映画『マレフィセント2』ネタバレ感想。アクションの興をおとぎ話が削ぎ落とす、ミスマッチな印象の映画。

cinema_maleficentmistressofevil_image ファンタジー

gendai:Maleficent: Mistress of Evil
2
019年の映画
おすすめ度:☆☆☆

【一言説明】
まさかのアクション。

マレフィセント2 妖精
↑綿毛の妖精の資料がどこにもないため、顔がうろ覚えであることをお詫び申し上げます。八割想像で描いております。

2014年に公開された映画『マレフィセント』の正式な続編。あの稀代の悪役マレフィセントを主役に据え、お姫様の危機を王子様が救うという従来のおとぎ話展開をぶっ壊した女傑たちの物語に続きがあった!

主演はもちろんアンジェリーナ・ジョリーさん。オーロラ姫役のエル・ファニングさんも続投で、五年経った姿は大変麗しく可愛らしくのプリンセスとなっておりました。そして我らがディアヴァルには『高慢と偏見とゾンビ』のサム・ライリー氏。
フィリップ王子役は変更となり、2020年公開予定『キングスマン:ファースト・エージェント』に出演予定のハリス・ディキンソン氏が演じていらっしゃいます。

※エンドクレジット後に映像はないよ!

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あらすじ

前作でムーア国に平和がもたらされてから五年後。
美しく成長したオーロラに、隣国アルステッドの王子フィリップがプロポーズする。
「結婚してくれ!」
「もちろんよ!」
なんで五年もかかったの?
幸せに溢れる二人。だが彼らには心配事があった。
結婚の最大の障害――そう、親。
オーロラのフェアリーゴッドマザーのみならずアルステッド国の王妃イングリスもまたなんちゅーかかんちゅーか、有り体に言えば超怖いのだった。
「……じゃあ報告してくる」
「私も……」
果たしてこの結婚は上手くいくのだろうか? 
健闘を祈る!

※以下ネタバレです。一作目もネタバレしておりますので注意。

 

 

感想

個人的感想としてはそこそこ面白かった一作目。
前作で綺麗に完結した物語に続きはいらないのでは……と思っていたのですが、やはりおとぎ話としては姫と王子の結婚まで話を進めねばならなかったのか、オーロラとフィリップ王子の結婚から始まる両家同士のいざこざが今回のメインでした。
一応そこにマレフィセントの秘密――ダークフェイという角と羽根の生えた種族だった――を追加しており、何故彼女が強力な魔力を有するのかなどの説明がなされていました。

最終的に妖精大嫌いなアルステッドのイングリス王妃V.S.ムーア国妖精V.S.ダークフェイという三つ巴の決戦がアルステッド城を舞台に行われることになり、人も妖精もダークフェイもばったばったと死んでいく戦争シーンが大迫力で描かれて……るんですが。

ふわふわしすぎていた。

なんというか、戦争アクションなのかうっとり系のおとぎ話なのか、どちらにも振り切れていない感じ。
妖精側もダークフェイ側も容赦なくばたばた死んでいくので緊迫感と悲壮感を出したいのかと思いきや、肝心の妖精たちが閉じ込められた教会の中では、なんとパイプオルガンの演奏によってパイプの中からランダム方向に妖精を殺す粉が飛んでくるという考えたやつ出てこいな展開が繰り広げられる。
アフォなの?
多分に逆恨みな理由により妖精が大嫌いで、妖精を全滅させてムーア国を乗っ取り領地にしちまおうとたくらむイングリス王妃にしては、詰めが甘いというよりなんかもうアフォなの?
普通は逃げ場を与えないために天井から全方位に粉をばらまくでしょうが。
多分妖精たちが本当に全滅したら悲劇になってしまうので、何人かは犠牲になるけど大多数は助かる道を残したい……ということでこういう仕様になったのでしょうが、なんというかこのシーンが本作のすべてを象徴していると言っても過言ではない。
妖精たちとダークフェイの存亡をかけた戦いのはずなのに、オーロラ姫回りの雰囲気がおとぎ話的にふわふわしすぎているため、まったく緊張感というものが感じられんのです。
双方結構な犠牲者が出ているにも関わらず、「すべてはイングリス王妃が仕組んだことだ」の一言で三者が矛を収め、みんな笑顔で結婚式に出席してのハッピーエンド。

本当にハッピーなのか……??

