映画『アップグレード』ネタバレ感想。ひげのおじさんが無双する、近未来アクションときどきホラー。

アップグレード 映画 アクション

原題:Upgrade
2018年の映画
おすすめ度:☆☆☆☆

【一言説明】
妻を殺された男の復讐譚。

アップグレード 映画

機械仕掛けの肉体=最強。
……的な話だったような気がしていた映画、『アップグレード』。
TSUTAYAで見かけたので借りてみましたが、なんと監督は我らが『インシディアス』シリーズのリー・ワネル氏。
こでは期待大なんでねーの?

主演は『デビル(2010)』のローガン・マーシャル・グリーン氏。彼を追う女刑事役に、『ゲット・アウト』の使用人役が印象的だったベティ・ガブリエルさんが出演されています。

余談ですが、ずっと『アップデート 映画』で検索をかけ、何故かイカした男女のラブ・ストーリーみたいなやつしか出てこんぞ? と首を傾げていましたが、そりゃ出てこんわ。
未だに『地獄のロード・ウォリアー』を『怒りのデス・ロード』と検索をかける筆者です。

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あらすじ

舞台は、ドローンや自動運転車などがおなじみとなった近未来。
ある日、車の納品に行った帰り道で、妻共々武装集団に襲われた男、グレイ
自身は脊髄を損傷し、半身不随に。妻は目の前で殺されてしまった。

何かをしようにも、首から下はぴくりとも動かないこの身体。
妻は死に、犯人は闇の中。
「死のう……」
そう決意したグレイの前に、巨大企業ヴェッセルの社長エロンが現れた。
曰く――「人生を、取り戻したくはないか?」と。

説得に負け、高性能人工知能『ステム』を脊髄に移植したグレイ。
神経の代わりに、ステムが脳からの信号を四肢に伝達。
事件前と同じように、身体の自由を取り戻したかに見えたのだったが……。

※以下ネタバレ。未見の方注意。

 

 

 

感想

く……暗い……!
何というか、世界観も展開も、主役の行動も、何もかもが暗い……!
だがその暗さ、嫌いじゃない。

舞台はちょっと先の未来。山ほどのドローンが人々を監視し、自動運転車が普及し、人々の生活をAI搭載の機械が補助してくれる世界。
そしてこの手の近未来系にありがちな、とんでもスタイリッシュな家で暮らすグレイ君。
料理も気温の調節もAIが自動で実行。命令一つで機械がプロテインドリンクを作ってくれるという優れもの。
でもスタイリッシュすぎて、なんちゅーか生活感がないというか、暮らしづらそうというか。間違ってもスウェットの上下でカップ麺食いながら漫画を読んだりできないぜ、という印象。

話の流れとしては、

1.大企業ヴェッセルの社長エロンに車を納品したグレイ君。妻と一緒に自動運転でイチャイチャしながら帰ろうとしたところ、突如暴走を始める車。イチャイチャが過ぎた。
治安の悪いスラム地区に乗り込んだ挙句に事故を起こし、命からがら脱出したところで、謎の武装集団に襲われる二人。
グレイは脊髄を損傷。妻アシャはリーダーの男に撃たれて死亡してしまう。

2.半身不随で車いすの身となり、人生に絶望したグレイ。
そこにエロンがやってきて、人工知能『ステム』を脊髄に移植すれば、前のように自由に動けるようになるよと提案。
悩んだ挙句、ブラック・●ャックモグリの医者の元で手術を受けるグレイ。
エロン「これは未承認の技術なので口外禁止。知人の前では、動けないふりをしてね」

3.手術は成功。身体の自由を取り戻したグレイ君。
ヒャッハーしたい気分だが、重大な欠点が存在した → ステムがしゃべる。
ステム「やあ、グレイ」
グレイ「ヒェッ! 頭の中で声がする!」

4.ステムの助言で、妻を殺した奴らの手がかりを掴んだグレイ君。
自由を取り戻して早速やることが、妻の復讐=性格が暗い。
一味の一人、サークの家に乗り込むも、なんと本人と鉢合わせ。格闘の末、劣勢となるグレイ君。
グレイ「ピーーンチ!」
ステム「許可をくれ。私の性能を最大限に発揮すれば楽勝だ」
たまらず許可を与えたグレイ。
その途端、バグかと思う速度と強さで、あっという間にサークを倒すステム。
だがその倒し方が若干ホラー! 顎がしゃくれかけたからやめたって!

