映画『ゲット・アウト』ネタバレ感想。伝説の使用人ダッシュを拝むべし。

ゲット・アウト 映画 ホラー

原題:Get Out
2017年の映画
おすすめ度:☆☆☆☆
びびりでも大丈夫度☆☆☆☆☆

【一言説明】
この家のやつら、おかしい。

ゲット・アウト 映画 走る

ホラーあるある:登場人物の挙動が無駄に怖い
絶対わざとだろ? わざとこっちを怖がらせてんだろ!??
お前らわかっててやってるよな!!

いやもうほんと、ビビりとしては、今回の使用人Aの走りっぷりは腹立たしいことこの上ないわけで。ホラーなんだから怖がらせてなんぼってことは理解してるんですが、だからってあんな走り方する奴普通いないよねっていう。ピンポンダッシュでもしてきたのかね、君は。

ホラー映画を見て毎回思うのですが、あの村人Bはなんであんな動きしてたのって感じることありませんか? 
いかにも怪しい村に迷い込み、いかにも怪しい村人たちが、いかにも怪しく主人公に接触してくる。そしていかにも怪しい言動を繰り出してくる。けれど結末まで見てみると、実は大半の村人は怪異とまったく関係がなかったっていう。
えっ? じゃあなんであいつらはあんなに挙動が怖かったの? こっち見て意味ありげに「うひひ」って笑ってたのは何だったの?
ホラーアトラクションのキャスト的な? 町おこし的な? バーカバーカ。 

ビビりなので、普段はホラーと名の付く映画は軒並み避けているのですが、Amazon Prime Videoにあったのでついつい視聴。もちろん念のための目隠し用クッションを装備。けれどグロっぽいシーンは肝心のところを映さない親切設計のため、ついぞクッションの出番はありませんでした。耐性のない方は安心してください(※少しは「ヒェッ」となるシーンがあるにはあります。記事冒頭の使用人ダッシュとかな!)。

主演は『ボーダーライン』で主人公の相棒役を務めたダニエル・カルーヤさん(『ブラック・パンサー』のウカビ役でおなじみ)、ヒロイン役はテレビで活躍中のアリソン・ウィリアムズさん(かわいいぞ。これを機に映画に進出してほしい)。
非常によくできた脚本・演出のおかげで、映画の半分近くまでこれといって派手な出来事が起こらないにも関わらず、少しも退屈しませんでした。

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あらすじ

クリス・ワシントンは憂鬱だった。
恋人ローズの実家を訪ねる道中。黒人である自分は、果たして白人である彼女の家族に受け入れられるのかと、不安が心をよぎっていく。

「大丈夫よ、パパはオバマの熱心な支持者だから」
とローズは言うが、友人は「白人女の家族には会うな」と忠告してくるし、途中で野生の鹿とかはねちゃうし、なんだかとっても気乗りがしない。

なんかなあ……嫌な予感がするなあ……。
着いた途端に、「出て行け!」とか叫ばれたりして……。
いやいや、まさかそんなことは……。

「ゲット・アァァウト!」

叫ばれましたよ、父さん。


※以下、ネタバレにつき注意



 

 

人種差別が根底に潜むホラー。
クリスがやって来た翌日、親睦会と称して集まってくる人々のほとんどが白人ばかり。彼らからは、潜在的に黒人を下に見つつも、その素晴らしい肉体と才能に羨望を抱いている様子が伺える。
「君……いい身体してるね」なんつって、クリス君の肢体をそれこそ舐めるように見てくるのですが、なんじゃお前ら。不気味なんだが?
  ↓
実は黒人ウェルカームと言っていたのは真っ赤な嘘で、ローズ含むアーミテージ一家は、怪しい秘密結社の一員だった。なんと彼らは、脳を別人の身体に移植することによって、若々しい肉体に生まれ変わることができる技術を提供していた、というオチがつく。
つまりは、親睦会に集まった人々=顧客、クリス=今回の生贄。
親睦会は生贄を披露するための場でもあり、誰がクリスを購入するかのオークション会場でもあったと。本人すぐそこにいるのに売買するのやめーや、っていう。

幽霊も異形の怪物も出て来ない。
けれど、画面に満ちるのは明らかな違和感と不気味さ、そして恐怖。
よくこんな面白いホラーを考え着いたなーと、発想のすばらしさに敬服いたします。

クリス君も何かがおかしいことは気づいてた様子ながら、結局は危機が迫るまで、ずるずるとその場に居座ってしまった。
旅行書にもありますが、危機を回避するためにはまず「何かおかしい」と思ったらすぐ逃げろ、です。
そして友人の忠告には耳を貸せ。
ロッド君はちょっとアフォだけど、ローズには何かうさんくさいものを感じていたんでしょうな。なのにクリスは彼女に請われ、ほいほい実家についていった挙句のあれやこれや。
あんなかわいい彼女に頼まれたら、叶えてあげたくなる気持ちはわかりますが……でもその子、ラスボスなんだぜ……!

