TVドラマ『ドラキュラ伯爵』(Netflix)のネタバレ感想。稀代の不死者についての新解釈を提示する、めちゃくちゃ面白いシリーズでした。

ドラキュラ伯爵 Netflix 海外ドラマ

原題:Dracula
2020年のTVシリーズ
おすすめ度:☆☆☆☆☆
グロ度:☆☆☆

【一言説明】
吸血鬼ドラキュラの新解釈。

ドラキュラ伯爵  Netflix ドラマ

Netflixにて1月1日より配信開始となった『吸血鬼ドラキュラ』。年明け早々吸血鬼とは……やるね! とサムズアップ。
なんと英国の国営放送局BBCが製作。しかも制作陣には名作ドラマ『SHERLOCK』に関わった人々が名を連ねているというから、大注目。
この21世紀の世に、今更吸血鬼かよ……と言うなかれ。ゾンビ共々、世代を超えて愛されるクリーチャーの筆頭たるが吸血鬼。手を変え品を変え、媒体を変え、やりつくしたと言われてもなお作られ続ける吸血鬼もの。

みんな吸血鬼が大好きなのさ!

タイトル・ロールのドラキュラ伯爵に扮するのは、主に本国の舞台で活躍するクレス・バング氏。なんと身長190㎝以上という長身を引っ提げ、稀代の不死者をグンバツの存在感で演じておられます。

※以下ネタバレかつ若干のグロテスクな描写があるため注意。ブラム・ストーカー氏の原作『吸血鬼ドラキュラ』についても盛大にネタバレしております。

 

 

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原作

今更説明は不要かと思いますが、本作はブラム・ストーカー氏の小説『吸血鬼ドラキュラ』を原作としています。

簡単な流れとしては、

1:トランシルヴァニアの古城に、英国人弁護士のジョナサン・ハーカーが招待される。伯爵はロンドンに屋敷を買いたいらしい。そのためにはね、手続きとかちゃんとしなくちゃね。
2:古城の主ドラキュラ伯爵は吸血鬼だった。ひゃー。
3:命からがら逃げだしたジョナサンだったが、恐怖で病む。ひでー目に遭ったぜ!
4:英国に棺桶の積まれた謎の船が流れ着く。もちろん中には伯爵ダヨ。渡英成功。
5:ジョナサンの婚約者ミナの友人ルーシーが吸血される。ちなみにミナとルーシーは超器量良しでメンズのアイドル。ルーシーには求婚者多数。
6:ルーシーがおかしい。ヴァン・ヘルシング教授召喚。
 
教授:「多分これ吸血鬼のせいだで!」
7:教授、血液型おかまいなしにルーシーに複数人から輸血をする。
 でもって、吸血鬼の嫌いなものでルーシーの周囲を固める。
8:ルーシー母、「にんにく臭ぇ」とルーシーの首のにんにくを捨てる。
9:ルーシーさらに吸血されて死亡。吸血鬼化。
10:求婚者軍団、涙を呑んでルーシーを倒す。伯爵許すまじ。
11:正気に戻ったジョナサン合流。だがミナが吸血され、額かどっかに呪いの印が浮かび上がる。
12:伯爵は分が悪いと祖国に逃亡。追いかける教授と愉快な仲間たち。
13:最 終 決 戦。

……てな感じです。
まだ血液型の知識のない時代とはいえ、ルーシーが死んだのは教授が輸血したせいでは……などのツッコみどころ満載な、けれど超面白い小説。
ドラキュラと並んで有名なヴァン・ヘルシング教授が、奇奇怪怪で大層な好人物。彼が登場してからが、ようやく本番という感じです。
作中で説明された吸血鬼の特徴は大体以下の通り。

・太陽が苦手。浴びると死ぬ。
・十字架やにんにく、聖水や聖餅なども苦手。身に着ければ吸血されるのを防げる。
・殺すには、心臓に杭を打ち込んで首をはねるべし。
・蝙蝠に姿を変えられる。
・昼間は棺桶の中で寝てる(中には故郷の土が詰まってる)。
・招かれない家には入れない。
・鏡に姿が映らない。

一見無敵のパワーがあるように見えて、色々と制約が多い吸血鬼。
この魅力的な原作と吸血鬼を、果たして今回のドラマ版ではどのように料理するのかという点にも注目したいと思います。

では、以下話ごとのあらすじと感想です。

第一話:怪物の定め

原題:The rules of the Beast
ざっくり説明:ドラキュラ城に滞在したジョナサン・ハーカーの顛末。

あらすじ

この城は、何かがおかしい。
城主ドラキュラ伯爵に請われ、一晩滞在するつもりだった英国人弁護士ジョナサン・ハーカー
だが一度城に入ってみれば、そこはまるで迷路のように入り組んだ作り。日の光も容易には届かず、使用人の姿も見当たらない。しかも依頼人は、一晩どころか一か月は滞在してほしいという。
冗談ではない。こんな気持ちの悪い場所、明日にでも暇乞いをすべきだ。