5.証拠を隠滅。自宅へ戻ったところでエロンから電話。
エロン「調子はどう?」
グレイ「いいよ。ステムがしゃべりさえしなければ」
エロン「なんだって?」
ステムの自我と、グレイの復讐に危惧を覚えたエロンは、めったなことをしないようにとくぎを刺す。
エロン「ばれそうになったら、元の身体に戻すからな!」
グレイ「オーケー」

6.そう言った舌の根も乾かぬうちに、次なる手がかりのバーへと向かうグレイ君。またしてもステムが大活躍し、見事一味の仲間からリーダー、フィクスの名前を聞き出すことに成功。
エロン「お前……世間にばれたらどうすんだ!」
グレイの動向を探っていたエロンが怒り、遠隔操作でステムを停止させようとしてくる。
停止寸前。凄腕ハッカーの元へたどり着き、無事にエロンの制御を解除したグレイとステム。
そこに現れたフィクスとその手下。
手下をまたしてもホラーな演出で殺害(ヒェッ)。逃亡するグレイ。怒るフィクス。

7.グレイが一味殺害に関与していると睨んだ刑事コルテスの追撃を振り切り、フィクスとの決戦に挑んだグレイ君。
なんとフィクスも半機械化=アップグレードされた人間だった。
仲間になれ、という勧誘を断るグレイ。
死闘開始。ほわたたたた! → からくも勝利したグレイとステム。
フィクスの通話記録を調べると、グレイ殺害を指示するエロンの声が残っていた。あいつがすべての黒幕か……!

8.エロン宅に到着したグレイは、そこで衝撃の真実を知る。
真の黒幕は、ステム。
エロンは最早ステムの傀儡でしかなく、グレイのハイスペックさに目を付けたステムが、彼の脊髄に自身を移植させるためにすべてを仕組んだのだった。
車の自動運転システムを乗っ取り、一味を仕向け、わざとグレイの脊髄を損傷させる――結果はご覧の通りだ。
ハッカーに制御を外してもらったステムは、満を持してグレイを乗っ取る。
以前のように四肢が動き、妻が生きているという幻覚を見せられたグレイは、そのまま仮想世界の中に逃避。
コルテスとエロンを殺害し、事実を知る者をすべて抹殺したステムは、ただのチップから肉体を持つ人工知能へと進化――アップグレードを遂げ、自由なる世界へと一歩踏み出していくのだった……。

という流れで物語は終了。

なるほどね! タイトルのアップグレードは、グレイではなく、肉体を得て新たな人類となったステムのことを指してるんだね! ヒューッ!

……暗い。
結末も暗い。
だがこの暗さ、嫌いではない……よ!

映像も展開も絶妙に暗く、けれど機械仕掛けのアクションはキレッキレでかっちょよく、時折挟まれる敵の死にざまが瞬間的にグロく、最後のオチは救いがない……んですが、とても面白かったです。
近未来好きな方にはおすすめでございます。

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人物紹介

●グレイ
本作の主人公。ひげを生やしたアラフォー男性。自動運転車が普及する中、あえてアナログ車を扱う整備工をしている。
美人の奥さんがいる以外は、いたって普通の男性であり、正直ステムは彼の一体どこをそんなに見込んだのか謎なんですが、眠れる資質というやつなのか?
ぶっちゃけ肉体的には年若いエロンを乗っ取ったらええんちゃうちゃうと思わないでもないのですが、頭脳派のエロン君は、きっともやし体型だったのだろうと思って納得いたします。そうは見えんけども。

ステムに制御を預けた際は、かかとを支点に起き上がったり、バグり気味の速さで動いたりと、グレイさんパねえという大活躍。でも、明らかに人間の限界を超えた動きをして、中年に差し掛かった彼の肉体は大丈夫なのかと心配になる。
もしかすると、翌日は地獄の筋肉痛に苦しむことになりそうだが、大丈夫。中年の肉体に、筋肉痛は遅れてやってくるのだ。グレイの肉体を乗っ取り、ドヤ顔で去って行ったステム君だが、その後地獄の筋肉痛に苦しんだと思うと溜飲が下がる……かもしれない。
肉体があるって辛ぇわー。でも喜びだわー。的な。知らんけども。

●ステム
第二の主人公。初登場時は、ちっさいチップ型の人工知能だった。
ある日車の納品にやって来たグレイ君を見初めたらしく、その肉体を奪うべく、エロンを操って様々な工作を行う。
事件の真犯人を追うと見せかけて、実は自分の影を延々と追わせていた……つまりはグレイ君へのラブレターだったことが判明し、ある意味乙女な求愛行動だったと言え……るかブアァーーカ! お前、バァァーーーカ!

