原題:Insidious: The Last Key
2018年の映画
おすすめ度:☆☆☆
【一言説明】
ダース・モール君、見ーーっけ!
ブログを書いていなかったら決して見なかったであろう『インシディアス:最後の鍵』。
大抵の場合、ホラー映画のシリーズ四作目なんてものは、クオリティは下りに下った坂の底。一作目とは別物と相場が決まっているのですが、当ブログへの来訪者が『インシディアス』で検索して来られる方が多いのと、『アリソン 誰』と皆さん疑問に思っているようなので、「しゃーねえいっちょ見てみるか!」とジモYA(地元TSUTAYA)にて借りて参りました。
日本ではDVDスルーされていたのもあり、正直ほとんど期待していなかった。
だが面白かった!
面白かったんですよ、ワァオ!
本国ではなかなかの興行成績を収めたそうで、5作目もしくはさらなるスピンオフが企画されているとのこと。まだまだ楽しませてくれそうなシリーズです。
主演はシリーズ通して皆勤賞のエリーズ役リン・シェイさん。もちろんスペックス役のリー・ワネル氏とタッカー役のアンガス・サンプスン氏も続投。そして悪霊に憑かれる家の主人にTVドラマ『フリンジ』の捜査官役カーク・アセヴェド氏が出ておられてひゃっほうとなりました。
※エンドクレジット後にも映像があるので、最後まで再生しよう!(間違い。一緒に借りてきた『アナベル 死霊人形の誕生』と勘違いしてました。メンゴ。たしか何もなかったと思うんですが、もし万が一あったらゴメンゴ)
でもって、今作もアリソンのアの字も出なかったぞ! だからアリソンって誰(以下略
↓過去シリーズの感想は以下をどんぞ。
[adchord]あらすじ
誰にでも歴史はある。そう、エリーズにも。
ある日かかって来た一本の電話。悪霊が出るというその家の住所を聞いたエリーズは顔色を変えた。逃げるように飛び出してきたあの家。
大切な人を亡くしたあの家。
人ではない何かが巣食っていたあの家……。数十年の時を経て、エリーズは再び戻ることを決意した。
決着をつけるべきは自分――。果たして生き残るのは誰なのか? そして今回もアイツの登場はあるのか……?
※以下盛大にネタバレしています。未見の方注意。
数十年前、エリーズがまだ幼さの残る少女だった時代。すでにそのころから特殊な力を持っていた彼女は、幽霊を見たという度に父親から虐待に近いお仕置きを受けていた模様。
けれど母は「あなたは特別な子。その力は贈り物なのだから誇りを持っていいの」と諭してくれる心の支えだった。
が。ある日いつものように地下室に閉じ込められた際、何者かの声に導かれ、エリーズは一番奥にあった扉の鍵を開けてしまう。そこからのそりと現れたのは、指先がすべて鍵の形になった恐ろしい何か。
そして悲鳴を聞きつけて助けに来た母が、その何かによって殺されてしまうのだった……。
感想
懺悔しますと、wikipediaに書かれた本国での評価を見る限り、たいして面白そうには思えなかった本作。二の足どころか五の足くらい踏んでいたんですが、エイヤッと思って借りてみれば……あら面白い。
エリーズと弟クリスチャンの再会シーンはもうちょっとタメが必要だったんじゃないの? 等、若干の粗が感じられる部分はあれど、霊能者エリーズのオリジンに迫る物語はなかなかどうして面白い上にじーんと来る感動も盛り込まれての良作でございました。
母が死んだ後、暴力を振るう父に怯えながら生きていたエリーズと弟のクリスチャン。エリーズが16歳になったある日、洗濯室で女性の幽霊を見たと主張する彼女は、やって来て中を覗き込み、「何もいない」と言う父親に再び折檻されそうになる。
