原題:Saving Private Ryan
1998年の映画
おすすめ度:☆☆☆☆☆
【一言説明】
ライアンどこや。
かの名匠スティーブン・スピルバーグ氏の傑作にして、戦争映画の名作として名高い『プライベート・ライアン』。以前から、映画好きならこれは見なきゃなあ……見ておかなきゃなあ……と思ってはいたのですが、伝え聞く評価が、『あれに臭いを足せば完璧な戦場』だったり、『隣の人が次の瞬間足だけになる』だったり、兎にも角にもヒェッ……な印象。長らく遠ざけておりました。
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……ついに……ついに、このときが来たか……!!
神が見ろとおっしゃるなら、見なければなるまい。
覚悟を決め、夜ふかしのためのコーヒーをキメ(なにせ2時間50分の長丁場)、いざいざぁと出陣した次第です。
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[adchord]あらすじ
「戦地から、一兵卒を助けてこい」
中隊長ジョン・ミラー大尉に突如下った指令。
それは第二次大戦の最中、広い戦場のどこにいるともしれない一人の兵士――ジェームズ・ライアンを見つけ出し、連れ帰ること。たった一人のために、八人の男が命をかける。
無情に思える采配は、しかし、ライアンの家族にすれば温情である。
天秤の不釣り合いさに疑問を抱きつつも、仲間を引き連れ、フランスの奥へと進んでいくミラー大尉だったが……。
グロいシーン解説
評判ゆえに、名作が見たくても見れない……でもやっぱり見たぁい! と筆者同様悩んでいる人のために、オマハ・ビーチの☆☆☆なシーンを徹底解説!
これを読んで備えれば、一定以上の眉をひそめる☆☆☆は見なくて済むよ! 多分。
ただ、本作は戦争がテーマなため、流血や、銃弾が人体(頭部含む)に当たる描写などはしょっちゅう出てきます。
なので、それすらも耐えられそうにないという方は、視聴をオススメしません。
なんとかいけそうだ……という人は、とりあえずミラー大尉のみに焦点を当て、画面端はぼやかして見るとよろしいと思います。
ちなみに、筆者のグロ耐性レベルは、『ミッドサマー』はアカンけれども、『SAW』(ただし、1しか見とらん)ならなんとか……という、10点中5程度の中級です。
本作はそれほどグロくはないけど、臨場感はグンバツで、劇場で見ていたら相当怖かったはず。スピルバーグ監督はゴイスざんす。
※以下に記述する分数は、あくまで『Amazon Prime Video』再生時なので、他媒体では多少の誤差があるかもです。
●6:30頃
オマハ・ビーチでの戦闘開始。上陸組が、ドイツ軍の射撃によって容赦なく撃たれて死んでいく。このあたりの描写で心臓がバクバクして来たら、おとなしく30:00頃まで一気に飛ばそう。
とりあえず、上陸作戦は熾烈を極め、大勢の犠牲者を出したことさえ理解していればOK。本作の設定では、ミラー大尉が指揮を取り、陸上のドイツ軍に切り込むきっかけを作ったため、結果として連合軍側が勝利。
だがビーチの海水は赤く染まり、大勢の兵士が倒れている。そこに、『ライアン』という名の兵士の遺体もあった……というところで、導入部は終了する。
●9:05
正船から降りようとする連合軍の兵士を、ドイツ側が正面から銃撃する様が映された後、ミラー大尉が海水に倒れ込んだら、すぐに目を伏せよう。砲撃を受け、身体の一部が欠損する兵士が映される。
砲撃の音がしてから、ゆっくり5数えたらOK。
●9:45
