原題:Scary Stories to Tell in the Dark
2019年の映画
おすすめ度:☆☆☆☆
子どもが見たらいけない度:☆☆☆☆☆
【一言説明】
児童向けのほうが案外エグい。
予告編にて示される『怖すぎて学校に置くことを禁止された本』という煽り文句。しかもそれを裏付けるように、最後にちらっと、とんでも不気味な女性の姿が映し出される。
なるほど、こりゃ怖い。
かのギレルモ・デル・トロ監督が製作に関わり、入魂のクリーチャーたちを作り上げたというから、期待が高まるというもの。いそいそと映画館入りして参りました。
児童文学が原作とあって、主演はいずれも少年少女でフレッシュな顔ぶれ。ここから次世代スターが生まれそうな予感。
※エンドクレジット後に映像はなかったざんす。
[adchord]あらすじ
「お話を聞かせてよ、サラ」
幽霊屋敷で、禁じられた言葉を口にしたステラ。
しかも見るからに曰く付きな一冊の本を、こっそり持ち帰るステラ。まさに、目に見える死亡フラグ。
が、何故かステラ本人ではなく、周囲の人間から魔の手に絡め取っていく本。
ステラ「どうしよう……私のせいだわ」その通りだよ!
というわけで、オトシマエをつけることとなったステラと愉快な仲間たち。
果たして、本を止めることはできるのだろうか?
※以下ネタバレです。未見の方は注意。
感想
子供向けじゃないざんす。
子ども泣くわ、こんなん。
さすが怪物の造形に愛と熱意がハンパないデル・トロ氏が作っただけあります。どのクリーチャーも、素敵に生理的嫌悪感を煽りつつ、けれどどこか愉快でかわいく、一度見たら忘れられなさそうな悪夢的魅力に満ち溢れておりました。
話しの筋は、単純にして王道。
ハロウィン! 夜! 若者! とくれば、馬鹿をやらないはずがなく。
案の定、「地元じゃ有名な幽霊屋敷があるけど?」「へえ、行ってみる?」なノリで、ずかずかと入り込む他人の家。
たしかに廃墟。でも他人の家。
あちこちを好き放題に触りまくり、しかも驚いた拍子に物を壊したり、挙句は「これが噂の本ね!」と勝手に他人の物を持ち出す始末。
幽霊じゃなくても怒るわ。
しかも興の乗ってしまったステラ。「話を聞かせてよ、サラ」とわざわざ禁忌だとわかっている行動を取る。
もちろん、本気にしていないからこそ。
唱えても大丈夫だと思っているからこそ。
だが噂はガチだった。
ステラの願い通り、物語を話し始めたサラ。彼女の話は、本のページに現在進行形で文字が刻まれるという手法で語られていく。
主人公は、あの夜に屋敷に入り込んだ人間たち。
一人につき一ページずつを割いて語られる物語は、書かれた内容が必ず現実となってその身に降りかかる。
一人、また一人と消えていく仲間たち……。
主人公が高校生とあって、ジュブナイル的な青春要素を醸す本作。実によくできており、怖さ、テンポ、胸キュン具合、どれを取っても面白かったです。
しかもそこにベトナム戦争という背景も織り込み、形のない恐怖や不安、その当時漂っていたであろう独特の空気をホラーと絡めているところもナイス。
とにかくキモかわクリーチャーたちについて語りたいので、感想は短めに、以下人物紹介をどんぞ↓
人物紹介
●ステラ
本作の主人公。オカルト大好き女子。普段は冴えないメガネをかけているが、外すとかわいいというのもお約束。
幼い頃に母親が自分と父親を捨てて街を出ていったため、散々いじめられたり陰口をたたかれたりした模様。それでもめげず、チャックやオーギーとの友情を育み、身体を壊しがちな父親の面倒を見たりする非常にできた子。
だが元凶。
彼女が最後に残されたのは、悲劇を始めた張本人として、サラの怒りが最も深かったからだろう。
自分のせいで仲間が消え、しかも自身が主役の話『幽霊屋敷』では、在りし日のサラに起こったことを追体験させられるという、なんとも辛いものとなっている。
だが彼女が語る通り、「物語は人を傷つけもするが、癒しもする」。
捻じ曲げられた事実ながら、今や本物の怪物と化してしまったサラの真実。それをステラが代わりに語ることで、彼女の傷と憎しみを癒す。
ビターながらも、希望に満ちた結末だと言えよう。いつの時代も、未来を変えるのは、彼女たち若者の力なのだ。とか言ってみる。
●ラモン
車で旅をしている訳あり男子。トミーに追われた三人が、ドライブインシアターにて車に乗り込んだことで物語が始まる。
幼い頃、父親に度を越した怖い話を聞かされて育ったせいか、ホラーに造詣が深く、ステラと意気投合。すぐさまアオハルかよ的な雰囲気を醸す。
そんなラモン君。実はベトナム戦争の徴兵から逃げるために、各地を放浪としていたことが明かされる。ターナー署長には卑怯者みたいに言われたけど、ぶっちゃけ行きたくないよね。お前が行けやってなる。
しかもお兄ちゃんがすでに徴兵されていたうえに、むごい死に方をしたとか……政府は鬼か。
そんな中で出会ったステラはまさに心の救い。
出会った初日に地下室にこっそり泊めてくれたり、一緒に力を合わせてクリーチャーと闘ったりと、若ぇもんはいいのう……という行動を見せてくれる。
遭遇するクリーチャーは彼のが一番怖い上に、多分捕まったら●●を●●●●にされて、さらに●●●●くらいはするんじゃないかなという、大変ヒェッなもの。
無事に逃げ切れたからよかったものの、親父よ。子供にする話ではねーよ?
