原題:IT:chapter one
2017年の映画
おすすめ度:☆☆☆☆
【一言説明】
下水処理どうなっとんの。
スティーブン・キング氏原作の『IT』。氏の代表作として名高い大長編が映画になりました。こちらは1990年にも一度映像化されており、187分という長さを前後編で視聴した記憶がございます。
原作と1990年版では子供時代と二十七年後の大人時代が交互に描かれていますが、本作はチャプター1と2で明確に子供時代と大人時代を分けるという構成にされ、よりわかりやすい展開となっております。
主演ともいうべきペニーワイズ役にビル・スカルスガルド氏。
何故このイケメンをあんな邪悪ピエロに染める必要があったのかと疑問ですが、元が端正なだけにいい感じに不気味さがアップ!
めんこい子役軍団VS.ピエロの大暴れを楽しく見守ることにいたしましょう。
あらすじ
雨の中、ジョージー・デンブロウは通りを駆ける。兄・ビルの作ってくれた紙の舟を追って。
病気の兄が一生懸命に用意してくれた大事な舟。
だが一瞬目を離した隙に、船は排水溝から下水へと落下してしまう。「どうしよう……兄ちゃんに殺される」
そのつぶやきに、返るはずのない答えが返ってくる。
「舟が欲しいかい? ジョージー」
排水溝の中に光る二つの目。
ピエロの姿をした”それ”が、じっとジョージーを見つめていたのだった……。
※以下ネタバレ。1990年版『IT』もネタバレしております。そして記事に残虐な表現を含みますので、苦手な方は注意してください。
感想
冒頭。排水溝の中にいるピエロに向かってジョージーが手を差し出すシーン。
大人ならここで絶対に相手したりしないはずなんですが、ジョージーは確か7、8歳の少年。
たとえ7歳でも排水溝のピエロ見たら逃げない?
とか言っちゃいかん。
だが言いたくなる。ジョージー、早く逃げろよと。
実は本作、過去に一度TSUTAYAで借りてきたことがあったんですが、七歳の少年が無残に死ぬシーンがどうしても見られず、そのまま未視聴で返却したことがありました。
けれど続編を見るのに一作目をスルーするわけにもいかず、エイヤッと再生スイッチを入れたわけなんですが……。
なんか思ってたのと違う……。
原作や1990年版だと、ジョージーが排水溝に手を突っ込むとペニーワイズが腕をもぎ取り、そのショックで死亡。倒れた黄色いコートが雨水の中に浮いている……という痛々しい絵面だったはずなんですが。
めっちゃ腕食われた。
しかも逃げようとしたジョージーの足をピエロが引っ張り、彼はそのまま排水溝の奥へ。行方不明となってしまったようです。
あれ……?
こんなモンスターパニック的な映画だったっけ……?
もっとこう痛々しく悲壮な展開を想像していただけに、ド直球のホラー展開に拍子抜け。これなら見られるわーと気持ちの切り替えができました。
でもいたいけな少年相手に何をしてくれるんだ監督さんは。
倫理委員会とかすっ飛んできそうです。
そんなこんなで冒頭を越えた後は直球的なシーンもなく、恐ろしいことが起こってもぼかされるか直前で回避されるかで安心の内容となっておりました。
怖いかと聞かれれば、怖がらせるシーンはしっかり怖い。
ITの怪異は大人には見えず聞こえず、主人公ビルを含むルーザーズクラブ(負け犬軍団)の面々がひでー目に遭っているのに、そばにいる大人は知らん顔……というのがさらに恐怖を煽る仕様となっています。
特にふと画面に映り込むTVの内容が、「みんな楽しく浮かぼうよ」と狂気的な内容なのに、画面の前にいる家族はふつーに見ている、とか。
怖い。
このあたりはキング氏の小説に潜むじわじわくる恐怖を非常に巧みに表現していたと思います。
そして1990年版よりも子供時代に尺をさけたおかげか、あの年齢特有の空気感がすんばらしー出来となっていました。
夏休みに子供だけで集まって川でわやわやとか、ペニーワイズを撃退した後の血の誓いのシーンとか。
中でも秀逸なのがベバリーを巡る子供時代の淡い恋愛感情云々。ベバリー役のソフィア・リリスさんがめんこいのなんのって。川に飛び込むシーンでの、ブラとショーツが揃ってないところとか、なんかもう少女っぽいのに艶っぽくてうふーんってなります。
本作は前編ということで、ペニーワイズをとりあえずは撃退するものの根絶とまでは行かず、”それ”が結局何なのかはわからず終いですので、謎解明については後編を待つ必要があります。なのでそちらのネタバレは続編にて。
↓続編『IT/イット THE END』の感想はこちら。
[adchord]人物紹介
●ビル
主人公。ルーザーズクラブのリーダー的存在。吃音気味でそれをよくからかわれるが、恐怖を感じた時やここぞという時にはつっかえずに話すことができる。
大雨の日、自分が与えたボートを追ってジョージーが行方不明となったため、ずっと責任を感じていた。そのためペニーワイズが見せる幻覚(主にジョージー)に一番影響されやすく、”それ”に憎悪に近い感情を抱いていることから、仲間を戦いへと巻き込んでしまう。
前述の通り、ペニーワイズの怪異は主に子供にのみ作用するため、デリーの大人たちは全く頼りにならない。なので使命感的に「あいつを倒せるのは僕たちしかいない!」となるのだが、だからって完全にお化け屋敷と化した廃墟に手ぶらで入るわ、いざ装備を整えたら下水道の奥にザブザブ入って行くわ、真っ暗な地下室にズンドコ降りて行くわ、とにかく勇気が荒ぶる主人公的行動を取る。
ホラーの登場人物って、末端に到るまで胆力パないと思うのは気のせいでしょうか。真のビビりは妙な音がしても一歩も動けないもんだと思うんだけどなあ……ゴイスー。
さてビル君。演じる子役君はかわゆいのだが、髪型が若干変。そのファササーってなる前髪、どーなってんの? どっち分け?