散々人間に迫害され、ついには世界の果てでひっそり暮らす羽目になっているのに、フィリップが剣を収めたというだけで「人間にもいい奴いるじゃん」的に問題が解決したような感を醸し始めるダークフェイ。さっきまで彼らを執拗に攻撃していた人間側も、なんか「全部王妃が悪くて自分たちは乗せられただけ」的な顔をするけど、根が深いからこそ簡単に乗せられたわけであって、いきなり異種族みんな友達みたいなノリになるのはいかがなものか……。
というわけでまったくお話し的にはノれませんでした。大団円はもちろん望むところなんですが、持っていき方が強引すぎて、もっと納得のいく道筋を示してくれよと。おとぎ話だからでぶん投げられても困るんですわー。
そして緊迫感がないゆえに冗長に感じられる場面も多く、もっと尺を引き締めて一時間半くらいにしてくれたら印象も違ったかもしれません。

ただ、アンジェリーナ・ジョリーさん演じるマレフィセントは今作も最高でしたし、彼女が羽根を広げて飛ぶシーンは疾走感に溢れていてずっと見ていたいぜ! ってなりました。
加えてエル・ファニングさん演じるオーロラ姫。これがまあめんこいのなんのって! 美しさの中にも素朴さがあり、裸足で自然を城として暮らす妖精たちの女王という役割にドンピシャな雰囲気。歴代プリンセスの中で一番魅力的だといっても過言ではない。過言ではない。
多分あれですよ。オーロラ姫がかわいすぎて、彼女の生み出すふわふわした雰囲気を壊すのが忍びなくて、それでどっちにも振り切れずにこんな中途半端な演出になっちゃったんですよ。
魅力というのは罪なものですね!

中盤から後半はなんともはやでしたが、序盤の晩餐会シーンまではとても面白かったです。
特にマレフィセント・オーロラ・ディアヴァルが並んで川を渡っていくところが最高。三人の醸し出す大物オーラがはんパなくて大変ワクワクしました。
そして中盤で髪を下ろしたマレフィセントが見られるんですが、神だで!  いっそずっと下ろしていればいいのに……と思うけど、原作準拠だからそこはしゃーないっすね。

人物紹介

●マレフィセント
ご存じタイトル・ロールにして主役。妖精にして稀代の魔女……だと思っていたら、なんとダークフェイという種族の一員で、しかもその中でも王族ともいうべきフェニックスの血を引いている特別な存在だと判明する。
前作で悪役……と見せかけて実はそうでもなかったよ、となったにも関わらず、映画序盤で世間にはやはり恐ろしい魔女として事実を誤認されていると語られる。まあ国が違えば『すんげー力を持った魔女』なんて脅威でしかないし、しゃーない部分もあるよねーと思っていたら、なんとイングリス王妃が意図的に流した噂だと判明。あの性悪。

しぶしぶながらもオーロラ=花嫁の母親として相手方の城に招かれ、晩餐会に出席することになる。
が、煽り耐性が超低いことが発覚。
彼女がもうちょっと冷静になれていたら、すべてのいざこざは発生しなかったと思われる。だが煽ってきたのが天下のミシェル・ファイファーさんなのでそこはしゃーないわー。相手が悪いわー。

アルステッド国王に呪いをかけた犯人と見なされ、オーロラにさえ疑われたことがショックで逃亡。追われる際に怪我をしたところをダークフェイに助けられ、彼らの居住地まで運ばれる。
自身の種族についてまったくの無知だった様子がうかがい知れるが、見た目が歌舞いているところに共通点がある。
新進気鋭のダンサー集団と言われても違和感ないくらい歌舞いている。

なんのかんのあり、一度はムカツク王妃をぶっ飛ばしに来るも、フィリップが仲間に突き付けた剣を収めた場面を見て希望を抱き、加えてオーロラに「お母様」と呼ばれ絆を再確認したため、矛を収めることにした。
が。その途端、背後からクロスボウで矢を射ってくるから、あの性悪王妃は
オーロラをかばい、妖精を殺す粉によって塵となるマレフィセント。
オーロラが慟哭するシーンはファニングさんの演技力もあって相当悲しいのだが、フェニックスの末裔であるマレフィセントは娘の流した涙によってまさかの復活を遂げるのだった。

巨大な鳥として。

こりゃ勝てんわー。
超でかい。しかも中身があのマレフィセント。
誰か逆らう奴いんのかってくらい神々しい。

無事にオーロラとフィリップの結婚を見届けた後は、ダークフェイの指導者として彼らをムーアの大地に住まわせた模様。
「洗礼式にまた来るわ」とアハーンな言葉を残し、空を堂々と翔ける姿の麗しいことよ……!
今度こそ、めでたしめでたしで物語の幕は閉じるのだった。

