原題:The Man in the Iron Mask
1998年の映画
おすすめ度:☆☆☆☆☆☆
【一言説明】
引退した三銃士が双子入れ替えマジックに挑む!
当時はレオ様ことレオナルド・ディカプリオ氏が『タイタニック』の後に出演して話題になっていた……ような記憶があるようなないような。筆者は『タイタニック』より俄然こちら推しでございます。
タイタニックはですね……真っ白な、明らかに未使用のお皿がどんがらどーんがっしゃーーんって割れまくってですね……。主役二人の行く末よりもそっちのほうが気になって仕方がないっていうか……ああ、もったいない……。見るたびに心が痛むので見ないのです。
さて、本作はすんごい豪華キャストがそろっております。ルイ14世役には前述のディカプリオ氏、ダルタニアン役にはガブリエル・バーンさん(『スティグマータ 聖痕』の超イケメン神父。神父なのに色気パない)。三銃士アラミスはジェレミー・アイアンズさん(『ダイ・ハード3』の「Simon says…」の名ボイス)、ポルトスには名優ジェラール・ドパルデューさん(『シラノ・ド・ベルジュラック』だぜよ!)。そしてそして! アトス役には我らが『ジョニー・イングリッシュ』のパスカル・ソバージュ役ことジョン・マルコヴィッチ氏がキャスティングという神采配。
この映画、超がつくほど好きなんです。十本の指に入るくらい好きですわー(五本と言いたいが、名作がありすぎて足の指も要るかもしれんよ)。
多分ディカプリオさんが出ている映画の役で『ブラッド・ダイヤモンド』と合わせて一番好きなディカプリオ氏です。若いしね、細いしね!
あらすじ
17世紀――大国フランスは、暴君の手によって疲弊しきっていた。
国王ルイ14世はまだ年若く傍若無人で、臣下の尊敬を集めるには程遠い人物だったのである。相次ぐ戦争を仕掛けては国力を衰退させ、結果飢えた国民に腐った食料を与えるなど思いやりすら見られなかった。
前国王には忠誠を誓ったかつての三銃士たちも、今は引退して新たな国王のふるまいに戸惑うばかりであった。
そんな中、アトスの息子・ラウルの婚約者クリスティーヌを見初めた国王は、なんとラウルをわざと前線へと送り戦死させてしまうのだった。
激昂するアトス。
最早これまでと王を見限ったアラミスは、ポルトスとダルタニアンを地下の隠し部屋へと呼び集める。そこでルイを王座から引きずり降ろすための秘策ありと話を持ち掛けるが、最も間近で王の所業を目にしていたはずのダルタニアンは、なぜか加担を断り退室してしまう。
ならば三人で実行するまで。
アトス、アラミス、ポルトスの三銃士たちは、深夜にバスティーユ牢獄へと侵入する。そこには十数年間幽閉され続けた『鉄の仮面』をかぶった男がいた。
驚愕するアトスとポルトスの前で仮面の下から現れたのは、ルイ14世とうり二つの顔であった……。
※以下、盛大なネタバレにつき注意。
もうすでに書いている途中で映画を見直したくなってくるこの手が止められない!
名作すぎるんです……仮面の男ぉぉ……!!
そう、なんとルイ14世は双子だったのです。
当時双子は不吉とされ、父であるルイ13世は母親であるアンヌ王妃にも内緒で我が子をアラミスに預け、死んだことにしてしまいます。
双子の弟・フィリップはこっそり田舎に預けられ、そこですくすくと育つのですが、どこからか弟の存在を嗅ぎつけたルイによって牢獄に幽閉されてしまい、顔を見られることのないように鉄仮面をつけられたのです。
十数年間鉄仮面をつけたままって……非衛生!! ルイは鬼の申し子か?
仮面を外すシーンに至り、アトス含む三名は「ルイとクリソツやん」と顔の作りのほうにビビってましたが、多分観客は伸び放題の(しかも清潔そうでない)髪とヒゲがうわさささーーーってしてるレオ様の様子にびびってたで……。これ下手するとヒゲで窒息してたんじゃないか……。
そして明かされるアラミスの秘策。
「ルイとフィリップ入れ替えようZE☆」
うわあ……雑!
雑!! 作戦が雑!!
作戦の全貌:
- フィリップに国王のふるまいを教えて訓練する
- 3週間後の仮面舞踏会に忍び込む
- ルイを拉致
- フィリップ入れ替わる
- 気分悪いと主張する
- アラミスたちを側近につけて他は人払いする
- 上手く行く
行くか……?
いくら顔が同じだからって、田舎育ちの青年と、贅沢三昧の国王入れ替えて上手く行くか……?
結果、行かなかったために秒でばれました。
だってお前、訓練期間が3週間ってなめてんの? 付け焼刃にもほどがあるよね??
アホや……! アホですぜ、三銃士は!
