映画『透明人間(2020)』ネタバレ感想。不可視の相手がそこにいる。見えない恐怖は緊張感抜群。

透明人間 映画 ホラー

原題:The Invisible Man
2020年の映画
おすすめ度:☆☆☆☆

【一言説明】
透明サイコー!

透明人間 映画

H・G・ウェルズ氏の名作『透明人間』が現代に蘇った。
しかも、監督は『インシディアス』シリーズでおなじみのリー・ワネル氏
これはもちろん見るっきゃないナイ!

……なんぞと言いつつ、公開当時は都合がつかず、泣く泣く見送っていたのが、なんとこの度Amazon Prime Videoにて、週末100円セールの神采配!
さすがのさが過ぎるAmazon神の、慈悲深き御心に感涙した次第です。

↓毎回のように申し上げるが、マジでAmazon Prime Videoは素晴らしいが過ぎるのざんす。

主演は『アス』のエリザベス・モスさんが務め、見えない相手に翻弄される主人公を好演していらっしゃいます。

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あらすじ

光学研究の第一人者エイドリアン・グリフィンが自殺した。
長年恋人として束縛されてきたセシリアは、彼の訃報を聞き、ようやく安堵の息をついた。

……と思ったのもつかの間、誰もいないはずの場所で、何かの気配を感じるセシリア。

見られている。

周囲には誰もいない。
けれど、感じる。
この気配――この悪意は……彼である、と。

悪夢の日々は、終わりではないことを悟るセシリアだったが……。

※以下ネタバレです。未見の方はご注意。

 

 

 

 

感想

タイトルが、ネタバレ。
実は恋人が死んでいなかったと見せかけて、本当はすべてはセシリアの妄想だった……なんて展開も、本来はありえたはずの本作。
が、そこはあえて『透明人間』と明言=透明な人間が出て来んとタイトル詐欺=ゆえに出てくる、という制作側の堂々とした態度が垣間見え、「そうか、出るのか……」とSAMURAIよろしく身構えた次第です。

そんな潔さMAX作の流れは以下。

1.とある夜。海沿いの屋敷から、必死の形相で逃亡する女性がいた。
名前はセシリア
妹の車に乗り込んだ彼女は、間一髪で追いすがる恋人を振り切り、見事自由の身となることに成功する。
身に着けるは高級ランジェリー、しかも住まいは大豪邸。なのになんでそんなに必死に逃げるの?
  ↓
恋人がドクズだからダヨ。
「今すぐ降りろ!」 → 素手で窓ガラス破壊 → 「許さんぞ、ク●が!」のトリプルコンボ。
駄目男の臭いがぷんぷんするヨ!

2.二週間後。友人ジェームズ宅に身を寄せていたセシリアの元に、妹のエミリーが訃報を持って現れる。
「喜べ。あいつ死んだよ
「マジで!?」
  ↓
ドのつくク●だが、なんと光学研究の第一人者だったという恋人エイドリアン
優れた頭脳に優れた人格がついてくるとは限らないとう良き見本。
彼が自殺したという知らせは、即座にネットニュースに載ってしまうくらい超有名。
「あの傲岸不遜男が自殺なんかする……?」
半信半疑のセシリア。
  ↓
だがさすが第一人者=カネモッテルーゼだったらしく、なんとセリシアに遺産が遺されているという。
結婚もしていない恋人にまで遺産遺すとか、さすがはカネモッテルーゼ。
慰謝料替わりに受け取ることにするセリシア。
匿ってくれたジェームズとその娘シドニーに、お礼として大学資金を進呈。喜びに沸く二人。
ところが、その晩から不審な気配が周囲にちらつき始める

3.翌朝、ガス台の火が勝手に弱火から強火に → 無人のはずが、誰かに見られている気配 → 白い息を吐くセシリアの後ろで、何もない空間から吐き出される白い息 → おるやん。
  ↓
その晩、眠るセシリアの毛布が勝手に取り払われる → 気配のする方向に毛布を投げる → 人間の足型にへこむ毛布 → おるやーーーん。
  ↓
極めつけは、バスルームにおいてあったジアゼパム(睡眠薬)の瓶。それはあの晩、セシリアが逃げる途中で失くしたのと同じものだった。
エイドリアンの生存&透明化を確信するセシリア。
「あいつ生きてるんでしょ! 透明になってるんでしょ!」
  ↓
腫れもの扱いになるセシリア。