イケメン故にベバリーとの間には特別なものがあり、彼女が引っ越す直前に1塁出塁の快挙を果たす(『ゾンビランド』感想参照)。
ペニーワイズによるホラー現象の私的恐怖度ランク:4位。
最初にジョージーの幻覚を見た後、地下室の水の中から出てくるペニーワイズのブレッブレな動きこっわ!
●ジョージー
ビルの弟。お兄がせっかく作ってくれた舟なんだからとケナゲンティウスな行動を取るが、それが仇となった。
彼が死ぬ際に着ていた黄色のレインコートは、赤い風船と合わせて本作の象徴となっている。
終盤でペニーワイズを撃退した後、降りて来た犠牲者たちの下で彼のレインコートが発見される。それを一応の鎮魂としたいが、続編の予告編を見る限り、まだまだ”それ”によって利用されまくるようなのでやっちまってください、お兄ちゃん。
●ベバリー
本作のヒロイン。赤毛のめちゃんこかわゆい女子。
成長期の少女特有の、あどけなさと艶っぽさが共存している状態で、その魅力はドラッグストアのおっさんの視線を独り占めできるほど。
実の父親とのやりとりが不穏なのだが、確か原作では束縛はあれど実際的な接触はなかったはずなので解釈が違うのか。
ルーザーズクラブの中では特にビルとベンとのフラグを立てているが、二十七年後には「あの時みんなが恋してた」と告白されるに到るであろうことが察せられる。
物語終盤、突如バスルームに現れたペニーワイズによって攫われてしまう。
が、ぷかぷか中途半端に浮きはしたけれど完全に死んではおらず、ベンの決死の行動(1塁出撃)によって復活を果たす。
なぜ彼女だけが助かったのかと言えば、やはり直前に父親に反撃し、彼への恐怖を克服したことが功を奏したからだろう。ベバリーは最早ペニーワイズの作り出す幻覚を恐れておらず、その為捕食が叶わなかったと思われる。
そう考えるとペニーワイズの捕食対象=子供なので、原作通り父親との間には直接は何もなかったと考えるのが自然か。
私的恐怖度ランク:2位。
多分経血なんでしょうな。バスルームに血がブワーーーーって、こっわ!
●エディ
ルーザーズクラブのメンバー。過保護な母親に束縛され、自分は病気だと思い込まされている。実は彼が使っている喘息の吸入器に入っているのはただの水なのだが、本人はそれに気づいていない。
わりと口が悪い。
ビル・リッチーと共に井戸の家に侵入するメンバーに選ばれてしまう。
しかも運悪く二人とはぐれ、感染した男の幻覚を見せられ、ペニーワイズにあわや捕食されるか……と言うところで辛くも脱出。
が、右腕の骨がポッキリ折れた。
骨の途中からパキャンっと変な方向に曲がった腕を見て「うわアァァァ!」と叫ぶという、骨折に驚いた人の見本みたいなリアクションを取ってくれる。
そんな目に遭いながらも最終決戦までついて来てくれるので、かなりガッツがある。
私的恐怖度ランク:2位。
感染した男はもとより、お化け屋敷に誘い込まれるとかこっわ!
●ベン
ルーザーズクラブのメンバー。太っちょの少年。
歴史に興味があり、デリーの町で二十七年周期にて子供の大量死亡事件が発生していることを突き止める。
その後は関連する記事や写真をスクラップして部屋の壁中に貼ったりしているが、一見するとベン自身がサイコさんなのでリッチーは普通に引いていた。
自分に優しくしてくれたベバリーに恋心を抱き、こっそり詩を書いたハガキを彼女に贈る。なかなかセンスがある模様。
今回はビルに軍配が上がったが、二十七年後に期待しよう。
私的恐怖度ランク:1位。
個人的に一番怖かったっす。本のページが火事の写真になり、木の上の生首……からの首なし死体の追跡……からのブレッブレペニーワイズとかこっわ!
