映画『ガーンジー島の読書会の秘密』ネタバレ感想。ミステリーだと思っていたら、ラブストーリーだったでござる。

原題:The Guernsey Literary and Potato Peel Pie Society
2018年の映画
おすすめ度:☆☆☆☆

【一言説明】
豚しゃん……。

ガーンジー島の読書会の秘密 豚

映画館で配布されるポスターを見て気になっていた映画『ガーンジー島の読書会の秘密』。てっきり『秘密の読書会』なんだと思っていたら、『読書会の秘密』だったので邦題がややこしい。
原題は『ガーンジー島 読書とポテトピールパイの会』的な意味合い。ポテトピールパイとは、文字通り『芋の皮パイ』の意で作中に出てきます。

主演は『シンデレラ』のリリー・ジェームズさん。共演に『ゲーム・オブ・スローンズ』のマイケル・ユイスマン氏と『カレンダー・ガールズ』のペネロープ・ウィルトンさんがいらっしゃいます。

戦時下・後のイギリスが舞台で、とにかくファッションが素敵なんざます。

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あらすじ

『ガーンジー島 読書とポテトピールパイの会』

ドーシー・アダムズという差出人から届いた手紙に記された、奇妙な名前の会。
1941年、ドイツ軍の占領下にあったイギリス領ガーンジー島で発足した同好会だという。

読書はまだしもポテトピールパイとはなんぞ?

女流作家ジュリエット・アシュトンは会について興味をそそられ、島を訪ねてみることにした。
それが人生の転機になるとも知らずに……。

※以下ネタバレです。未見の方注意。

 

 

感想

映画館で見かけたポスターに惹かれ、よっしゃ見に行くべと決めていた本作。リリー・ジェームズさんがやたらかわいいし、Yahoo!大先生の評価はおろか、予告編すら事前にチェックしませんでした。
だからなんかこう、勝手にミステリーだと思っていたんですね。

島で開かれる読書会に秘められた謎。
  ↓
でも殺人とかそういうきな臭い系の謎ではない。
  ↓
ポスターを見るとジェームズさんが旅行鞄を持っている=彼女は旅人。
  ↓
なるほど、読めた。
これはジェームズさんの家族のルーツを探りに、母親か祖母の実家があるガーンジー島を訪ねる話なんぞな?
そこで自分のファミリー・ヒストリーを知り、母だか祖母だかの悲恋話に涙して、自分はこんな素敵な家族から生まれたんだわ。私も前向きに生きなきゃ! ジェームズ・リボーン! 的な。

違った。

ミステリーじゃなかった。

ラブストーリーだったでごわす。

一応ラブが主題ではなく、戦時下における人間ドラマが主軸の素敵なお話だったんですが(だから分類はドラマにしておいたヨ)、謎が解けた後半はリリー・ジェームズさん演じるジュリエットの内面=心の動きが重要となり、彼女が本当の自分を見つけて真実の愛を手に入れるわけで、やっぱりこれラブストーリーじゃんってなりました。

ミステリーではなかった。

個人的には映画館にラブストーリーを見に来てしまった、というのがかなりの衝撃でした。前回見たのが臓物飛び散る『ヘルボーイ』だっただけに落差がパないっす。

予想とは違いましたが、かなりの良作でした。
読書会に隠された秘密というのが悲しく切なく胸を打つもので、謎というのは何も絶海の孤島に閉じ込められた十人が全員死んでて犯人は誰やねんとか、線路を走る急行の中で人が死んだけど乗客全員が容疑者だとか、そういうものに限らず日常の中にも潜むものなんですよ、というのを再認識させられました。ぶっちゃけ隣の家の住人が夜中に庭でごそごそやってただけでも立派な謎になりますもんね。

本作の『秘密』についてですが、まず1941年に読書会が発足する。発案者はエリザベス・マッケンナという若い女性。ドイツ軍の抑圧により疲弊していた中、彼女はご近所に呼びかけこっそり持ち寄りパーティを開く。
つかの間の贅沢に生き返ったような気持ちになる参加者たち。
だがその帰り道にドイツ兵士たちの尋問を受け、とっさに会合の目的としてでっちあげたのが『ガーンジー島 読書とポテトピールパイの会』。
ポテトピールパイとは、参加者の一人であるエベンが作った文字通りのじゃがいもの皮のパイのことで(超まずい)、でっちあげを真実とすべく、エリザベスとドーシーたちはその後本当に読書会を定期的に開催し、絆を深めることとなった。
だがジュリエットが島を訪ねた時点では、エリザベスだけが不在となっていた。
彼女はどこにいるの? という問いに、口を閉ざす会の仲間たち。物語はエリザベス不在の謎を解く形で進行していく。