4.見えない何かにより、周囲から孤立させられたセシリア。
気配のするほうにペンキをぶち撒ける → 人型に浮き上がるペンキ → セシリアvs透明人間、ファイッ!
大乱闘の末、ジェームズ宅を散々に破壊し、逃亡するセシリア。
  ↓
エイドリアン宅に侵入。そこで、光学研究の粋を集めた透明になるスーツを発見。
やっぱりあいつじゃねーか。
  ↓
追いかけて来た透明男をかわし、レストランで妹エミリーと落ち合うセシリア。
スーツについて話そうとした瞬間、突如宙に浮いたナイフがエミリーの首を裂き、ナイフはセシリアの手の中へ。

5.妹殺しの犯人として、精神病院に入院させられたセシリア。
そのタイミングで発覚する妊娠。受胎はおそらく先月=エイドリアンとの子。
  ↓
のところに戻りなよ。十分罰したから許すってさ」
さらりとエイドリアン生存発言をする、彼の兄トム
  ↓
だがここで、優位に立ったと思った敵は最悪の悪手を取る。
ヒロインを追い詰めすぎてしまったのだ。
妹を殺し、社会的に抹殺し、そのうえなお自分の元に戻れ……だと?
ホラーの伝統、覚醒するヒロインを知らんのか、お前ら。

6.大雨の日=透明人間の視認性を上げる天候を選び、自殺する=腹の子も死ぬと見せかけて、透明人間をおびき出すセシリア。
  ↓
セシリアvs透明人間、第二ラウンド、ファイッ!
途中で異変を察知した警備員たちがわらわら来るが、見えない敵を相手にわらわら散っていく。
役に立たないにもほどがあるぜ!
  ↓
透明人間「僕ぁ君を絶対に傷つけないよ。代わりに君の親しい人を奪うのさ」
第一ラウンドで、テーブルの向こうに吹っ飛ばしとったのは気のせいか?
  ↓
言葉通り、シドニーとジェームズを襲う透明人間。
だが、間一髪駆け付けたセシリアにより、腹を撃たれて死亡。
  ↓
スーツの頭部に手をかけるセシリア。
果たして、その下から現れたのは……?

 

……という感じで、敵=『透明人間』であることを前提とした恐怖が非常にうまく描かれており、かつその正体には一捻りが加えられ、結末に至るまでにも二転三転。
大変面白かったです。
特にグロいシーンなどもないため、ホラーに馴染みのない方にもおすすめ。
ワネル監督はゴイスざんす。

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登場人物

●セシリア
本作の主人公。冒頭にて、緊迫感あふれる逃亡シーンを披露。エイドリアン=超バイヤー男であることを大いに匂わせてくれる。
その際、高級ランジェリーから冴えないスウェットへと衣装替え。彼氏と本人の好みに乖離がある、かつセシリアの『この支配からの脱却』という固い決意=マインドパンクスな本来の性質を見て取ることができる。
前半こそ、長い間モラハラ男の支配に置かれていたせいで、弱々しい印象のあったセシリアだが、後半に行くに従い生来の強さを発揮。実の妹を目の前で殺害されたことでその怒りは頂点へと達し、見事女傑と化した。

恋人の死が知らされたときも、不審な出来事が頻発したときも、犯人=トムであることが発覚したときも、とにかく彼女を支えているのは、エイドリアン=稀代のク●男という認識であり、トム=スケープゴートであることをただ一人見抜き、最終決戦へとなだれ込むに至った。
セシリアもあっぱれだが、恋人をしてこうまで確信させるエイドリアンの揺るぎなきク●っぷりもまったくあっぱれである。

会食に応じ、エイドリアンの自白を引き出すとしてジェームズに会話を盗聴させる → あくまでしらを切り続けるエイドリアン → 「トイレ行ってくるわ」 → 透明スーツで舞い戻り、エイドリアンの首を切る、という行動を見せる。
上記シーンは監視カメラに映されており、他人が見れば、エイドリアンが手にしたナイフで自分の首を切ったようにしか見えないという、まったくもってクレバーな方法で決着をつける。
その後、邸宅の外に出たセシリアは満足げに微笑んで終了……となるのだが、殺害方法が、彼が妹にしたこととまったく同じものだったり、兄のトム亡き今、セシリアのお腹にいる子がエイドリアンの全財産の相続人だったりと、なんというか……強い。
どうか悲劇を乗り越えて幸せになってほしい。

