映画『[リミット]』ネタバレ感想。90分間棺桶の中。シチュエーションスリラーの結末はいかに。

リミット 映画 サスペンス

原題:Buried
2010年の映画
おすすめ度:☆☆☆☆

【一言説明】
棺桶に生き埋め。

リミット 映画

Netflixにて絶賛配信中の『[リミット]』。
登場人物はライアン・レイノルズ氏のみ。他はすべて電話での音声という徹底した作りのシチュエーション・スリラーです。
『フォーン・ブース』や『ギルティ』など、同ジャンルにハズレなし。期待を大にして、レッツ再生!

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あらすじ

目覚めたら、生き埋め。

突如、棺桶の中で目が覚めた男、ポール・コンロイ
トラックの運転手としてイラクで働いていた彼は、意識を失う直前、武装した軍団に襲撃を受けたことを思い出す。
おそらくは、そのまま棺に入れられ、砂漠の下に埋められてしまったようだ。
この絶望的な状況をひっくり返すには、果たしてどうすればいいのだろうか……?

※以下ネタバレです。結末を知らないほうが百倍楽しめますので、未見の方はご注意。

 

 

 

 

感想

リミットだと思っていたら、[リミット]だったでござる。
なんだい、[]は何かのこだわりかい? それとも時間の単位的なものを表す記号か何かかい?
原題は『Buried』=埋められた、埋葬=生き埋め、というド直球タイトルなので、そこは邦題を決めた人の何がしかの美学が込められていると見ましたね。ふっふー。

さて本作。多くのシチュエーション・スリラーがある中で、画面に映る登場人物が主人公ただ一人という、極めて特殊な内容です。
視聴者は90分弱の尺を、ひたすらライアン・レイノルズ氏演じるポールの悲喜こもごもを見て過ごし、あるいは途中で突如暗転した画面の中に自分の顔が浮かび上がるのを見て現実に戻されたりするわけですが、とにかく面白かったです。
画面が暗いし、十年も前の作品だしで、レイノルズ氏がいつものレイノルズ氏に見えなかったのもスリルを増長。とにかく最後までどう転ぶかが分からない作品でした。
流れとしては、

1.棺の中で目が覚めたポール。所持品は、ライターと酒、薬の瓶。
棺は狭く、ポールの身体の大きさ+αくらいしかない。必死に蓋を押すが開かない。
2.足元に携帯電話あった。スマホではない。
ひゃっほうと中を開いてみるが、言語設定がアラビア語。嫌がらせか。
3.とりあえず緊急通報だ! → 何故かオハイオ州の911にかかる。
「今どこですか?」
「イラクです……」
「何州の?」
「国家のイラクです……」
他に、妻や会社やFBIにかけるも、留守電だったり、たらいまわしだったり。
4.よく見ると、履歴に見たことない番号が。 → かけたら犯人につながった。
「九時までに500万ドル払えば助けてヤル」
「なんで俺を誘拐したの? 兵士じゃないのに」
「お前は兵士だ。イラクにいる米国人はみんな兵士だ」
「偏見が過ぎる」
5.米国務省に電話。人質救出のスペシャリスト、ダン・ブレナーに状況を伝えたところで、犯人から電話。
「足元のメモを読み上げて、人質動画を撮れ。身代金は500から100にまけてヤル」
棺の中で必死に体を折り曲げ、頭と足を入れ替えるポール。
足元の袋には、ナイフとサイリウム数本、そしてメモ → アラビア語
「読めるか!!」
6.なんかもう嫌になってきたポール。ブレナー相手にくだを巻き始める。
「どうで救出する気なんかないんだろ?」
「いやいや、大丈夫だよ。前にも人質を助け出したことあるし」
「誰それ?」
マーク・ホワイト。26歳の医学生さ」
希望を持つポール。まだもうちょっと頑張れる気がする。
7.施設にいる母親に電話をかけるポール。母は認知症を患っており、今は亡き父と毎晩カード遊びをしていると言う。
「親父によろしく」が悲しい。
8.ポールに動画を撮らせるため、彼の同僚パメラに銃を突き付けている動画を送ってくる犯人。慌てて動画を撮影し、送信するも、結局政府に見捨てられたパメラは殺されてしまう。
(送信 → パメラ殺害の間に、まさかの蛇襲撃を挟む。ヒァー)
9.会社から電話。要約すると、「おめーは同僚(パメラ)と不倫関係にあったから、強制解雇。拉致されたときは、すでに社員ではなかったかんね」=保険金払わねーよ。
なんだこのク●会社。
10.米軍の爆撃により、棺が割れて砂が入り始める。
なんかもう果てしなく嫌になっちゃったポールは、あきらめて死を受け入れ、息子シェーンに遺言の動画を残す。
「犯人も死んだっぽいし、静かに逝こう……」
11.どっこい生きてた犯人。この期に及んで指●めを指示。なんとポールの自宅の住所も抑えており、「お前か家族が血を流す」と言うので、やってやるポール君。
「うがぁーーー」って言ってるけど、案外余裕のような気がしないでもない。
12.どんどん砂が入ってくる中、ブレナーから希望の電話。
「アメリカ人を埋めたという相手を捕まえた! 今君の元へ向かっている!」
「マジで?」
「見つけた! 棺があるぞ!」
「俺オレ! おれだよ、ブレナー!」
「今棺を開ける……」

