映画『仮面病棟』ネタバレ感想。謎と伏線がちりばめられた正統派ミステリで、犯人探しに挑もう。

仮面病棟 映画 サスペンス

2020年の映画
おすすめ度:☆☆☆☆

【一言説明】
病院に銃持ったピエロがやって来て、ほぎゃー!

仮面病棟 映画

原作が面白いとの勧めを受け、たまには邦画でも見るか! と行ってまいりました、『仮面病棟』。
主演は坂口健太郎氏と永野芽郁さん。恥ずかしながら、普段は洋画ばかり見ているため、お二人を目にするのは今回が初めてでした。

暗闇から幽霊とか、体内からエイリアンとか、白夜のカルト教徒とか。
そのいずれもが出てこない映画ってのは、実にほっとするものですね!

※エンドクレジット後の映像は特になかったよ!

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あらすじ

一晩、当直室で待機しているだけの簡単なお仕事です。
若き医師、速水秀悟が紹介されたのは、実になんてことのないアルバイトのはずだった。
先輩医師、小堺司の代わりに、療養病棟で一晩当直をするだけ

小堺「大丈夫、単純な仕事だから」
理学療法士「割のいい仕事っすよね」
看護師「おそらく何もないと思いますので」
速水「そういうこと言うの、やめてくれますか」
次々と積み重ねられるフラグに、戦慄する速水医師。

そして深夜……。
突如鳴り響く内線電話によって、安穏とするはずだった一夜は、はかなくも崩壊していくのだった。
ほら見たことか!

※以下ネタバレ。犯人やトリックについてもネタバレしています。未見の方ご注意。

 

 

 

感想

タイトルにある『仮面病棟』の『病棟』というイメージから、想像したのは『チーム・バチスタの栄光』のような、とんでも大きい病院の一部。
「●●教授のご回診でっす」
的な感じで、大勢の人が物々しく移動し、物々しく去っていく、そんな病棟。
そこを占拠するとなると、『ダイ・ハード』のような、それはもう、いかついあんちゃんねえちゃん軍団が必要となるだろうな……。そして主人公が、どうやったらあいつらの目をかいくぐって薬品保管庫にたどり着き、入り口を爆破するための爆薬を作ったらいいんだ……的葛藤をするような。
そう。これはもう、ミステリと言う名のアクション!
  ↓
全然違った。
思った以上に、こじんまりとした病院だった。それこそ、どこの町にもひとつはあるような、病棟が一つだけという中規模な病院。診療所よりは大きいけど、総合病院よりは、はるかに小さい。
そして、立てこもり犯は一人だけだった。

ほう……なるほど。つまりは、アクションではなく、ミステリに重きを置くのですな?
いいじゃないの、大歓迎です。製作側VS観客の、華麗なる頭脳戦を披露してみせようじゃねーの! 
というか、たしかキャッチコピーには『誰もが仮面をかぶってる』とか、そんな感じのものがあったような……。
  ↓
登場する立てこもり犯。
被っているのは、ピエロのマスク。
  ↓
マスク……はっ……『仮面』……!!

という感じで、まあよく考えると、仮面=謎を表しているのは明白なんですが、とりあえずはピエロの仮面の下=犯人は誰かを当てればいいんだな、と玉虫色の脳細胞を振り絞って考えました。
  ↓
結果惨敗。

違うんですー。一応、真相と同じ怪しい人物はわかってはいたんですー。
そもそも登場人物が親切なほどに少ないし、ミステリに慣れ親しんだ脳からすれば、アレがアレしてソレかなーくらいに予想はついたんですー。
本当ですー。

けれど、筆者は最後まで、主人公の速水を疑っていましたヨ。
この人が、とんでも好青年の顔=仮面を被り、超かわゆい女子大生に、「絶対守る!」的な台詞を言っている裏で、実は計算通り! って顔してんだろ? わかってんぞ、おおん? 的なメンチ切って見てたんですが、そんなことはなかった。
『一夜限りの当直医』って完全に怪しいで → 怪しくなかった。
医者でイケメンで性格もいいとか、そんな高レアリティ人物が、たまたま一夜の立てこもり事件に巻き込まれ、たまたま同じく巻き込まれた美人の女子大生とフラグを立てるとか、そんな確率があってたまるか → あった。

またかヨ!

