映画『ルイスと不思議の時計』ネタバレ感想。子ども向けファンタジーの良作。

原題:The House with a Clock in Its Walls
2018年の映画
おすすめ度:☆☆☆☆

【一言説明】
ちょっとダークな少年の成長物語。

ルイスと不思議の時計 映画

作家ジョン・ベレアーズ氏の児童向け小説『壁の中の時計』を原作とした本作。時機を逃して映画館で見られなかったのが、Amazon Prime Videoで配信となっていたので喜んで視聴。
公開当時、国内での評判は芳しくなかったものの、主演がジャック・ブラック氏とケイト・ブランシェットさんだとあっては見ないわけにはいくまいよ。

でもって見たらとてもとても面白かったです。
ジャック・ブラック氏とケイト・ブランシェットさんは最高って話です。

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あらすじ

両親を事故で亡くし、突如孤児となってしまった少年ルイスは、母方の親戚に引き取られることになった。約束の場所に現れた伯父・ジョナサンはとても風変わりで、彼は大きな屋敷にたった一人、隣人のツィマーマン夫人と毎晩ポーカーをしつつ悠々自適で暮らしているのだという。
とまどいながらも新しい生活を始めたルイスだったが、どうも二人は何かを自分に隠している。怪しい密談、ひとりでに動く家具や、夜な夜な徘徊しては壁を鈍器で壊す伯父の奇行。

一体なぜ?

ルイスはとうとう真実を突き止める。
実は伯父と夫人は魔術師で、屋敷の元持ち主アイザックの残した恐ろしい野望を食い止めようとしていたのだと――。

※以下ネタバレです。未見の方は注意。

 

実は魔術師だった伯父・ジョナサン。彼が住む屋敷は、もとは魔術師仲間のアイザック・イザードのものだった。彼が死の間際に残した時計が屋敷の壁の中に隠されているはずなのだが、ジョナサンとツィマーマン夫人がどれほど頑張って探しても、今のところ手がかりすらつかめていない。アイザックは不審な死を遂げており、残された時計は相当危険なもののようだ。

伯父と夫人が魔術師であることを知ったルイスは、彼らが生まれついての資質ではなく知識と努力によって力を得たことを知り、自分もその候補生に立候補する。だが新しく通うことになった学校では浮き気味で、ようやく仲良くしてくれそうな少年・タービーと出会ったルイスは、魔術への興味と冴えない奴脱出の道の間で揺れ動く。

そんなある日、ルイスはジョナサンから「絶対に開けてはいけない」と言い聞かされていた戸棚の扉を、タービーにそそのかされて開けてしまう。
中にあったのは一冊の書物。そこには死者蘇生の術が記されていた。
タービーとの友情を失いそうになったルイスは、彼の関心を引くために真夜中の墓地で蘇生術を実行する。術は成功し、重たい石の下から死者の手が現れた。
墓石にはこう記されていた。アイザック・イザードと――。

感想

「ポンコツ魔法使いでも、世界は救える」
というのがキャッチコピーだった本作。遠い昔に原作を読んだ身としては、たしかに邪悪な魔術師は登場すれど、そこまでスケールの大きな話ではなかったはず。なので世界の平和なんて大げさな、ねえ? なんつってのんびり見始めたわけなんです。
悪の魔術師が遺した時計と言っても、子供向けだしそんな物騒なわけはあるまいて……と高をくくっていたら、

全世界の時間を巻き戻し、人類をなかったことにする

というイカれた計画が判明し、度肝を抜かれた次第です。

想像以上にヤバかった!
おまわりさんを呼んできんしゃい。あっ、だめか。おまわりさんレベルではどうにもならん。アベンジャーズレベルの人たち呼んで来い! どう見たってクッキー大好き・ぽっちゃりおじさんでは分が悪い。
いや待て。中の人はジャック・ブラック氏だ。これはあれか。ぽんこつと見せかけて、実は有能だっていうお約束のパターン!

……。

ではなかった。

ポンコツではないが、超有能というわけでもなかった。
そこそこだった。

いや、そこそこが大事だと思いますよ、個人的に。
大抵の場合はね、そこそこの人がぎりぎりで踏ん張って頑張ってなんとかするんですからね、世の中は。
というわけで立ち向かうジョナサンとルイス+ツィマーマン夫人。戦力から言うとツィマーマン夫人がメインなんだけれども、これは子供向けなのでルイスが活躍する場を与えられます。

アイザックとその妻セレーナは人類の誕生を阻止すると言ったものの、自分たちだけは存在を維持するつもりらしい。だけど人類の替わりに誕生したのが、手塚治虫氏の『火の鳥』ではないけどむっちゃ頭のきれるなめくじとかだったらどうするつもりだったんだ……。なめくじと杯を酌み交わすの? げへぇー。
壮大な計画の割に、わりとThat’s雑な感じがする首謀者たちだが、実力はジョナサンよりも確実に上。それまで仲良くしてた屋敷の被魔法物たちがこぞって敵になってしまう様は恐ろしかったです。
ライオンとかさ、かぼちゃとかさ。あの日の友情は嘘だったのねっ、馬鹿っ!