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●オーロラ
ムーア国の女王にしてマレフィセントの養女。
一応ステファン王が治めていた人間の国の王もかねているようだが、普段はムーア国にて裸足で無邪気に過ごしている模様。
妖精たちが作ったドレスに身を包み、野を駆ける姿がなまらめんこい。
かわいいのう。かわいいのう。まさにおとぎ話のお姫様がそのまま出て来たようなビジュアルは天使のごとしでした。

フィリップのプロポーズを喜んで受け入れた後、晩餐会での悲劇が発生。
「オーロラは今後アルステッドで暮らし、彼女は私の娘となります」というイングリス王妃の煽りに堪えられなかったマレフィセント。
強大な魔力によって場を制圧した彼女に対し、アルステッド国王が倒れたのはあなたが呪ったからだという疑惑を投げかけてしまう。
せっかくのおめでたい席をぶち壊しにされ、混乱のあまり疑ったのは無理もないとは思う。思うのだが。
散々煽ってきたのはイングリス王妃なので、呪うなら王妃であることは明白なのでは……。
あれか。前作で、ステファン憎しでその娘のオーロラに呪いをかけたから、今回も王妃憎しで王様呪ったと思われたのか?
そんなまどろっこしいことする性格には見えんのだが、過去の罪とは恐ろしい。

その後はイングリス王妃に言いくるめられ、アルステッド風のしきたりに染められそうになるも、息苦しさを覚え苦悩。
ふとしたことで地下の秘密工場を目にし、王妃がすべてを仕組んだことを知るも部屋に閉じ込められてしまう。
もっと活躍してもよさそうなのだが、やはり本作のヒーローはマレフィセントなので、オーロラ自身は彼女のプリンセス的位置づけにあくまでとどまる形となったのが残念。
だが最後は争いを収め、自らの結婚式にすべての種族を招待して平和の架け橋となるであろうことが示唆される。
きっと二人の子ならめんこいでしょう。

●イングリス王妃
フィリップ王子の母。オーロラの姑になる予定の美女。
マレフィセントが稀代の魔女ならこっちは悪女とばかりに大暴れする。

アルステッド国王に嫁ぐ前は別の国の王女だったが、寒波の影響で飢饉に襲われ、民を救えなかった彼女は国外追放の憂き目に遭った。そして好きでもないアルステッド国王と結婚した……的な話をするのだが、国王が不憫。
「あの男も野心がなく、平和を望む賢王だったのよ」的発言をするが、ええやん。

しかも妖精を憎む理由が「飢饉に飢える我が国の隣で、なんかぼへーっと平和そうに妖精たちがきゃっきゃうふふしてたから」という逆恨み要素満載であることが判明する。
一応助けを請いに行った兄がそのまま帰らなかったという理由もあるが、もしかして貧しい国が嫌で逃亡したんじゃないの……と思ってしまった。だってこの人の兄ちゃんだかんね。

国王に内緒で地下にて戦争のための武器防具を製造していた。
わりと大規模な施設なのだが、本当に国王は気づいていなかったのだろうか……それだと一国の王としてイングリス王妃の評価も真っ当ということになってしまうけどどうなんだ。

そんなこんなで大暴れした王妃様。最後はマレフィセントによってサクッと白い山羊ちゃんに変身させられてしまう。「いつか戻してやらんこともない」と夫と息子に言われて終わるので、日ごろの行いって大事。

演じるミシェル・ファイファーさんが還暦を超えているという事実に、親しみを込めて化け物と呼びたいっす。大好き。

●ディアヴァル
マレフィセントの眷属。本体はカラス。
恐れつつも主人を慕い、ピンチには色んな姿に変身して窮地を救ってくれる優秀さん。ピリついた場を和ませてくれるコメディリリーフとしても有能。
演じるサム・ライリー氏が実にいい味を出しているのでもっと出番を増やしてくれてよかったのだが、序盤で主人が絶海の孤島に拉致されてしまうので影が薄め。
その鬱憤を晴らす意味でも、終盤は熊さんに変身して大暴れしてくれた。
チャームポイントはカラスのくちばし。