ところがその晩、寝室の窓に謎のメッセージが刻み込まれる。
『help us』=私たちを助けて、と。
誰か――おそらくは無力な女性が、城の中で助けを待っている……。
そんな確信に囚われたジョナサンは、恐怖を抑えて古城を探検する。
だが毎晩見る奇妙な夢とともに、日増しに体力は衰えていく。その替わりに、初めは老人だった伯爵が、何故か次第に若返っていくように見える。
やはりこの城は、何かがおかしい――。

感想

はよ逃げろや!
なんかおかしいなあ、変だなあ、とか言っとらんで、さっさと逃げろやジョナサン。思わずそんな叫びを上げたくなる第一話。
物語は、丸坊主姿で半死人のようなジョナサンの姿から始まります。
保護されたという修道院の一室に座り、突如現れたぶしつけなシスターと、もう一人の若いシスターから事情聴取を受ける彼。ぽつりぽつりと語る内容から、徐々にドラキュラ城の滞在の様子が明らかになっていく。

到着時は、意気揚々とした健康そうな美丈夫だったジョナサン。反対に、出迎えた伯爵は白髪で足元もおぼつかなさそうな弱り具合。
けれど滞在が長引くにつれ、互いの姿が反転していく。

「伯爵と性行為をしたの?」
序盤でとんでもない質問をするシスター。
おい、何を言い出すんだ。
「あなたは何かに感染しているように見えるから」
それにしたって、極論に飛び過ぎではあるまいか……と思えるのだが、なんとジョナサンは「あー、そう言われてみれば……」といった具合に、毎晩夢の中で婚約者のミーナとほにゃらららをしていたことを思い出す。
だが実は、これは伯爵が吸血する際に見せていた幻覚で、実際には首筋に噛みつかれ、血をむさぼるように飲まれていたのだ。
だからシスターの言うように、直接的行為に及んだわけではない。ではないのだが、吸血鬼における吸血行為とは、純粋な食事という意味以外に、シスターの言う意味合いも含むわけで。そうなるとやっぱりアハーン☆な雰囲気を醸し出すセクスィ行為ってことになり、最初のじいちゃん伯爵はともかく、後の美丈夫伯爵とジョナサンなら、ありかなしかで言えば完全にありだなという結論に至るわけでして。
やってることは、ただ血を飲んでるだけなんですけどね。そこに美学があるというか、お耽美というか、吸血鬼もののお約束ってやつです。

そんなわけで、毎晩ジョナサンのフレッシュ血液を摂取することにより、次第に若返っていくドラキュラ伯爵。
中盤あたりで完全体になった伯爵が登場するのだが、これがまあとんでもなくセクスィーなのだ。おそらく歴代伯爵の中で三本の指に入るくらい、超渋イケメン。
だが、この時点ではそのセクスィーさは負の方向に働く。何せ彼に対抗するジョナサン君が、正義感に溢れたキラッキラ青年だ。故に、彼を陥れようとする伯爵には自然とマイナスイメージを抱きやすい。

前半の肝は、ジョナサンがどうやって城から逃げ出すことができたのかという点にある。
毎晩吸血され、すっかり弱り果てたジョナサンは、伯爵に城の最上階まで連れていかれる。そこで死の恐怖と闘うジョナサン。
横たわる彼を前に、伯爵は意気揚々と語る。君のおかげで英国に行ける。君の婚約者や家族、果ては英国中の人間を食い漁ってやる、と。
その言葉を聞きつつも、伯爵にすがるジョナサン。
「お願いだ、伯爵。助けてくれ。私は誓う。私は誓うから……」
それまでシスターに対し、一貫して伯爵を悪魔だと非難してきたジョナサンが、実は伯爵の手下に成り下がったからこそ城を脱出できたのではないか? という疑いが提示されるシーン。
おいおい、ジョナサン。お前にはがっかりしたぜ……と思ってからの。

「すべてをかけて、お前のしようとすることを阻止してやる」発言。

ジョナサーーーン!!
めっちゃ男前! 最高じゃねーか、ジョナサン!

結局、死の恐怖を克服したジョナサンは、高潔なまま伯爵に殺される → すぐさま不死者として復活。伯爵の隙をついて川に飛び降り、ハンガリーまで流されて修道院に保護される、という流れ。
半分死人っぽいなと思ってはいたが、実は本当に死んでいたという衝撃の事実。
ずいぶんな変化球できたなあ……と感心したんですが、さらなる変化球が後半に待っていた。

花嫁となるべきジョナサンを求め、狼に扮してハンガリーくんだりまで追いかけて来た伯爵。
待ち受けていたのは、件のぶしつけなシスター。背後にずらりと並ぶ修道女仲間たち。
「正体はばれているのよ。姿を見せなさい、吸血鬼め」
やたら挑発的なシスターに促され、狼の肉体を脱ぎ捨て、血濡れの真っ裸姿を披露するドラキュラ伯爵。
禍々しさとセクスィさが最高潮。
ジョナサンの時には嫌悪感が勝っていた伯爵が、シスターを相手取った途端、二人の間にびしばしと魅惑的空気をかもし始めるもんだからびっくりしました。
ちょっと待った。このシスター、ただ物ではない雰囲気はのっけからあったわけだが?
シスターの血を舐めとり、そこに刻まれた情報を吸収する伯爵。
「出身はハンガリーではないな? ……オランダ?
オランダ? 
おい……おいおい!