たまらずそのまま家を飛び出し、二度と帰らなかったエリーズ。背中に「行かないで」という弟の悲痛な叫び声を聞きながら。
普通なら、「そうかー、そんなひどい父親から逃げられてよかったね」で終わる上記のシーン。実はこれが重要な伏線になっています。
時が流れて数十年後。前作『インシディアス:序章』から少し経って、スペックス&タッカーたちと順調に幽霊退治業を営んでいたエリーズの元に、「幽霊出て来る。タスケテ」と電話がかかってくる。
住所を聞けば、なんと昔住んでいた自分家。
そりゃ出るわー。
過去と決着をつけるため、いざいざ! と出向くエリーズが目にしたのは、「彼女を助けて」と警告してくる女性の幽霊。
その声に導かれて地下室に行き、問題の奥の扉を開けてみれば……なんとそこには生きた人間が。
最初はエリーズですら幽霊だと思っていた相手が、実は家主=電話で「幽霊出るからタスケテ」と頼んできた人物=テッドに監禁されていた女性であることが判明。
どーいうこっちゃ。
なんで他人を監禁してるくせに、エリーズたちを呼び寄せるの? という疑問を作中で事件を担当した刑事さんが発してくれる。
対するエリーズの回答は「事件発覚の恐怖より、幽霊に憑かれた恐怖が勝ったから」。
なるほど……そら怖い。幽霊最凶だと妙に納得。
だがエリーズには一つの疑問があった。地下室の事実を警告してくれた幽霊に見覚えがあったのだ。
あれは家を飛び出した日に見た女性と同じ。
まさかと思って例の扉の奥を探ってみれば、排水管の奥に山ほど詰め込まれたトランクの数々。そこに一つずつ入れられている人間の頭蓋骨と衣類たち。
そう。あの日見た女性は、幽霊ではなく生きた人間――エリーズの父親が、テッドと同じように地下室に監禁していた相手だったのだ。
それがどうにかして地下室を脱出し、洗濯室に逃げ込んだ際にエリーズと遭遇。
だがてっきり相手が幽霊だと思い込んでいたエリーズは、父親の「何もいない」という言葉を真に受け、助けるチャンスを放棄してしまう。
その後戻って来た父親によって、女性は無残に殺されてしまったのだ……。
いくらよく見える体質だとしても、生きている人間と幽霊の区別がつかんのか? という疑問はあれど、16歳とまだ若く、しかも相手が監禁状態にあった=ぼろぼろの身なり=幽霊に見えても仕方がないということもあり、非常に上手い作りだなと思いました。
えっ、あれ人だったの? ってことは父ちゃん……ヒェッ……! ってなりましたしね!
結局エリーズの元お家には指先が鍵になった悪魔が憑りついており、父親は無意識に操られていたというのが真相。
あれほどエリーズに辛く当たったのも、悪魔の存在に怯えていたから。何人もの女性を監禁し殺害したのも操られていたから。
時を経て移り住んだテッドもそいつの魔の手に掛かり、家にいる他の霊たちがえらいこっちゃと騒ぎ立てたため、エリーズが来訪する結果となった模様。
もう一つの伏線にて、幼い弟クリスチャンが母から渡された笛があります。
「いざというときだけ吹きなさい。すぐに私が助けに行くわ」
という言葉通り、問答無用で悪魔をぶっ飛ばして娘を助ける母が登場。母ちゃんすげーーってなりました。さすがエリーズのおかんだで!
そんなこんなでとても面白かった本作。できれば前三作を見てからのほうがより楽しめると思います。
そしてもちろんアイツも出て来きます。
ほんの一瞬ですが、ダルトン少年が寝ている部屋の窓に「あひゃーーっ!」ってな感じで過去最高に楽しそうな笑顔を披露。
若干過去作よりも額部分の後退が進んだような気がしないでもないですが、元気そうで安心したZE!
五作目は今度こそアリソンとその背後にいた何かが出て来ると信じてる!
