映画『ラ・ヨローナ~泣く女~』ネタバレ感想。南米産幽霊はとっても情緒不安定。

ラ・ヨローナ 映画 ホラー

原題:The Curse of La Llorona
2019年の映画
おすすめ度:☆☆☆

【一言説明】
あまり怖くない古典ホラー。

ラ・ヨローナ 泣く女 映画

Netflixにて配信となっていた本作。
なんじゃこら、ホラーかいな。『泣く女』……ってあれですね。お葬式で故人のために大きな声で泣いてくれる職業……あれ? それとも家の側で泣き声がすると、その家の人が死ぬっていう妖精のことだっけ?
  ↓
それは『泣き女』と『バンシー』だった。
まったく別物だった。メンゴだ。
  ↓
『泣く女』とは、中南米に古くから伝わる伝承の存在だとのことです。
そんな怪談の主人公ラ・ヨローナを主役に据えてのホラー物語。
主演は『グリーン・ブック』のリンダ・カーデリーニさん。そしてTVドラマ『クローザー』『Major Crimes ~重大犯罪課』のサンチェス役でおなじみのレイモンド・クリスさんが呪術師役で出演されています。

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あらすじ

泣き声が聞こえたら、終わり――。

××したら終わり系ジャンルに、また新たな挑戦者が名乗りを上げた。
中南米は代表、ラ・ヨローナだ。
かつて夫に浮気された心労から情緒不安定へと陥った彼女は、気が付くと二人の子供を手にかけていた。
嘆き悲しむラ・ヨローナ。
すぐに自ら命を絶った彼女の怒りは、『泣き声を聞いた子どもを我が子の身代わりに連れ去る』という凶悪な呪いとなって世に残った。

えっ、じゃあ夫は野放しのまま?
呪い殺すなら夫にすればいいのでは……。
そんな抗議の声はどこ吹く風。
今日も我が子を求めてさすらうラ・ヨローナの泣き声が、中南米――ではなく、北米の空にこだまするのだった……。

※以下ネタバレです。未見の方注意。

 

 

 

感想

いたってシンプルな作りの本作。

1.1637年のメキシコにて、幸せそうにキャッキャウフフする四人家族。息子に宝石のついたペンダントをもらい、嬉しそうな母。
だが気が付けば、弟一人がぽつんと草原に取り残されている。
家族を探して川の方に向かう弟 → 異音がする → おかんが兄を川に沈めている → ヒェッ → 逃げ出す弟 → 濡れたドレスがもたつくはずなのに、やたら足の速い母に捕まる → フェードアウト。

2.時は1973年のアメリカ。ソーシャルワーカーとして働く主人公アンナが、とあるアパートの一室を訪れる。家主パトリシアの二人の息子に虐待疑惑があるという。
いざ中に入ってみれば、げに怪しげなる文様が描かれた壁とドア。その向こうに閉じ込められている二人の子ども → 保護。
「お願い、待って!」と叫ぶパトリシア。「一晩でいい。アイツが来るの!
だが問答無用で保護される子どもたち。
アイツとは一体……?

3.深夜遅く。保護施設内で目を覚ました二人の子ども。そこに何者かの影が襲い来る……と思ったら、わりともろに白いベールをかぶったドレス姿の幽霊がドアップで映る。
  ↓
アンナの元に、彼らが川で溺れたと電話が入る。
パトリシア「あんたのせいよ!」

4.深夜の呼び出し故に、自身の二人の子ども、クリスサマンサを車に残してきたアンナ。ふらふらと外に出たクリスは、トンネルの向こう側で誰かの泣き声を聞く → 呪いの条件を満たす。
現れたベール姿の幽霊に襲われるクリス。慌ててサマンサの待つ車に逃げ込むも、くるくる回る窓の取っ手。
若人「えっ、取っ手って何? 窓ってスイッチで開けるんじゃないの?」
昔は取っ手だったんですぅー。
回して窓を開けてたんですぅー。
  ↓
アンナが現れ、事なきを得るクリスたち。

5.アンナ宅で怪奇現象頻発。プールにてサマンサまで泣き声を聞いてしまい、腕に烙印を押されて呪いを完成させる二人(もしかすっともっと前に聞いていたかもしれんが、細けぇことはいいんだよ!)。
ついにはアンナまでベール幽霊の姿を目にしてしまう。
アンナ「アカン」

6.幽霊の正体は、ラ・ヨローナ。あらすじに書いた通り、亡くした我が子の替わりに他人の二人兄弟を連れ去るという性質の悪い悪霊
パトリシアに自分たちがラ・ヨローナに狙われていることを話すと、「当然よ」と勝ち誇ったような顔をされる。
「私がアイツにお願いしたのよ。あんたの子どもを連れ去りなさいって!」
お前……!