「そうだろう? アガサ……アガサ・ヴァン・ヘルシング

ヴァン・ヘルシングーーーーッ!
ヴァーーン・ヘルシーーーング!!

ここで来たか!
てっきり教授の登場は英国に渡ってからだと思っていたので、意表を突かれました。
昨今の女性大活躍の流れにあって、予想してしかるべしだったヴァン・ヘルシング=女性。
道理でね!
二人の間に流れる空気がハンパないわけですね!
修道女ヴァン・ヘルシングvs真っ裸のドラキュラ伯爵という絵面を見て、確信した次第であります。
このシリーズは最高だと。

二人の初回の対決はアガサ優位にて終了。
けれどその後、不死者であるジョナサンが自殺を試みるも失敗。「不死者は自殺できないが、私なら君を殺せるから招き入れてちょ」という伯爵の甘言に惑わされ、修道院内に彼を引き入れてしまったジョナサン。
始まる大虐殺。
地下に避難してきたアガサと、シスターに扮していたジョナサンの婚約者ミナ。
そこにジョナサンの皮を被った伯爵がやって来て、まんまと罠にはまったミナが彼を招き入れ、女性二人の悲鳴が響いて一話終了……という流れでした。

Netflixに加入して驚いたのは、彼らのとにかく続きを見させようとする姿勢。
放っておくと「次の話を再生」を選択しなくても自動で始まるし、エピソードの画面にしておくと、「再生」と選択しなくても何故か勝手に始まるし、さてはネトフリは人類を映像漬けにさせようとする宇宙人の手下だなと思ってしまうくらい、容赦なく次行ってみよーな精神に溢れている模様です。
そんなん言われなくても、続きは見るから安心してくれたまえ!

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人物紹介

●ドラキュラ伯爵
トランシルヴァニアの古城に暮らす独居老人。めちゃんこ広くて入り組んだ城内には使用人がいないらしく、食事の用意などはいそいそと城主たる彼が行っている。じいちゃんだがフットワークが軽い。
英国人のジョナサンを呼び寄せ、「英語の勉強したいから、一か月滞在してちょ」と強制依頼。「私には夜しか会えないからね」と言い残し、言葉通り昼は姿を消している……と思ったら、地下にある石の棺の中で眠っており、ジョナサンを仰天させる。
寝辛そう? 大丈夫、中は土の布団でふかふかダヨ!

一か月間、毎晩のようにジョナサンからちょこちょこ吸血しており、次第に容姿が若返っていく。
死の恐怖を克服し、しかも自身と同じように自我を保った不死者となったジョナサンに大歓喜。
「君は最高の花嫁になる」
と太鼓判を押した途端、ジョナサンの首にかけられた十字架に反射した太陽光を浴びて悶絶。その隙に花嫁候補が川に飛び降りて消えてしまったため、トランシルヴァニアからハンガリーの修道院まで、ずんどこ求婚の旅に出る。
ところが、いざ修道院にたどり着いてみれば、何やらライバル感ぷんぷんの曲者シスターに阻まれ、しかもいけすかない修道女軍団は裸体まで披露して誘惑したのに誰一人「オッケーよ☆」の合図を出さなかったため、やっぱり修道女は●●●●だな! という結論に至る。
そして目的がジョナサン → アガサへとすり替わる
ジョナサンをだまくらかして院内に侵入 → 殺戮 → ジョナサンの皮を被ってミナの前に現れ、敷き詰められた聖餅の結界を越える、というファインプレーを見せる。
中でも先ほど冷たくされた修道女たちへの当たりは強く、「狼と私と、どちらがいいかは君たちが選びたまえ。私のほうが若干優しいぞ」とドSの極みみたいな態度に出るからこの野郎。
アガサとミナに襲い掛かる……のか? というところで第二話へ。

●アガサ・ヴァン・ヘルシング
「伯爵とうんぬん」という爆弾発言を最初にかまし、シスターのくせに神様信じてなかったりと、どこか蓮っ葉な態度を見せる女性。
その正体はヴァン・ヘルシング。本作における対伯爵の最終兵器。
不気味な古城に閉じ込められ、とんでも怖い目に遭ったジョナサンを前にしても、同情より興味のほうが勝っていたり、自身の血の付いたナイフを無作法に舐める伯爵を喜々として観察したりと若干サイコパス気味さすが『シャーロック』の制作陣。
満を持して現れた伯爵を前に、吸血鬼に関する数々の伝承を検証し、それが真実と知るや、「本当だわ! 本当だったわ!」と大歓喜する姿に伯爵だけでなく視聴してるこっちの精神もかなりピリついた。これ絶対後でひどい目に遭うやつ → 遭った
生存が危ぶまれたところで、第二話へ。
というか、自身が散々挑発したせいで修道女仲間がひでー目に遭っているのに、さっさと一人だけ地下に逃げ込み、「罪滅ぼしに、悲鳴に耳を背けることなく聞くことにシタヨ」と言われても困る

