映画『デビル(2010)』ネタバレ感想。すべては偶然か、必然か。密室の五人を裁く黒幕の正体は。

デビル 映画 2010 サスペンス

デビル 映画 2010

かのM・ナイト・シャマラン監督が原案に関わったという本作。あくまで原案であって、監督ではない……ため、過去に見た時も「……うん?」とはならなかった記憶があったのが、この度Netflixにて配信となっているのを発見 → 再見の流れ。

『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』のクリス・メッシーナ氏と、『アップグレード』のローガン・マーシャル=グリーン氏が出演されています。

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あらすじ

高層ビルで、男が墜落死した。
遺体の出所を追って現場へとたどり着いたボーデン刑事は、同ビル内で発生した傷害事件へと駆り出される。

故障したエレベーターに閉じ込められた五人の男女
突如襲う停電。
そして、明かりが再び灯ったとき――誰かが命を落としている。

犯人は、誰なのか?
ボーデンは、生存者の中から容疑者を見つけようとするのだったが……。

※以下ネタバレです。本作はミステリ要素を含むため、結末を知らないほうが一億倍楽しめます。未見の方はご注意。

 

 

 

 

 

感想

デビル=比喩だと思っていたら、直球だった。
下手人が悪魔だった。

最初は密室内にいる五人のうち、誰が犯人なのか……的な印象で進んでいく……ように見せかけて、実は冒頭から『今回の事件は悪魔の仕業です』とモノローグで語り始めるという親切仕様。
  ↓
だが半信半疑。

少年時代は、ばあちゃんっ子だったらしきボーデン刑事。彼が祖母から聞いた悪魔のやり口に従い話が進んでいくので、「ああ、これはやっぱり悪魔的なアレか……」という認識で見ていくも、原案がシャマラン監督だけに、実は悪魔に見せかけて、悪魔的な人間の所業でしたというオチに転ぶ可能性も無きにしも非ず。おまけに、ボーデンはラスト近くまでその線を捨てずに捜査するため、やっぱり悪魔と見せかけて人が犯人なんかいな……と思えば、結局は悪魔が罪人を裁くために儲けた席であったことが発覚。
やっぱりそっちなのか、となった次第。

ずいぶん前に見たときは、あまり印象に残らなかったのですが、今回改めて見直してみたところ、とても面白かったです。

おおまかな流れは以下。

1.ビルの35階から飛び降りがあった。遺体の落下した車が勝手に動き出し、まったく別の場所で発見されるが、周囲の建物の高さと、車のへこみ具合が比例しないと気づいたボーデン。現場は別にあると睨み、探し始める。
徒歩で。
エコか。

2.一方、ビルのエレベーターの一つが故障。偶然乗り合わせた男女五人が中に閉じ込められる。監視室からの音声は届くものの、エレベーター内の音声は拾えない模様。

 お客その1:長身のセールスマン
 その2:都会派な美女
 その3:無害な老女
 その4:新人警備員
 その5:謎の男

ネクタイはしているものの、服装は若干ラフだし……という謎の男。職業もようわからんし、こいつ怪しくね? ……となるように見せかけて、実際は美女と老女も職業は判明していないにも関わらず、特に老女を無害と感じる自身の先入観が怖い。

3.突如エレベーター内の電気が点滅し始め、数秒間真っ暗に。何かが激しく動くような音が聞こえ、明かりが戻る。
  ↓
美女の背中に傷が。何者かに爪か牙を立てられたような跡。
  ↓
ヤベぇ……と警察を呼ぶ警備員たち。
  ↓
飛び降り現場を特定し、ちょうどビルの前に来ていたボーデンが現場に向かうことに。

4.警備員の一人、ラミレスが、モニタの画面が暗転する直前、顔のようなものが映ったとガクブル。
「これは……悪魔の仕業だよ……!」
相手にしない先輩警備員のラスティグ
そこに到着したボーデンは、受付の記録から男女の身元を割ろうと努力。
セールスマン=ヴィンス・マコーミック、美女=サラ・キャラウェイ、老女=ジェーン・コウスキー、警備員=ベン・ラーソンであることが判明。
一人だけ受付の記録がない謎の男。
やっぱこいつ怪しい。

5.再び真っ暗になるエレベーター内。ガラスの割れる音。
  ↓
明かりがつくと、なんと割れた鏡の破片を首に刺され、ヴィンスが絶命しかけた状態で発見される。
  ↓
傷害事件から一転、殺人事件へと発展した現場。ラミレスがこれは悪魔の仕業だと主張。
「悪魔なんていない。人のほうがよほど悪魔だ」と語り、五年前に自身の妻子をひき逃げした相手が、洗車クーポン券の裏に書いた「I’m so sorry.」という文字を見せるボーデン。
「犯人は、超反省してたらしいぜ」
なにせ洗車のクーポン券だもんネ!
心が洗われるようだネ!