果たして三人はアイザックの手から世界を救えるのか――?
という本作ですが、評判が悪かったのはよくも悪くも子供向けな映画だったからでしょうか。
ルイスがあっさり魔術を習得しすぎとか、散々探した時計が実はとんでもなくでかくて、これを見つけられないなんて節穴かとか。明らかに大人がなんとかしなきゃいけない場面なのに、なぜか10歳の子どもが一番活躍している……とか。

確かに欠点はあるのですが、自分はほとんど気になりませんでした。何せターゲットが子どもなので、彼らが楽しめなくては元も子もないからです。
思い返せば幼き頃、大人ばかりが活躍して子どもが端に追いやられてる話には何の魅力も感じませんでした。やはり子どもは子どもが大活躍するお話が好きなんです。
ただ、いい作品は子どもが中心だけれども、きちんと大人にもドラマを描く。大人がしっかりしているからこそ子どもが自由に振舞える。本作もジョナサンとツィマーマン夫人という土台があったからこその面白さだと思います。ぜひ続編に期待したいと思います。

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人物紹介

●ルイス
本作の主人公。両親を不慮の事故で亡くし、伯父の元に引き取られた10歳の少年。なまらめんこい。TVヒーローを真似してゴーグルを頭につけている。
転校生として新しい学校に通うが、初日からバスケのチーム分けで最後まで余るなど不遇な扱いを受ける。いかにも貧弱小柄だからって差別じゃないっすかねと思った次のシーンでご想像通りの運動能力を披露するからしゃーないっちゃしゃーない。まあ人には得手不得手がありますし……うん。

伯父さんが魔術師――生まれ持っての才能ではなく努力でなれると知り、自身も同じ道を目指す。元から辞書=読書好きなだけあり、小難しい曼荼羅みたいな図も根気強く読破し、魔術師の卵として努力を重ねる。おかげでリア充路線からは完全に外れたが、人生に別の楽しみが与えられたのだから結果オーライ。

タービーとのやり取りは最初ほっこりしたものの、途中から完全にアカン方向に突き進む。外野から見ると一時の気まぐれなのは明白なのだが、それでもタービーの関心をつなぎ留めたいルイスの気持ちがいじましく涙を誘う。せっかく仲良くなった唯一の――それも学校の人気者の友情を失うなんて、まさにお先真っ暗な展開。それだけは避けたい。

だからって死者をよみがえらせるのはいかがなものか。

思い切りの方向が明後日すぎるぞ。しかもなんで夜。多分教本に「深夜に実行すべし」とか書いてあったんでしょうが、わざわざ夜行くことないでしょーが、やめなさいよあんたたち。その度胸を別のところに使えば学校を牛耳れるぞと思わないでもない。

しかもよみがえらせたのがよりにもよって悪の魔術師アイザックだったため、屋敷の中の時計が再稼働し、あわや世界の危機を招いてしまった。
だが有能なるルイス少年は勇気を奮い立たせ、伯父さんとともに……いや役に立ってはいなかったな……実質一人で時計を破壊、アイザックの野望を打ち砕いたのであった。
でもってタービーの鼻っ柱を文字通りへし折り、かねてより気が合いそうだった少女・ローズのハートもゲットし、自分らしく生きられる道を手に入れてハッピー・エンドを迎える。続編があるならぜひお願いしたいですね。

原作では太めでもっと気弱に書かれている。そのためかタービーとの友情を失うまいとする姿勢がより切実さを帯びている。それに比べると本作はちょっとのんびりというか、タービーがいなくても別に大丈夫ではと思えるのが若干のマイナス。伯父の言いつけに背いてまで本を盗む理由には少し弱い気もする。
……でも子どもってそんなものか。好奇心は猫をうんたらかんたらだ。

●ジョナサン
ルイスの伯父。ルイスの母は彼の妹にあたる。
若いころに魔術の扱いで父親と喧嘩し、家出したまま妹の葬式にすら顔を出さなかった。よっぽどの行き違いがあったのだろうが、妹は彼を慕っていたそうな。葬式くらいは顔を出せや……と思いはしたが、多分タイミングとか何かで出られなかったんでしょうな。彼も妹を憎からず思っていたのは、ルイスを引き取ったことで証明されているし。