言い忘れてましたが、なんと今回はタイトル表示が静か! ズンズギャズバァーーンって鳴らないんす! あのロゴは同じですが、冒頭でフツーにひゅーんって表示されて消えるから、一瞬インシディアスと間違ってインディシアスみたいな類似品を借りて来たのかと焦ったんですがそんなことはなかった。
なんでしょうこの気持ち。心臓ヒャンってなるあの演出が気持ちいいというか、きっとこれは文字にすると恋……。
違うか。
人物紹介
●エリーズ
本作の主人公。シリーズ四作目にしてついに描かれたオリジンにより、弟がいることが判明。しかも美人な姪が二人もいる。
前述のように生きた人間を幽霊と見間違うほどよく見える体質であることが判明。何それ、地獄ですやん。
その為、助けられるはずだった女性を見殺しにする結果となったが、十六歳だったし仕方ない……と思っていたら、数十年後も同じだった。進歩がなかった。
まあ薄暗い地下室でしたし? 相手もビビってたのかなんなのか「助けて」の声も上げなかったし? しゃーないしゃーない。
自身が解放した悪魔のせいで姪までひでー目に遭ったため、落とし前をつけたらぁっと深夜の地下室へ乗り込んでいく。シリーズを重ねるごとに女傑っぷりが加速していくという、映画史に残る頼り甲斐のある老婦人キャラ。
今回も最終的には彼方の世界に入り込み、見事姪二人を救出。亡くなった母親と再会を果たし、今後も自分の力を人助けに使うことを決意する。
その直後にダルトンの事件が起こり、生前最後の事件となるランバート家=『インシディアス』に続く構成は胸が熱くなりました。お母さんの言葉があったからこそ、死が待っているとわかっていてもランバート家に足を運ぶエリーズ。
もし五作目があるとしたら、過去編ではなく二作目よりも時系列は後になると見ましたね。楽しみです。
●スペックス&タッカー
エリーズ同様、シリーズ皆勤賞を誇る凸凹コンビ。二人ともいつもすぎるほどいつも通りで逆にそれが安心感を生む癒し系。
だがなんと本作ではスペックスに彼女ができる。おや? なんかいい感じではあるまいか……? と思っていたら、なんとその後一塁まで出塁を果たすのであっぱれ。
対するタッカーは「彼女はサイキック。俺はサイドキック」のギャグが通じなくて不憫だったが、いつか笑ってくれる素敵な女性と巡り会えるさ!
●エリーズ母
幼少期に鍵の悪魔に襲われ、死んでしまったお母さん。エリーズの能力にも理解を示し、「神様からの贈り物」と諭すなど心温まる素晴らしい人物だった。
冒頭でクリスチャンに笛を渡したことで伏線を張り、今か今かと登場を待ち望んでいたところ、まさに完璧なタイミングで再登場を果たす。
でもって、手にしたカンテラで悪魔を空の彼方へぶっ飛ばすという超肝っ玉母ちゃんぶりを披露。まさにこの親にしてこの子あり。
自身の享年よりずっと歳を重ねたとはいえ、いつまで経っても娘は娘。エリーズを抱きしめる眼差しの優しさに涙腺が持って行かれた。
●エリーズ父
妻と違って全くいいところがないおとん。実は冒頭からしてすでに悪魔の影響を受けており、エリーズが霊能少女ぶりを発揮するとあいつが反応すっからやめーや! と必死だった模様。
悪魔に操られ、何人もの女性を地下室にて監禁。悪魔の喜ぶ恐怖や負の感情を生み出すマシンと化していた。
エリーズが見た未来の通り、心臓発作にて他界。だがその後は彼方世界にて鍵の悪魔にずっと魂を捕らえられていたようだ。
ここまで書くと完全な駄目親父のようだが、彼方に入り込んだ大人エリーズが鍵の悪魔に殺されそうになった際、彼女をかばって悪魔に刺され、詫びの言葉と共に塵と化していったので、本来は父親として誇れる人物だったのではないかと推察できる。
だがTVで死刑囚の話題が出た際、側にいた娘が相手の罪状や最後の晩餐のメニューや、末期に忌わしい言葉を吐いて死んだことすら言い当ててくるのでそりゃ怖い。しかも電気椅子の絵とか描いてるし、怯えるなという方が無理ではなかろうか……。
●クリスチャン
エリーズの弟。幼少期はなまらめんこい。
だが姉がいわゆる見える少女だったため、ベッドルームでは度々怖い目に遭っており、「僕の罪は姉さんに背を向けたことだ」と後に述懐するがしゃーないと思うで。
ぶっちゃけ、突然誰もいない空間に向かって「大丈夫よ。出てきて」とか言ってくる姉ちゃんホラーでしかない。
16歳になったエリーズが突如家を出てしまったため、その後は暴力的な父親と二人で地獄の日々を過ごした様子。
けれどそれでも二人のめんこい娘に恵まれたようで、最初は憎悪に満ちていた姉への態度も事実を知って軟化。和解を果たした。
●メリッサとイモジェン
クリスチャンの娘=エリーズの姪。
地元のダイナーにて初登場となるが、最初からめちゃくちゃ感じがいい。おとんを反面教師としたのか、クリスチャンには子育ての才能があったようだ。
人懐っこいメリッサに比べ、イモジェンは若干の警戒心を持っていたようだったが、実は彼女も見える側であることが判明。レイニア家の遺伝子は脈々と受け継がれているようだ。
しかも催眠術の助けを借りてとはいえ、初回ですんなり彼方の世界にたどり着くし、これは第二のエリーズになる予感……。
スペックスとフラグも立てたし、あれか。もしかして五作目は彼女が主役か? だったら嬉しいぞ!