7.ラ・ヨローナを解説してくれた神父に助けを求めるアンナ。
神父「私もね……前は信じてナカッタンダヨネ、悪霊とかね。でもとある人形を扱ってからね……信ジタネ……」
  ↓
ん? 人形?
  ↓
一瞬だけ映る、恐ろしくかわいくない女の子の人形。
  ↓
アナベルじゃねーか!
そう、なんとこの『ラ・ヨローナ』。死霊館シリーズだったんですね! 知らなかった!
wikipediaで確認してみると、件の神父はたしかに『アナベル:死霊館の人形』に出て来たペレス神父と同じ人。ほーん、ほぉーーん。
道理でね。それほど怖くはないものの、手堅く面白い作りで、しかも家族もの。死霊館シリーズの根底をきちんと踏襲しているわけですよ。

でもって、ペレス神父の紹介で、今は聖職を退いたラファエル(パトリシアも助けようとしていた呪術師)を頼ることとなったアンナたち。
かつてラ・ヨローナが息子たちを手にかけた際、唯一の目撃者となった木から彫り出した『炎の十字架』なんてアイテムも登場し、いざ決戦となるわけです。
今回は黒幕はやっぱり悪魔でした☆とはならず、正真正銘、ラ・ヨローナさんだけを相手に最終決戦の幕が開きます。

ホラーとしてはほとんど怖くなく、わりと序盤からラ・ヨローナさんがばしばし登場するため、びっくりどっきりモンスターホラー的な要素となってしまったのが若干残念ですが、ラ・ヨローナの過去話などは大変雰囲気のある映像が展開され、息子を失った母の悲しみがにじむものとなっており、中々楽しめました。
続々とスピンオフが作られ、拡大していく死霊館シリーズですが、そろそろ本家死霊館の続編が見たいですね。3が製作されているそうなので、楽しみにしております。

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人物紹介

●アンナ
主人公。夫は警察官。だが一向に姿を見せないため、死別かなと首をかしげていたら、普通に存命な様子。多分浮気による別居、もしくは離婚=ラ・ヨローナと同じ立場
だがアンナは現代に生きる女性。夫を奪われたからと言って嫉妬には狂わず、おそらく慰謝料でプール付きの家と養育費も手に入れ、働くお母さんとしてしっかり二人を育てている。たくましい。
結果、ラ・ヨローナとの最終対決に勝利。ラファエルから託された『炎の十字架』をラ・ヨローナの胸に突き刺し、悪霊は消滅。我が子二人を守り抜いた。あっぱれ。
ラ・ヨローナは水のあるところに出るため、最後のシーンにて家の前の水たまりが不穏に映されて終わる。ただ目を凝らした限りでは、水に映った景色に幽霊的なものは映っていなかったので、彼女たち家族は呪いから解放されたと思われる(幽霊はどこかで復活するかも、だが)。
もしくは、あの水たまりはラ・ヨローナが流した最後の涙……的なイメージだったとか、何ろまんてぃっくなことを言ってるんでしょうか自分は。

●ラ・ヨローナ
もう一人の主人公。本作における悪霊にしてラスボス。
ラテン系の熱い血が騒ぐ情熱の体質なのか、夫に捨てられたと知るや、嫉妬に狂って精神の変調をきたす。
彼女の泣き声はとても悲しそうだが、はっきり言って少しも同情できない
手にかけるなら夫じゃろがい!
ラ・ヨローナさんには、ぜひ『雨月物語』の中の『吉備津の釜』を熟読していただいて、夫に裏切られた際の鬱憤の晴らし方というものを勉強していただきたいですね。もうね。執念がね。磯良、怖ッ。