『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』でも、まったく見当違いの人物を犯人と当て込み、裏の顔が暴かれるのを待ちに待って待ち疲れしてたんですが、今回も同じ結果と相成りました。
おのれ……!
次点では小堺氏が真犯人で、別に妹の復讐のためとかではなく、単にお金とかそっち系の欲に目がくらんだとんでもクズ男っぷりを披露し、それこそ実は、妹の事故の原因も俺でした☆的種明かしがあり、あきれた後輩に天誅を下される……という予想をしていたんですが、そんなことはなかった。

修行の旅に出てきます。(修行=ミステリを読みあさる)

↓唐突ですが、現在読んでる『エラリー。クイーンの国債事件簿』はいいでー。
『ブエノスアイレスの屠畜人』には、ラストで膝を打ちましたよ! これぞ短編の名手。

↓『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』の感想はこちら。見事に外した推理をどんぞ。

人物紹介

●速水秀悟
イケメン。医師。性格よし。の三拍子そろった好青年。小堺医師の代役として、田所病院に一夜限りの当直として勤める。
wikiを見ると外科医とあるが、パイセンの小堺は泌尿器科医だそうで、専門違っても当直っていけるんけ? ほーん。

数か月前、婚約者が同乗する車で事故を起こし、彼女だけが死亡。
その因縁となったのが、今回の田所病院。
緊急搬送先に、一番近い田所を病院を指定するも、何故か搬送を断られ、手遅れとなった婚約者は力尽きてしまうのだった。
  ↓
だから、病院に恨みを抱いている=黒幕。
だと思っていたら、そんなことはなかった。
フツーにただの巻き込まれた人で、フツーに無力な人々を守ろうとしている好青年だった。疑って、メンゴ、メンゴ。
演じる坂口氏の魅力がサクのレツにて、きっと女性陣がきゃーとか言うんだろうなと想像。
だが、無敵の好青年かと思いきや、たまたま向かったコンビニで強盗に遭遇したうえに、腹を銃撃までされた女子に、「運が強いんだよ」と声掛けするというポンチキな行動を見せる。
運……相当悪くね? と思ったのだが、『運』を『悪運』に変えると、真相を知った後はすっきりする。

病院内の山場では、ストレッチャーにどばどばとふりかけた燃料に火をつけ、ヒロインを逃がそうとするも、なんというか思ったよりも燃え方が地味。たき火か。
天井のスプリンクラーの放出も、なんちゅーかどばしゃーーではなく、しゃぱぱぱぱ……レベルで、あれ、思ったんと違うな……ってなったんですが、そこはわざとあの程度の演出にしたのかな、と想像しました。

最後はテレビの中継画面を通して真犯人に語り掛け、魂の叫びをシャウト。たった一人を除いては意味不明な会見だったが、そこがロマン。
まさに、ただ一人君だけのために=君を守る! が果たされた結果となった。
会見の影響なのかはわからないが、数年後は都会を離れて、小さな診療所で大勢の人を診ている様子。そこに「これ渡してってお姉ちゃんが」と少女がやって来る……もしかすると、続編とかあるのかい? ほほう?

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●川崎瞳
ヒロイン……ではなく、真犯人
当初は、コンビニ強盗に巻き込まれた被害者……という位置づけだったが、よく考えると怪しい点多数女子。
・撃たれた傷が不自然。よく見ると、他の患者と同じ場所。
・ワケアリな過去持ち。
・たまたま巻き込まれたにしては、都合よく美人
そもそも撃つ必要あったのけ? という点に関しては、ピエロの真の目的が、田所病院に踏み込むこと……のカムフラージュだと考えれば合点が行く。
が、逃げろと言われたのに、「針金が巻いてあった」の一言ですんなり戻ってくるし(「ふんぬっ」つってこじ開けろや!)、「先生、これ……」と床の跡を指さして隠し部屋へと誘導するし、君確実に何か知ってるよね? と言いたい。