さてこの伯父さん、原作でもあまり腕はよくない……というか、なんか彼が呑気にクッキーを食べてる間にルイスやローズががんばって問題を解決していたような気が……。
でもぽんこつと呼ぶほどひどくはないし、惑星を作って見せる魔法とかすごいじゃないですか、できる男じゃないですか。
でもってジャック・ブラック氏だから感じの良さが天井知らず。こんな伯父さん筆者もほしい。隣人としては迷惑だが、腹を割って話せば愉快な友人になれそうなのがポイント高し。実際には隣人のほうがアレだったけどな

ただ最後のクリーチャーベイビーはいただけない。気味悪すぎて子供が泣きます。中の人がブラック氏だったために、気前よくGOサインとか出しちゃったのかな。
なんであんな文字通りの父つぁん坊やになったのか初見で理解不能だったんですが、「これで防御する」と言っていたトランプが顔にかかったため、頭部だけ守られて身体は赤ん坊のクリーチャーが誕生したと判明。それなら頭脳は大人であっても不思議はないのだが、監督の毒が最後の最後で滲みでたと解釈してよろしいだろうか。
個人的にはもうちょっと活躍してくれてもよかったのだが、そこは原作準拠ということでまあしゃーない。

余談ですが、個人的にジャック・ブラック氏とクリス・プラット氏(『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のスター・ロード役)はかなり似ていると思います。つまりブラック氏はイケメン。本作でも時折「おっ、イケメン」と思わせるお顔を見せてくれて、あな嬉し。だから余計にもちっと活躍してくれてたらなーーー、あーー残念。

●ツィマーマン夫人
ジョナサンの友人であり隣人。お互い悪口を言い合うほど仲がよい。紫大好き。
親しみを込めて化け物と呼びたいまさに美魔女。正真正銘の美魔女。ちょっと待った、ブランシェットさんはいくつなんだ……と無粋にもwikipediaを参照してヒェッ……。
魅惑すぎてアカン。麗しすぎてアカン。気品と色気をまとったその美しさ。まさに世界遺産級です。

そんな彼女がジョナサンと違って大・活・躍
かつては超一流の魔術師だった夫人。ところが夫と幼い娘を、おそらくはホロコーストによって亡くしたため、魔術が使えなくなってしまった。しかし隣人と世界を巻き込んだ危機に、この賞賛すべき夫人は立ち上がり、かつての力を取り戻した。
杖から紫色の光線を放つ姿の凛々しいことよ……!!! 男どもは彼女の背後に隠れて何をしとるんですかね。
ルイスの扱いに困って責任を放棄しかけたジョナサンを叱咤するシーンは最大の見せ場。
「なんて臆病なの、ジョナサン」
これほど胸をえぐる言葉は他にあるまい。さすがは旧知の仲。相手をよく知り、思いやっているからこその台詞。
なのに最終決戦を前にして、紫にしたペットの蛇にとっ捕まって戦線離脱
後に残された男二人の頼りなさといったら……まあがんばれ。

家族を失い、ぽっかり空いた穴が埋まることはないでしょうが、そこにルイスとジョナサンという蓋ができた。ラストの三人で仲良くお出かけする姿にことさらじーんと来るのは、彼女の人徳あってのことでしょう。彼女の幸せをいつも祈っている……JPOPみたいだな。

●アイザック・イザード
はい、きました。脳が送って来る高難易度試練。誰だっけー、絶対見たことあるし、喉のここまで出かかってるんだけどなー、ほらあの人、な役者さん。決して知名度が低いとかいうわけではなく、場合によっては超大物俳優ですら出てこない。ライアン・レイノルズ氏やジェイク・ギレンホール氏すら失念したことがあったくらいです。まったく困ってしまいますね。老いではない。
答え合わせをするとカイル・マクラクランさんでした。『砂の惑星』や『デスパレートな妻』などでおなじみ。眼鏡をかけていたからわからなかったんですよ。眼鏡じゃなー、仕方ないなー。クラーク・ケントだって優秀なのは眼鏡だしなー。

昔はジョナサンとコンビを組んでマジシャンとして活動していた人。マジシャンっていうか、本物の魔術じゃねーか。ちょっと卑怯ではあるまいか。
そんな彼が戦争に行き、そこで悲惨な目に遭って帰ってきたばかりに、何か変な思想に目覚めて「もう人間やだ」となり、「じゃあ人間をこの世から消しちまえばいいじゃねーか」とノリノリになり、文字通りの終末時計を作ったのが本作の肝。
たしかに戦争は人を変えてしまうしな……と同情のまなざしで見ていると、なんと戦争でひどい目に遭ったんじゃなくて、悪魔と出会って洗脳されたからだという理由が判明し、本作一番のぽんちきおじさんの座をジョナサンから見事奪い取ってみせるのだった。
馬鹿なの?
結局は悪魔の傀儡になってるだけじゃねーか。同情したこっちがアホみたいだわ……と脱力。