とにかく性質が悪く、亡くした子の身代わりにと、おそらく何十人も関係ない子を襲っているわりに、ちっとも満足しない。どれほど望んでも、我が子は永遠に帰ってこないのだ(自分のせいだろとかイッテハイケナイ)。
川とか湖とか、とにかく水場の近くでおいおい泣き、泣き声を聞いた相手を執拗に狙い続ける。だから水のあるところしか出られない……のかと思いきや、そんなことはなかった。寝室なんかにも普通に出る
弱点は前述の『炎の十字架』と、在りし日の息子たちからもらったペンダント。ペンダントは、プールにてアンナともみ合った際にもぎ取られた。後の最終決戦にてクリスがそれを差し出すと、つかの間生前の姿を取り戻した。
だが運悪く側の鏡に映った怨霊としての自分の姿を目にし、そこで恥じ入って逃げていくのかと思いきや、再び襲う気満々モードに転向するから、まったくコイツはよう。
最後はアンナの活躍により、十字架を刺されて塵となって消えた。
もう帰ってくんなよー!

●クリスとサマンサ
アンナの子供たち。クリスがお兄ちゃん……なのかな? パトリシアの告げ口よってラ・ヨローナに呪われることとなる不憫なキッズ。
車に侵入されそうになったり、変な火傷をつけられたり。サマンサに至っては、バスルームにて頭を洗われた挙句に、お湯に沈められるという恐怖体験をする。
というかまったくの無音で入ってくる母ちゃんとか怖すぎ。気づけ。
でもって彼女、せっかくラファエルがラ・ヨローナを家から追い出してくれたのに、ぬいぐるみほしさに十字架の線を乱すという最凶にポンチキな行動に出る。マジであのシーンはアフォすぎて、声に出してこのアフォと叫ぶレベル。子どもだからで許されると思うなよ。反省しろ、反省!
何はともあれ、最後は無事でよかった。おかんと三人末永く、だ。

●ラファエル
ラテン系の頼れる元神父。
曰く、教会には背を向けたが神には背を向けていないとのこと。引退した身ながらも、許可がないと身動きが取れない役立たずな教会に代わってアンナたち親子を助けてくれる。
パトリシア宅に描いたのと同じ文様で壁を埋めてみたり、ホラー効果アップしか役に立たなさそうな蝋燭を用意して見たり、とにかく対ラ・ヨローナ用の仕掛けをアンナ宅に施していくが、実は全部クリスたちを餌に幽霊をおびき寄せるための罠だったことが判明。ラファエルこの野郎。
だがよく考えると、ラファエルはアンナたち親子に何の縁もないのに、体を張って――肩を撃たれてまで彼女たちを守ってくれたハイパーいい奴。惚れるなっていうほうが無理。
無事にラ・ヨローナを退けた後は、笑顔でアンナ宅を辞去し、自分の場所へと帰っていった。

●パトリシア
虐待を疑われ、アンナが自宅を訪問することになったシングルマザー。
ラ・ヨローナに狙われた息子二人を匿っていたが、行政の措置によって保護施設に連れていかれてしまう。その結果、息子二人がラ・ヨローナの犠牲となってしまい、憎しみの矛先がアンナたちに向くこととなった。
が、元凶はどう見てもラ・ヨローナ。どうせ奮起するなら、打倒ラ・ヨローナに精力を注いだらいいのにと思わないでもない。
いつまでたってもクリスたちが連れていかれないことに業を煮やしたのか、ついにはアンナ宅に侵入。入り口に引いた十字架の線をわざを乱し、せっかく追い出したラ・ヨローナが屋内に返り咲くきっかけを作る。
しかし、我に返ったのか改心。閉じ込められたアンナを助け出し、「子供たちを助けに行け」と背中を後押しする。
悲劇に自分を見失っていたが、根はいい人。そして母親。我が子を失う悲しみから他人を救った強いご婦人だった。

●ペレス神父
アナベルつながりでちろっと出演。ラ・ヨローナの物語をアンナに語る。
助けを求められた際は、「本当は私が行きたいんだが、何せ教会の許可を得るには山ほどの工程がうんぬん……」と答えた。言い訳のようにも聞こえるが、真実。悪魔祓いの許可取ってる間に手遅れになったとか、エクソシスト界隈ではよくあることらしい。よくあったら困るけど。

●目撃者の木
ラファエル曰く、ラ・ヨローナの犯行を唯一目撃した木とのこと。
周囲にはわりとたくさんの植物が生えていた気がしたが、細けぇことはいいんだよ。

●監督
マイケル・チャベス氏。『死霊館3』の監督も務められるようです。ワオ! 楽しみにしております。ありがとうございます。

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