ダルタニアンを引き入れようとしてしくじった時点で、「あいつら何かやりよるぞ」と警戒されていてしかるべしって思へよ、ちみたち……。
入れ替え大作戦を聞いた段階では、田舎の純朴少年フィリップ君を言いくるめて傀儡政権誕生させる気じゃないかとも疑うこともできるんです。できるんですが……後述する名場面を実際に見るとわかる通り、銃士たちはなんというか基本がアホです。なので心底国のためを思っての行為であり、計画がガバガバだとか野暮なことはツッコんじゃいけないんだけど。
ツッコミたいだろ!!
もう、好きっ!!!!
名場面
さて、今回は趣向を変えて。本作の数ある名場面を紹介していきたいと思います。マジで名場面ばかりなんだこれが!!
●登場、鉄仮面!
冒頭、バスティーユ監獄に何者かが囚われの身となっているシーン。鉄仮面が扉からにゅっと顔を出す画面を子供の頃に見たら、多分この映画はホラー映画なのだろうとビビったに違いないくらい怖い。怖い。
●園遊会のインスタ映え度
さすがはおフランス。陛下を含め、招待客の衣装が豪華絢爛。クリスティーヌの囲い込み手段が噴水とはシャレオツです。
陛下が噴水を操作するときに、「キュッ」ってやる手つきが最高にいたずらっ子で超かわいい☆ ……とはとても思えぬのだよ、後の結果を見ると!!! 外道! 外道め!
●殴り込むアトス
息子ラウルが死んだことで王宮に殴り込むアトス。英雄を前にしてたじろぐ銃士たち。老いても衰えぬ技で無双するアトス。マルコヴィッチ氏の抑えた演技の中に怒りと絶望が感じられて最高なシーン。
●壁と相対しちゃうフィリップ
解放されたはいいけど、突然「国王になれ」と言われ、責任に押しつぶされそうになって壁際に逃げ込むフィリップ。その後ろ姿が長髪も相まって最高に女の子。
実は本作のヒロインは彼であることが判明。
「大丈夫だよ、ほらぁ」とフォローするアトスが完全に女子高生である。
●ドキッ! サービスシーン!!
お茶の間が待っていたヌードシーン!
担当:ポルトスの旦那
●再会する親子
仮面舞踏会で無事入れ替わりに成功し、母アンヌ王妃と再会するフィリップ。すぐ隣に座りながら、公衆の面前ゆえに抱きしめることも叶わず、しかし後の約束をして別れるシーンはハンカチが百枚あっても足りない。
この親子がヒロインであることが判明。
アンヌ王妃! アンヌ王妃!!
●オラつく国王陛下
計画が失敗して囚われの身となったフィリップ。彼の周りを一周しながら最高にオラついた視線でガンたれてくる国王陛下。ビビるフィリップ。完全にヤンキーに囲まれた下級生の構図である。
ルイの視線が堅気ではない。確実に何人か殺ってる顔ですわ。
●アンヌ王妃と薔薇
パソコンだと薔薇って変換で一発だが、実際書けって言われたら……である。ああ、テクノロジーって素晴らしい。
おそらくは死を覚悟したであろうダルタニアンが、アンヌ王妃に向かって最後のお別れをするシーン。薔薇にそっと口づけをして去っていくのだが、この時二人の間にある距離を彼はずっと保ち続けていたのだなあ……と思うともういけません。夕日に向かって「ダルタニアーーーーン!!」と叫びたい。
そして侍女はすべてを見ていた! この時代の家政婦の位置づけである。
●集合!! 三銃士+α
バスティーユ牢獄にてようやく揃い踏みしたヒーローたち。だがこれからの展開ゆえに仮面を取ってもらえなかった人がいる。剣を構えても恰好がつかないところが彼らしい。あきらかに一人変なのが混じってるんだもん。馬鹿ん。
●「何という……勇気!」
銃士という生き物がいかにアホであるかがわかる作中屈指の名シーン。筆者も入隊したい。
隣でルイが「えっ、マジ?」とポカーン顔を披露するがホントそれ。突然部下が仕事を放棄し、敵に対して感極まっちゃったら嘘やろってなるなるなるー!
せめて目は開けよう。話はそこからだ!
●「仮面の男」、判明
ディカプリオ氏がわずか十九歳でアカデミーにノミネートされた超演技派だということをまざまざと見せつけられるシーン。涙腺が持ってかれて大・洪・水!
「仮面の男は……あなただった」
●「ワン・フォー・オール! オール・フォー・ワン!!」
今日から君も銃士隊だ!!!
以上です。まだまだ名場面はあるのだが、今回はここまでに。
いやほんと、この映画は神ですよ……!
↓Amazon Prime Video にて配信中。
原作
『モンテ・クリスト伯』で有名なアレクサンドル・デュマ氏が執筆した『ダルタニアン物語』の最終章に出てくる鉄仮面の物語を元にしております。映画はかなり原作と違う筋になっています(映画→原作で入ると絶望するレベル)。
全くの別物として楽しむとよろしいと思いますよ。