最後はハッピーエンド……ならよかったが、徴兵からは逃げきれず、入隊するためのバスに乗り込む姿を見せて終わる。
ただ、ステラは彼に毎日手紙を書くことを約束してくれる。物語とは、『話す』『語る』以外に、『書く』、『読む』ことも含む。ならば、どれほど遠く離れようと、ステラの手紙はラモンを癒す。だから、未来はきっと明るいのだ。
●チャック
ステラの友人。彼がいることで、三人組の馬鹿度を一気に底上げするトラブルメーカー。
何せ復讐のためとはいえ、喜々としてご自分の●●●をすくってますからね。馬鹿ここに極まれり。その後道具をちゃんと処分したかどうかが激しく気になるのだ。
問題のハロウィンの夜には、ステラたちとともにベローズ家に侵入。
ステラがサラの本を発見した頃、すでに在りし日の屋敷の光景を垣間見てしまっているので、入った時点でサラは「こいつら、呪う。襲う。殺す」と思っていたのかもしれない。
オーギー、姉のルースに続き、四番目の犠牲者となる。
彼が襲われるクリーチャーは、予告編でおなじみの『青白い女』。
「赤い部屋にさえね、赤い部屋にさえ行かなければダイジョブだかんね!」と言っていた彼が、突如空間ごと赤く変えられたときの心境はいかに。
チャックなりに必至に抵抗を続けたが、あんなのに四方から囲まれたらどうしようもなく。最後はマシュマロボディに吸い込まれて消えてしまった。
●オーギー
ステラの愉快な仲間その2。神経質そうなおかんがいる。
ステラに気があるようだが、彼女が新顔のラモンといい雰囲気を醸し始めて焦る → 失恋する不憫な役? → チャック姉にも気があるから大丈夫だよ! → ステラ&ラモン、オーギー&チャック姉でのロマンスが進む……かと思いきや、なんと二つ目の物語の主役はオーギー。
本と犠牲者の法則に気づいたステラとラモンが必死に電話で警告するも、食うなって言うのにシチューを食って呪いにハマる。
誰も作った覚えのないシチューとか、怪しすぎやしないかね。
というか、二回目に食べた例の物体。気づいて吐き出したように見えて、よく見るとつま先がなくなっててぬんぎゃーーー。
ようやく恐ろし気な声が聞こえ始め、「早く逃げて」とせかされるオーギー。せっかく一階にいるのに、なぜか二階の自室に逃げる。
それ、ホラーで絶対にやっちゃいけない死亡フラグ。
でもって、よりによってベッドの下に隠れる。
だからそれ、死亡フラグ…… → 案の定ベッド下に出現した亡霊にとっ捕まり、謎の闇空間に引きずり込まれて消えてしまう → メインで初めての犠牲者になる。
まさかオーギーが最初に消えるとは……。
チャックともども、どうなったか定かではないが、多分暗闇の世界で「ここどこー」とか言ってるんじゃないかなと想像。いずれきっと助けが来るさ!