●エイドリアン
セシリアの元恋人にしてキング・オブ・ク●男。
彼=透明人間ではないといういかなる証拠が挙がろうと、セシリアの疑いを晴らすことは決してできないというク●っぷりを発揮。
たしかに序盤の要塞みたいな邸宅と暴れぶりはどうよと思ったが、まさかそこまで……と半信半疑だったのが、物語が進むにつれ、あまりの陰湿さに辟易することになった。
本人と偽って妹に罵詈雑言メールを送る、少女の顔を引っ叩くはまだいいとして(本当はイクナイ)、妹を目の前で殺害したうえに、その犯人に仕立て上げるとか、挙げ句に「実は避妊してたの知ってた」と避妊薬をすり替え、ちゃっかり妊娠させていたという有様。
なんだこいつ。
好意的に解釈すれば、こいつがク●すぎたおかげでセシリアがネバギバマインドに陥ったと言えなくもないわけで、すると彼のどうしようもない性格も少しは役に立ったんじゃないかなと思うかというと、もちろんそんなことはなかった。
妹殺したのはマジで許さん。

人間的にはアレだが、研究者としては非常に有能。
おそらくは世界初の透明化スーツを開発。実用に堪えうることをその身を持って証明する。
これがもし軍や政府に採用されれば、世界中の人が安眠できなくなるくらい、とんでもゴイスな発明なのだが、あいにく開発者に難があった。
世紀の発明を何に使ったのかといえば、元カノのストーキング業務という、論文としては絶対に発表できない用途である。
こいつアフォだ。

もしかすると、件のスーツは警察が回収 → 軍部に回され、『透明人間2』とかに進むのかもしれないが、その場合ジャンルはまったくの別作品となるような気がする。

例の豪邸を相続したとして、セシリアは絶対に住んだりしないだろうから、スーツとともにこのまま闇に葬られることを強く望むのであります。

●ジェームズ
セシリアの友人で警察官。
他に行き場のない彼女を匿ってやり、突如その友人が『エイドリアン=透明』説を繰り出したときも耐えていたが、娘が殴られたときは流石に黙っていられなかった。
「ここに居られると迷惑だ!」と言いながら出ていった。
自分家なのに、自分が出ていった。

そして精神病院&自宅で透明人間の存在が実証されるや、「君の言っていることは正しかった」と非を認め、最終決戦時には「確かに音声だけで聞けばエイドリアンは自殺だ」とセシリアの行為を黙認するなど、どこまでもいい人が過ぎるのだった。

『元カノの同居相手』という死亡フラグが立ちまくりで、てっきり死なないまでも、生死不明なくらいひでー目に遭うのかと思いきや、最終決戦ではアシスト役まで果たすというあっぱれ具合。
娘さんと末永くお幸せに。

●シドニー
芸術方面へ進路を希望するジェームズの娘。
当初は学費が賄えず、第一志望を泣く泣く諦めざるを得なかったのが、セシリアが援助を申し出たことで、幸せオーラに包まれる。
  ↓
もちろん、それをク●男エイドリアンが見逃すはずもなく、君を苦しめたいからさ!」というク●みたいな理由で襲われる羽目に。
間一髪、駆けつけたセシリアによって救われたのだが、確実にトラウマになってそうなのが不憫。

互いしかいない空間でエイドリアンに殴られ、とっさにセシリアに殴られたと勘違いしたのだが、どう見ても距離が離れているし、そもそも会話の流れを考えたらおかしいでしょうが。
ゴム人間じゃねえわ。
伸びね―わ、腕。

●エミリー
セシリアの妹。
冒頭で車を回し、姉の脱出劇に加担。おそらくは、それをずっとエイドリアンに根に持たれていた。
姉の名を語った罵詈雑言メールを送られて激怒。しばらく距離を置いていた=死亡フラグ圏外かと思いきや、スーツの存在を知ったセシリアが直後に助けを求めたため、エイドリアンの襲撃を受けて命を落とした。