●ジョナサン・ハーカー
正義感あふれる英国紳士。第二話にて伯爵が「見せかけでない紳士は存在しない」発言をするのだが、一緒にすんなや。ジョナサンこそ紳士というべき。
城で過ごす最初の晩に、不幸にも窓に「助けて」の文字が刻み込まれたことから、閉じ込められた女性を救おうと滞在を引き延ばし、それが仇となった。
正義感あふれる姿勢は結構なことだが、地上数十メートルの絶壁に、外からガラスをひっかく女性がただの人間でないことはわかり切っていると思うのだが、さっさと逃げたらよかったんじゃないすかね。

瀕死の状態になり、恐怖から伯爵に慈悲を請うも、寸前で思いとどまる。
「お前を必ず阻止する」はマジで名シーン。
だがその後、アガサの言を借りれば『二人の男女の名前を連呼する水死体』としてハンガリーに流れ着いたそうで、怖ッ。絶対拾いたくないぞ、そんなもん。
しかもその後は伯爵を招き入れたばかりか、●を●●されるという恐ろしくエグイ目に遭う。
ジョナサンの目について、散々「青い目」だと言及されていたので何かあるんだろうと思っていたが、そうですかー、そうきましたかー。

●ミナ
ジョナサンの美しき婚約者。英国で彼の帰りを待っていると思いきや、上述の水死体が連呼した名前により身元が判明。アガサがこっそり呼び寄せており、若いシスターに扮して冒頭からジョナサンの話を聞き取る場に居合わせていた。
不死者となった婚約者が、自分の顔すら忘れていたことに涙。けれども気丈に振舞い、生前となんら変わらない……と愛を誓うも、結局血の誘惑に負けそうになったジョナサンは自害。その後はアガサとともに伯爵の襲撃を受け、生死不明となった。
ジョナサンが日々思いをはせるのも納得なめんこい女子。

●不死者
伯爵の居城の地下深く、秘密の部屋で箱詰めになっている不死者。中国雑技団も真っ青な、雑な詰め込まれっぷりでヒェッ。
伯爵に吸血されて死んだものは、一定の確率で死ぬに死ねない不死者となるそうな。だが全員が伯爵のようになれるわけでもなく、大半は死の苦痛で自我を失い、ただのさまよえる死肉と化す。
こんな最期はいやだー。

●修道女たち
アガサがジョナサンを匿ったため、ひんでー目に遭った人たち。
信仰に守られているから闇の存在は手が出せない……かと思いきや、十字架の影響を受けるのは上級存在である伯爵だけであり、手下のオオカミ軍団はそんなの知ったこっちゃねえぜ! とばかりに襲ってきた。マジかよ。
若い女性諸君はこれを見て、男=オオカミだという昔の少女漫画みたいな教訓を胸に刻……まないか。まないな。

●血
吸血すると、同時に相手の技能(言語能力など)や記憶を吸収することができる模様。
すごく便利そうだと思いがちだが、摂取する相手を選ばないと、逆に能力が低くなったりもするので注意が必要。
伯爵曰く「アガサは特別」だそうです。なんだその胸キュン発言に見せかけたエグ味は。やはり二人は永遠のライバルなんですな。

●蠅
不死者の周囲でぶんぶん飛ぶ。死者の周囲でもぶんぶん飛ぶ。
でも不潔な生者の周囲でもぶんぶん飛ぶから、あんま指標にはならんかもしれん。

第二話:血塗られた航海

原題:Blood Vessel
ざっくり説明:密室(船)を舞台に繰り広げられる探偵(伯爵)劇=そして誰もいなくなった。

あらすじ

デメテル号に集められた七人の男女
英国を目指す貨物船の料理人は、乗客の顔ぶれを見て疑問を抱く。
いつもより、人数が多い――。
科学者とその娘、公爵夫人、富豪とその妻と従者、そして伯爵。
様々な人種を乗せ、船は港を出発する。
順調に行くかに見えた航海。
だが、異変はその晩に起きた。乗客と船員の一人が、忽然と姿を消したのだ……。

感想

おまわりさん、こいつです。

なんかこう、推理物っぽく始まりそうで、一部パートさえ映さなければ推理物っぽく成り立ったような気がしないでもない第二話。
でも乗客に伯爵がいる時点で、こいつですやん。
というか、犯行シーンを隠そうともしないしな!
なのになぜか雰囲気は密室推理物っぽく成り立っているので可笑しくなる。さすが数々の名作ミステリドラマを生んできたBBC製作といったところでしょうか。

一話と違って舞台は全編通して船の上。そこで乗客に紛れた伯爵が次々と獲物に手をかけ、一人また一人と人数が減っていく。
当然、恐怖におののく人々。途中で別の港に寄るべきだとか、船を捨てて救命ボートで逃げようとか、色々な意見が出るものの、一人の頼りがいのある人物が探偵役を買って出、そのまま英国を目指して進むことになる。
その探偵役というのが、伯爵
おまえかよ。
なんでおまえだよ。犯人と探偵役が一緒ってなんだよ。陳述トリックでもないし、反則じゃないすか。