●ルース
チャックの姉。金髪美人。
ハロウィン当日、トイレでアフォんな行為をしている弟を目撃。サイテー、と感想をもらすも、まさかそれが自分のデート相手の股座に投げ込まれようとは思わなかった。
チャック、マジぶっ●す。
だが有事の際には、サイテーな彼氏<<<サイテーな弟になるという、よきお姉ちゃんっぷりを発揮。オーギーと何やらよさげな雰囲気を醸し始める。
ところが、トミーに続いてオーギーも消えてしまった上に、三番目の物語は彼女が主役。
幽霊屋敷の蜘蛛に噛まれた頬が赤く腫れ、ついにはその中からもふぁささーーーっと●●の●●●●が大量に出て来……ぬんぎゃーーー。
冷静に考えると、弟の仮装がスパイダー的何かマンだったのはここへの布石なのだが、そんなことはどうでもよかった。蜘蛛やめれ。
被害に遭いながら、唯一死にも消えもしなかった人物。
蜘蛛クモショックのあまり、一時期精神の均衡を崩したようだが、ステラの活躍により、無事に回復。弟とオーギーを助けるため、ステラと協力していくことが示されて終わる。
頬に傷は残ったが、それが逆にいい女の証。
●トミー
いじめっ子軍団の長。アメリカの学園者で、たいていの人気者が着ている二色のジャンパーを例外なく着用。だけど実家は農場で、親の言いつけにより卵の宅配をしていたりと、その辺は田舎の高校生っぽい。
ステラたち三人を日々いじめていたのか、ハロウィンの夜にチャック産の●●●を投げつけられ、激怒。幽霊屋敷まで追いかけてきて、四人はおろか、彼女のルースまで閉じ込めて帰って行くという非道な行いを見せる。
そのためか、最初の犠牲者になった。
日ごろからいじめていたかかしのハロルドに追いかけられ、腹を鍬でぶっ刺された……と思ったら、そこからどんどん藁が飛び出して来て、ブラックアウト。
↓
翌日。農場の畑に、トミーの服を着たかかしがぶら下がっているというオチ。
たしかにとても嫌な奴だし、やることなすこと鼻につく。
でも、彼だってまだ十代。しかも家族だっている。
だから言いたい。時々……本当に、時々でいいから、いなくなってしまったトミーのこと、思い出してあげてね。
トミーも犠牲になってっからね? 助けてやってね?
●ターナー署長
初登場からして、よそ者のラモンに塩対応するなど、感じのよろしくなさを発揮。その後も病院の一件で逮捕したラモンに対し、徴兵を逃れるなんて卑怯者めと辛辣なことを言ったりと、アクセルべた踏みでフラグを立てまくる。
↓
で。案の定、現れたジャグリー・マンにサクッと●られた。
悲しいことに、サラの物語で明確な死者が出たのは彼が初めて。というか、物語の主人公でない人間にも害が出るんですね。ヒエッ。
トミーに続き、思い出してあげてほしい人No.2。
彼の場合、とっくに葬式を出されているだろうから、復活は難しいのかもしらんが、ちょっとかわいそうではあるまいか……。
●わんこ
署長のわんこ。
ジャグリー・マン登場を感じ取り、暖炉の前でわんこら吠えていた。
非常にハラハラした。
が、野生の勘を発揮し、襲われる前に逃げたのでグッジョブ。
ご主人はあんなことになったけど。
●サラ・ベローズ
本作のラスボス。
子どもたちを毒殺した、子供たちを集めては怖い話を語っていたという噂がある女性。そこから、『サラの話を聞いた者は死ぬ』という怪談が生まれた模様。
実は実家の製紙工場から出る汚染水が原因で、子供たちが病気になったことを告発しようとしていた。だが兄を含む家族全員に阻止され、地下室に幽閉されてしまう。そして真実を隠蔽しようとした兄により、子どもたちを毒殺した犯人に仕立て上げられる。
その後は何度も脱走しようとして、ついには精神病院に強制入院。そこで実の兄から治療と称した拷問に近い所業を受け、怒った彼女は魔術で例の本を生み出して自殺。幽霊となった後も、本を使って家族全員に復讐を果たした。
その後も屋敷に入り込んだ相手をほにゃららしていた……のではないかと思われるが、いよいよ自分の番となったステラの説得により、ようやく憎しみから解放される。多分天に召されたのだと思うが、本はステラの手元に残ったので、まだ完全に消えてはいないのかもしれない。
おそらくサラの真実が語り継がれることで、分厚く積み重なった憎悪の層が少しずつ削られ、いずれはなくなっていくはず。だがそれには長い時間を要する。
●かかしのハロルド
トミーの農場にいるかかし。日ごろから鬱憤を晴らすためにバットで叩かれたりしていた。
ステラが最初に見た物語『Harold』の項にて、トミーに襲い掛かり、彼をかかしに変えてしまう。その翌朝、かかしの服がトミーのものになっているので、あれはハロルドではなくトミーだと見るべきなのだろう。