ミラー大尉の周辺で音が消え、彼の顔に赤い液体が降り注いだ直後、地面に落ちた自分の一部を拾う兵士が映る。ゆっくり15数えて画面に目を戻そう。
●11:33
ミラー大尉が「残ってたら命はない」と叫んだ少し後。大変な怪我を負った兵士が複数名映る。その後20秒以上目を上げてはいけない。母を呼ぶ声が胸に迫る。
「104部隊なんとかMedeicalうんちゃら、Sir!」というセリフが聞こえたらちょっとだけ目を上げてもOK(が、すぐに↓のシーンになる)。
●12:06
「そんなものは放っておいて俺について来い(Follow me)!」というセリフの後、「あー!」という叫び声が終わるまで目を上げてはいけない。画面下部に、損壊した遺体が映り込む。
●12:56
爆発でミラー大尉が倒れ、背後にある何かを掴む動作をしたら目を下げよう。
後ろにいた兵士を引きずって避難させようとするのだが、その兵士はすでに怪我によって息絶えていた……というシーン。
「ふう、ふう」というミラー大尉の息遣いが聞こえてきたらOK。銃弾の嵐の中を、兵士たちは斜面を目指して進み続ける。
●14:40
本部連絡用の無線機を持った兵士とのやり取りで、「各中隊が入り混じっています」の後、「本部へ連絡 本部へ連絡」の字幕が出たら目を伏せよう。
兵士の服を掴んで引き戻して見ると、顔に銃弾が当たったために息絶えている。大尉が代わりに交信を試みるが、無線機本体も壊れていた……というシーン。
字幕が出てから、ゆっくり7数えればOK。
●16:32
「銃と弾薬を集めろ!」のセリフの直後、砲撃が着弾して色々吹き飛ぶので目を伏せよう。
重傷を負った兵士(まだ息がある)から、弾薬を集めるウェイド含む兵士たち。
「ライベン、銃はどうした?(Hey、ライベン、ライベン)」というホーバス軍曹のセリフが聞こえたらOK。
●17:25
「ジャクソンです!」とジャクソンが合流し、彼の顔のアップが少しの間映されたら目を伏せよう。
大流血した兵士を、ウェイドが手当するシーンがしばらく映される。
ミラー大尉の「点火するぞー!」という野太い声がして、一際大きい爆撃音が聞こえたら目を上げてOK。時間で言うと、目を伏せてから大体50秒くらい。
このあたりで、こんなときでもガムを食っているメリッシュが映るが、この後もちょいちょい色んな人が食べているので、まったくガムというのは偉大だなという感想を抱くに至る……のはどうでもいい話。
●21:43
「あの凹みから撃てる」と言われた後、ジャクソンがくぼみに到達し、岸壁の上にいるドイツ兵に狙いをつけ、「主よ お守りください」と言ったら目を伏せよう。
彼の銃弾は見事一人の兵士に命中するが、崖下では連合軍の惨状が映され、今にも息絶えそうな兵士に聖職の資格を持つらしき兵士が末期の祈りを唱えてあげている。
再度、ジャクソンの祈りの声が聞こえたらOK。秒数的には20秒くらい。
******ここまでが冒頭の戦闘********
オマハ・ビーチを過ぎれば、凄惨なシーンはほぼない。
が、一応二箇所だけは注意が必要なので、以下を参考にしていただきたい。
●1:23:30頃から
一行が空挺部隊の集合地を出発した後、草原にたどり着き、「中隊長」というセリフが出たら注意。画面下部に損壊した遺体が複数体映されるので、画面上部だけを見て、ほかは視界をぼかせばOK。
●2:13:48頃
映画の最終決戦場となる橋の戦闘中。最初のくっつき爆弾を手に、兵士が戦車に向かったら目を下げよう。爆弾が戦車着弾前に爆発し、兵士が☆☆☆するシーンが映る。
直後の爆発音が聞こえなくなればOK。
**********************
以上です。
少しでも参考になれば幸いざんす。
なんでライアン救出すんの?