「……」

「すまない、ポール……別人の棺だった……これはマーク・ホワイトのものだ」

という、まさかのバッドエンド!
いや、なんか……バッドエンドらしいとは聞いていたんですが……一度死を受け入れてから、希望を持たせる → からの別人発見エンドという。
監督は鬼や。

wikiを見てみると、アメリカではなくスペインの映画なんですね。
スペインでは身代金を払う姿勢……というか、ヨーロッパではそもそも誘拐がビジネスライクにまかり通っている節があるそうなので、その辺もアメリカの要求には絶対に屈しない姿勢を批判している向きもあるのかもしれませんが。
特典映像とかで、助かったバージョンがあるのかい?
  ↓
なさげ。
……鬼や……。
鬼だけど、面白かったです。

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人物紹介

●ポール・コンロイ
主人公。家族のため、イラクにてトラック運転手として働いていたが、武装勢力に襲撃を受け、気絶 → 目覚めると生き埋め、という地獄を見る。
暗闇。狭い密室。死の恐怖。蛇。
色々と難題はあるが、やはり何よりも90分間一人芝居が一番大変。演じきったレイノルズ氏はゴイスっすでございます。

電話のたらいまわしや、こちらの危機感がまったく伝わっていない相手とのやり取りで序盤は疲弊。
社会保障番号をそらで言える人がどれだけいるっちゅーねん。
その後も解雇通告だの棺から降る砂だのに脅かされ、一時は死を受け入れて遺言動画を残して穏やかに逝こうとしたりする……のだが、犯人が生きてて希望の光が灯った……と思ったら、指をナイフで●●する羽目になったり、「君の元に近づいている!」「今君の上だ!」「棺桶に手をかけた!」とメリーさんばりの実況中継をされるも、なんの音もしないという不思議現象に陥ったと思ったら、別人の棺桶だったという盛大なオチをかまされ、最後の途方に暮れたような「OK……OK……」が実に切ない。

携帯の電波が通じるから、地上から数十センチのところに埋まっている=案外浅い……? と思ったんですが、その程度の距離でも砂がのしかかっていたらおそらく何トンレベルの重さでしょうから、やはり自力脱出は難しいんだろうなあ。
せめて遺言を遺した携帯が発見され、家族の元に届くことを祈っております。

●犯人
電話の音声のみで登場。
携帯電話や懐中電灯などのお役立ち品は、わざと足元に入れておくという性悪な人物。しかも電話の言語設定と人質動画用のメモはアラビア語。
お前、解放する気ゼロだろ。