6.五人救出のために奮闘していた整備士ドワイトが、上からエレベーターシャフト内へと降りていくことを決意。
「悪魔が来ると、無関係の善良な者も死ぬ」
「おい、ドワイト、返事しろ。ドワイト!」
先輩&後輩でタッグを組み、ドワイトの死亡フラグを爆上げするラスティグとラミレス。
案の定、無線機を取ろうとしてバランスを崩し、落下するドワイト。
  ↓
頼みの整備士が墜落死し、もうアカンとなるエレベーター内。

7.再び点滅 → 明かりがつくと、なんとジェーンが天井から首を●られた状態で発見される。
どうしたらそんなんなるの?
  ↓
ビルの封鎖を命じるボーデン。
このあたりで、『善良な』男女だと思われていた五人が、実は全然善良でないことがわかってくる。
 ヴィンス=悪徳詐欺師。被害者には死亡した者も。
 ジェーン=スリの常習者。ビルの監視カメラに犯行の瞬間が映る。
 ベン=暴力事件で前職をクビに。
 サラ=金銭がらみの不起訴事件あり。現夫は富裕層。
 謎の男=ビル来所時に持参していたバッグが行方不明。怪しい。
謎の男ことトニーが怪しすぎて、最早これはミス・リードではないかと思いたくなる。

8.階下に集められた人々から情報収集をするボーデン。
その隙に、これはもうアカンと無線機に向かって祈り始めるラミレス。
  ↓
怯えるエレベーター内。
マジやめれ。
その甲斐もなく、地下の漏電を直そうとして、感電してしまうラスティグ。
一方ボーデンは、サラの夫=キャラウェイの営む会社が、ベンの所属する警備会社であることを発見。つまりは、離婚の財産分与を回避しようとした夫が、ベンにサラ殺害を依頼=エレベーター内での無差別殺人に見せかけて、サラを葬る計画
そう当たりをつけたボーデンが監視室に急行した途端、点滅するエレベーター内。
  ↓
次なる犠牲者はベン。
ボーデン「なんで……?」
途方にくれるボーデンを見るラミレスの目が語る。
「だから悪魔の仕業なんだってば」

9.どうあがいても悪魔路線であることが確定したため、その方向で腹を決めるボーデン(と視聴者)。
そんなこととはつゆ知らず、互いが犯人だと思い込むサラと謎の男。
  ↓
点滅。
  ↓
犠牲者はサラ。首をかっさばかれた状態で、絶命寸前。
一人、途方にくれる謎の男。
  ↓
ラミレスは、「悪魔は乗客のフリをして乗り込んでいる」と言う。
では、悪魔=謎の男?
  ↓
そこに男の婚約者と名乗る女性が現れ、彼の名はトニー・ジェンコウスキーであると告げる。
なんだと?
ジェーン・コウスキー……ではなく、ジェンコウスキーが正しかったとすれば、来所時に受付していなかった、ただ一人の人物。それは……。

 

という感じで、なかなかよくできたドンデン返しが待ち構えていた本作。
構成には、キリスト教の要素が色濃く出ているため、日本人の我々にはピンと来ない部分も多いのですが、あちらには、映画『コンスタンティン』で言及されているように、『天国か地獄かを決める厳格なルール』というものが存在。
本作で重要なのは、『悔い改めた者は許される』というルールでしょうか。
ボーデンを襲った悲劇は救いようがないように見えて、彼の導き出す『悪魔がいるなら、神様もいる』という結論は希望に満ち溢れているうえに、冒頭の天地逆さまになった不穏な情景が一転、ラストで正常へと戻った景色は、そこに確かな祝福が存在することを示唆しているわけで。
シャマラン氏の描きたかったのは、最後のこのシーンなんだろうなとひしひしと感じた次第です。
面白かったです。

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人物紹介

●ボーデン
本作の語り部&主人公。
フィラデルフィア市警の刑事で、五年前に妻子をひき逃げされてから、しばらく酒に溺れて停職 → 復帰した過去がある。
墜落死した遺体の出どころを追ってビルへと到着。見えない手に導かれるかのように、エレベーター内で起きた事件を担当することになる。

