映画『21ブリッジ』ネタバレ感想。単なる警察VS凶悪犯ものかと思いきや。

21ブリッジ サスペンス

原題:21 Bridges
2019年の映画
おすすめ度:☆☆☆☆

【一言説明】
麻薬イクナイ。

21ブリッジ 映画

チャドウィック・ボーズマン氏の最後の主演作――と謳われた本作『21ブリッジ』。
ならば、もちろん劇場で……と足を運んで大正解。
とんでも面白かったんだニャン。
……とパンサーつながりで猫っぽく言ってみたものの、パンサーってネコ科ざんすよね? と急いでwikiを確認したら、無事ネコ科だったので一安心。

共演に、『二つ星の料理人』のシエナ・ミラーさんと、『セッション』のJ・K・シモンズ氏、『バトル・シップ』のテイラー・キッチュ氏など、豪華キャストが出演されていらっしゃいます。

※エンドクレジット後に映像はなかったんだけれども、感想書くのが遅くなりすぎて、劇場公開終わっちゃった感が無念であります。 

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あらすじ

21本……だった気がする。

モノホンのニューヨーカーなら当たり前の知識かとは思われつつ、本当に21本か? 本当のホントウのほんとぉーーーーに21本か? と念を入れつつ、やっぱり21本だったらしい、ニューヨークはマンハッタンに架かる橋。

その橋に、今宵、封鎖命令が出された。

すべては警官を射殺した残虐な犯人を捕まえるため――。
そう信じ、ひたすらに捜査を続けるデイビス刑事だったが……。

※以下ネタバレです。未見の方はご注意。

 

 

 

 

感想

ボーズマン氏最後の主演作……という知識のみで、予告編を全く見ずに行った本作。
マンハッタン島完全封鎖というからには、ものすごい凶悪犯グループとの手に汗握る追跡アクション活劇になる……のかと思いきや、犯人は二人のみ。かつ、中盤当たりから、話は一気に別方向へ。
正義とはなにか、正義を執行する側の在り方とは……という思いのほか重苦しいテーマへと発展。
なるほど~~、そう来るか~~~~と感心し、鑑賞後に予告編を再生してみれば……。

全部予告編でネタバレしてた。

そんな本編の流れは以下ダヨ。

1.幼い頃、警察官の父を麻薬中毒者に殺されたアンドレ。成長した彼は、犯罪者に厳しいと噂の刑事になっていた。
どのくらい厳しいかというと、9年間で8人を射殺 → ほぼ1年に一人撃っとる → 厳しいってレベルじゃねーな!
絶対、陰で『狂犬』とか呼ばれてますやん。

2.ある夜、ニューヨークはブルックリンのとある店に、二人の覆面男が押し入った。ちょっとした量の、ちょっとした麻薬を盗むはずだった彼ら。
だが店の奥にあったのは、混じりけなしの、予想を大幅に上回る大量のブツ
  ↓
「これアカンやつでは?」
「今更引き下がれるか! 全部盗むぞ!」
  ↓
何故かそこにやってくる警官集団。
運をどこに捨ててきたんだお前ら。
  ↓
モチのロンで激しい銃撃戦となる店内。
実に7人もの警察官を射殺し、逃亡する二人――レイマイケル
せめて安全運転で逃げればいいのに、速度取締機の前をこれでもかと猛スピードで駆け抜けるレイとマイケル。
  ↓
案の定、記念写真を撮られるレイとマイケル。

3.要請を受け、凄惨な事件現場と化した店内に足を踏み入れるアンドレ。
彼を待ち受けていた85分署の署長、マッケナ警部が歩み寄る。
「君の評判は聞いている。奴らを撃て
「いや、いくら俺でもいきなりは撃たな「撃て!」
食い気味に言ってくるマッケナ警部。部下思いという解釈でよろしいか。
  ↓
麻薬捜査班のフランキー・バーンズ刑事(女性)との合同捜査を命じられるアンドレ。
「相棒とかいらな「組め!」
この警部、人の話を聞かない。

4.例の記念写真に写った車種と同じ車が、マンハッタンの一角で燃えていると報告を受けたアンドレたち。
麻薬売るならマンハッタン。
観光するならマンハッタン。
やつらはまだマンハッタンにいる!
  ↓
「封鎖するぞ……マンハッタン島、21ブリッジを!」
最大級の格好良さでタイトル回収をかますアンドレ。
  ↓
文字通り秒の速さで封鎖を完了するパトカーたち。
どこぞの虹色橋一本すら封鎖できんかった国とは大違い。

5.車のナンバーから晴れて身バレしたレイとマイケル。
バイヤーな麻薬バイヤー「高跳びのプロを紹介してやる」
  ↓
赤い縁取りの蛇柄ガウンという、ザ・裏稼業な出で立ちで登場するプロ・アディ
マイアミに逃げろ」
「マイアミか……」
「マイアミか……」
  ↓
そこに突如現れる警官たち。
表向きは善良市民のアディ家の扉を叩き割り、あろうことか問答無用で発砲 → 銃撃戦へ。
  ↓
警官殺しとはいえ、いくらなんでも一方的過ぎないか?
瀕死のアディから託されたUSBを握りしめ、闇夜に飛び出すマイケルとレイ。
彼らを死力を尽くして追う85分署指揮の警察官たち。
その姿に、ふと疑問を抱くアンドレだったが……。

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マッケナ警部を麗しのJ・K・シモンズ氏が演じておられ、登場時は殉職した七人全員の名前と家族構成とを滔々と語る、部下思いの良き上司といった印象。『セッション』や『スパイダーマン』でのワンマンっぷりが印象的な氏ですが、ドラマ『クローザー』などの人間味あふれる役柄もグンバツであります。
  ↓
と思ってたけど、結局黒幕だったヨ!
なんでだ!

