映画『アナと世界の終わり』ネタバレ感想。ゾンビ&ミュージカルの化学反応=最高。

アナと世界の終わり ミュージカル

原題:Anna and the Apocalypse
2017年の映画
おすすめ度:☆☆☆☆
グロ度:☆☆☆

【一言説明】
歌と踊りでゾンビは消えない。

アナと世界の終わり 映画

前代未聞のゾンビミュージカル、ここに開幕!

予告編に魅了され、行くと決めてから早数ヶ月。ようやく鑑賞して参りました。
受付で間違えて「アナと雪の……」と言いかけたら、スタッフの方も「アナと雪の女王ですね」と回答。

アナ雪ではねーわな

これが『アナと雪の女王』だったらどエラいことです。子どもが泣きます。
筆者は大人なのでさすがに泣きませんでした。泣かないどころか、

めちゃくちゃおもしろかったです。

イギリス産ゾンビ映画は『28日後…』といい名作が多いですね!
だが本作はPG12作品。お子様には目の毒なシーンが多々あるのでご注意。
ゴア描写が苦手な人も避けた方が無難です。筆者が平気だったのでひどくはないけど。

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あらすじ

イギリスの田舎町リトル・ヘイブン
地元の高校に通うアナは閉塞感溢れる日々に飽き飽きしていた。自分の居場所はここではない。もっと胸踊る世界がきっとあるはず。だから出て行く。卒業したら必ず出て行く。

そんな中、世間ではじわじわと拡大する致死性のウィルス被害が話題を集めていた。感染した者は十割が死に至り、しかも動く死体と成り果てる……。

そう、つまりはゾンビだね!!

さては傘印の会社の仕業……ではなく、原因はよくわからないがとにかくゾンビ。世界がゾンビ
それはここリトル・ヘイブンも例外ではなく、クリスマスを翌日に迎えた朝、アナは不気味な咆哮を聞き目を覚ますのだった……。

※以下ネタバレ。未見の方注意。

 

 

感想

原題のアポカリプスはやはり『終末』と訳すのがよろしいのでしょうか。
致死性のウィルス=ゾンビウィルスによって人々がゾンビ化。現在も増殖中であり、ついにアナたちの住む町までやってくる。
そして始まるアナ含め高校生たちによるゾンビバトル。

ここまでならよくある設定。よくある展開。
だが一味違うのは、本作が

ミュージカル映画だということ。

今まさにゾンビが襲ってくる最中も、登場人物が歌って踊りまくる。しかもかなりご機嫌なナンバーに乗って。
不謹慎?
いえいえ、ハマりまくっています。今まで誰もやらなかったのが不思議なくらい、ゾンビとミュージカルは相性がよい模様。そこに青春も加えたら、見事な化学反応で盛り上がりが天井知らず。
ミュージカルの良さは音楽に乗せてあれよあれよの場面転換と設定を一気に観客に認識させることにあると思うのですが、本作はこれが功を奏し、実にテンポよく話が進んでいきます。
有象無象いる学生の中で、メインで歌っている人物が主要キャラという明快さ。彼らの現状や思考が歌によってどどーーっと頭に入って来るので、大変わかりやすい上に感情移入がしやすいんです。
しかも前半が最高に高校生らしくて馬鹿っぽい。

予告編でも流れた「Turning My Life Around」にて、元気に登校するアナの周囲でゾンビに襲われ逃げ惑う人々。だがイヤホンで音楽を聴き、自分の世界に入っているアナはまったくそれに気づかない。
同時刻。幼馴染のジョンも元気に家を飛び出し、二人ともくねくねと妙な踊りをしながら右と左から接近。最後は画面中央で出会って「イエーイ」みたいな。

好き。

きわめつけはビニールプール。高校までの移動手段として、逆さまにしたプールの中に入り、そのまま持ち上げて移動すればゾンビにもばれない!

ばれないの?

ばれなかった。

嘘つくなよ。ゾンビナメンナヨ。あいつら死んでるくせに、なぜか生きてる人間の感知能力バカ高いからな。
案の定、意識高い系のゾンビに見つかって逃げ出す羽目になるんですけどね。

こんな感じでプールを被ってみたり、ゾンビ殺しの異名を自分で名乗るアナの元彼ニックと再会してみたり、とにかくアホな雰囲気で進む前半ですが、仲間の一人が命を落としてからは急転直下。切なさを醸し出す終末ドラマへと物語は変わっていきます。

この前半と後半の落差を見て、ミュージカルをゾンビ映画に採用した監督は天才ではないかと思いました。
前半はわざと明るいナンバーと案外ちょろいゾンビたちといった展開を用意し、意図的に観客と登場人物たちから『死が迫っている』という認識を遠ざけている。その結果、両者に「このまま生き残れるんじゃないか」という期待を抱かせる。少なくとも主要人物は誰も死なないのではないかと思わせる。