●フィリップ王子
アルステッドの王子。多分一人息子。
前作では絶妙に影が薄く、しかも『真実の愛』でなかった判定されるという不憫な扱いを受けた。
だが今作は彼とオーロラとの結婚がテーマ。ばしばし前面に出て行くのだろうと思いきや、中盤以降やっぱり影が薄かった。

結婚式で提げるために国王の剣を譲り受け、「お前がこれを振るうことはない」とフラグをばんばん立てた……にも関わらず、あれだけ決戦が目の前で起きているのに「王子は気分が悪いみたいだよ」と自室に連れていかれ、おとなしく閉じ込められていた模様。
そしてダークフェイに剣を向けるも結局収めたため、親父の言葉通りになってしまった。
……活躍の場を与えたって……。

多分国王陛下が呪いで倒れた際、『真実の愛のキス』を母に譲って自分はやらなかった報いがきてるんじゃないかと思われる。
あそこで君がキスしてたら父ちゃん起きたよね?
なんだなんだ? 恥ずかしいのか? いい歳して父ちゃんにチューとか冗談じゃないよとかそんな感じか?
恥ずかしがっとる場合か!

最後は義理の母に「きばれや」と激励され、しかも相手はかっちょよく去っていくという絶妙なマウント取られ具合を発揮するが、まあがんばれ。

●アルステッド国王
フィリップの父にしてイングリスの夫。
息子の嫁に理解を示し、和平を結ぶことを歓迎するなど懐の深い賢王であったにも関わらず、本編のほぼ三分の二を寝て過ごすという不憫な父ちゃん。
前作のオーロラ姫に替わり、今作の『眠れる森の美丈夫』の役目を負う。
目を覚ましたら何もかもが終わっていたという浦島太郎状態になった。まあ王様って多分激務だから、ぐっすり休息が取れてよかったねと思おう。
寝ている間に嫁がめちゃくちゃやらかしていたわけだが、ドンマイ。

●3人の妖精
今作でも姦しく活躍。
前作でも思ったが、妖精バージョンはもうちっとかわいらしくできなかったのか。不気味の壁的なものを感じマッスル。
オーロラたちの結婚式に招かれ、仲間たちとともに教会に入り、罠にかかってしまう。
猛威を振るうパイプオルガンに対し、シスルウィットが死を覚悟して特攻。結果機械は止まったが彼女は死亡してしまう。
狙うならパイプより演奏してる本人だと思っていたので、そっちかよてなった。
マレフィセントは復活したが、粉の犠牲になった妖精たちは戻らなかった。だが結婚式でオーロラのドレスが水色=シスルウィットの色に変化したのを見るに、元となったもの=シスルウィットの場合は青い花が無事であればいずれ復活するのであろうことが示唆されている。そもそも妖精ってそういうものだしね。

●瓶の妖精3匹
ピントという名前のハリネズミの精ときのこの精。それに綿毛(たんぽぽか?)の精がそれぞれ瓶の中に閉じ込められていた。
イングリス王妃の命により妖精を殺す粉の効果を試すため、その中から一匹が選ばれることになったのだが……。
ですよね。
間違ってもね、綿毛の精を差し置いてピントときのこ君が犠牲になったりしないすよね。ここでほっとした人も多数いると思うと、世界って残酷だなーー!!

●コナルとボーラ
ダークフェイの指導者的位置づけにいる二人。コナルを演じるキウェテル・イジョフォーさんは、つい最近Amazon Videoで『それでも夜は明ける』を見たこともありなじみ深いお顔ですが、歌舞きすぎてて最初誰だかわからんかった……。
ダークフェイってみんなアーティストか何かなんすかね。パないっすね。

精霊の花が摘み取られたことを察知して故郷へ向かったマレフィセントを追った二人。運命の矢はコナルに突き刺さり、彼が命を落とす。
ダークフェイは臨終の際に大地と同化して消えるそうで、コナルも自然の元へ還っていった。
というか、せめて臨終を見届けてから戦いに行こうよ、仲間たち……。

●リックスピットル
アルステッド城の地下でせっせと妖精を殺す粉を作っているおじさん。
なんと彼自身も妖精。
翼を奪われて無理やり働かされていた的な解説がなされるも、最後結婚式に晴れやかな笑顔で出席している姿におめーはだめだろとなった。なんで許されたような雰囲気を出しとるんだ。反省しろ、反省。

●監督
ヨアヒム・ローニング氏。『パイレート・オブ・カリビアン/最後の海賊』などを撮っていらっしゃるお方。
うっとりするような世界観を楽しませていただきました。ありがとうございます。

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