おそらく、いつまで経ってもセシリアの居場所が判明しなかったため、業を煮やしたエイドリアンが死を自演 → 安心したエミリーが姉を尋ねる、で居場所特定。
スーツを見つけたエイドリアン邸では透明男の追跡を振り切ってから車に乗っているので、エミリー側のスマホが盗聴もしくはハッキングされていたと見るべきか。
エイドリアンマジ許さん。

●トム
エイドリアンの兄。多分弁護士か何か。
優秀で派手な弟に対し、若干陰に隠れるようなポジションかと思いきや、実はエイドリアンを監禁し、セシリアを付け回していた透明人間その人。

……かと思いきや、やはり単にスケープゴートとして弟に利用されただけの気の毒な人。
まあよく考えると、弟のストーカー行為を黙認どころか片棒をかついでいるわけで、同情の対象にはならないのかもしらん。
Amazon での字幕だと、セシリアが「彼は兄すらハメたのよ。死体を予めあそこに置いたんだわ」とのたまうのだが、それはさすがに無理があるような
多分、シドニーたちを実際に襲ったのはエイドリアンながら、身代わり用にスーツを来たトムもあの場に連れてきていた……とかでしょうか。
で、いざセシリアが発砲した際に、トムを盾にして自分は逃げた、的な?

●ゼウス
エイドリアン宅のわんこ。多分犬種はドーベルマン的強面だが、見た目に反し、中身はとてもかわゆい。
冒頭の脱出シーンにて、セシリアの後について行きたそうに登場。
その後はしばらく音沙汰なしだったのが、無人となったエイドリアン邸にて、変わらず生活していることが判明。
誰が世話をしとるんじゃいと心配したのだが、エイドリアンは生きてたわけで、彼もしくはトムが頻繁に邸宅を訪れていたと見るべきか。

謎なのは、セシリアがスーツを見つけにエイドリアン邸に忍び込んだ際、やってきた透明男にゼウスが吠えかかっているという点。
ということは、あの場にいたのはトムだったと解釈するべきなのだろうか。
単にエイドリアンを嫌いだったということはないだろうか。
筆者的には後者を推したいですね。
主人亡き後は、喜んでセシリアの元に迎え入れられたと想像いたします。

●精神病院の人たち
透明人間襲撃を受け、わっちゃわっちゃら集まってきた警備員たち。
「なんだ、なんだ?」と言いながら、何が起こっとるのかわからずに、「なんだ、なんだぁ!」と言って次々と倒れていった。
役に立たん。
まあね、相手が透明じゃ仕方ありませんよ……と言いたいのだが、大男とはいえ、さすがに民間人のエイドリアンが強すぎではなかろうか。
最近の学者というのは、マッチョだったり、実は従軍経験があったりと、とにかく筋肉を兼ね備えたタイプが主流のようです。

●透明人間
本作の真の主役。満を持して登場した正体は、端的に言えば『黒いスパイダーマン』。
光学研究の粋を集めて完成した、着用者を透明化するスーツを着ている。
もちろん肉体そのものを透過するわけではなく、スーツの表面に無数につけられたカメラによって、周囲の景色を映し出すんだかなんだかして、とにかくカメレオンみたいに一見透明になる的なそんなアレ。
細かい原理は「ふーん」って言っておけばいいのだが、現物を見るに、それって前見えてんの……?
スーツの中はアイアンマン並にシステム化されてるとかそんななの?
セシリアの後ろで「はぁーっ」つって白い息を吐いとったのだが、通気性があるのか果てしなく謎なのだが?
  ↓
細かいことは気にするな!
技術だけでなく、ストーリーも現代化された本作は、面白ければそれでいいのだ。

●レストランの人たち
シャレオツなレストランにて食事を楽しんでいたら、突如隣の席で殺人事件が発生という悲劇に見舞われる。
こうなるとシャレもオツもあったものではない。

●監督
ご存知リー・ワネル氏。ソウ時代から存じ上げておりますが、実に素晴らしい監督さんになられましたね。
とても面白い作品をありがとうございます。次回作もとても楽しみにしております。

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