……と神視点に立つ画面の向こう側からならツッコめるが、実際には伯爵は身分ある中年男性。しかも一見包容力のある美男子。そりゃーまあ発言力があって、みんなをまとめる役目になるのも仕方ないなって思えますよね。犯人だけどね。
余裕しゃくしゃくと乗客の裏をかき、油断した人々を食い漁っては死体を海に投げ込んでいく伯爵。
そんな伯爵無双の裏側で、もう一つの流れが進行していく。
それが、第一話の最後で生存が危ぶまれたアガサ・ヴァン・ヘルシングと伯爵との会話劇。
前話での殺伐としたやり取りとは一転、冒頭で共に現れたアガサと伯爵は何故か和やかな雰囲気。どこかの建物の一室にて、突如チェスを指し始める。
「船に積んだ土の入った箱というのは、もちろんあなたの寝床よね?」
「その通りだ、アガサ」
どうやらチェスをしながら、伯爵がデメテル号で起こった出来事を話して聞かせている様子。
時系列はどうなってるんだ? 一話の後で何が起こったんだ? 
もしやアガサはすでに死んでいるのか? 伯爵に吸血され、不死者の仲間になったのか?
そんな疑問を発しつつ、物語は進んでいく。

そしてどうやら9号室に、人ではない何者かが乗り込んでいるらしいと分かる。ドアには蠅が張り付き、ほんの少し隙間が空いただけでも、中からはあふれ出るような腐敗臭がしてくる。
船長曰く、中には病人が乘っているのだという。
9号室は伯爵の部屋なのか? それとも、中には別の化け物が乘っているのか? と数々の疑問を投げかけてからの、どんでん返し。

実は、9号室の乗客というのはアガサだった。

一話の最後で、ミナを逃がす代わりに自らを差し出したアガサ。伯爵に吸血され、ジョナサンと同じように衰弱していったところを、船に乗せられて運ばれていたというのが真相。
ジョナサンが吸血の際にミナの幻覚を見たように、アガサもまた伯爵とチェスを指す幻を見せられていたのだった。
  ↓
その後、船の中で目を覚ましたアガサ。乗客たちに犯人として処刑されそうになるも、皆の前で伯爵の本性を暴き、彼が吸血鬼だと暴露。乗員vs伯爵の構図を作る。
  ↓
運よく伯爵を燃やすことに成功。吸血鬼ざまーみろと勝利を喜ぶも、吸血の影響で死にかけているアガサは船を爆破して一緒に沈むことを提案。船長も運命を共にする決意をしたところに、実は生きていた伯爵登場。船長を襲う。
  ↓
アガサが伯爵の気を引いているうちに、瀕死の船長が船を爆破。アガサは沈み、伯爵は英国を前にして故郷の土の入った棺桶に入らざるを得ず、海底に沈む。
  ↓
ようやく夜になったから、どれ外に出てみよーと海岸に上陸。
現代の装備をした機動隊らしき集団に囲まれる。
  ↓
現代の服装をしたアガサそっくりの女性が登場。
「ドラキュラ伯爵ね? 現代へようこそ」
ぽかーんとして、次回へ。

……という、最高にどういうこっちゃな結末で終わる第二話。いきなり時代は123年後にぶっ飛んだらしい。
まあ伯爵は不死者だから、寝ていたら百年以上経ってましたでもいいとして、アガサが出てくるのはどういうこっちゃ? な「???」展開。
Netflixに勧められるでもなく、即座に「続きを再生」ボタンを押すわいな、もちろん。

結末がとんでも展開でしたが、一話と三話のつなぎ……というわけでもなく、正統派ミステリっぽい雰囲気満載、伯爵の節操もない残虐吸血行為満載、アガサの機転を利かせて伯爵の正体を暴くシーンなど見どころ満載で、とにかく面白い二話目でした。
この話の教訓は何かというと、乗客に吸血鬼を迎えるな、ですかね。一緒に船に乘るとこういうことになるんだネ!

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人物紹介

●ドラキュラ伯爵
犯人にして探偵。ラスボスにして主役というイケ渋吸血鬼。
『バラエル』という偽名を使い、船に乗る乗客を選抜。英国での社会生活の予行演習をしつつ、選び抜かれた人々の血を吸ってスキルと食欲を満たしていく。
その節操のない食欲っぷりから、アガサにしゃん呼ばわりされてしまう
言われてみれば、英国到着まで四週間近くかかるそうなので、一晩に二人ペースとかちょっとがっつきすぎではなかろうか。備蓄=アガサがいるからいいという認識なのか? 食欲旺盛男児め。

