映画『サークル(2015)』ネタバレ感想。二分に一回人が死ぬ、投票系デス・ゲームは地味面白い。

サークル 2015 映画 サスペンス

原題:Circle
2015年の映画
おすすめ度:☆☆☆☆

【一言説明】
デス・ゲームだけど会話劇。

サークル 映画 2015

エマ・ワトソンさんじゃないほうのやつ。
彼女が出てるのは、2017年公開の『ザ・サークル』。
こちらは2015年公開。ザがつかないほうの、ただの『サークル』です。
ややこしいな!

深夜にNetflixをあさっていたら、ふと目に着いた本作。Yahoo!大先生にもレビューが載っておらず、他でもあまり評価は芳しくないようだったのが、なんか気になったんでぽちっと再生。
そしたら存外面白かったのです。

※全然関係ないのですが、ただいま『ワイルド・スピード:スーパーコンボ』がAmazon Prime Videoにて無料配信中なのです。
こんな名作が無料なんて……本当に……いいのかい……?? ってなりました。
Amazon大先生は、ラインナップが神!
↓年会費は五千円弱というコスパの良さ。神!

↓『ワイスピ:スーパーコンボ』の感想はこちら。

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あらすじ

突如、暗い部屋の中で目覚めた50人余の人々。
中央に丸い球があり、その周囲には、円状になった二列の矢印。
そしてさらにその外周を、やはり二列になった50人が、全員立ったまま取り囲んでいるという謎の絵面。
「なんぞこれ……?」
いち早く目を覚ました女性が一歩踏み出そうとすると、突然鳴りだす警告音。
「えっ、何?」
どうやら、それぞれの足元に描かれた赤い円から出てはいけないらしい。

「一体どうなっているの?」
「始まったのさ……アレが」
「アレって?」
「いつものアレ……そう、デス・ゲームがな!」

※以下ネタバレ。未見の方ご注意。

 

 

 

 

感想

というわけで始まったいつものアレ。
突如怪しい場所に集められた人々が、生死をかけて他人と鎬を削る状況に追い込まれるという理不尽の極み。
逆らえば、Death!
逃げ出しても、Death!
全方位、Death!
世界規模で大人気のデス・ゲームがここに開幕!!

 

……したんだけれども、なんというか本作はいたって地味。
とにかく地味。

まず、Yahoo!大先生の映画リストに登録がないうえに、なんとAmazon Video大先生の作品リストで検索しても出て来ないというこの地味さ。
おかしいな……検索ワードが悪いのかな……と思ったんですが、どんなにスクロールしても出て来ない。
そして、あろうことかTSUTAYA大先生にも在庫がない……?
困るんだな!

舞台装置が特殊というか、文で説明してもわかりにくいというか、あらすじの内容で理解していただければいいんですが、正直中央の球を囲んで、人々が二列になってパーヤパーヤといってもわけわからんと思いますので、↓に図解しておきます。サークル 映画
もしくは、『サークル 2015』でgoogle画像検索してくだしゃんせ。

今回のデス・ゲームのルールは以下。

・中央にある球体から出るビームをくらうと死ぬ。
・足元の赤い丸から身体が外に出ると死ぬ(ビーム飛んでくる)。
・球体を囲む三角形の矢印は、それぞれ二列に並んだ円(とそこに立つ人)に対応しており、該当の矢印を選ぶことで、次に死んでほしい人間に投票することができる。
片手を左右に揺らすことで点灯する矢印を移動し、手を下げる、もしくは握ると投票決定となる。
・点灯する矢印は、自分にしか見えない=他人が誰に投票したかはわからない。
自分に投票はできない。
すでに死んだ人間に投票するのは無効。無投票とみなされる。
投票の間隔は二分に一回。二分間無投票の場合はランダムで一人死ぬ。
・時間制限が近づくと、カウント音が鳴る。また、誰かが投票を決定した場合にも、専用の音が鳴る(音は全員に聞こえる)。
・投票数が同数の人間が複数いる場合は、それぞれがライトアップされ、短い時間制限の中で再投票が行われる。
二度目も同数、もしくは無投票となった場合は、候補者は全員死ぬ。
・死体は、どこからともなく現れるアームのようなもので速やかに連れ去られる。見直したら違った。手の甲に埋め込まれたチップか何かが反応し、後方に引っ張られて消えていく仕組みでした。メンゴ。