感想

以下、人物紹介と所感など。

●クリス
主人公。写真家。その腕を買われて今回の生贄に選ばれる。
少年の頃、母親がいつもの時間になっても帰らなかった。何かあったのでは……と薄々感づいていたが、不安が現実となるのが怖くて、そのままテレビを見続けていた → 結果、母親は事故に遭って独りぼっちで死んでしまい、自分が探そうとしていれば、手遅れにならずに助かったかもしれない……というのがトラウマになっている。その隙をローズの母親ミッシーに付け込まれ、催眠術をかけられてしまう。
以後はティーカップをスプーンでかき回す音を聞くたびに失神する体質になるが、綿をうまく使ったことで起死回生の一手を放ち、ハイパー無双タイムへと突入する。
次々と襲い掛かるアーミテージ家を相手取り、切った張ったの大暴れ。写真家なので文系かと思いきや、これがもう強い、強い……! 普通のメンズのふりをしていても、シャツの下にある盛り上がった大胸筋と、上腕二頭筋はごまかせないのだ。
アーミテージ家の所業があまりにアレなのと、彼の無双っぷりが爽快すぎるのとで、多分劇場で見ていたら、ポップコーンを放り投げたくなったくらい、とにかく胸のすく大活躍でスッキリしました。
以後は友の忠告を真摯に受け止める性格になった……と思う。多分。

●ローズ
クリス君のかわゆい彼女と思いきや、サイコ秘密結社のサイコ要員にして、最大の敵となるサイコな女性。まさかのラスボス。

登場人物の服が青=民主党=リベラル、赤=共和党=保守主義で分けられているそうで、冒頭ではちゃんと青い服を着ていたものの、親睦会では赤い服を着ているという、お前そっち側かよの伏線をかもす。
不穏な空気を感じつつも、クリスが居残ったのは彼女ゆえなのに、「鍵が……鍵が見つからないの……」からの豹変は、彼と観客を絶望させた。
お家芸のため、数多の男性女性を陥落させた魔性の女でもある。
彼女が自我を取り戻した使用人Aに撃たれるシーンは、多くの観客が溜飲を下げたであろう。イッピーカイエーうんたらかんたら、である。

●ロッド
クリスのズッ友。空港警察の仕事についている。思考回路が若干アホだが、立派な職業だし、わんこのお世話もできるし、何よりクリス生存の立役者なので根は有能であると思われる。
監督曰く、ラストシーンはロッドでなく地元警察がやってきて、クリス逮捕という衝撃の結末になりかけたそうだが、回避したのは英断だと思う。クリスが逃げる途中で通報したとき、これはもしや……と観客は思ったはず。
鬱フラグクラッシャーの称号を与えて進ぜよう。
ヒューッ!

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●アーミテージ家

ホームビデオが最大級にアレな一家
じいちゃんが、「凝固法ってゴイスーだよ!」をひたすらアピールしてくる動画という。その後のアーミテージ家だよ全員集合が、なんかもう笑けてくるレベルでひどい。
妻が催眠術、夫が脳移植、長男が拉致、長女が人事担当。なんだよ、その布陣。

彼らは今回のクリスの活躍によってめでたく全滅したわけだが、一体今までに何人の犠牲者がいたのかと思うと、胃のあたりがなんとも嫌な気持ちにならざるを得ない。

●ウォルター
使用人A。個人的に、『ゲットアウト』といえばあいつ的な本作の顔
実はローズのじーちゃん。短距離走で負けたことから端を発する、非常に根暗い性格と思われる。
終盤の決戦で、孫娘の「グランパ!」要請に合わせて例の使用人ダッシュで颯爽と登場(まさかそのために練習してたのか?)。
ところが、クリスがとっさの機転でスマホのフラッシュを焚いたため、中の人が覚醒。ローズに向かって会心の一撃を放ち、その後自らの顎を撃ち抜くことで、アーミテージ家を全滅させた。
中の人の結末を考えるとやるせないが、あのままにしていては、いつ主導権を取られるともしれなかったので仕方ないのだろうか。

それにしても、役者さんというのは素晴らしい。ほんの少しの表情の変化で、中の人が交代したことがわかるんだから、ゴイスっすである。

●ジョージナ
使用人B。実はローズのおばあちゃん。ウォルター君と合わせての怖がらせ担当。中の人がクリスに警告を発しようとするシーンは、役者さんの好演もあって屈指の薄気味悪さ。
アーミテージ家ってやばい人しかいないの? 
当初、彼女を被害者だと思っていたクリスが連れて逃げようとするも、中身がばーちゃんだったため、「よくも家族を!」と豹変して襲われそうになる。
正直に言って、怖い。超怖い。

●ローガン
冒頭で愉快なアーミテージ家に誘拐され、中盤で別人となって登場するキーパーソン。だがあまりに別人になりすぎていたために、冒頭の人であるのかどうかいまいち確信が持てなかった。でもこのタイミングでこの演出、きっと彼が冒頭の人に違いないと思って見返したら、やっぱり冒頭の人だった。

本作のタイトルは、彼がクリスに向かって叫ぶ必死の訴えだ。
のこのこと次の犠牲者になりにやってきたクリスに、助けてと叫ぶわけでもなく、「逃げろ!」と警告するのは、不気味な白人側に対し、同胞意識と思いやりの強さを強調しているようでもある。
彼だけ顛末がわからなかったのですが、クリスの生存によりアーミテージ家の所業は明らかになるはず。中の人が、再手術などで助かるといいなと思います。

●ハドソン
盲目の画商。クリスにとって代わるはずだった人。ところが、クリスのハイパー無双によって、手術中に執刀医が殺害されたため、脳みそぱっかーんのまま放置された。他人事ながら気の毒……ではある。
その後の顛末は不明だが、麻酔が切れて覚醒 → 「己、脳みそ出てるやん!」と気付いて自力で頭蓋骨に蓋 → 助けを求めてさ迷う……とかならんのだろうか。悪いことしようとするからだZE?

●監督
ジョーダン・ピール氏。コメディアンだそうです。多彩な才能を持っていらっしゃる。実に実に面白かったです。ありがとうございます!!

最後に一言。

ピアノ、いい仕事しすぎ!!

↓Amazon Video にて配信中。使用人ダッシュ未見の方は楽しんでくれたまへ。

↓監督の第二作目、『アス』の感想はこちら。怖面白かったざます。

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