言いたいのだが。

速水黒幕説に傾倒していたので、上記のことは、全部後から気づいた。
本編中は、なんやかわいいこじゃのーとしか思ってなかった。

実は彼女、そもそもが田所病院に入院中の患者=臓器を勝手に盗られた人だった。
病室に名札のあった『川崎13』というのがそれで、1=ひ、3=みと読み変え、1と3=ひとみ=『川崎瞳』、という偽名を名乗った模様。
幼い頃に両親を亡くし、身体を張って自分をここまで育ててくれた、唯一の拠り所だった姉。ところが、不幸にも二人でいるところを交通事故に遭い、たまたま運ばれたのが田所病院。
折しも、病院では国会議員、国平義央の腎臓ドナーを血眼で探しており、運悪く合致したのが瞳の姉だった……という次第。
事故のせいか、それとも弱った身体に腎臓を抜き取られたショックが大きかったのか、姉は死亡。瞳も、もれなく右側の腎臓を抜き取られ、唯一術後に意識が戻った後ですべての事実を知り、復讐に燃えた……というのが真相。
病院のどこかにある、『不法移植手術を受けた人間のリスト』を探し出すため、共犯者のピエロを募り、今回の事件を起こしたのだった。

とんでもサイコ。
たしかに境遇には同情の余地がある。が、やっていることがあまりにドイヒ。
特に、共犯者のピエロに対しては、単なる道具にしか思ってないことがありありとわかり、最後は燃えるストレッチャーの混乱に乗じ、何も悪くないのにピエロまで害している。
そんな彼女が、唯一見逃したのが、速水医師。
なんてロマン……じゃねーわ。
ピエロ君がかわいそうじゃろがい。手術に関わっていたのは別のやつらなんだし、「自分もばあちゃんが同じ目に遭ってさ……」って言ってたし、す必要はなかったんじゃないかな!
自首するつもりはなかったのかな!
ちゃっかり三千万円持って行方をくらましているしな!
なんてかわゆい女子大生だ、とか思ってすっかり騙されたぞ、ク●が!

続編では伝説の犯罪者として、裏から速水医師に接触。事件解決の鍵を与えるが、結局彼女は再び闇の中に消えていく……。
という展開がきそうなんだわー。

●田所院長
てっきり医師は速水氏一人だけかと思いきや、突如どこからともなくぬぼっと現れるびっくり院長。「院長の田所です」って言うけど、いたんかい。普通は配属の時に挨拶するもんなんでねーの。

「お、お、おとなしく彼の要求に従おう……」とキョドるなど、気の弱い人柄なのかと思いきや、ところがどっこい。予告編では、「みんな死ねぇーー!」的なすんげー顔を披露していたりする。
予告編を見たのは、本編を視聴した後なので問題なかったのだが、あれはネタバレというのではないだろうか。

温厚そうな顔をして、裏で不法な腎臓移植を行う腹黒院長。
住所不定など、身元不明の人間を連れてきては、勝手に腹を掻っ捌き、腎臓を取っ払い、それを五階の隠し病室にいる特別な患者殿に移植していたそうな。
この隠し病室というのが、下の階とは確実に一線を画す格差病室。一目でVIPとわかる仕様なのには笑う。
原作についての解説を見ると、どうやら腎臓を取っ払った患者が目を覚ますのは非常に珍しいらしく、ということは、自分の臓器が悪用されたことを知ることもなく、患者はほにゃららだったかと思うと、超あくどい。
そしてストレスを口実に、長年共犯関係だった――しかも今日付けで寿退社する看護師の腰に手をまわしちゃったりなんかする、とんだ院長ダヨ!

速水医師に悪事を暴かれた後は、前述の「みんな死ねぇーーー!」状態になるも、瞳ちゃんによって返り討ちに。しかも、死後は速水医師が会見で彼の悪事を発表するというダブルパンチ。
だが医者としての矜持は持ち合わせていたようで、銃を向けられた際の最後の台詞は、「臓器だけは傷つけないでくれ。これを必要としている人が……」だった。
本来なら、鼻でもこすりつつ、「へっ、見直したぜ!」とか言ってやりたいのだが、そこに至るまでの過程がアレすぎて、なんともリアクションの取りづらいものとなった。

演じる高嶋 政伸さんは、映画『ジェネラル・ルージュの凱旋』にて、「君は……なんでそんなこと知ってるの……」の演技がパなすぎて、個人的トラウマになっております。
マジであのシーン怖すぎ。
その後登場の阿部氏、奇奇怪怪すぎ。