一応、仕事も失ったし、五人いた子どもは四人死んだという、悲劇的バックボーンを語ったりするが、だからって人を生き埋めにしていいかというと、そんなことはない。

マーク・ホワイトの顛末などから、彼の所属する勢力は、同じ手口で米国人を何人も誘拐している模様。というか、マークの犯行から三週間って、期間短っ。
何故大勢の中からポールを選んだのかは定かではないが、多分単に生き残ったのが彼だけだったとか、そんな理由でしょうか。
最後はブレナーたちにとっ捕まったと思いたいですね。

●ブレナー
救出のスペシャリスト。ポール救出の切り札となる男性……なのだが、政府の関係者であるが故か、あまり親身さが感じられない部分がある。
が、イラクで生き埋めにされた米国人という、雲をつかむような話の中、きちんと犯人の電話番号などから手がかりを追い、別人だったけれども、一応は人質が埋まっていた棺桶を見つけ出すなど、表には出さないが、熱いハートは持っていた模様。別人の棺だったけど。
多分、何人も何人も、それこそ数えきれない被害者たちを助けようとして、一人として救出できなかった無力さが、彼の態度を一見無情に見せているのではなかろうか。
米国人がイラクで活動するというだけでも危険だし、マーク・ホワイトを見つけ出せただけ御の字ではないだろうか……残念ながら、死亡していたけれども。

●マーク・ホワイト
ブレナーが救出した人間の名前として挙げた人物。26歳の医学生だと言うが、そんな前途ある若者が何故イラクで……。
多分、苦しむ人々を救うという使命に満ちてイラクの地を踏んだのが、拉致されて悲しい運命に……という流れだろうか。せめて遺体が遺族のもとに帰ることだけが慰めか。
ポールは希望の証として、彼の名前を棺に書き込んだわけだが、勢い余って四角で囲っちゃったのが後の運命を表しているので、監督は鬼や。

●ダベンポート
ポールの会社CRTの重役。
生き埋めにされた従業員の救出に奔走する……のかと思いきや、いかにして自社の責任を逃れるかの糸口を見つけることに奔走していたことが判明。
この会社……ク●だ。

●パメラ
CRT社の同僚。ポール同様拉致され、米政府が要求をのまなかったために殺害されてしまう。
しかも、会社が保険金を払うのを回避するため、ポールと不倫していたことにされるというおまけつき。不憫。

●リンダとシェーン
長らく電話のつながらなかったポールの妻子。
犯人に住所バレしており、一時は生存が危ぶまれたが、無事だったのは不幸中の幸い。
だがリンダは助かると希望を持った後でのあの展開なので、監督は鬼カヨ。

●ドナ
多分リンダの姉。切羽詰まったポールに対し、何よコイツ的な対応をかます。
ついつい噛みついてしまったポールだが、二度目にかけたときはきちんと国防総省の番号を教えてくれた → そのお礼がFワードのおまけ付きダヨ! 多分日ごろから折り合い悪い部分もあったんだろうね!

●数字
ポールが、いくつもの電話番号を聞き、棺の蓋にペンで書いていたもの。
作中で何度も映されるため、この数値の羅列がパズルになっており、きっとその謎を解いて脱出するんだと思っていたが、そんなことはなかった。

●砂
酸素不足で死ぬのかと思っていたら、どっこい砂だった。
どっちも窒息には違いないとか、そういう問題ではないのだよ。

●蛇
節電と節空気のため、明かりを消して真っ暗にした……と思ったら、何やら服の中をもぞもぞ動き回る物体が。
なあに? アライグマ?
  ↓
蛇だよ。
ぎゃーーっ。

酒に引火させてパーヤパーヤの迫力に負け、穴から退却していった蛇。きっと巣穴の家族に、人間バイヤーって伝えたと思われます。

●監督
ロドリゴ・コルテス氏。スペインのお方。
結末がアレでしたけど、閉じられた空間の中での90分は、少しも退屈せず大変面白かったです。ありがとうございます。

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