映画『(r)adius:ラディウス』ネタバレ感想。世界一、凶悪な半径。

原題:(r)adius
2017年の映画
おすすめ度:☆☆☆

【一言説明】
歩く災害男、爆誕。

ラディウス 半径 radius

……ハリウッドは、山羊に恨みでもあるのかい?

宗教の関係なのか、何かにつけて犠牲になることが多い山羊さんたち。本作にもかわゆい山羊さんが一匹登場しますが、当然のように『半径』の餌食となって他界されます。
いやいや、かわいそうじゃないですか。わんことにゃんこは極力生き残るように仕向けるくせに、何故に山羊はさくっといくのだ? 作中の山羊だってさ、きっと誰かの飼い山羊でさ。毎日ご飯を上げて散歩して、ナデナデするし、毛づくろいするしって、めちゃくちゃかわいがっていたかもしれないじゃないですか。
なのにさ、実験みたいにさ!
そのうち怒れる山羊たちが暴動を起こすかもしれませんね。

さて、主演は『パシフィック・リム』のお兄ちゃん役ディエゴ・クランテホフ氏(強面のイケメン)と、ヒロインにTVで活躍するシャーロット・サリヴァンさん(感じの良い美人です)。
タイトルの『ラディウス』とは『半径』という意味だそうです。

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あらすじ

主人公は記憶を失って目を覚ました。どうやら車の事故に巻き込まれたらしい。ポケットの免許証を見ると、自分はリアムという名前のようだ。
だが一体ここはどこなのか。どうして自分は事故を起こしたのか。思い出そうとしても、頭がぼんやりとしてはっきりしない。
仕方なく、助けを求めようと幹線道路を歩くリアム。そこに一台の車が現れる。車の主は彼に気付き、ゆっくりと減速しながら近づいてきた。
「よかった、助かった」
だが車は止まらず、危うく轢かれそうになってしまう。
「一体どうしたんだ?」
少し離れたところで止まった車に近づき、覗き込んでみると、なんと運転手の女性は死んでいた。

最初から死んでいたのか?
いや、そんなはずはない。彼女はこちらに気付いた後、ハザードランプを点灯させた。つまり直前までは生きていたのだ。なら何故急に命を失ったのか……?

不審に思いながらも、さらなる助けを求めようとさ迷うリアム。だが彼の行く先には、物言わぬ死んだ人々ばかりが待ち受けていた――。

予告編を見て、ずっと気になっていた映画をTSUTAYAにてレンタル。
たくさん死人は出るもののグロテスクな映像はないので、ビビりでも安心して鑑賞できました。
とにかく冒頭でリアムの行くところ行くところ死人に溢れているため、さては気を失っている間に世界が滅亡したのかと思うところですが……予告編でネタバレをしているんだな、これが!
隠す気がなかったのか、単にやっちまったのか知りませんが、予告に入れなかった方が絶対に面白くなったと思うぞ。

※以下、ネタバレにつき注意。

 

前半はなかなか面白かったんです。
予告編で知っていたとはいえ、蔓延する死が疫病ではなく、リアムが近づいたために死んだのだと気付くとことか。

そして登場する謎の女性。リアム同様記憶を失っているが、どうも事故の際、彼の車に同乗していたらしいとわかる。とりあえずジェーンと名付けた彼女は、何故かリアムのそばにいても死ぬことはない。

そしてさらに衝撃の事実が判明する。ジェーンがリアムの半径15m以内にいるときに限り、他の生き物は死なずに済むのだ。だがひとたびジェーンが規定距離の外に出ると、やはり近づいた生き物はばたばたと命を落としていくのだった。

なるほど……。物語はこのリアムとジェーンの謎を解く方向で進むのだな……?

……って、これ全部予告編でわかるやつ!!
はっきり言って、予告しすぎ。昔のアニメ並に、これから起こることを軒並み説明しまくっているんですよ、予告編が! 
もうあれだな! 予告編という名の前半ダイジェストと言ったほうがしっくりくるな!!
 
そしてこの映画の悲劇は、前半こそが面白かった部分のすべてだということです。本当は後半もそこまでひどくはない。ただ「あっ、そっちに舵をきってしまうんだね……」ってなるだけで。

方々でも言われているが、リアムが近づく=死亡ルールが解明されるのが早すぎた。もうちょっと引っ張るべきだった。少なくとも、ジェーンの登場は確実に遅らせたほうが面白かったと思う。
リアムは自分が引き起こした死にもっと葛藤すべきだったし、せめて自殺を試みるぐらいはするべきだった。近づくだけで死んだ人々の亡骸を呆然と見つめ、「俺さえ死ねば、もう犠牲者は出ない……」というぎりぎりの精神状態に追い込まれる。

からの、ジェーン登場!

だったら、インパクトがどーん! だったんじゃないでしょうか。

彼女さえいれば、生きられる。
彼女さえいてくれれば、もう誰も殺すことはない。

リアムにとってジェーンはまさに救世主だ。「自分が側にいてやらねば」とジェーンも思うだろう。これはもう、運命という名の恋……?? となってもおかしくないのだが、何故かそのあたりの描写がちょっと弱い。二人が何となく惹かれあっているのはわかるが、もう少し盛り上がりがほしかった。
だから後半の展開が余計に納得いかないのかなと思うのであります。他にもラストの感動を薄めた要因はあるわけですが(後述)。

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感想

以下、人物紹介と所感。

●リアム
山羊殺し。歩く殺人兵器。リアム・ザ・キラーマシーン。離れたところから狙撃されたら終わりだが、G7の会談現場にこっそり送り込むとか、使いようによっては人類滅亡の引き金ともなりかねない超凶悪性能を持つ。
彼の半径15m以内に入ったものは、鳥でも人でも容赦なく命が消え失せる。特定の死因はなく、多分文字通り命がすうっと消えるのだろう。考えると超怖い。


