それにしても扱いが空気。もはや存在しているのか怪しいレベルで空気。
人口に対する殺人の比率を考えたら、住民の安全確保に軍隊が出てきてもおかしくないと思うぞ。

●監督
ビリー・オブライエン氏。
観た
ことはないけど『エイリアン・プラネット』とかエイリアンものを撮っていらっしゃる方。そうかー、エイリアンかー。そっちかー。
めっちゃ面白かったです!! ありがとうございます!!

↓Amazon Video にて好評配信中。
 画像が! 怖いな!!!

タイトルとURLをコピーしました