一人また一人と減っていく事態に怯える人々を横目に、意気揚々と探偵ごっこを披露。アガサに正体を暴かれたときも、「見事な探偵役だっただろう」と一人悦に入るほど楽しかった様子。
だがその報復とばかりに全身に火をつけられ、苦悶の末に海に落下。めでたく怪物は倒された……かに見えたが、「船の底を通って反対側から上って来たヨ」という離れ業を披露し、一週間程度船内に潜伏していた模様。その際は特に食事もとらなかったようなので、喰わなくてもいけるんじゃねーか。
というか、吸血鬼は普通の食事は喉を通らないはずなのに、頻繁に食堂に姿を現して不審に思われなかったのか謎。
ちょっとだけ海底で眠っていたら実は123年も経っていたという浦島状態に陥る。

●アガサ・ヴァン・ヘルシング
前話で生存が危ぶまれていたが、伯爵にとらえられ、非常食としてちまちまと血液を摂取されていた模様。
前半は伯爵の語りを聞く部外者の立ち位置、9号室の乗客と判明してからは、衰弱した身体に鞭打っての大活躍を見せる。突然の登場にも関わらず、即座にその場を掌握、乗員に的確な指示を飛ばすその姿は最高にかっけー姉御。

吸血されたことで、自身が呪いに侵されていることを実感。船と共に燃え、すべてを終わらせようとしたが、結局生きていた伯爵と対決することになる。
何故伯爵は十字架を恐れるのか?
何度も彼女が提示する疑問が、本シリーズの肝となる。
確かにこれほど無類の強さを誇る伯爵が、ただの指で作った十字架を恐れたり、聖書の頁とはいえ、ただの紙切れ一枚を踏み越えられることができなかったりと、不可解な点が多い。
聖書を恐れるなら、そもそも第一話の時点で、招かれたとはいえ修道院内に足を踏み入れることは無理なのでは……?
「教会の圧政を恐れた農民の血を吸い過ぎたせいだ」と伯爵は説明したが、納得した様子のないアガサ。
だが結局、彼が何を恐れているのかはわからないまま、彼女は水底へと沈んでしまった。

●乗客たち
互いに面識も接点もなかったはずだったが、実は全員が『バラエル』という後援者に呼び寄せられ、船に乗ったことが判明する。
『バラエル』はルーマニア語で『龍』=ドラキュラの語源である『ドラクル』(ラテン語)と同義。つまり正体はドラキュラ伯爵である……ということをアガサが暴く。
各人の顛末は以下。

・公爵夫人:実は若いころ、舞踏会で伯爵と遭遇しており、過去を思い出したその晩に吸血されて死亡。
・富豪:妻の財産によって富豪となった男性。不死を得ようと伯爵に協力したところ、そんな望みなど心底どうでもよかった伯爵によって無残にむさぼり喰われて死亡。アフォ。
・富豪の妻:若くてかわいい女性。だが伯爵の興味はその財産のみだったらしく、二晩目に優しく吸血されて死亡。
・富豪の従者:実は富豪の恋人であることが判明。恋人を殺された怒りで、聖書の円を自ら乗り越えて伯爵を銃撃。だが効かぬとばかりに食われて死亡。だからやめろと言ったのに。
・科学者とその娘:人妻が吸血された場面を目撃した娘。だが口がきけないばかりに真相を話すことができず、暴走した富豪に人質に取られそうになった際に自ら毒を煽って死を選ぶ。娘の死に怒った科学者は富豪に掴みかかるも、撃たれて死亡。二人とも吸血鬼の手にかからなかったことが幸いか。

……というわけで、結局は伯爵を除く全員が死亡し、デメテル号は亡骸の船となって終わった。

●乗員たち
迷信深い乗組員がいたおかげで、幾人かはボートに乗って難を逃れた……かに思えたが、たしか途中で「逃げたやつは全員食った」みたいな発言を伯爵がしていたような気がするのであはん。
ドイツ語のなまりを手に入れたくて食われた人や、文字通り肉塊になるまで食い散らかされた人なんかがいて不憫。なんてお行儀の悪い伯爵でしょう。もっときれいに喰えや。

最終的には、ピョートルに成りすました新人と料理人の二人のみが生き残った。
三話を見るに、アガサと船長の意思を尊重し、デメテル号が沈んだ本当の場所は洩らさなかった模様。グッジョブ。
そして右の首筋をがっつり持っていたれた挙句、唐突にぱちっと目を覚ます船長にかなりビビる。死人かと思ったじゃん。やめーや。
だがかなりの重傷にも関わらず、船を自ら爆破し、運命を共にしたその姿はあっぱれの一言。

●ピョートル
デメテル号に乗り込むはずだった甲板員。冒頭で遺体が登場。だが不死者の呪いにかかったらしく、実の母親の手で心臓に杭を打たれた。
もちろん彼を不死者にしたのは伯爵。「お腹空いてたから食べちゃった☆」みたいな発言を後にアガサにかます。おまえかよ。

第三話:闇の羅針盤

原題:The Dark Compass
ざっくり説明:現代の吸血鬼――伯爵の真に恐れるものとは。

あらすじ

目覚めたら現代。
123年間も眠っていたわりに、カメラだのスマホだの、順応性が馬鹿高いというハイスペックぶりを披露するドラキュラ伯爵。
「飛行機サイコー! 出会い系サイコー!」
古臭いマントからスーツへと鞍替えし、すっかり21世紀を満喫する伯爵の元に、かつての宿敵にうり二つの女性、ゾーイ・ヴァン・ヘルシングがやって来る。
「アガサは私の父の大伯母よ」
「なるほど……同じ血脈か」
早速ゾーイの味見をしようと牙をむく伯爵だったが……。