デス・ゲーム=人が死ぬわけですが、死亡シーンはいたって地味で、球体大先生がビームを放つ → 当たった人が後ろにぶっ倒れて白目をむく、という程度のもの。
なんならビーム音だけがして、本来その人が立っていた場所がぽっかり空白に……という心憎い演出もあり、なるほど、これはデス・ゲームのデスに重きを置いた作品ではなく、いかにして集団心理は働くかという、人々の心の動きに着目している作りのようです。
そのため、球体先生のビームが若干雑というか、その昔ウルトラマンが放っていたスぺシウム光線並に、これ当たって人死ぬんけ? な出来なんですが、ちゃんと死ぬからあらまあ怖い。

そんな感じで絵面は地味ですが、その代わり、ゲームに参加した人々の心理戦がすこぶる面白いのです。

まずは自分たちの置かれた状況と大まかなルールを把握。逃げることは不可能。投票は必ず行う必要がある。
  ↓
じゃあまず年長者から順番に選んでいこう。
  ↓
内一人が52歳と微妙な年齢だったうえに、最近乳がんを克服したばかりとあって、年齢順は非人道的だという意見に。
  ↓
最初に年齢順を主張した若者が暴走。年長者を糾弾し始めたため、「コイツ……」となり、次の投票で選ばれて死ぬ。

他にも、独身者や移民、人種、社会的貢献度、犯罪歴の有無など、次々と判断基準が打ち立てられては、関連した人が死に、その後で自己中心的な主張をし過ぎた人が死ぬ……という繰り返しで人が減っていく。
主張は大事だけれど、発言するとそれだけ目立ってしまうため、次の候補に選ばれる率も高くなるという諸刃の剣。
けれど、一貫して集団の中で、投票しないように守られている存在がある。
それが、妊婦さんと幼い子ども。
どれほど危機的状況に追い込まれても、子どもが優先されるのは共通らしく、物語中盤までは、彼女たちが投票されることはほとんどない。

ところが、ここで足を引っ張ってくるのが、
・自分には投票できない。
・投票が同数だった場合の再投票が、同数もしくは無投票だった場合は、候補者は全員死ぬ。
というルールだ。
これが意味するところは、少女と妊婦さん、二人が最後に残ったところで、どちらかは必ず死ぬ、ということ。
二人とも生き残ることはできないのだから、今のうちにどちらか一方を減らしてあげよう、と言い出す輩が出て来るのだ。

当然、そんなことを言いだす人間は、自分優先。まず二人のうちどちらか一方を消してしまい、その後はもう一方にも死んでもらおう=自分が生き残る道を残そう、という意図がある。
残り十数人になったところで、妊婦さんと少女を殺しても生き残りたい派と、絶対にそんなことはさせない派に分かれてしまい、互いに多数派を維持しようとしのぎを削り始める=めちゃくちゃ面白い。

派手な絵面があるわけでもなく、ただひたすら会話劇に終始する本作。
好きか嫌いかにはっきり分かれそうですし、万人におすすめできるわけではないんですが、個人的にはかなり面白かったです。
要所要所で目立つ人物が違ったり、前半空気だった人が、後半になって突然妊婦さんと少女生存の障害になるところとか、よく作り込まれてるなあ……と感心しきり。
もし未見で気になったよ、という方がいたらぜひ。
見られる媒体は限られているようなんですが、おすすめでございます。

