原題:Last Christmas
2019年の映画
おすすめ度:☆☆☆☆
【一言説明】
クリスマスソングが身に沁みる。
ブログを開設して早一年超。なのに相も変わらず、すっかすかな『恋愛』の項目。苦手な『SF』ですら、そこそこ書いたのに、このままではいかんのではないかとTSUTAYAで借りた『ラスト・クリスマス』。
主演は『ターミネーター:新起動/ジェニシス』のエミリア・クラークさんと、『シンプル・フェイバー』のヘンリー・ゴールディング氏。
共演に、『いつか晴れた日に』のエマ・トンプソンさんと、『グリーン・デスティニー』のミシェル・ヨーさんが出演されています。
あらすじ
ある年のクリスマス。
実家に帰るのが嫌で、友人宅を転々と泊まり歩いていたケイトは、トムという謎めいた青年と出会う。
彼の影響で、少しずつ良い方向に変わっていくケイト。もしかして。
もしかしたら。
彼は、このハートを捧げるに値する人なのかもしれない。果たして、二人の行く末は……?
※以下ネタバレ。何も知らないで見た方が、百倍楽しめる映画です。未見の方はご注意。
感想
宣伝で、『少し切ないラブ・ストーリー』的な文句があったので、ハッピーな結末にはならんのかなーと思いつつ見た本作。
主人公のケイトは過去に心臓移植を受けたことがあるため、なるほど、その移植した心臓の持ち主というのが、きっとトムの亡くなった奥さんなんだな。
そりゃーほろ苦い系の結末にもなるかもしれないな。なははん。
↓
↓
トムだった。
移植した心臓の持ち主は、トムだった。
えっ……。
あ、そういう方向……?
たしかにトムは神出鬼没で、何の仕事をしているかもわからんし、ケイトときゃっきゃうふふしたかと思えば、その後何日も音沙汰なしなんてこともざら。
あいつ、一体ケイトをどうしたいんだ。
とイラついていたところ、なんとすでに死人だった……というオチ。
なるほどねー、言われてみれば、トムを認識していたのはケイトのみ。他の誰かと会話したこともないし、上手くできてるなーと感心。
そもそもタイトルが『ラスト・クリスマス』の時点で、ハッピーエンドは難しい。クリスマスシーズンによく流れる名曲ではあるものの、歌詞をよく聞くと失恋の歌。
トムから誘われ、次第に心を寄せていって、いざ恋人になろうぜと言ったら、「僕に頼るな」と言われたケイト。
そして文字通り心臓を差し出した(移植した)にも関わらず、移植後の相手は自堕落な生活を送り、人生を捨て去っているのを目の当たりにするトム。
まさに『Last Christmas, I gave you my heart.But the very next day you gave it away(去年のクリスマスは君にハートを捧げたのに、次の日にはもうぶん投げやがったな)』の歌詞通り。
ほほほーう、となったものの、展開にもう一ひねりほしかったかなーというのは贅沢でしょうか。
良く言えば王道、悪く言えば無難なところに収まった物語は、クリスマスにカップルで見るには、適した映画であるとも言えますが。
あと、分類は『恋愛』にしたんですが、どっちかっつったら『ドラマ』か『ファンタジー』じゃねーのこれ、と思ったのは内緒だよ。
ラブ要素は控えめで、茶の間が凍るようなシーンもないので、クリスマスに地上波で流すのには最適かと。
面白かったです。
人物紹介
●ケイト
主人公。子供のころに、ユーゴスラビアからイギリスに移住してきた歌手志望の女性。
実家に寄りつかず、友人間を転々としてその日の宿をしのいでいるが、自分勝手な行いが目立ち、複数人から縁を切られそうになっている。
実は前からそんな性格だったわけではなく、心臓に重病を患い、移植手術にて一命をとりとめたのだが、自分のものではない心臓を体に埋め込まれたことで、文字通りハートを失くしたような錯覚に陥ってしまったうえに、周囲の接し方も同時期に変化したことから、現実を生きていないような気になったとのこと。
だからって、ハートレスな行いはどうかと思うんだぜ! 大事な帆船燃やしたりとかさ!
そんな彼女を心配した、中の人トムが出現。
彼女の心=本来の自分を取り戻す手助けをしてくれたため、最後はボランティア施設でのチャリティコンサートを開くまでに再起。
大勢の観客の前で、『ラスト・クリスマス』を歌い上げ、めでたくハッピーエンドと相成った。
エルフ姿がめちゃくちゃかわゆい上に、歌も上手とか、エミリア・クラークさんがますます好きになったんだす。
[adchord]●トム
突如ケイトの前に現れ、彼女を散歩に誘う青年。心優しく包容力があり、最初は乗り気でなかったケイトも、次第に心を許し始める。
が、職業・住所ともに不明、携帯電話を携帯していなかったり、ふらっと姿を見せては、その後音沙汰なしだったり、毎回同じ服を着ていたりと、不審な点も多い。
しかも、あんだけ最初はぐいぐい来たくせに、「君は思ってた子とは違ったみたいだ」という感想の次に、「僕に頼るな」と突き放す態度を見せるという、最高にポンチキ野郎……ではなく、実は昨年交通事故で死去していたことが判明する。
つまりは幽霊?