しばらく職を離れていたとはいえ、その能力は優秀かつ人柄も良く、職場内にいい感じの仲になりつつある女性が早くも一人いる
やはりいい男は世間が放っておかないのだ。

今回の事件では、人為的要因に見せかけて実は悪魔の仕業でした、というとんでも解答がなされるものの、祖母の話で下地があったために早期に順応。
おばあちゃん様様である。
というか、五年前のひき逃げ事件の犯人=墜落現場を追ってたどり着いたビルのエレベーターに、たまたま閉じ込められた男女のうちの一人、という時点で、最早これは運命……の胸トゥクン案件としか言いようがない。
トニーを移送する車内で、彼に「許す」と告げる度量の広さを見せる。荒ぶった五年の間に心の整理がついたのと、トニーが心から悔いているのがわかったのと、理由は様々あると思いますが、やはり一番は、『悪魔がいるなら、神様もいる』という、その結論に至ったことが大きいはず。
この世に祝福があるなら、妻子の魂は、今は安らぎの中にいるはずで、なるほどねえ……としみじみ。
さすがシャマラン監督原案。よくできとります。

●トニー
長らく謎の男だった準主役。
一応、名前だけなら途中で自己紹介しているものの、長らく名字が判明しなかったため、きちんと正規の手続きを通してビルに入った優良人物であることを誰にも気づいてもらえなかった、ある意味気の毒な人物。
だが、判明した過去の所業は、かなり極悪。
飲酒運転で女性と幼い子どもを死なせたうえに、そのまま逃げ出したとあっては、そりゃー悪魔がお迎えにも来るのもやむ無し。
だが彼の事情を鑑みるに、アフガニスタンでひでー目に遭い、PTSDに悩まされ、お酒に逃げる → 事故を起こすという流れ。
おそらくはボーデンの妻子に息があれば、その場にとどまり通報したと思われるが、二人共どう見ても絶命してしまったので、悔恨の念とともに、その場を逃走。五年間ずっと罪の意識に苛まれてきたと思われる。
だからこそ、エレベーター内での懺悔に悪魔も納得し、魂を取られずに済んだわけで、トニーにとっては、罪の露見=過去からの解放=救いとなり、悪魔ってやっぱり元天使設定だけはあるわーと妙に納得いたしました。

おそらくは、男女五人の中でのイケメン&良心枠だと思われますが、演じるマーシャル=グリーン氏の絶妙なちょい悪っぷりが功を奏し、応援していいんだか悪いんだか、善人なんだか悪人なんだかようわからん、ナイススパイスな人物となっておりました。

多分、出所時にはボーデンが待っててくれたりすんでねーの。そんで二人で酒飲みに行ったりすんでねーの。

●サラ
本作のヒロイン……に見せかけて、お尻を触ってないのに触られたふりをして、他人にヴィンスを疑わせてみたり、脱出の鍵を探そうと天井に登ったトニーを「逃げるつもりよ!」と叫んで他人に引きずり降ろさせたり、自分に懐疑の目を向けたトニーを「殺して! 殺せぇーーー!と叫んで、やっぱり他人に殺してもらおうとしてみたりと、トニーが言ったとおりの『煽り屋』感満載の美女。
そしていざ利用できる他人がいなくなった際は、抜身状態のガラスをむんずと素手で握り、大の男にまったく迫力負けせず対峙するという、負の方面での女傑っぷりを披露してくれる。
その握り方超痛そう。
結局、最後は悪魔の手にかかって死んでしまったが、悪魔の狙いはあくまでトニーで、他三人は副産物なのか、それとも改悛の可能性が高いトニーが最後に残されただけで、狙いは四人全員だったのか、全ては悪魔のみぞ知る。

●ベン
ビルの新米警備員。
39階に荷物を届けようとして、たまたま乗り合わせた……ように見せかけて、ボーデンの想像が正しいなら、サラ抹殺のためにエレベーターに乗り込んだ刺客。
だが結局、下手人=悪魔だったので、真実は不明のまま、その手にかかって死んでしまった。
個人的な意見としては、トニーの指摘する通り、閉所恐怖症=演技の可能性が高く、弱みを見せることで親近感を得ようという策略だったと考えれば、やはりサラを殺す目的でエレベーターに乗り込んだのだと思われる。
「こっちに来い、守ってやる」のシーンで、暗闇に乗じてサラを殺害するつもりだったのが、悪魔に殺されてしまった。つまりは、彼の中では連続殺人の犯人=トニーという認識だった……と想像できる。