当初は『悪役』と書こうとしましたが、マッケナ警部の語る通り、果たして彼らの行為は単純な悪と言い切れるのか?
  ↓
いや、麻薬はアカンだろ。
と思うのは、治安の優れた日本住まいだからこそ……なんですかね。

命を削って市民の命を守る彼らを、果たして誰が守るのか?
かの名作『ウォッチメン』のタイトル元、『Who will watch the watchmen?』に通じるものがある本作。
ドラマあり。
アクションあり。
チャドウィック・ボーズマン氏あり
大変面白かったです。
素晴らしい俳優さんであります。

人物紹介

●アンドレ・デイビス刑事
対犯罪者における最終兵器。9年で8人☆☆☆の実績を誇り、聴聞会でもスーンとした姿勢を崩さない歩く弾丸。全身尖ったガラス。
……と鳴り物入りで現場にやって来たのだが、撃たない。
「撃て!」とけしかけても、撃たない。
相棒を人質に取られても、撃たない。

代わりに、なぜか他の刑事たちがズンドコ撃つ。
  ↓
怪しい。
お株を奪われたアンドレの脳細胞は激しく動き始め、真相を暴くに至る。

つまるところ、アンドレは歩く爆弾ではなく、撃つか撃たないかを冷静に見極める優秀な刑事だったわけで、じゃあ過去に撃たれた8人の犯人はどんだけ凶悪だったんだよという疑問はあれど、決して私怨に走る人物ではないと見抜けなかったのが、マッケナ警部の敗因だったと見るべきでしょうか。

序盤のスーツを着替えてからは、着の身着のまま状態のアンドレ君でしたが、青シャツに黒コートのボーズマン氏は真にかっちょよく、最後の銃撃戦に至るまで、さすがの迫力でありました。

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●フランキー・バーンズ刑事
本作のヒロイン……でなく、大トリ。
演じるシエナ・ミラーさんが大変好みで、即席の相棒役として登場した際は、こりゃーアンドレとの間にラブなハリケーンが吹き荒れるんじゃねーのと思ったんですが、そんなことはなかった。
85分署黒幕説が濃厚になって来ても、実は彼女だけはなんも知らずに潔白だったりするんでねーのと思ったんですが、そんなことはなかった。
考えてみたら、麻薬捜査班が抱き込まれてないわけねーんだずら。

食肉工場で「撃て! 撃てやぁ!」とアンドレをけしかけたり、丸腰マイケル君を射殺したり、どう見てもクロな同僚と仲良しだったり、結局最後はアンドレとの一騎打ちという名の眼力対決に破れ、メインの中では唯一死なずに逮捕された。

でもなあー。娘さん小さいしなぁー。刑務所に行って大丈夫なのかなーとかなぁー。
気になるんだなぁーーーーー!

●マッケナ警部
ューヨーク市警は85分署の警察署長。
物語が進むにつれ、初登場時の良き上司というほっこり要素が脅かされる。
黒幕じゃないといいな。黒幕じゃないといいな! → 黒幕だった時の絶望感がパない。
案の定かと思わなかったこともない。

アンドレ君がいれば、秒で犯人たちを射殺してくれるだろうという思惑は見事に外れ、最後は彼に足元をすくわれることになった。
ならばその場でおとなしく逮捕されればいいものを、なんとメインで登場した関係者をすべて呼び集めての銃撃戦に発展。アンドレとバーンズ刑事を残して全員散った。
  ↓
あれ……このノリ、どこかで見たことあるぞ?
  ↓
80〜90年代にバカスカ作られたアクション映画のノリ。
よく考えると、あの頃の映画には『正義の担い手が実は悪事を働いていた』というオチが山程あった気がするが、なんで本作と違ってあっちはあんなに軽いノリなんざんしょ。
描き方かな!
どっちも好きだけどサ!

●レイ
犯人二人組のうちの一人。アンドレをして、『凄腕』と称される腕前を持つ。
想定と違う事態に対し、中止を促すマイケルを押し切って計画を強行。7人のうちのほとんどを一人で仕留めるわ、交差点をぶっちぎるわ、覆面チョイスがドクロ柄だわ、色々と尖った人物。
だが単なるヒャッハー系悪党かと思いきや、実は元軍人で、親友を従軍時代に亡くし、その後不名誉除隊かつ育った環境の悲惨さを垣間見せるなど、同情ポイントを急激に積み上げる → からの「マイアミで会おう」に涙腺を持っていかれそうになったが、冷静なるアンドレの「あいつは死んで当然」というセリフで現実に戻される。
そういや七人も殺してたっけね!
お金のためにね!