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人物紹介

登場人物はたくさんいますが、ビームでビーコラ死にまくるので、印象深かった人だけチョイスしました。

●青シャツの若者
開幕早々、主導権を握る青年。二分しかない投票間隔に惑わされず、とにかく対話して道を探るべきだと主張したところは立派……だったのだが。
七十歳超と思しき人々に、「そんだけ生きたんだからいいだろ!」と叫ぶ。
年数の問題じゃないんだわーーー。
必死だったのはわかるのだが、その後の暴走がいただけなく、「うへぇ」となったのは視聴者だけではなかった。そのため、初の大多数投票による犠牲者となった。

●金髪のチャラい男性
中盤当たりで脱落。発言力は高かったものの、話すたびに性根の悪さが露呈するという、ク●度が高まるフラグ立て師。
人数がいい感じに減って来る中、「神なんて信じるやつは馬鹿だ!」と主張。その場にいたほぼ全員のヘイトを一身に集め、二分後に死亡が確定。すると、突如隣の金髪美人に絡みだし、「彼女はポル●スターだから、こっちを先に殺しなよ」アピールを開始。
死が決まって破れかぶれだったのはわかるが、見事ク●男からキング・オブ・ク●男にジョブチェンジを果たした
まあ、誰だって死にたくはないっすよね。

●赤ネクタイの彼と、眼鏡の銀行員
非異性愛者と社会貢献度が低い人を排除しようぜと言って散っていった人々。
どちらもそこそこ発言力はあったのだが、生き残れるはずはないよね。とくに赤ネクタイの彼は、16歳の志願者を止めようともしなかったしね。

●16歳の少年
「志願者はいないか?」に志願した少年。まだガキだ、とかばってくれる人もいたのだが、結局大勢の大人を残して犠牲となった。
多分、毎日を悲観するような環境で生きてきたとか、そんな背景がありそうな。

●ご夫婦
ほぼ他人同士が揃うなか、偶然にも夫婦隣り合ってエントリーされたという二人。
ご夫婦のどちらか一方を殺したらかわいそうだよね、という心理が働き、かなり後半まで二人で生き残っていた。
が。
なんと終盤で偽の夫婦だったことが判明。夫婦を装い、同情を買って生き残る作戦だったそうな。一件卑怯だが、頭のいい作戦なのはたしか。
でも、ばれたら終わり → ばれたため、夫役は瞬殺されてしまった。
妻役はその後も生き残っていたが、妊婦さんと少女の多数派対決に巻き込まれ、あえなく玉砕した。

●乳がんを克服した女性と軍人
どちらもかなりのパワーピープルなため、終盤まで生き残り、妊婦さんと少女を守るのに一役買った。
純粋な正義の味方というよりは、台頭してきた反対勢力のゲス度が高かったために、結果としてそうなったという印象。
多数派を求めて争う最中に死亡する。

●牧師さん
職業ゆえに投票し辛かったのか、かなり終盤まで生き残るも、妊婦さんか少女かを選ぶことなどできず、結局自身が犠牲となることで選択を避けた姿が印象的。

●ロン毛の男性
前半も発言こそあったものの、そこまで目立つ存在ではなかったのが、終盤はまさかのラスボスと化す。
妊婦さんと少女守り隊を数でねじ伏せるべく、あの手この手で餌をぶら下げ、迷っている人たちを自分側の軍勢に引き入れようとする。
曰く、「特別な人間などいない」。
道義的立場から見ると悪役だが、デス・ゲームを制覇しようと最後まで戦い続けた人間でもあるわけで、見てるか、宇宙人よと言ってやりたい。

●無口なおじさん
ちらちらと画面に映り続けるも、一切発言がなく、絶妙に目立たないのが功を奏したのか、なんと最後の四人まで生き残ってしまう。
カーディガンを着た青年の証言から、ゲーム中、唯一無投票を貫いた人物であることが判明する。
生き残ろうとあがく者がいる一方で、何もしないというその姿こそが、ゲームに対する最大の抗議になるという、見上げた人物。
最後の四人まで生き残り、「本当にいいの……?」という妊婦さんの問を、否定も肯定もせず、ただ静かに散っていった。あっぱれ。

●少女
妊婦さんの中の胎児を除けば、最年少の女の子。
この非道なデス・ゲームになんら対抗する術を持たず、自身が選ばれたときは泣いて怯えるのみという、ごく普通の反応を示す。
だが最後に選択を迫られた際は、まだ見ぬ赤子に未来を残そうと、自分が犠牲になる道を選んだ。
なんて涙ぐましい……と思っていたら、あんなことになったがな!