感想

文字通り、21世紀によみがえったドラキュラ伯爵。
こういう唐突に時代が吹っ飛ぶ系の展開は、面白いか興ざめするかの二択なんですが、今回はめっちゃ面白い方向に転がったのでグッジョブ。
なんと伯爵、二話の最後で棺桶に入って眠りについたまま、123年間も海底にいた模様。
何故か? → 誰も起こしてくれなかったカラダヨ!
悲しいかな、吸血鬼の性というやつで、故郷の土の中でしか眠れない体質の伯爵。デメテル号は英国の海岸を目前にして沈んでしまったため、さしもの伯爵も海底から棺桶を引っ張って上陸するのは不可能で、仕方なく海の底で眠り続けていたそうな。
それをわざわざたたき起こしたのが、三話にて初登場する組織、ジョナサン・ハーカー財団。
アガサによって逃がしてもらえたミナが、亡きジョナサンの意志を汲んで対不死者研究組織として立ち上げたのが、本財団。123年の間、デメテル号の残骸を探し、伯爵の行方を追っていたという。

英国の海岸で彼らに包囲された伯爵は、隙をついて逃亡。だが結局食事に寄った民家にてとっ捕まってしまう。
  ↓
太陽光の差し込む牢獄に入れられる伯爵。
ゾーイ「あなたの謎を解明してみせるわ」
  ↓
突如現れた弁護士「人権侵害です。伯爵を自由の身にしてもらいます」
  ↓
法の前にぐうの音も出ない財団。伯爵解放。マジカヨ。

ぽかーんな流れで、なんと無罪放免、自由の身になった伯爵。
弁護士曰く、「五百年生きていることは違法ではない。だが、身柄を拘束するのは違法だ」とのこと。
あれですね。この弁護士、百年前にジョナサンを城に送り込んだ上司の子孫的なやつですね。やだもう頭でっかち。

そんなこんなで、常人には理解しがたい理屈から解放され、遣りたい放題の伯爵。出会い系のマッチングアプリを使い、有能そうな血を持つ人々を夜な夜なむさぼり食っていた。
  ↓
ゾーイと同じハーカー財団に所属するジャック・セワード。そのガールフレンドのルーシーに、かつて五百年間味わったことのない吸引力を感じる伯爵。
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何度もルーシーとの逢瀬を重ね、ちょこちょこと吸血。やがて衰弱死したルーシー。
火葬はやめろと言ったのに、結局火葬されて意識のあるまま焼かれてしまう
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焼けただれた恐ろしい姿で復活したルーシー。
伯爵宅に集合したゾーイとジャックの前に登場。そこで初めて自身のあり様を目にし、ジャックに死を請う。
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涙ながらにルーシーに杭を刺し、灰と化す彼女。
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ジャック帰宅。
伯爵とゾーイ、最終決戦。

三話にして登場の、ルーシー・ウェステンラとジャック・セワード。ルーシーは奔放かつめちゃんこかわゆい女子で、ジャックを夢中にさせながらも、その友人のアーサーと婚約してしまったりと、そのあたりは原作通り。

そんな彼女を何故伯爵が選んだのか?
何故ルーシーだけはすぐに殺さず、何度も彼女の血を大切に吸ったのか?

一話にてアガサが提示し、その後もずっと彼女とゾーイが問い続けた伯爵の謎――『何故十字架と太陽を恐れるのか』がいよいよ明かされます。

何故ルーシーが特別なのか?
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彼女は死を恐れていなかった
むしろ死に憧れていた。
若さと美しさに溢れ、まさに無敵状態だったルーシー。怖いものなしのその精神は血液の味にも現れ、伯爵は感動する。

何故なら、伯爵は死に怯えていたから。
五百年生きた稀代の不死者は、表現を変えれば『五百年死に損なった者』であり、彼は自身の家族のように、戦場で勇敢に死ぬことができない臆病者だった。
長く生きれば生きるほど、遠ざけていた『死』はいよいよ恐ろしさを増し、だからこそ彼は死の恐怖を克服したジョナサンや、それに憧れるルーシーに惹かれ、花嫁として手元に置こうとした。
そして死を恐れぬ強さ――信仰の証である十字架を直視できなくなった。見れば己の弱さを露呈するからだ。
鏡を見れないのも同様に、自身の醜い真実の姿が映るから。
心の奥底では己を恥じ、臆病者であることを理解する伯爵は、次第に世間でささやかれる怪物の定めに自らを落とし込むようになる。
故郷の土の中でしか眠れず、聖書や聖餅を恐れ、招かれない家には入れない。
本当はまったくそんなことはなかった。
聖書はまたげるし、フツーに誰の家にだって入っていける。