からの、仲間死亡。
しかもよりによってジョンが死亡。
ええええ、ジョンから行くのか! と驚愕しました。
そう、序盤で歌った「Hollywood Ending」。この曲が示すとおり、これはハリウッド映画ではない。死はすぐそこに迫っており、ハッピーエンドにはなり得ないのだ。
一人、また一人と減っていく生存者たち。死は身近で、文字通り彼らの世界の終わりが近づいている。

これはある意味、子供時代を終えて外に飛び出した若者たちを迎える試練を表現しているのかもしれませんね。
夢を持って世界に出たはいいけれど、世間の荒波という壁が立ちはだかり思うようにならない日々。それでも努力を怠らず、社会で生き抜く術を見つけ、親の庇護のもとで生きていた時代は不自由ではあっても大切に守られていたのだと気づく。
けれど今は自由。何をするにも自分の力で、足で、責任で。選んだ道を歩いて行く。
ある意味空虚な。けれど希望もある。
「どこに行く?」とラストで問いかけられたアナは、果たしてなんと答えるのか。
余韻を残すラストといい、大変面白い作品でした。続編も作れそうですが、ぜひぜひゾンビミュージカルをジャンルとして確立し、新作が出る世の中になってほしいものでございます。

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人物紹介

「人物相関図とかあったら面白いんじゃ」というアイディアを頂き、なーるへそ、そりゃ面白そうだ! と実践しようとしたら超時間がかかったため頓挫。
でも描いたのに使わないのも勿体無いので今回はキャラ画像付きです。アナとジョンが使い回しなのはご愛嬌ざます。

●アナ
アナと世界の終わり アナ本作の主人公。高校卒業を控え、オーストラリアに旅立ちたいと思っているが、父には反対されている。狭く退屈な町に閉塞感を感じており、いずれそこから抜け出すと決めている意思の強い少女。
制服の上に緑のモッズコートを羽織り、手にはクリスマス用品の店からかっぱらった赤と白のステッキを持つ。

そしてゾンビをぶっ飛ばす

正直ステッキってそんなに威力があるのか疑問ですが、腐食しているゾンビの身体は案外もろいのかもしれません。
父親を失うも最後まで生き残り、ステフ・ニックとともに車で町を脱出する。
ジョンの言う通り、彼女ならこの先何があっても大丈夫だろう。

素朴な疑問。
公式サイトにてダサい仲間とつるむ日々に嫌気がさし……的な紹介文があったんですが、アナ自身はめちゃイケてるのになぜにあのグループに属しているのだろうか。正直もっとスクールカースト上位を狙えるのではと思うんですが……全方位イケてない学生しかいない学校なんでしょーか。不思議じゃわい。

●ジョン
アナと世界の終わり ジョンアナの幼馴染。初登場で無心にジャムサンドを食い、アグリーセーターを着用する姿に象徴される通り、ギークでイケてない男子。だが大変いい奴。
アナに惚れており、ひそかに彼女が町にとどまってくれればいいと思っている。
ゾンビ襲撃後にそれをアナに告げるも、きっぱりと「あなたは親友よ」と言われ、フラれる。

しかも大事なことだからなのか二度言われる
望み薄なのはわかったからやめたって。

彼にはかわいそうだが、アナにとってジョンは親友であるとともに退屈さの象徴でもあったのだろう。仲の良い昔からの友人――けれど時折見せる悪い部分に心底嫌になることがあり、早くここから逃げ出したいと再認識させられる。そんな存在。
おそらくこれがハリウッド製の映画だったら彼の思いは実ったかもしれません。けれど作中歌『Hollywood Ending』が象徴する通り、これは夢物語ではない。気を抜いた瞬間にゾンビに噛まれてしまい、死を覚悟。アナをゾンビ集団から守るために身を盾にし、身体を貪り食われて死亡する。
マジでいい奴。
面子の中でジョンが一番けなげで好感度が高かったので、生き残ってほしかった。エンディングの散っていく花が切ない。

だがジョンよ。何日同じセーター着てんの?