刑事コルテスの追撃を振り切る際、「ちょっと失礼」とばかりに、近くにいた自動運転車にハッキング、制御を奪って事故を起こさせるのだが、あの瞬間「お前……」と疑惑を確定させた人多数ではなかろうか。
自我がある人口知能というだけで、いずれ暴走して元の人格が危なくなるんじゃねーのと思ったら案の定だよ。しかも、声だけならわりと好青年っぽいのがまた癪に障るんだな!

グレイ君の肉体を手に入れて、具体的に何をするのかは語られぬままでしたが、意外と心行くまでコーラがぶ飲みとか、庶民的なやつだったら嬉しいと思います。

●エロン
巨大企業ヴェッセルの若き社長にて発明家。たいそうな美青年。
顔がよくて頭もよい、しかも若い。
ステムは何故三拍子そろったこの青年を宿主とせんかったのか不思議でしょうがないが、好みじゃなかったと言われればそれまで。まさかの老け専。

いかに黒幕です的な雰囲気をかもし、いかにも黒幕です、な展開がかまされたが、最終的には自分の生み出した子どもに殺されてしまったかわいそうなポジション。
最大の発明が最良とは限らないという、日々革新する技術に対する警鐘を鳴らしているとか、多分そんな感じであろうと解釈するが、美青年を殺したことは許さんぞ。ああいう人類の宝は大事にせんといかん。

●アシャ
グレイ君の美人妻。
ヴェッセルのライバル会社『コボルト』に勤めており、もしや一連の出来事は、大企業もしくはそれと癒着した政府が黒幕にいる一大スペクタクルなのかと思ったが、そんなことはなかった。
自動運転車が事故った後、やってきた一味のリーダー、フィクスによって撃たれ、動けないグレイ君と見つめ合ったまま息を引き取るという悲劇を見せる。
その後、何もかもが入院中に見た夢オチだったよ。アシャは無事だったよ、という演出がなされたが、そんなことはなかった。ただの幻影だった。
ステムこの野郎。

●コルテス
グレイとアシャの事件を担当する地元刑事。
犯人を必死に探そうとしてくれるが、身体が動かず捨て鉢になっていたグレイ君は、彼女に超絶感じの悪い態度を取りやがり、「さっさと犯人を見つけろ、この無能」みたいな感じで言ってくるので、腹にパンチだこの野郎。
グレイの立場からすれば、彼女は復讐を邪魔する厄介者でしかないのだが、客観的に見ればコルテスが真っ当。
なのにグレイときたら、「この身体で復讐できるとか思いますかあぁーー?」と真顔で煽ってきた挙げ句、追ってきたコルテスに別の車をぶつけて事故らせてしまうので、お前マジこの野郎。

それでもめげずに真実にたどり着いたコルテス刑事だったが、グレイを乗っ取ったステムの前に、哀れ撃たれて敗れ去るのだった。おのれステム。

●フィクス
グレイとアシャを襲撃した一味のリーダー。
彼とその仲間はいわゆる改造人間。腕に銃を埋め込んであり、肘のあたりから銃弾をがしゃぽこ補充し、手のひらから発射してくる。
それ埋め込む意味あんの? とか言っちゃいかん。
一応、フィクス君はグレイと同じように脊髄に人工知能を移植しており、彼と張る性能でしゃぱぱぱぱーーと動いてくる。
だが「部下は悲惨なもんだったぜ」というグレイの軽口に煽られ、一瞬の隙きを見せたために敗れ去った。
これは、人の機転がAIを上回る=『ステム<グレイ』ということを示唆した大事な場面かと思われたが、結果はご覧の通りだったよ!

●フィクスの手下たち
そろいもそろって死に方が☆☆☆☆
これだから、ホラー出身の監督ってやぁよ。

●ジェイミー
エロンの制御を外すために、ステムが頼った凄腕のハッカー。わずかな時間の登場ながら、強烈な印象を残すハードな女性。
彼女の横では、VR世界に逃避して帰ってこない人物たちがわちゃわちゃしているのだが、別の部屋に越境した際にも見かけたので、あのビルはわちゃわちゃで溢れているようだ。
現実に帰ってこーい。

●監督
ご存知リー・ワネル氏。いつも素敵な作品をありがとうございます。次回作もとてもとても楽しみにしております!

↓この陰鬱たる世界観を見よ!

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