いやいや、クリスマスの奇跡です。
悩めるケイトを励ますため、クリスマスシーズンだけ、彼女の側に現れることを許された、みたいな。なんてファンタジー。
彼にハートを寄せたケイトだが、そのハートは(物理的に)トムのものであるわけで、そうすっと結局ケイトのハートは誰のもんじゃいなっていう哲学的思想に入りかけたりしましたが、歌の歌詞を考えれば、きっと来年には新たな出会いがあるんじゃろうという、一抹の寂しさを含んだほろ苦い結末にあなたもきっと涙するとか何を言っているんでしょうか。
要するには、ラブストーリーかと思ったら、ヒロインの心の再生を描いた物語だったよ、という話だよ!
ふつーに二人がくっついてよかったと思うな!
●ケイト母
ユーゴスラビア時代はイキイキとしていたのが、移民後、色んな心配事が重なったのか、どんどん過保護に陰気になっていったおかん。
そんなに毛嫌いせんでも……あと何回、おふくろの飯が食えるのかわかんないんだぜ? なんつって見てたら、寝入ろうとしたケイトの頭を撫でつつ、エンドレス子守唄を歌い始めるので、これはたしかに逃げたくもなる。眠れないっつの。
ケイトの姉も含め、親子関係は悪化の一途だったが、ケイトが再起したことで次第に溝を埋め、最後は冒頭と同じ、自慢の我が子を見つめる目を取り戻すことと相成った。
エマ・トンプソンさんはさすがの存在感でございます。
●ケイト父
ユーゴスラビア時代は弁護士だったが、移民後は資格関係で元の職には戻れず、タクシー運転手をしているおとん。
妻の件では娘に理解を示し、陰気な家庭から逃げるように、夜中も車を流す日々を送る。
彼は彼で失意の中にあったのか、前半は控えめなお父さんという印象だったが、終盤はめきめきと意欲を取り戻し、家族仲良くケイトの活躍を見守った。
●ケイト姉
ながらく不仲だったケイトの姉。歌が上手で、昔から特別な子扱いだった妹が、心臓を患い、本当に特別な子になってしまったため、努力して弁護士になったにも関わらず、親の関心を集められなかった。
しかも、母に内緒にしていたパートナーの存在をさらっとばらされるし、妹憎しとなってもそりゃー仕方がない。
後に、ハートを取り戻したケイトと和解。パートナーとともにコンサートにも参加し、両親との関係も修復されたことが窺える。よかったね。
●サンタ
ケイトの雇い主。ロンドン市内でクリスマスギフトのショップを営むアジア系のマダム。
最初は態度がツンケンして見えたのだが、手術後以降、ケイトの勤務態度が悪化の一途をたどったからだったことが後に明かされる。まさに他人は自分の鑑。
ある日店を訪れた英国紳士と電撃的出逢いを果たしたものの、彼の職業は芽キャベツ農家か何かなため、ひたすら芽キャベツを好きになる努力をするという、大層かわいらしい一面を見せるので、ミシェル・ヨーさんの魅力もあり、ナイスなキャラクターになりました。
芽キャベツは……調理方法なんですかね。煮たらなんかべひゃってして、うひゃひゃんってなった記憶があります。
●シェルターの人々
トムを探しに来たケイトを最初はうさんくさそうに見ていたが、いざ彼女が本腰を入れてボランティアに励みだすと、ノリノリで協力してくれる気のいい人たち。
コンサート用のオーディションでは、才能の塊みたいな人もいて、それぞれの事情を感じさせてくれる。
クッキーが秒で消えたのには笑った。
●ベンチ
トム・ウェブスターの名が刻まれた記念のベンチ。
二人でここに座った日々を思い出すと切なくなりそうでいて、トムはケイトにしか見えてない=じゃあ二人がここでチューしてたのは、他人には一体どう見えたんじゃいと考え出すと不毛スパイラルに入るのでやめておこう。
●トムの元部屋
トムが元住んでいた部屋。今も買い手がついていないらしい。
ケイトが案内されたときはやたら整頓されており、モデルルームみたいだなと思ったら、ある意味モデルルームだった。
案内のにいちゃんがワケアリ物件です、と紹介していたのだが、室内で亡くなってない場合も、ワケアリになるのだろうか。
●監督
ポール・フェイグ氏。他に『シンプル・フェイバー』や『ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン』など、名作多数。
いつも素敵な作品をありがとうございます。次回作も楽しみにしております。
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