●妊婦さん
今の所はシングルマザーになる予定の、若い妊婦さん。
お腹の子供を守るべく、時に非道な決断を迫られる。
彼女が何よりもすごいのは、臨月も近かろうという大きさの胎児を抱え、実に90分近くも立ち続けたことだ。
正直、彼女が途中でぶっ倒れるのではとハラハラしたが、無事に終盤まで生き残った。
少女の犠牲により、めでたく彼女が生還する……のかと思いきや。

●カーディガンを着た青年
若いあんちゃん。
的確な判断と真っ当な道義心を持ち、積極的に発言する=そこそこ目立つも、最後まで生き残ると言うミラクルな青年。軍人や、がん克服の女性が倒れる中、妊婦さんと少女を守ろうと、ロン毛と戦い続ける。
無口なおじさんが無投票を貫いていることを見抜き、見事ロン毛を罠にかけて撃破。
少女、妊婦さん、彼の三人が残るところとなり、他二人のどちらかに生存権を当然譲るのだろう……と思ったのだが。

ところがどっこい。

「どちらを残すか、二人が決めるんだ」という発言=自分が生きてるターンのうちに決断を促す。
……あれ、なんだか嫌な予感が。
しかも、犠牲になると決めた少女に、「一緒に?」と共に円の外に出ることを提案。
少女の足が外に出て、妊婦さんがほっとした次の瞬間。
制限時間直前に、妊婦さんに投票しやがったのです。

やると思ってた!
ぜーーーったい、やると思ってた!

結果、少女と妊婦さんは死亡。青年だけが生き残る。
この青年、頭の回転は相当早いらしく、要所要所でどうするのが最良の選択なのかを思案するシーンが挟まれる。
それはすべて少女たちのため。ではなく。
もちろん自分が生き残るためだった……というオチ。

しかも一人生き残ったはずが、なぜか終了する気配のないデス・ゲーム。
なんでだ? と首をひねっていると、なんと勝負は死んだ妊婦さんの腹=胎児との一騎打ちに持ち込まれる。
もちろん、胎児自身が投票などできるはずもない。
さすがに生まれてもない赤ん坊相手に非道にはなれないか?
  ↓
そんなことはなかった。
胎児を犠牲にした青年は地球へと生還し、同じくデス・ゲームを生き残った=選定された人々(子供や妊婦さんが多いが、中には中年や成人の男女も混じっている)とともに、空に浮かぶ宇宙船を眺めて物語は終了するのだった。

この結末は賛否が分かれると思いますが、個人的には、頭脳と運をフルに使って生き残った青年があっぱれだと感じました。
少女と妊婦さんは気の毒だったけれど、守られることに安堵しないで、もっと頭を使うべきだったのかなーと。
まあ、普通は子供を犠牲にしないけれども。
赤ちゃんはなおさらしないけれども。

●宇宙人
明らかに地球よりも進んだテクノロジー&「なんか空に吸い込まれた気がする」という発言から、多分これは宇宙人が主催するデス・ゲームで、青年の言う通り、人類の選定が行われとるんだろうと思っていたら、そのとおりだった。
個人的には、宇宙人の正体は別次元から来た未来の地球人で、人口増加で滅亡する地球の未来を防ぐべく、選定を開始した……だと思いたい。だってゲームのシステムに性格の悪さがにじみ出ている。こんなもん考えるの、人類を除いて他にいるのか。

●監督
アーロン・ハン氏。
とてもおもしろい作品なので、ぜひ色々なところで配信となってもらいたいですね。ありがとうございます。

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