さて、ミラー大尉の経歴を除けば、本作最大の謎となるのが、タイトルでもある『ライアン一等兵の救出』。
何故たった一人の兵士のために、八人もの命をかける必要があるのか……? という最もな疑問を、視聴者共々、救出隊の全員が終盤まで持ち続けるわけですが、『ソウル・サバイバー・ポリシー』という決まりごと云々は横に置くとして、陸軍参謀総長のシーンを見て激しく納得。
五人の息子を亡くしたサリヴァン夫人に送られた手紙を読み上げるジョージ・マーシャル総長。それを真面目な顔をして聞く部下たち。
偉大なるリンカーン大統領の名が刻まれたその手紙には、『五人のご子息を失った悲しみは決して癒えることはないでしょうが、彼らが国のために戦い、貢献したことが、せめてもの慰めになりますように』的な内容が書いてある。
正直、ク●だなと思いました。
そして多分、総長を含め、その場にいた全員がク●だなと思った(多分筆者の想像でなく、彼らの顔に文字通り「この手紙ク●やん」と書いてあった)。
歴史ある大統領の名を持ってしても、拭いきれない薄っぺらさ。どれほど美辞麗句を並べようとも、五人の子どもを同時に失った女性の、何の救いにもならないことこの上なし。
そりゃー救出を命じますわ。
けれど、本作の素晴らしさはこの手紙の扱い方にあり、終盤でライアンが無事に生き残った際に、もう一度同じ語句が、今度はライアンの母親に向けて記される。
凄惨に――そこにいる兵士たちの事情も知らず、ただただ大勢の人が亡くなっていったビーチでの戦闘と違い、今度はライアンを含めた九人の、そして道中で彼らと関わっていった人々のドラマがある。
それを目にしたかいないかで、同じ語句がまったく違った印象に映るのだ。
彼らの死には、意味があった。
それが事実かどうかはともかく、そう思いたい――そう信じたいと願う自分がいる。
大統領の言葉は、その心情にぴたりと寄り添うものであり、まさにこれ以上の言葉はないというたむけである。残された家族は手紙を読み、帰らなかった命に――息子を失った悲しみに、正面から思いを馳せることができるだろう。
そう考えると、歴史上の評価も高く、偉大な大統領としての呼び声高いリンカーン氏は、実に優れた政治家であったという皮肉が見える。彼の言葉は、戦争とは政治のぶつかり合いであり、本来なら若い命がこれほど同時期に大量に失われる必要などないのだという側面を覆い隠す。
そしてライアンの帰還に感動してしまう我々視聴者も、リンカーン大統領と、そしてスピルバーグ監督とのし掛けた罠に、実に気持ちよくハマってしまっているのだ。
本作は、連合軍側が善でもなく、ドイツ軍側が悪とも描いていない。ただそこで、互いを敵として戦っている人々がいる、戦争を、『戦争』として描いた映画だと思う。
見てよかった、と心から感じました。人生において見るべき映画の一本を見た……という感慨にふけりたくなる素晴らしさ。
特に、『戦場に鳴り響くエディット・ピアフ』は名シーンが過ぎて、これを見るためにオマハ・ビーチを越えてきたと言っても過言ではない。過言ではない。
廃墟。兵士。昼下がり。でもってレィディオ。
監督は神かってなもんです。
人物紹介
●ジョン・ミラー
主人公。陸軍大尉。wikiを見ると『34歳』とあり、設定ではずいぶん若い。
解せないのは、同じ記事に『11年間高校で教師をしていた』という記述があること。教師=おそらくは大学出。とすると、年齢から逆算して……軍歴は一体何年なんだ?? ようわからん。
その一見優し気な風貌とは相反し、戦場での判断は常に冷静で的確。全身肝と称されるにふさわしい肝っ玉ぶりを発揮し、どれほど危険な任務でも迷わず突っ込んでいく&生きて帰ってくる。
というか、オマハ・ビーチでは逆になんで生き残れたのか聞きたいレベル。よくぞ銃弾に当たらなかったもんだよ!
