映画『ミスター・ガラス』ネタバレ感想。シャマラン節炸裂の「なんぞこれ」展開に身も心も取り残される。

原題:Glass
2019年の映画
おすすめ度:☆☆☆

【一言説明】
マカヴォイさん百面相。

ミスター・ガラス マカヴォイさん

どんでん返しの名手M・ナイト・シャマラン氏の最新作。
てっきり『アンブレイカブル』の続編なんだと思っていたら、なんと間に『スプリット』という2016年の映画が挟まっていたんですね。知らなかった!
なので不覚にも『スプリット』は未見で本作を視聴しております。
そのせいかマカヴォイ氏回りは「?」だったのですが、未見でもそれほど問題はありませんでした。

主演はジェームズ・マカヴォイ氏、ブルース・ウィリス氏、サミュエル・L・ジャクソン氏の三大キャストが豪華共演。彼らを研究する医師役に『オーシャンズ8』のサラ・ポールソンさんが出演されています。

※以下ネタバレ。三部作構成のため『アンブレイカブル(2000)』『スプリット(2016)』、ついでに『ヴィレッジ(2004)』もネタバレしています。

 

 

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あらすじ

「私はミスター・ガラスと呼ばれた……」

例のとんでも発言から早十九年。あの男が満を持して帰ってきた。
ぶっちゃけ帰ってこなくてもよかったけど、帰って来た。

彼によって見出されたヒーロー、デヴィッド・ダンは、その後も自主的に犯罪者を退治して回っていた。ネット上では『監視人』の名で話題となり、警察もその行方を追っているという。
そんなデヴィッドのもっぱらの関心は、『群れ』と呼ばれる連続誘拐殺人犯を追いかけることにあった。息子の助言で工場街を探索していたある日、デヴィッドは最高に怪しい動きの青年と遭遇する。
ヴィジョンを見るまでもなく、あいつじゃね……っていうか、あいつだよ絶対

彼の名はケヴィン・ヴェンデル・クラム。解離性障害によって24もの人格を持つ男。
しかも超強い。
さしものデヴィッドも苦戦か……と思った矢先、突然現れた警察の手により、二人は精神病院へと収容されてしまう。
それはかつてガラスの骨格ことあの男が収容されたのと同じ病院だった……。

感想

トラウマキャラ、ミスター・ガラスが帰って来た!

いやもう、ほんっとに『アンブレイカブル』でのラストシーンはやばかった。視聴したのは十年以上も前だというのに、いまだにミスター・ガラス=イライジャの杖を突いて立ち去る不自然な動きが目に焼き付いております。

前々作についてざっと説明すると、
 骨形成不全症を患うイライジャは少しの衝撃で簡単に骨折してしまう。
  ↓
 なら逆にめっちゃ頑丈な人間=アンブレイカブルな奴も存在するんじゃね?
  ↓
 あちこちに爆弾をしかけて何度も大規模な事件を起こす。
  ↓
 何度目かの列車事故で、無傷で生き残った男性=デヴィッドを発見。
  ↓
 あんたは超人だ! ヒーロー活動しなよ!
  ↓
 悪事発覚。通報。
  ↓
「私はミスター・ガラスと呼ばれた……」

という最高に「なんぞこれ」な展開がオンパレード。ヒーローにはヴィランが必要だという信念に基づき、イライジャはあちこちで破壊行動をしていたそうな。アフォか。
しかも悪事が発覚した後、デヴィッドは普通に警察に通報するという。そこはヒーローとしてヴィランを退治するのではなくて? 24すんのけ?

そして2019年。そんなアイツが帰って来た……。
見るべきか、見ないべきか。
TSUTAYAで悩んで一旦はスルーしたものの、なんとAmazon Prime Videoで週末100円セール。これは最早天からの思し召し。見なければ漢がすたるというもの!
正直シャマラン監督の作品はあまりにひねりの効いたオチのせいで、二度見返そうという気にならないものばかり。視聴後はなんともかんとも不思議な空気に包まれ、「……うん……?」ってな感想を抱くことになるわけなんですが、今回はどうだろう、エイヤッと思って見たところ。

……うん……?

ってなった。
案の定か!

毎度微妙な気持になるなら見なければいいんですが。
何が悪いって。
普通に面白いところなんです。
結末に至るまでは「???」ってなるところも多いけど、面白いからちゃんと見れちゃうところなんですよ。
シャマラン監督はゴイスーだなあぁ!