そして実は、太陽の光を浴びても死なない。

すべては伯爵の思い込み。
輝ける生命の象徴である太陽を、いつからか直視する勇気を失っていただけ。

伯爵と対決したゾーイは、一瞬のスキを突き、彼を太陽光の前に引っ張り出すことに成功する。
眩しい光を浴びても死なず、自身の真実を暴かれた伯爵は、まぶしくも美しい太陽の姿に目を細める。
「見たまえ、ゾーイ。彼女は、なんと美しい……」

そして五百年もの時を永らえた不死者は、自ら毒となる病人の血――ゾーイの血を吸って、彼女と共に眠りについた。
無知ゆえの強さではなく、死の恐怖を知ってなお克服する勇気。そして自らの姿を持って、彼に自身の真実と、生の情熱とを取り戻させてくれたゾーイ=アガサと二人、生命の円環である太陽の中へと消えていった。

何だこの超ロマン。
最高、という言葉しかないぞ。
まさかこんな結論に帰結するとは思わず、ドラキュラを扱った作品の中でも、最高の二人だったのではないかと感動しきり。
結局ドラキュラとヴァン・ヘルシングは、恋人というよりはライバルというか戦友というか、精神的な部分で深く結びついた存在だったんでしょうね、お互い。

結末を見るに続編は作られようがないと思うので、三話できっちり完結という短さもよし。
めちゃくちゃおすすめのシリーズでした。面白かったなあ!

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人物紹介

●ドラキュラ伯爵
百年以上も時代をすっ飛ばし、絶賛浦島状態……かと思いきや、上陸した海岸で初見のビデオカメラを「これカメラでしょ」と看破してみたり、上空を飛ぶ飛行機に「ヒャッハー、最高!」とはしゃいでみたり、弁護士の嘘だろな理屈によって釈放された後は、マッチングアプリで映された好みでない中年男性を秒でなし扱いしたりとやりたい放題。
しかもハーカー財団を後にする際に目にしたジャックのスマホを勝手に拝借。手癖が悪い。

ルーシーを目にした際は、かつてない血液の味に歓喜した表情を見せていたが、デートの場所が毎回深夜の墓場という素敵チョイス。しかも死ぬに死ねない不死者の苦痛のBGM付き。というか、その不死者の元凶は八割お前じゃないのかっていう。

そんな大暴れのおじさまも、ゾーイ=アガサに自身の謎を暴かれ、ついに年貢の納め時となった。
会う人会う人無尽蔵に食い漁ってきた暴虐おじさまだが、ほんに魅力的な人物だったなあと感慨深い。
みんなドラキュラが大好きなのさ!

●ゾーイ/アガサ・ヴァン・ヘルシング
123年後に登場するアガサの親戚。亡き父の大叔母の遺志を継ぎ、ジョナサン・ハーカー財団にて対吸血鬼の指揮を執っていた。
だが、実は不治の病=腫瘍に身体を侵されており、その血は伯爵にとって致死性の毒となる。
研究のために採った伯爵の血を経口で摂取したため、アガサの記憶も有する。
というか、DNAがまったく一緒=ほぼ同一人物と見なしていいと思われる。別の表現で言えば、生まれ変わりといったところか。
伯爵を解放して数か月後には癌が末期状態となっており、財団を退団。病院で死を迎える覚悟だったが、幻覚となって現れたアガサの人格によって鼓舞され、伯爵との最後の対決の場へと出向く。
そこで伯爵の真実を暴いた後、「私が死んでも私の勝ちよ」と穏やかに死を受け入れた。
伯爵の魂の伴侶と言うべきあっぱれな人物。

●ジャック・セワード
不憫という言葉がぴったりな人物。貧乏くじを引きっぱなし。
ジョナサン・ハーカー財団にて研究職についており、ゾーイには目をかけてもらっていた様子。
彼のスマホの着信に『ジョナサン・ハーカーより着信』という表示が現れるシーンは、「えっ、まさかジョナサン生きてたの!?」という驚きを生む作り手の上手さを感じさせる名シーン。

他者と婚約してしまったとはいえ、ルーシーを心から愛しており、焼けただれた姿の中にルーシー自身の美しさを見出すなど、まさに黄金のハートの持ち主。
ゾーイ亡き後は、対不死者の指導者的立場に成長するであろうことが察せられる。好青年。

●ルーシー
ジャックのガールフレンド。彼に気を持たせるも、まったくの別人と婚約するなど、男泣かせの美女。
死を恐れない姿勢を伯爵には評価されていたが、多分に若さと無知ゆえの部分もあり、ジャックには「魅力的だけど、ごく普通の女の子」と評される。
その証拠に、いざ墓場から不死者が追いかけてきたときや、不死者としてよみがえった際には恐怖し、涙していた。
土葬だったら結末は違ったかもしれないが、きっと伯爵の望む花嫁にはなれなかっただろうと想像する。
最期はジャックの手によって最大限の愛を持って葬られた。

●どこぞの探偵
現代によみがえった伯爵の調査を頼まれたらしき探偵さん。
言われてみれば、123年前も後も、ロンドンで絶賛活躍中でしたね。なははん。

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