一方で、アパムが引用したエマソンの言葉にも理解を示したり、誰も読んじゃいない教則本の知識を持って、くっつき爆弾を提案するなど、さすがは元教師という教養も持ち合わせている。そのスペックの高さに、なんというか、まったくハンクス氏はパねぇなという感想を抱くしかない。
そんな彼も、戦争で次第に心を蝕まれており、英国に到着以降は右手の震えという症状に見舞われることがある。それは彼の兵役の限界、もしくは人間性の喪失を意味していると思われ、ようやく震えが治まったのは、彼の心臓が鼓動を止めてからだった。
「ライアンという名前に意味はない。ただ、彼を故郷に帰すことができたとき、初めて自分は胸を張って故郷に帰れる」
部下を失い、命を奪い、ひたすらに戦場を駆けた男は、最期に自分がかつて見逃した男に命を奪われる。
それはもちろん監督の采配だが、しかしそこに意味などないという意思を感じる。たとえあの時見逃さなかったとしても、結局は別の誰かが大尉の命を奪っただろう。
彼が最期にライアンに残した、「無駄にするな。しっかり生きろ」という言葉は、一見たむけのように聞こえるが、それは反面呪いでもあると個人的には思う。
「ライアンは救うに足る男か? そうでなきゃ、俺は許さない」
その言葉の通り、大尉は最期にライアンに失った部下たちの命を背負わせた。
だからこそ、ライアンは年老いるまで、生涯を真摯に行き、問い続けたのだ。
そう考えると、大尉の言葉はやはりたむけであり、やっぱり根は教師なんだなと感慨を抱いた次第です。
というか、てっきり生き残るんだと思ってたヨ!
冒頭のライアン老人の目のアップは、意図的にミラー大尉にかぶせてあったよね! 騙されたぞなもし。
●ホーヴァス
軍曹。ミラー大尉腹心の部下で、やはり全身肝男。
ビーチにて大尉と肩を並べて戦った後、ライアン救出隊にも選任される。
訪れた戦場の土を缶に入れてコレクションしているという、とんだ高校球児。多分持ち帰って将来孫とかに見せるんだと思うけれども、いずれかの時点でミックス → 故郷の土に還る顛末になりそうな予感。
ミラー大尉との信頼関係はグンバツながら、途中の寄らんでいいドイツ軍陣地を破壊すると大尉が言い出したときは、さすがに「エッ」という顔をした。
でもって案の定ウェイドが死んだ時は、正直ライベンの主張ももっともだと思ったようだが、それでも大尉を裏切らないその姿勢にマジ惚れます。
橋での戦闘では大活躍するも、中盤、敵の拳銃で身体の複数箇所を被弾。
それを「ク●ッ」の一言で済ませる。
その後も動き回ってアパムを回収するなど元気だったが、二度目に右胸を撃ち抜かれ、援軍を待たずして死亡した。
遺体は無理でも、土は家族の元に帰ったと信じてる。
●ライベン
一等兵。おしゃべりなあんちゃんといった印象の男性。
だが一番ライアンに当たりが強い。
後述の、人違いライアンを「アホ面」呼ばわりしたのもこの人。
口が回るだけに自己主張も強く、ウェイドが死亡した際は、表立って大尉を批判、隊を離脱しようとした。
だが、そこで大尉渾身の経歴明かしをかまされ、なんやかやの説得の後、再び隊に加わることとなった。
アパムとライアンを除いては、隊の中で唯一の生き残りであり、大尉の最期も彼が看取った。
人違いライアンと違い、仲間と運命をともにすると主張したライアンには一目置いたようで、戦闘の最中に心の雪解けが行われる様を披露してくれる。
ザ・素直でなし男。
●ジャクソン
信心深い狙撃手。「主よ、お守りください」等、毎度祈りの言葉をつぶやいてから銃撃するという、中の二がつく人には大うけしそうな行動を取る。
「ヒトラーが俺の射程距離に入ったら、戦争が終わる」と豪語するなど、腕には絶対的な自信を持っており、実際マジでゴイスなので異論はない。
ラメールでの最終決戦では、鐘楼の上という絶好の場所に陣取り、やって来る軍団を次々と撃ち取っていった。
その命中率は、両目の下に斜め皺のある眉毛太男も一目置くのではないかと思われる。