というわけで一応ミステリー要素はある。しかもいくつかのミスリード展開が存在する。ミステリーでいうミスリードは真犯人から読者の目を逸らさせるためにある。のだが。
なんと本作におけるミスリードとは、ジュリエットの恋の相手が結局は誰になるのかという点においてのみ存在すると言っても過言ではないのだ。

正直、声を大にして叫びたい。そっちかよ、と。
そっちの方向で観客を混乱させてどうすんだと言いたいんです。

相手役になりそうな男性は三人出て来る。
まずジュリエットの編集者であるシドニー。ちょっと年は離れてそうだが古い友人で、彼女を大事にしている様がうかがえる。
そしてジュリエットの婚約者マーク。アメリカの軍人で、ジュリエットが島に渡る直前にプロポーズし、彼女もそれを承諾し婚約者となる。
三人目はドーシー。ジュリエットが島に来るきっかけとなった男性で、超絶イケメン面識がなく手紙だけのやり取りの段階でジュリエットと心を通わせる様が描かれ、普通なら本命はこいつだろうなと思わせる。
でもって島に到着してからの初コンタクトにおいて、ドーシーとジュリエットは互いにそうとは知らずかなり悪い部類の印象を抱く出会い方をする。

もうこいつだろ?

恋愛映画にありがちな初回の印象最悪、でも実は優しいところもある素敵な人……的なアレだろ?
と思わせておいてからの、フラグぶち壊しミスリード展開のオンパレード

まずマークと婚約したことをシドニーに知らせると、明らかに動揺するシドニー。突然「ハッピーかい?」しか言わなくなるバグ全開の言動。
あれ、単なる編集者ではなくそういう感じなのか? と思わせてからの、ドーシー=子持ちの事実発覚。しかも子供の母親はエリザベス。
極め付けが、島の住人アイソラのシドニー=「あなたの心の中にいる人ね」発言。

ははあ、なるほど。最初はドーシーが本命かと思ったが、どっこい実はシドニーが大本命で、ジュリエット&シドニー、ドーシー&エリザベスの両カップルの行く末を応援する映画なのだなとこの時点では理解。
紆余曲折の末、エリザベスが島に戻ってドーシーと再会。そのラブラブっぷりを目にして、ジュリエットの胸の中に浮かぶ本当に大切な人の姿……。マークとの婚約を破棄し、船着き場でジュリエットはシドニーの胸に飛び込む的な。
オーケー、そういうことならそういうスタンスで見ようではないか。

と思ってからの、シドニー=男性が恋愛対象の事実発覚。

えっ、あれ? シドニーがレースから脱落?
んじゃ相手はやっぱりマークなのか? どう見たってかませなのに、実は大本命はアイツだったのか、へー。

と思ってからの、『実はエリザベスの子はドーシーが父親ではなかった』発覚。

なんだよ、やっぱりドーシーなのかよ!

あっちこっちに忙しすぎるわ!!
よく考えると、エリザベス不在の謎解きとジュリエットの恋愛事情の行く末を一緒くたにしてハラハラさせる手腕は見事というほかないのですが、なんかこう……

疲れたっす。

それも使わんでいい気力を使ったような、なんかもうあれだけどええまあとても面白かったですよ! 見てよかったYO!

↑後で探したらこんな感じのver.のポスターもあった。
完全にドーシーがメインじゃないですかー。
これを最初に見ていたら、あんなに悩まなくて済んだじゃないですかーー。

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人物紹介

●ジュリエット・アシュトン
ロンドン在住の女流作家。著作がヒットし、印税でうっはうは。だが生活はつつましく、老婦人の家に下宿している。
彼女が定住する家=自身の居場所を見つけるというのも一つのテーマとなっている。
軍人の恋人がおり、彼に連れられて行く華やかな世界に楽しみや憧れも抱いてはいるが、何か今一つ乘れない感もあり、一歩踏み出せないでいる。

昔、困窮していた時代に手放した本を偶然手に入れたドーシーという男性から手紙をもらい、彼と文通することでその人となりに惹かれる。そして読書会に関する逸話を知り、興味を持ったことで島を訪れる。
その後あれやこれやがあるが最後はドーシーと結ばれ、島に買った家で彼と義理の娘と幸せに暮らす。

演じるリリー・ジェームズさんがめちゃんこかわいい。控えめなようで芯が強く、前抜きに行動する自立した女性というジュリエット像をさらに魅力的にしていたと思われ最高。当時の服装もおしゃれでかわいく、女性なら真似したくなるのでは。

●ドーシー・アダムズ
島で養豚を営む青年。読書会のメンバーの一人。

本命?→子持ちかよ→やっぱり本命……? →本命だったな変遷を歩む。
当初はキットというめんこい少女に「パパ」と呼ばれ、本命レースから外れたと思われたが、実はエリザベスに頼まれ預かっていたという事実が発覚。ジュリエットといい感じになるも、エリザベスのことを思っていたように見受けられる節もあり、あーだこーだとうだうだしていたところにかませのマーク氏が登場。ジュリエットが実は婚約していたという事実に打ちのめされる。