だが思想はアホでも実力は確かだったようで、屋敷の中に時計を隠す……というかもはや屋敷全体が時計という勢いのすさまじくでかい時計を壁の向こう側にひそかに設置していたことが判明する。
正直何故これが発見できなかったのかと疑問だが、ジョナサンがぽんちきだったからではなく『魔術師は魔術師の隠したものを見つけられない』というルールが存在するそうな。
結局、まだ魔術師ではなく、あくまで魔術師の卵だと言い張るルイス少年によって(ありなのかそれ)時計のありかは暴かれ破壊されてしまうわけだが、なんというか魔術師って変人しかいないのでは……という感想を残してしまうあたり、心底業の深い人物である。妻もたいがいだ。

●セレーナ
アイザックの妻。当初終末時計を起動する鍵は彼女の遺体から作られたのだと思われていたが、実はジョナサンの真向かいに住むハチェット夫人を殺して成り代わっていたことが判明。鍵は夫人の骨だった。ひどい
変身魔法が得意で、ルイスの前に夢を装って彼の母親の姿で現れる。「鍵を探しなさい」「本を手に入れなさい」などなど、アイザック復活の黒幕は彼女だ。
変身を解く姿がエグく、ぼぎょんぼぎょんあちこちの骨を皮ごと折りまくってもとに戻るシーンはよい子の心臓をヒャンッとさせる。
最後は夫とともに仲良く時計の崩落に巻き込まれ、消滅していった。

……だが屋敷内部に深く食い込んでいた時計が消滅して屋敷が無事なのは正直解せないのだが、まあいいか。

●ハチェット夫人
口うるさいジョナサンの隣人と思いきや……本作最大の被害者。彼女の死がなければ大団円だったのに……気の毒だ。魔術師の真向かいなんぞに家を構えるものではないね。

●タービー
ラグビー部所属のリア充。ルイスと仮初の友情を結ぶ。
学年委員だか何かの票がほしくてルイスを懐柔。当選した途端、態度をころっと変えるド外道。多分ルイスがタービーの好むような普通の少年になれたら、友情を継続してもよかったのではなかろうかと思え……ないか、やっぱり。

ラグビー部というには体型がルイスとほぼ一緒で貧弱。部の人気者になるには今一つではないかという疑問に、アイザックをよみがえらせたときの逃げ足の速さで答えを出すという作中唯一のファインプレーを見せる。
振り向いたらいない演出はコメディだけだと思っていたが、やつはやりやがったぜ!!

●ローズ
昆虫大好き昆虫博士少女。ルイスを面白そうなやつだと思い、タービーの二面性を彼に警告してくれる。その後タービーの本性を知り彼と別離したルイスと仲良くなる。なまらめんこい
本作で目立った活躍はないが、続編があれば原作通り大活躍してくれることでしょう。期待しております。

●人形たち
おそらくはマジシャン時代に使っていた等身大の人形たち。終末時計発見後、隠し扉から出て来たジョナサンが彼らを見て一言「気味悪いな」。

今さら?

●椅子とライオン
本作のマスコット。ライオンは若干お行儀が悪い。
アイザック復活後は彼の意思に操られてジョナサンたちに敵対するが、退治後は元に戻った。椅子かわいい。

●監督
イーライ・ロス氏。本作が面白かったので他に何を作ってるんじゃいとwikiを見てみれば、『ホステル』の題名が。
ヒエッ……
うん。いや、本作は面白かったです。ありがとうございます。でも『ホステル』は見られないっす。無理っすーーー。
(ホステル:東欧を旅行で訪れた青年が、とあるホテルに泊まって綺麗なお姉さんたちとあはーんなことになった後にぎゃああああな展開になるお子様禁止映画。多分そんな感じ)

↓Amazon Videoにて配信中。配役がナイス。

原作

ジョン・ベレアーズ氏作。ハリー・ポッターよりも前に書かれ、児童向けファンタジー小説の先駆けとなった作品です。
旧版を持っておりますが、最新版は挿絵が現代的にかわいらしくなっておりますね。ルイスがしゅっとしているのが疑問ですが。彼はもっとぽちゃっとしてないといかん。だがローズがかわいいのでよしとしよう。

たしか六作くらいあったかな? どれも面白いのでお勧めです。
個人的によく覚えているのは、悪霊など悪いものは流れる川を渡れないということ。そういうものに追いかけられたら、橋を渡ってしまえば逃げられるそうな。
日本にもこの概念はあった気がします。やはり死者といえば水なんですねえ。

↓原作の第一作。六作まで出てたはず。どれも面白いです。