●ウォーレン
エリーズのわんこ。ケナゲンティウス族。
お年を召したのか、冒頭でベッドにちょこんと寝ている姿が映るがそれだけでも超かわゆい。長生きしておくれやす。
●テッド
エリーズの昔の家を新しく購入した家主。
幽霊が出るよーと彼女に助けを求める一方、地下室に女性を監禁するという所業を犯していた。
が、彼のエリーズ父同様悪魔に操られた結果なので不憫ではある。ただ悪魔に付け込まれる部分もあったのは事実か。
事実を知ったエリーズたちに銃を向けるも、一人別行動をしていたスペックスの活躍によってタンスの下敷きになって死亡。呪いが解けた後に再起の道があってもよかったのでちょっと残念。
●テッドに監禁されてた女性
暗闇のせいも相まり、めっちゃそろそろ〜〜恐々〜〜〜なんか絶対やばいもんいるって〜〜的なノリで手を伸ばしてくるエリーズを真顔で見ていた。
幽霊じゃねーんだわ。
無事に助かったのはよかったけど、幽霊扱いされたことは多分一生忘れない。ゼッタイ。
●エリーズ父に監禁されていた女性
命からがら地下室から脱出した……と思ったら、犯人の娘と遭遇。多分絶句して何も言えないでいたところ、「あっ……幽霊? じゃあ優しくしなきゃ。大丈夫よ、出てきて」と勘違いされる。
「大丈夫よ」ってどこが大丈夫なんじゃい、ってなもんですよ。
結局エリーズ父に見つかり、その後無残に殺害されてしまった彼女。なのに時が経ってイモジェンがエリーズを探しに来たときは、なんと道案内を買って出てくれる。なんつー金のハートの持ち主。
エリーズ母によって悪魔に天誅が下された後は、無事に成仏してくれたと思いたい。あっぱれ。
●鍵の悪魔
本作の敵。レイニア家の地下室に取り憑いており、幼いエリーズを誘導し、扉を開けさせさらに力を強めた様子。
指先が全て様々な鍵の形になっており、どんな鍵でも開けられるとのこと。人間の喉に鍵を突っ込んで回すと声を奪うことができるという謎能力も持つ。
唯一開けられないのは人の心の鍵。とか言ってみる。
彼方の世界で牢獄に似た場所を作りブイコラ言わせていたようだが、最後はエリーズ母の鉄槌を持って彼方の彼方に飛ばされて行った。戻ってくんなよー!
●ダース・モールさん
今作も例によって登場。時系列的に絶賛ダルトンを付け狙い中。
エリーズと同じで皆勤賞かと思いきや、2だけ出てこなかったからなー。おとなしく引き下がってたからなー。割と根性なし。
●監督
アダム・ロビテル氏。氏の次回作『エスケープ・ルーム』は来年日本公開とのこと。ホラー界隈のみならず、どしどし活躍していただきたいですね。
面白かったです。ありがとうございます!
↓Amazon Videoにて絶賛配信中。ポスターの上にいるのが鍵の悪魔、下で絶叫する美少女がメリッサちゃんだで!