その後彼女がマークとともにロンドンに戻ることになった際は、見送りの現場で終始そっぽを向いて一人離れた場所に立っているという最高にポンチキな行動を取る。いい歳をしてお前……。

でもまあ勲章を持ってそうな軍人VS.しがない養豚家だったら気が引けてしまうのもわかるのでなんとも。

その後、ジュリエットが書き上げた読書会の本を見て、このままにしてはアカンと本土に乗り込むも、漢気溢れるジュリエットから逆プロポーズを受けて「OMG」と口走るというやっぱりポンチキな一面を見せるが幸せになりやがれ! ってなった。OMGはねーだろ。

●エリザベス・マッケンナ
本作のキーとなる女性。読書会の発足人でもあり、勇気と道義心に満ち溢れた女性だった。

戦時中に島にやってきたドイツ兵士の一人と恋に落ち、一人娘のキットを身ごもるが、許されるはずのない関係は引き裂かれ、恋人は戦線で死亡してしまう。
以後は一人で娘を育てていたが、脱走した少年奴隷を助けようとしたところを見つかり、収容所送りとなった。
そこで幼い少女をかばったため、代わりに命を奪われたことがマークの調査で判明する。

あれほど待ちわびた彼女は二度と帰ってくることはなかったが、キットの存在と読書会という絆が遺されたことが唯一の救いだろうか。彼女の勇敢な行動は将来キットの誇りとなるだろう。

●キット
エリザベスの一人娘。めちゃんこかわゆい女の子。
ドーシーをパパと呼び、母親の帰りを信じてずっと待っていた。ケナゲンティウスな姿に涙が止まらず、幸せを願わずにはいられない。
ドーシーとジュリエットの元で、すくすくと育ってほしい。

●マーク
ジュリエットの婚約者。アメリカ軍に所属している。
初登場時からにじみ出る当て馬役臭が気の毒だが、やはりというかなんというか、最終的にジュリエットに振られてしまう。
ドーシーと対面したときには本能的に危険を察知したらしく、なんとも嫌みな態度を見せていた。

フラれた際は、こちらが何を言ってもジュリエットは自分と一緒にならないほうがいい理由しか口にしないのでなんつーかかわいそうになった。
しかも怒りに任せて離席したかと思えば、きちんと戻ってきて別れの挨拶を繰り出すので男前ではあった。きっといい人が見つかるよ。

●シドニー
ジュリエットの編集者。彼女とは古い友人同士で、両親を失った悲しみも理解している。
婚約の報告を受けた際は、突如「ハッピーかい?」を連投するバグ人形と化したため、ジュリエットに気があるのかと思えばそんなことはなかった。
「君を送り出す役を務めるよ」との台詞を見るに、父親のような気持ちだったのではないでしょうか。
予定していたサイン会を突然ドタキャンするなどの行動にも寛大に対処するなどできる男性でもある。

●アメリア
読書会のメンバー。なんと自宅の一室に豚を隠していた豪気な老婦人。
空襲で実の娘と孫を失っており、その友人だったエリザベスをとても大事に思っていた。
だがキットがドイツ人の娘であることがわかれば、彼女を奪われてしまうのではないかと懸念し、長らく秘密を口にすることはなかった。
最終的にはエリザベスまで奪われてしまったわけだが、キットの存在とジュリエットの書いた本とが癒しとなった模様。

●エベン
読書会のメンバー。島で郵便局を営む。
問題の『ポテトピールパイ』を作成した人物。小麦粉も卵もなく作ったそうなのだが、それは……ただのポテトなのでは……?
実物は飲み込むのも困難なほどまずいらしい。

●アイソラ
読書会のメンバー。スピリチュアルで繊細な面を持つが、密造酒を作って巡査にも販売するという豪気な面も持ち合わせる。
独り身だがロマンチストで、いつか自分だけのヒースクリフが現れるのを待っている。
だがヒースクリフは引き合いに出すのはいかがなものか。あいつちょっと性格がなんつーかかんつーかだと思うが、好きな人は好きなんでしょうな。

●豚しゃん
ドーシーが飼育していたかわいい豚たち。
だが食料にすっからという理由で根こそぎ奪われた挙句、代わりに置いていかれたのがじゃがいもという、お前それは等価交換ではないだろうと血涙流したくなる所業を受ける。
戦時中だから仕方ないけど、たんぱく質の替わりに炭水化物って、栄養素の分類違ェげーだろうが! かわいい豚しゃんだったのに……だったのにぃぃ!!

●監督
マイク・ニューウェル氏。『ハリー・ポッター』の四作目や、『プリンス・オブ・ペルシャ』も撮っていらっしゃるそうな。
どちらも大好きな上に、本作も大層面白かったです。ありがとうございます。

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