ブルース・ウィリス氏のいぶし銀かつ抑え気味な表情の中に漂う強者感。
登場時は鎮痛剤のせいで廃人になったのかと思いきや、実はまったくいつも通りだったガラス氏。
そして作中では20人もの人格を巧みに演じ分けたマカヴォイ氏の演技力。

この三人がぐんぐん物語を引っ張ってくれるので、あれよあれよと結末まで行きつきました。
精神病院で彼らを担当した医師エリー・ステイプルは、彼らの人間離れした能力はきちんと科学で説明のつくものであり、自分が超人であるという考えは単なる妄想だと三人に教え込もうとします。
デヴィッドがビジョンを視ると思ってるのは、メンタリスト並の視覚情報処理能力が備わっているからだと解説。ケヴィンが壁を登れるのは優れたクライマーなら不可能ではないし、ガラス君はとにかく頭がいいだけだよね。的な。

他はともかく、デヴィッドのビジョンについては、視覚だけでそれだけの情報を得て分析できるのであれば、十分超人といっていいんじゃあるまいか……と思うのですが。
けれど毎日何度も「お前は凡人だ」と言われ続け、「そうかも……」とその気になってきたデヴィッドとケヴィン。
しっかりしろ、と叫びたくなったその時。

立ち上がる男、ミスター・ガラス。

「どれほど言葉で説得しようと、俺たちは超人だ

なんという揺るぎなさ。
彼はケヴィン=ビーストに語る。自分は今まで九十四回も骨折している。痛みだけが人生のすべてだったと。
幼いころ、遊園地で面白そうな乗り物に乗った。遠心力で回転するその装置は、他の人間に提供するであろう愉悦を与えてはくれなかった。代わりに恐怖と複数個所骨折という痛みを与えた。

自分の人生は何のためにあるのか?
ただひたすら痛みに耐えるために生まれたのか?
ならばなぜ、この頭脳はこんなにも冴えわたっているのか?

生まれてから現在まで、イライジャを貫いているのは「Why?」という問いかけ。
おそらく彼の頭脳がこれほどまで明晰になったのは、常に痛みが側にあったから。例えばインフルエンザに罹り、高熱に苦しんだ夜。ずぐん、ずぐんと体全体が鳴るような節々の痛みの中で、意識だけが妙に冴えわたっていた経験はないでしょうか?
痛みが頭脳という超人、ミスター・ガラスを育てた。
では、ミスター・ガラスは何をするのか? 何をすべきなのか?

答えは人々の蒙を開くこと。
「超人は存在する」という事実を知らしめること。

実はステイプル医師は大昔から続く秘密結社の一員であり、彼らは時折産まれる超人たちを排除し、世界の調和を保ってきた組織だった。
だがイライジャに言わせれば、それこそが自分の理解の及ばぬものを排除しようとする凡愚=人間そのものであり、彼の使命は超人の存在を証明し、科学の及ばぬ領域がある=無限の可能性があることを知らしめることで、人類をもう一段階上の場所へと引き上げることにあった。

だからこれはミスター・ガラスV.S.デヴィッド、つまりは善対悪の対決ではなく、可能性という名の殻を破ろうとするイライジャの生涯にわたる啓蒙活動だったと言えるのかもしれない。
彼の目論見は成功し、ステイプル医師の属する組織があれほど隠そうとした超人の存在は、デイヴィッドとケヴィンが見せる超人的行動の数々を収めた監視カメラの映像として世界に流れ、人々に知らされるに至った。
映画のラストで三者それぞれの家族もしくは恋人たちが手を取り合って世界が啓蒙される様を見守っているのは、これが善と悪との単純な闘いではなかったことの証明だろう。

……とまあミスター・ガラスを持ち上げて書いてみましたが、目的は崇高と言えるかもしれないけれど、相変わらず彼の行動はすべて狂気に満ちまくっているし、結末も結末でなんというかやっぱり

……うん……?

ってなったし、ステイプル医師の組織が「私たちは善と悪に関わらず、均衡を崩すものを排除してきたのよ」と言ったときは善は排除しなくてよくない? ってなったし、

結局シャマラン監督見た後のいつものアレ

でした。
面白かったですが。
なんぞこれ。

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人物紹介

●デヴィッド・ダン
みんな大好きアンブレイカブルおじさん。さらに渋みが増して素敵度アップ。
「衣装は……わかるだろ?」とイライジャに言われて素直に緑のレインコートに着替えてくるあたり、やはりあれがヒーロースーツなんですね。
それって前見えてんの? と機能性に首を傾げたくなるが、水が弱点の彼にとって撥水性を持つレインコートは最強の鎧なのだと気付くにあたり、感心したけどやっぱりダサい

『監視人』というかっちょよい名前をもらい自警行動にいそしんでいたが、精神病院に収容されてしまう。しかも病室が彼特製の46本の放水ノズル付きという素敵仕様、かつ宿敵ビーストの真向かいの部屋という頭おかしい立地。ちょっと考えたらアカンことはわかるだろ。

三人の中で一番の常識人なのに、なんと最後は組織の手によって殺害されてしまう。なんでだ。彼がやっていたことは確かに違法だが、命を奪う必要はまったくない。だが組織は公平を自称しており、善だろうと悪だろうととにかく超人の芽は摘み取らないといけないらしいのだがバアァァァァカ!
デヴィッドさえ死ななければ、この結末が許せた人も少なからずいたのではないでしょうか。あの組織頭おかしい。

本人曰く「ちょっと常人より強いだけ」程度の認識みたいですが、分厚い鉄の扉をぶち壊したり、溺れそうになってるにも関わらずタンクの壁ぶち抜いたり、ビーストに捕まえられてるにも関わらず、「胸のあたりが不快」程度の反応を示したりとかなり超人。地味なオッサンが最強という心躍る人物だっただけに結末が悲しい。