●リッチー
ルーザーズクラブのメンバー。口が達者でいつもふざけてばかりいる陽気な少年。分厚いメガネをかけているのでわかりづらいが、素顔はとても美少年。
クラブの面子の中で唯一、単独でのペニーワイズ襲撃を受けなかったが、怖いものが『ピエロ』なので直球すぎたからだろうか。原作だとなんか怖い目に遭っていたかもしれないけどうろ覚え。まあ一番陽気だし、手を出しにくかったのかもしらん。
だが終盤。
ペニーワイズにとっ捕まったビルを目の前に、「君のせいでこんな目に遭っている」と彼を見捨てる発言をしたかと思えば……真っ先に反撃を開始する熱いハートの持ち主であることが判明。株価上昇がうなぎ登りだった。ヒューッ!
●スタン
ルーザーズクラブのメンバー。ユダヤ教の祭祀ラビの息子。
そのせいかお行儀がよく、メンバーがことごとく自転車を地面にがっしゃんがっしゃん倒す中、一人だけきちんとスタンドを立てる。
つーかお前ら、路上に自転車放置すんな。
真面目で神経質な性格ゆえか、対ペニーワイズには最も及び腰であり、下水でみんなとはぐれてひでー目に遭った際はビルに対しガチ切れしていた。
が、無理もない。
なんや不気味な顔をした絵の女に頭ごとすっぽり食い付かれたら、そりゃー怒りますよ。
私的恐怖度ランク:6位。
モディリアーニの絵だと思うんですが、あんな不気味な絵の女性が幻覚に出てきたらこっわ!
●マイク
ルーザーズクラブのメンバー。ヘンリーに追われた際、石投げ合戦にてクラブの面々に助けられ、加入することになった。
両親を火事で失っており、屠殺業を営む親戚の家で暮らしている。
ペニーワイズを倒すため、いざ下水に乗り込むことになった時、一番使えそうな武器を提供した。屠殺に使う銃に似た道具で、ペニーワイズにも有効打となった模様。
だが井戸に降りようとした際、ヘンリーに襲われ撃退した時の反動でうっかり弾のストックをまるっと落っことすというドジっ子ぶりを見せる。お前……。
私的恐怖度ランク:5位。
火事のトラウマをえぐってくる演出がペニーワイズ性格わっる!
●ヘンリー
ルーザーズクラブを付け狙う不良のリーダー。
髪型がダサくないか……と思っていたら、案の定リッチーにツッコまれる。
警察官の父親に抑圧されて育ったようで、仲間の前で恥をかかされた後、ペニーワイズにそそのかされて実の父親を殺害してしまう。
飛出しナイフってそうやっても使えるんすね。
二十七年後にも出てくるだろうけど、活躍は期待せんぞ。
●パトリック
ヘンリーの仲間。それなりに荒ぶっていたが、下水に入った際に間違った道を選んでしまったため、ペニーワイズの餌食となった。
なんか子供というにはめっちゃ育ってるんだけど、それでもまだ捕食対象なんすね。
●ペニーワイズ
諸悪の根源。性悪ピエロ。デリーで起こる怪奇現象は全てこいつが原因。
ピエロの姿を取ってはいるが正体は別にある模様。
デリー全体を手中におさめる為とはいえ、下水が住処というなんともあんまりな場所を根城にしている。
なぜか執拗にルーザーズクラブの面子をつけ狙い、それぞれの前に最も恐怖心を抱く姿を取って現れる。
その際、幻覚からペニーワイズへと姿を変えると五割の確率で高速で揺れながら近寄ってくるという不気味行動をとる。やめーや!
こいつに散々驚かされた子供達がついにブチ切れ、下水にて反撃をくらう。
しかもその手段がバットだの屠殺銃だの完全な物理攻撃によるフルボッコだったのでヒェッ……となった。まあしょうがないっすよね……ちょっと意地悪しすぎたしね……。
続編ありきなので二十七年後、少年たちが四十歳になった時に復活する模様。
ちなみに子供時代は四十と聞くと超おっさんだと思ったが、大人になってみると四十は意外と若いからな! 覚えとけよ、ちびっ子たち!
●3Dペニーワイズ
映写機のシーンにて出てくる。
マジかよ。ってなった。
●デリーの大人
なんというか頼りになる人も好感を抱ける人もいない……。
これが児童小説なら、一人くらい子供心を忘れない=ペニーワイズが見える大人がいて、その人が力になってくれそうなんだけどそんなことはなかった。キングだもの。
●ギプスに『LOSER』って書いたやつ
やめれ。
素直に「おっ、こいつ実はいいやつなんじゃね」と思った感動を返せ。
●下水
汚水も何もかもが一緒くたに下流に流れ込んでいるようなのだが、下水の処理はどうなっとるんだ……? 謎。
●監督
アンディ・ムスキエティ氏。ホラー映画『MAMA』を撮った方。怖そうだから見てないけど。
続編でも監督を務められるそうで、期待が高まるというものです。楽しみにしております。ありがとうございます。
↓Amazon Videoにて好評配信中。この後ろ姿の少年が、ひでー目に遭うのでございます……。
↓原作本も……あるよ……長ぇーよ……?