●ステフ
アナと世界の終わり ステフ我が道を行く一匹狼系の女子。両親はクリスマスを前にメキシコに旅行。ガールフレンドも予定が合わず、独りぼっちのクリスマスが決定する。
落ち込みつつもクリスに学校のサイトに載せるための動画制作を依頼。撮影の最中にゾンビに遭遇したため、アナたちのバイト先のボーリング場に身を寄せる。
それが功を奏し、後にアナたちと合流。共に高校を目指すことになる。

劇中ではまずトイレの蓋でゾンビの頭を落とす活躍を見せ、その後スパナをゲットした後は憎きあんちくしょうどもを近接格闘術にてバッタバッタと血祭りにあげて行く頼もしさを見せる。
最後はクリスとリサの犠牲により無事に愛車の鍵をサヴェージの部屋からゲット。窮地に陥ったアナとニックを救出し、町を脱出する。

両親がメキシコでどうなったか不明だが、たくましい人々でいっぱいの国だし、案外大丈夫かもしれない。行く手に幸あれ。

●リサ
アナと世界の終わり リサアナの友人。クリスとラブラブのバカップル。ゾンビの襲撃がなかったら、さっさと結婚して良いお母さんになりそうなタイプ。

学校主催のクリスマスコンサートにてセクシーかつ抜群の歌唱力を披露。
その後はゾンビが来襲した高校にあって、クリスの祖母を守り抜くも、残念ながら心臓に持病があったために孫の到着を待たずに亡くなってしまった。

彼女とクリスが囮となりステフが車の鍵をゲットする作戦だったが、残念ながらゾンビに噛まれてしまう。その際、死を悟った二人がかわすキスシーンの美しいこと。動く死体となった後は互いにそばにいながらも触れ合うことのないのが悲しさを誘う。

●クリス
リサの彼氏。心から彼女を愛しており、ゾンビだらけの学校にもリサと祖母のために戻る決心をするできたやつ。
前半はジョンと二人でお馬鹿担当だが、後半における前述の落命シーンは涙を誘う。
ゾンビに追われつつもスマホで撮影を続けるなどガッツは人一倍。

ただし序盤で流れる本人作の映像はいただけない


先生が心配する気持ちもわかるな。ジャンルが違ったらサイコさんって呼ばれると思うな!

●ニック
アナと世界の終わり ニックアナの元彼。オラついており、学園の覇者っぽい雰囲気をかもす。
それもそのはず。親が軍人。きっとパパから格闘術とかを教えてもらっているんだね……と思ったが、

ゾンビはバットでぶっ叩く主義。

なんと歌まで用意されており、ショッピングカートに乗りつつゾンビをバットで粛清して行く様に痺れる憧れるぅ!

正直あまり性格がよろしくなさそうだったため、なんでこいつが生き残るねんと思っていたが、なんと父親がゾンビになった際、本人に頼まれてバットで殺していたという事実が判明。おびただしい同情票を投入したくなった。
強がってたんですね……そりゃ辛いわー。

●トニー
アナと世界の終わり トニーアナのパパさん。学校の用務員。
娘には大学に進学してもらいたかったらしく、オーストラリアに旅立つと聞いて激怒。大げんかをする。

クリスマスコンサートで照明を担当していたため、ゾンビの襲撃に遭う。アナがやってくるまで無事に生きていたが、なぜかサヴェージに拘束されている。
しかも椅子にクリスマスのイルミネーションコードで巻かれただけって……
正直自力で脱出できたのではないか?
甚だ疑問である。

子供たちは歌うけど、この人は歌わないのかなーと思っていたがそんなことはなかった
ミュージカル映画では犬だろうと猫だろうと用務員さんだろうと歌うのである。それが宿命。

●サヴェージ
アナと世界の終わり サヴェージ本作の憎まれ役。
公式サイトだと『校長』とあるが、たしか劇中で別の人が校長だと呼ばれていたような……。校長になる野望を語っていたようにも思うので、多分教頭とかそんなポジションか。

なんだか態度のよろしくない先生のように描かれていたが、後半突如精神の均衡をきたして自らゾンビを引き入れ、ゾンビ化した人の中でディナーを取っているという一体どうしたな行動を繰り広げる。
マジでどうしたんだ。何がサヴェージに起こったんだ。

やけっぱちになってアナのおとんを拘束するも、アナの機転によってゾンビだらけの体育館に落下。腸を引き出されて貪り食われる。
それまでの行動があまりな感じだったので、ここで溜飲を下げた人もいるかもしれないが、よく考えるとジョンもほぼ同じ目に遭っていることを忘れてはいけない
ヒェッ……。

●ゾンビさんたち
作品によっては足が速かったり、ペットとして飼われていたり、重病に犯されてる人は襲わなかったりなどの違いはあれど、共通するのはその飽くなき食欲と繁殖への熱意だ。
一応動くとはいえ死んでいるんだから、時間が経ったら自滅しそうなんですがどうなんでしょう。個人的にはもし実際に起こったとしてもワクチンが開発されて滅亡まではいかんのと違うのかと思います。

●監督
ジョン・マクフェールさん。イギリスはスコットランドのお方らしいです。イケメン。
とてもとても面白かったです。ありがとうございます。新作を心待ちにしております。

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