だが、狙撃場所を突き止めた戦車の砲撃により、鐘楼ごと撃ち落とされて死亡。連合軍側が撤退するきっかけとなった。
●ウェイド
衛生兵。多分隊の中では一番若く、精神面でも汚染されていないため、空挺団を前に、死亡者のネームタグ披露会を仲間がやり始めたときは、「正気か」とガチ真顔になって止めに走った。そりゃそーだ。
若いが、肝の座り具合はさすがライアン救出隊で、オマハ・ビーチにて軍医が撃たれて死亡したときは、「医者撃つなや!」と銃弾の嵐の中でガチギレを披露した。
そんな彼の心残りは、子供の頃、母親に対して冷たい態度を取ったこと。それを休憩中にぽつりぽつりと話し出すので、もしや死亡フラグなのでは……と戦慄していたら、案の定、次の戦闘で死亡してしまった。
彼の最期は悲愴であり、おそらくは隊の弟分でもあったため、ライベンが激高することとなった。
●メリッシュ
二等兵。ちょび髭がチャームポイントなユダヤ系アメリカ人。
空挺部隊の集合地にて、捕虜となったドイツ兵を前に「俺はユダヤ系だ!」と主張。気持ちはわかる。
ビーチでは大尉にガムを献上。鏡で敵側の動向を窺うことに貢献する。
が、橋の戦闘では、有名な『アパムが弾持って来なかったために敵の進侵攻を許し、アパムが助けに来なかったために敵に刺されて死亡』という憂き目に遭う。
弾を持って来たとしても、いずれは数の前に敗退したとは思うが、二番目はアパムが助けにさえ来てれば勝てたのは確か。
しかし、全身肝軍団と、訓練を受けただけで初実戦のルーキーを一緒にしてはいけない。ほぼ一般人だぞ、あいつ。しかも文系の。
●カパーゾ
二等兵。イタリア系アメリカ人。
ラテン系らしく、陽気で大柄。見るからに頼もしいアニキといった感じだったが、最初に訪れたフランスの村で、姪に似た女の子を保護しようとした矢先に、狙撃手の凶弾に倒れた。
戦場に人情は禁物ということかもしれないが、演じているのがヴィン・ディーゼル氏ということもあり、もっと活躍が見たかったというのが本音であります。
ウェイドの書き写した手紙は、無事家族へと渡ったであろうか。
●アパム
五等特技兵。wikiを見ると救出隊の最年少とあるが、映画ではどう見てもウェイドが最年少。
なまじ学識が深く、独語と仏語両方が解せたため、急きょ救出隊に抜擢されることとなった。
その時に彼が披露する、『いやいや僕なんか連れていっても役に立たないっていうか、銃とかまったく実践で使ったことないっていうか、とにかく戦地のど真ん中に連れていくとかマジやめたって適任は他にいる』アピールは必見。
なのに「銃撃ったことあるなら一人前だ」と無理くり引っ張って行く大尉。
↓
おかげでメリッシュはあんなことになったがな!
おそらく、ライアンを救出できた時点でアパムはお役御免となり、再び後方支援の場に戻れた=生還できたと思われるが、入隊時に三か国語話せますと正直に語ったことを死ぬほど後悔したに違いない。その後は能ある鷹は爪を隠すを地で行く男になったかもしれない。
中盤はともかく、最終決戦の場で彼が取った行動については意見の分かれるところかもしれないが、個人的には深い同情と共感とを覚えたキャラ。
後方支援でタイプライター叩いてたのが、突如あんな地獄に放り込まれたら、そりゃー怖くて足もすくむだろうし、去りゆく敵兵を前に撃たないでアピールもしたくなるってなものである。
最後に再会したドイツ兵については、彼の解放を訴えた身としての、自分なりのけじめだったのかもしれない。
●ジェームズ・フレデリック・ライアン
ライアン一等兵だが、アイオワ出身でない方。
「ライアンいる?」と呼ばれたからホイホイ出てきたのに、誤報で神経をすり減らされるわ、人違いで結局帰れねーわ、挙げ句にアホ面呼ばわりされるわ、踏んだり蹴ったりな扱いを受ける。超失礼。
そしてその後とんと出番がないが、無事に故郷に帰り、めんこい弟たちと釣りに行ったと信じてるぅ!