●ミスター・ガラス
本名イライジャ。名を問われた際には「ファースト・ネームはミスター。ラストネームはガラス」と答えている。うんうん、合わせてミスター・ガラスってね。うん。
骨折回数はビーストと接触した時点で94回と、百回まであと数回だったが別にそういう話じゃないですね。それは痛みに彩られた人生だっただろうと不憫になる。
だが列車を爆破していいわけない。

本作で唯一の勝者と考えていいが、鎮痛剤が効いている振りをして職員の首をすぱっと切ったり、やることはかなり冷酷。しかも凶器がガラス。一貫しすぎて職人と呼ぶにふさわしい。

実はビーストの父親も例の列車に乗っており、彼のせいで虐待が継続され、結果ビースト誕生につながったので、事実を知った際は親の喜びにあふれる表情を見せる。
この人怖い。
しかも正装したときの胸元のブローチが『MG』ってもうまさかのハイセンス。

最後は父の真相を知ったビーストによって殺されてしまうが、監視カメラの映像にハッキングし自サイトにダウンロードを済ませていたため、「これは始まりの物語だ」的な満足さを見せて目を閉じた。一人勝ち。
ちなみにコスチュームも一人だけ勝ち組。

●ケヴィン
24の人格が行ったり来たりで見ているこっちもそうだが演じるマカヴォイ氏も忙しい。筆者のお気に入りはパトリシアとラッパーみたいな動きの多分ルークって名前の人。
やめれって言ってるのに何度も壁に下がってはライトの前でジャンプしたり、冒頭で壁にキックして小物臭漂う姿で逃げたりと、マカヴォイさんと親しみを込めて呼びたくなるその姿にすっかり楽しくなった。演技力パない。

素手で壁をのぼったり、パイプを使って天上から登場したり、車を持ち上げたり地面を獣走りで走ってみたりと、やってることは十分超人。
でもなんで脱がないとビーストになれないのか謎。野生を解き放つ的な? 前作を見たらわかるのかな?

ミスター・ガラス氏が爆破した列車の事故で父親が死亡。虐待を繰り返す母親について病院に相談に行く途中だったため、彼が死んだことで母親が野放しとなり、結果ケヴィンの心を守るために複数の人格=ビーストが爆誕する結果となった。
二人と違い、ケヴィンのみ後天的な超人で、ガラス氏が大いに喜んでいたが、お前を生みの親とは呼ばねーよ?

最後はケイシーの呼びかけに答えてケヴィンに戻ったところを銃で撃たれ死亡。
ビーストを再度呼び出せたら生き残ったのではないかと思うが、ケヴィンはそれを望まなかったのだろう。

●エリー・ステイプル医師
三人の妄想を解いて真人間に戻そうと尽力する医師……に見せかけて、怪しい組織の一員であったことが判明する。
まあだってどう見ても超人の三人を前に「あんたら凡人だから」と屁理屈こねる姿は十分怪しかったが、溺死寸前のデヴィッドにわざわざビジョンを見せて真実を教えた意味はなんなのかと若干サイコさん。
最大の見せ場はミスター・ガラスにしてやられた後の廊下での「あー」。
怖い。

●ジョセフ・ダン
デヴィッドの息子。なんか一作目の子役君によく似てると思っていたら本人だった。父の能力に理解があり、サイドキック的な立ち位置でサポートする。
デヴィッドが病院に収容されたと知り、「父ってば冗談が好きなお茶目な人で」を実践しようとしたが無理がある。

彼が離れた間に父を組織に殺されてしまい、慟哭。他二人はともかくほんとになんでデヴィッドまで……。ぐぬぬぬ。

●ケイシー
歩けばそこかしこで男性が振り向くめんこい女子。女医とのガチンコ対決にも負けず、面会権を勝ち取るガッツにもあふれる。
『スプリット』未見のため事情はわからないが、ケヴィンと心を通わせたらしい。
彼女がいたからこそケヴィンは自分を取り戻せたが、そのせいで銃弾にも倒れたのだと思うとなんとも切ない。

●イライジャ母
「自分の存在意義を確かめたかったの」と理解を示すおっかさん。だが手段がね……。
よく考えると二百人以上の命を奪っておいて、精神病院行きだけというのは甘すぎやしないだろうか。
だが犯罪者であろうと我が子はかわいい。まさに全世界を敵に回しても唯一の味方であったことを思うと、母の愛とは偉大である。

●監督
ご存じM・ナイト・シャマラン氏。本作ではデヴィッドの店に防犯用のカメラを買いに来たにいちゃんとして登場。
なんのかんのといつも面白い作品をありがとうございます。次回作も楽しみにしております!


最後に。
本当は感想を書くにあたり『アンブレイカブル』も見直そうと思ったんですが、あまりにも「なんぞこれ」だったために断念しました。
本作のみで十分おなかいっぱいざんす。

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