所業だけ見れば極悪人だが、演じるテイラー・キッチュ氏の魅力もあってか、なんとも憎めない人物となった。最期までマイケル守ろうとしてたしな!

●マイケル
「育った場所がここでなければ、何にでもなれた」と評される爽やかガイ。だがレイを含め、周囲の環境がそうはさせず、ついには麻薬強奪という犯罪に手を染めることとなる。
85分署の面々とは、追う側、追われる側と両極端の立場ながら、正義のために身を捧げ、だが報われず犯罪に手を染めるという、いわば同じ穴の狢。
当初は『盗みに入った時間にたまたま警官が来た』というただの不運に思えた出来事も、結局の所は人目を忍ぶ時間を選んだ犯罪者意識によるものだったわけで、なんというか、85分署反省しろと言いたくなる。

そんなマイケル君。できれば生き延びてほしくなる好青年だったものの、アディから託されたUSBの中身を見て戦慄。アンドレに望みを託し、投降しようとした矢先に、バーンズ刑事の凶弾に倒れた。
確か一人くらいは殺していたはずだが、レイと比べると同情票が鰻登りになるのはなんでかっつったら、やっぱり日頃の行いなんだなぁ。

●アディ
資金洗浄を請け負う凄腕と噂の男。裏家業の男と聞いて思い描くイメージをほぼ完ぺきに体現するいで立ちで登場。その服どこで売ってんのかな。
明らかにごろつきの粋を出ないレイとマイケルを前に、大物の余裕感を出しまくっていたところ、駆けつけた警官たちの凶弾に真っ先に倒れる羽目になった。
彼が撃たれた顔を抑え、「ヤバい、超痛い。超痛いんだけどマジで」と半泣きになったときの落差に、これだからインテリは……と思ったことは内緒ダヨ。多分、爪が割れても「キャーッ」て言うタイプ。

実は麻薬バイヤーのホークと並行し、ライバルである85分署ビジネスの資金洗浄も請け負っていた。そのため、口封じで殺されてしまったが、死ぬ前にすべてのデータが詰まったUSBをマイケルに託し、結果復讐を果たした。

教訓。
二股イクナイ。

●ホーク・タイラー
NYの大物麻薬バイヤー。レイとマイケルを使い、ライバルの麻薬を強奪するつもりが、相手が警察だとは彼すら気づいてなかった……と思う。多分。
わずかな出番ながら、バイヤーと聞いて思い描く人物像を毛ほども裏切らない演出で登場する律儀な男。
ガールフレンドがKAWAIIのデス。

●トリアノ
レイたちとホークの中継役。
チャラいあんちゃんといった出で立ちだが、証拠隠滅を企む85分署一味に問答無用で射殺されてしまう。
せっかくマイケルたちが借金をチャラにしてくれたのに、ツイてないにも程があるのだ。

●副市長
モロッコ・オマリ氏演じるNY副市長。
上映中は、よほどふわっと見ていたのか、てっきり彼は捜査を横取りしに来たFBI捜査官だと思っていたのだが、後でwikiを見たら「副市長」とあってびっくり。
最近の映画は、ラストの銃撃戦に副市長も参戦するんですね。
副市長の概念を一気に超え過ぎ。覆しすぎ。

●警察官たち
アンドレ父の葬儀だったか、亡くなった7人の葬儀だったか忘れましたが、教会の外に集まった正装の警察官たちが、一斉に敬礼をした途端、黒かった通りが一面手袋の白で満ちる……という神演出が印象的。
もちろん85分署が犯人を追ったのは証拠隠滅のためも大きかろうが、マンハッタン島を瞬時に封鎖できたのは、やはり『警官殺し』を許さない、強固な仲間意識によるものだと思いたい。
85分署の悪事が今日まで露見しなかったのも、その絆があればこそ、でしょうか。

●マイアミ
観光するならマンハッタン。
高跳びするならリオかマイアミ。
……という印象が強いのですが、多分というか絶対『マイアミ・バイス』のせい。

●燃された車
「今頃、どこかでこの車種が燃えてるわね」の言葉に違わず、燃やされた車。
ボンネットはひん曲がるわ、取締機に遺影を撮影されるわ、踏んだり蹴ったりが過ぎる。

●21ブリッジ
やはり21本あったマンハッタンにかかる橋たち。
普通の人は、ホームタウンに何本の橋がかかっているかなんて即座に言えないので、やっぱりNYは都会だなぁー。

●監督
ブライアン・カーク氏。『ゲーム・オブ・スローンズ』などにも参加されているお方。
大変おもしろかったです。ありがとうございます。

↓本国版は、すでにDVDが発売されている模様。ボーズマン氏の勇姿を目に焼き付けるざんす。

↓本作を見た後だと、橋の一本くらい封鎖しろやと叫びたくなるが、山程の警官と巡査部長ただ一人では比べようもなかった。

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