終盤にて、ステラが過去のベローズ家に潜り込んだ際、『ハロルド』という名前の人物が出て来る。おそらくはサラの兄の一人かと思われるが、つまりはそういうことなのだろう。
新しい生贄を手に入れれば、かかしの運命から解放される、というのがお約束か。じゃあハロルドがどうなったのかといえば、ようやく念願かなって天に召されたというのが一番しっくりくる気がする。
●脚なし幽霊
二番目の物語に出て来るクリーチャー。
足の指を盗られた幽霊……というよりは、動く死体? つまりはゾンビか。
「指を盗んだのはどいつだぁー」と、いかにも怪談っぽい台詞を言いながら、指を食べた相手を探しに来る。
オーギーについては、指を食べる前は幽霊の声が聞こえていなかったので、多分食べなければ助かっていた。
でも食べちゃった。
……。
今とても怖い想像をしたのだが、指を返してほしい=オーギーの●を掻っ●●て●を●●●すとかだったらどうしよう。
誰かそんなことないよって言って。
●蜘蛛しゃん
ルースの頬に住んでいた蜘蛛たち。
親蜘蛛が噛んだ隙に卵を植え付けたのだと思われるが、早撃ちってレベルではない。
ニキビだと思っていたできものが破れた後で、わしゃしゃーーーって出て来る。
ものすごい数が出て来る。
でもルースは死んでもなければ消えてもないので、箸休めといったところか。
●ペール・レディ(青白い女)
予告編でおなじみ。独特のぽっちゃりボディと、一見優しげな表情が特徴。
チャックの夢に出てきた女性と同一人物……だと思うのだが、彼女を『女性』とひとくくりに表現してよいものか、果てしなく謎。
『赤い部屋』に出現するので、赤いところに行かなければ大丈夫だと思っていたが、なんと警告灯をつけられたことにより、病院全体が赤く染まる = 『RED ROOM』と化したため、チャックを狙って出現する。
というか、振り向くといる。
前を向いてもいる。
横向いてもいる。
気がつくと四方を囲まれている。
えっ、これどうしたら……。
動きは遅いので、案外横をすり抜けたらいけるのではあるまいか……あっ、無理だった。とっ捕まった。やめれ、ハグすんな。なんか冷たい。でも以外と感触は悪くない……なんてやっているうちに、すっぽりと彼女の中に吸い込まれてしまう仕様。
吸い込まれた後にどこに行くのかは今のところ不明。
よく見ると、とてもかわいい顔をしている。
が、そのままの笑顔で迫ってくる。
多分何を言ってもそのまま迫ってくる。
やっぱ超コワイや。
●ジャグリー・マン
ラモンが幼い頃、父親が聞かせてくれた話に出てくるお化け。
四肢をバラバラにして移動が可能。初登場時は、なんと警察署の暖炉から降ってくる。
サンタクロース?
いえいえ、サタンクロースですよ!
↓『サタンクロース』のDVD。レンタル落ちだそうですが、全子供待望のじいじになんてことをしてくれるんじゃい。
閑話休題。
バラバラになった身体が一つになったとき、そこに現れるのは真っ裸の怪人。
しかも出会い頭に署長の首をへし折るわ、変な方向にブリッジしながら迫ってくるわ、そんな姿勢なのにやたらと速いわで、作中一番の凶悪さを誇る。
襲われたほうはたまったもんじゃないが、そこは本作のヒーロー枠であるラモン君。奪ったパトカーで走り出し、見事相手をトラックの間でサンドイッチにした……と思ったら、身体をバラバラにして脱出 → 執拗に追ってくる。
けれどステラの活躍により、襲われる寸前でサラの呪いが解けたため、その場で消失した。
事なきを得て万々歳……なのだが。いやほんと、子供に聞かせる話じゃなくね?
●ベローズ家
最後の物語『幽霊屋敷』にて登場。
サラ・ベローズの不愉快な家族たち。
出て来る人、出て来る人、感じの悪いやつらばかりなので、サラがめちゃんこかわいそうに思える。序盤でチャックの前に姿を見せた老婦人も、実物に会ってみれば、なんて嫌なおばあさんでしょう。
全員物語に巻き込まれて消えたというが、ほんの数分の登場だけで、こちらの同情心を吹き飛ばす衝撃はハンパない。滅びよ、ベローズ家。
●監督
アンドレ・ウーヴレダル氏。『ジェーン・ドゥの解剖』と撮っていらっしゃるお方。
『ジェーン・ドゥ~』は繰り出される遺体の造形がチキンには無理だと判断して断念したのですが、冒頭だけでとても面白そうだったので、残念だった記憶があります。
なので本作を見られて大満足。とても面白かったです。次回作も楽しみにしております。ありがとうございます。
↓Amazon Videoで好評配信中。ペール・レディに会いに行こう!
↓映画のビジュアルノベライズだそうです。正直こういうのはとても好きなので、手を出そうか迷うところ。
↓原作本(英語)。google画像検索で出て来た挿絵を見る限り、子ども見たら泣くでー。
↓日本語版もあるようです。絶対挿絵が怖いざんす。