●ヴィンス
軽薄そうなセールスマン。
いかにも口が得意そうな雰囲気を裏切らず、密室内でもしゃべりまくり、周囲のヘイトを上げていく、死亡フラグメーカー。
多分、彼が最初の犠牲者であろう……という万人の期待を裏切らない男
演じるジェフリー・エアンド氏の身長が大層高く、トニーとベンが若干小柄に見えてしまい、急いでwikiを確認したことをご報告申し上げます。

●ジェーン
エレベーターに乗り合わせた老婦人。
……と見せかけての黒幕=悪魔。
向こうの悪魔の描き方として、『白目部分が黒い』という特徴が上げられるのですが、本作も例にもれず真っ黒。
トニーの本名が発覚した直後、満を持して立ち上がる遺体、という恐怖演出が入る。

それにしても、悪人の魂を取るだけなら、さっさと個人的に取ればいいのに、導入として誰かを自殺させ、偶然に見せかけて標的たちを集め、邪魔するなら無関係の善人も排除し、散々怖がらせた挙げ句に、さらに怖い地獄へ行こうぜ☆と誘うなど、悪魔さんって演出好きが過ぎる。
なんかこう、人とは価値観が違うというか、とにかく『恐怖! 臓物! サイコーー!』な世界観をお持ちというか、インテリアは尖っているのがデフォルトなんだろうなとか、常人には理解不能です。
やっぱ行くなら天国がいいんだなー。

それにしても、ジェンコウスキーをジェーン・コウスキーと誤認させるサインとは、どんだけ下手くそだったのであろうか。
多分、面倒だから名前を書かずに名字だけ書きなぐったと思われる。面接に来たんだから、きちんとフルネーム書けや。

●ラスティグ
ビルの警備主任みたいなお人。ラミレスのパイセン。
下手人=悪魔説をまったく信じず、五人を助けようと奮闘してくれるも、絶賛吊り下がり中のドワイトに、執拗に「無線に出ろ」と呼びかけ、結果として彼が墜落死するきっかけを作るなど、罪深き人。
地下の配電盤が漏電しているのを見つけた際、電線を戻そうと水たまりに足を踏み入れたところ、感電して重傷を負った。
その後は救急車で運ばれたようだが、生死は不明のまま終わる。
無事に助かってくれればよいのだが。

●ラミレス
信心深いラスティグの部下。
監視カメラの画像に悪魔の顔が写り込んだことで、今回の事件は悪魔が裏にいることを確信。ラスティグやボーデンに進言するも、聞き入れてもらえず。
彼らが揃って階下に行き、監視室に一人だけになると、悪魔を退けるため、一心不乱に祈り始める。
……善意の行為であることはわかる。わかるのだが、お前それ、夜中にふと聞こえる読経と同じだぞ、と言ってやりたい。
怖ぇわ!
絶賛怪奇現象の最中に、無線から流れる読経とか聞きたくねーわ!

しかし、その甲斐あってか、ラミレス君本人は無事に事をやり過ごせたため、まるっきり効果がないわけではなかった。
ラミレス君はな。

●ドワイト
善人なのに、巻き込まれて死亡した整備士。
「善人も死ぬ」と言及されたときは無事だったので、よかった、驚かすなよとホッとしたのもつかの間、エレベーターシャフト内をロープで降りていくという死亡フラグ炸裂行為を披露したため、案の定な結果となった。
閉じ込められた五人を助けようと奮闘していただけなのに、悪魔さんマジドイヒ。

●飛び降りた人
「悪魔が現れるときは、まず自殺者が出る」というルールに従い、別に飛び降りたくもないのに飛び降りたっぽい気の毒な人。
ちょうど真下に車があったため、その屋根にドン! となったが、35という階層を考えると、相当ひどいことになっていたのでは……と想像するも、遺体を検分したボーデンが言ったのは、「なんか凹み具合ひどくね?」だけなので、警察の胆力はどうなっているのであろうか。

●清掃員
背後の車に人間がドン! しても、まったく動じないどころか、気づきもしない男性。
ヘッドフォンの性能を褒めるべきなのかどうか、超迷う。

●監督
ジョン・エリック。ドゥードル氏。ホラー界隈で活躍されているお方。
面白い映画をありがとうございます。

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↓『デビル』繋がりで。ブラッド・ピット氏が若ぁ〜〜〜けぇ〜〜〜!

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