余談ですが、「ライアンくーん」と呼ばれて彼が登場したとき、どう見てもマット・デイモン氏には見えないが、もしかしたら若い頃彼はこんな顔をしていたのかもしれない。どう見ても別人に見えるが……と数秒悩んだ。
別人だった。
●ジェームズ・フランシス・ライアン
一等兵で、アイオワ出身の方。&マット・デイモン氏の方。
前述の別人の件もあり、なんだよ、ライアン中々出てこんな。どこにいるんだよ……となっていたところ、通りすがりの戦車がボーンってなった後に、ひょっこり出てくる三人組の一人がデイモン氏。
あまりにフツーに画面にいるので、あれ……左端のはデイモン氏に見えるが、実はデイモン氏ではないのではないかと数秒悩んだ。
デイモン氏だった。
紛らわしいことすんなや。
『アホ面』と評されたミネソタ出身の方に比べ、戦車砲撃隊として登場した&帰還しろと言われたのに帰還しない侠気を発揮という見せ場があるため、険悪さは変わらないものの、救出部隊の当たりが若干マイルド。
戦闘前のつかの間の休息では、大尉を前に、納屋での逸話を披露。無邪気に笑った顔が一転、「あれが兄弟四人がそろった最後の夜でした……」と気づくその様が切ない。
橋での戦闘中は、死なないよう気にかけてもらったおかげで、後退時まで生存。だがドイツ軍の猛攻に、膝を抱えて震えるという事態に陥り、間一髪、援軍が来たことで九死に一生を得る。
ライベンとともに大尉を見取った後は、彼の言葉通り人生に真摯に向き合い、良き伴侶、家族を得て幸せな人生を送った模様。
大尉の墓を見守る姿を持って、『Saving Private Ryan』はここに果たされたのだと目頭を押さえた次第です。
●ハミル
カパーゾを失った町ヌーヴィルで出会った陸軍大尉。
突如壁が崩れ、中にいたドイツ兵らと膠着状態に陥った面々を、上から容赦ない射撃を浴びせて助けるという派手な登場ぶりを見せる。
同じ大尉同士、ミラーとは話が合うようで、「町の奪還を続けていけば、いずれは勝利だ」という旨の会話を二人でテンポよく交わすなど、通じるものがある様子。
強面だが、思いやりは深いようで、人違いで罵倒されたうえ、結局帰れねえと嘆くアイオワ出身でない方のライアンの肩を、事実が判明する前も後も、変わらぬ表情でがっちりと抱くというグッジョブさを見せる。
さすが軍人さんは冷静じゃのう。
●ドイツ兵
敵方としてわらわら出てくるが、やはりここで語るべきは、大尉が見逃した&敵軍に舞い戻って最終的に大尉を撃った兵士と、メリッシュを殺した兵士は別人、ということでしょうか。
なんか流れ的に、二人は同一人物なんじゃねーの? あれ、でもなんか顔が違う……と思っていたら、案の定別人だった。
アパムが相手なため、助けてもらえるかもと思った彼には気の毒だが、セカンドチャンスは与えられなかった。
まあしかし、あの状態で放免されたとしたら、十分な距離を稼いだ後で、自軍に舞い戻るのは当然っちゃ当然だと思われます。
●空輸部隊の飛行士
准将が銃弾に当たりませんように、との願いを込めて、機体を無断で補強されたため、いざ母機を離れてその重さにびっくりした人。
准将は生き残ったんだが結局死んだのかよくわからんが、正直どうでもいいと思わせるくらいに気の毒。
敵兵を刺すつもりが、味方に刺されてどうしろっちゅーねん。
●村の親子
「娘を安全なとこに連れてってちょ」と突如無茶ぶりをかますおとんが大暴走。「無理だから」と訴える大尉たちの声も無視し、後ろで泣き叫ぶ妻と息子も無視し、ついでに娘本人の声も無視し、カパーゾに預けようとして、結果失敗。
戻って来た娘にバカスカ殴られた。
気持ちはわかるが、そりゃそーだとしか。
●監督
言わずと知れた、スティーブン・スピルバーグ監督。
数々の名作をありがとうございます。ほんに素晴らしい監督さんです。
↓Amazon Videoで絶賛配信中。問題のライアン君は、なんと1時間50分くらい経過しないと出て来ないという真打っぷり。さすがのマット・デイモン氏であります。