●小堺司
速水医師のパイセン。
どうしても外せない勤務があり、一夜限りの当直を後輩の速水に頼む。
速水の婚約者、洋子の実兄。てっきりピエロを小堺だと勘違いした速水医師、「もうやめてください、先輩!」と必死の説得をするが、全然違った。
というか、この兄ちゃん。なんと田所院長に組し、不法腎臓移植手術を手伝うというとんでもな悪事を犯していた。
お前……。
妹が草葉の陰で泣いてるぞ……!
最期は、田所病院を脱出した瞳によって、何故か手術台の上に寝せられ、胸にナイフ刺さっているという、珍妙な姿で発見される。
どうしたらそうなるんんじゃい。

●佐々木香
当直の夜に当番だった看護師の一人。秘密の腎臓移植チームの一人。
その晩限りで寿退社する予定で、「私は幸せになるんダカラー」が口癖。
瞳によれば、彼女が今日で辞める予定だったため、当直が小堺から速水に変更になっても計画を強行したとのこと。
彼女の中では、小堺 <<<< 佐々木だったのだろうか?
罪の重さとしては、執刀医のほうが上なのではあるまいか……と思うが謎。
病院に乗り込むより、後日佐々木の暮らす家に乗り込んだほうが楽なように思えるのだが。

実は開始からしばらく、ポスターにいるかわゆい茶髪女子はこの佐々木さんなんだろうと思っていました。いつ髪の毛ほどくんだい? 的な。目が節穴。

●東野良
看護師その2。見るからにベテランで、愛想がない。
「何も起きませんから。何も」と言っておきながら、真っ先に、胸にナイフが刺さった状態で絶命するなど、フラグ回収に余念がない人物。
突如上がる患者さんの大声にもまったく動じないので、これは女コマンドーだで! と思っていたら、銃を持ったピエロには普通に怯えていた。ですよね。

実は、川崎瞳=川崎13であることにいち早く気づき、それをなんと本人に耳打ちするという、お前何考えてんだなポンチキ行動を取る。
患者が突如化粧してヅラまで被って、別人を演じてたらおかしいと思えや。

●宮田勝仁
ピエロの正体。田所病院に勤務する理学療法士。序盤にちろっと登場し、病院に向かう速水と入れ違いになって帰っていく。
術後目を覚ました瞳と何度か接触。その後、濡れた瞳で「お願い……助けて……」と言われて落ちた。瞳が何を持って彼を仲間に引き入れようとしたかは定かではないが、多分院内で一番チョロいと思われた。

そして、中の人を小堺医師だと勘違いした速水医師に、「もうやめましょう? あなたは復讐がしたかった……洋子を奪った病院と、この僕とに」と力強い説得を受けるのだが、彼はこの時、一体どんな顔をしていたのだろうか。
洋子って誰、的な? ごめんなさい、違います、的な?

でもって、利用されるだけ利用され、最期はあえなく凶弾に倒れるという、まさにピエロ=道化師のような、悲しい運命を迎える。頑張ってたと思うんですけどね。
でもなんであのマスクを選んだのか。絶妙にイラッと来るんじゃが。

●瞳姉
『川崎14』として、事故後に田所病院に入院していた瞳の姉。
親戚の虐待から妹を守り、高校にも行かずに働き、妹を大学まで行かせてくれたというハイパー姉ちゃん。名実ともに妹の支えだったことがうかがい知れる。
だからこその悲劇だが。

●国平義央
国会議員。田所院長とは懇意の中で、院内にある写真にも写っている → 伏線。
『川崎14』=瞳姉の腎臓を移植され、体調も万全となったのか、意気揚々と選挙に打って出た。
その演説中を狙って、暗者と化した瞳が接近 → 速水魂の会見で復讐を諦めるという結果に。
が、田所病院の悪事は警察の暴くところとなり、国平氏も当然失脚したであろうから、復讐は果たされたとも言える。
『刑事ジョン・ルーサー』の犯罪者アリスの言を借りるなら、「誰だって、死ぬのが一番いやだもの」だが。

●コンビニの店員
運悪くピエロの襲撃に遭い、「ひぃ! ひいぃ!」と叫んでお金を差し出していたかわいそうな女性。
誰か、彼女に肉まんおごったって。

●監督
木村ひさし氏。TVドラマは映画など、多方面で活躍されていらっしゃるお方。
大変面白かったです。ありがとうございます。

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↓原作はこちら。

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