この映画は主要なキャストがめちゃくちゃ少ない(限定すれば三人しかいない)。開始からしばらくの間は出てくる男性がリアム一人きりなので、観客は自然と彼に感情移入&ヒーロー像を求めることになる。
離れたくても物理的に離れられず、しかもその理由がもうこれは運命……ってなくらいに劇的なため、ジェーンがリアムに惹かれるのもわかる。

だが。

後半、ジェーンの夫サムが出てきた時点で「あっ……」となる。これは完全に人選ミスだと思う。なぜならサムが見るからに善良すぎて、リアムと並んだときに、こっちが悪役だなと自然と気づいてしまうのだ。
ジェーンは記憶がないゆえにリアム寄りで彼についていってしまうが、多分その選択後悔するぜ……と思うと、案の定後悔どころか絶望の展開へと発展する。

実はリアムは若い女性ばかりを狙う連続殺人鬼であり、ジェーンの双子の姉リリーもすでに殺害済みだったのだ。そして姉を探しに来たジェーンをだまくらかして車に乗せ、新たな犠牲者にしようとしていたところを事故に遭った……ということが判明する。
お前……うすうす気づいてはいたが、記憶をなくす前も災害男だったんじゃねーか。

ジェーンとの間に漂っていたそこはかとないロマンスの空気も、ここに来て台無しどころか黒歴史となり果てる。なぜなら元祖リアムのクズっぷりが、それはもう底知れないド外道レベルだったせいである。大勢の女性を拉致・殺害しては別荘横の湖に沈め、殺した女性のリストをノートに書き込んでコレクションするサイコっぷり。もはや弁護すらできない。

だが……記憶を失ったリアムは、それはもうごく普通のあんちゃんなのだ。病院のエレベーターでジェーンと分断され、あわやとなったときの必死さ。周囲の乗客が死んでしまわないか、本当に心配していた。だからこそ、とてもかわいそうな気持になってしまう。元の自分が底知れぬク●野郎だと知ったときの絶望。……ないわー……となる。
結局断片的な記憶が戻りはしたものの、映画の最後まで殺人鬼の人格が戻らなかったのは彼にとって唯一の幸いだ。

気になるところと言えば、本人が別荘だと言い張るけど、どう見てもボロ小屋という点だろうか。お前の感覚では『別荘』なのか? ジェーンはどう見てもドン引き……あっ、そんな感覚の持ち主だから女性にもてなくてこじらせて連続殺人鬼に嘘ですすいません。

●ジェーン
本名はローズ。リアムの能力を止めることができる唯一の女性。
リアムと一緒に事故り、命からがら車から脱出したところを、地球外からやってきたらしき雷っぽい何かに撃たれて憑りつかれた……のか? というようわからん描写がなされる。

二人が上記のような能力を獲得したのは、雷撃の際の感情を増幅したせいかとも最初は思った。殺人鬼リアムは生き物を殺す力、ジェーンは脅威=リアムを排除しようとする力だ。半径15mはその時二人が立っていた間の距離だった。
だが、もしかすると二人に憑りついたのはそれぞれ別々の宇宙人の可能性もある。彼らは対立しあっており、リアム側の宇宙人の力をジェーン側の宇宙人は元々抑え込む能力を持っていたのかもしれない。リアム宇宙人が逃亡したのをジェーン宇宙人が追ってきており、地球では宿主に寄生しないと活動できないから雷となって二人に憑りついた……というのはどうだろう。意外としっくりくるかもしれない。

ジェーンは記憶を取り戻した後もリアムを憎み切れずにいたが、不良に絡まれた際に銃撃を受けてしまい、病院に運ばれる。手術が必要な彼女はストレッチャーに乗せられ、付き添ったリアムから引き離されそうになってしまう。
ここでリアムの取った行動は、本来なら感動的な行為――ジェーンを守るために自分の頭を銃で打ち抜き、死亡するというものだった。
自己犠牲の精神や良し。なのだろうが。いまいちというかまったく感動できなかったのは、十数分前に判明した本来のリアムのガチクズ度がひどすぎて、その衝撃が抜けきってない=自己犠牲=当然の末路と感じてしまうからだろう。

この物語の悲劇は、一緒にいなければならない二人が、記憶が戻った後では絶対に共にはいられない存在となる点にある。
多分描き方なのだろう。本作は非常に淡々とした静かな雰囲気で進むため、登場人物の感情も抑え気味に描写される。リアムが殺人鬼時代の記憶(人格ではない)を取り戻した後、彼が元の善人のままのか、それとも悪人に戻ってしまったのか、判然としないのだ。だから観客はとまどうし、リアムの葛藤も伝わってこない。そこに来て、ジェーンを乗せたストレッチャーが離れていくに従い、「おい、どうするんだ。病院中が死んでしまうぞ」とハラハラしたところでリアムが銃を構えるに至り、ようやく「あっ……」と彼の真意を知ることができるのだ。
この流れの中に、もう少し感情移入できる演出があったなら……と思う。

本来なら、リアムの行動は英雄的行為だ。彼が本当に恐れていたのは周囲やジェーンの死ではなく、殺人鬼の人格が戻ることだったのだろう。悪魔に戻った自分がこの力を使ったら……と心底絶望したに違いない。
自らの死をもって内に潜む悪に終止符を打ったのだから、これは一人の男がヒーローになるまでの物語ととらえることもできる。
だが……。
祖がクズすぎて……!
どうしても監督の意図通りに感動できませんでした……めんご……!

●山羊
不憫。
よく見ると、とても可愛らしい顔をしている山羊さんなのだ。きっと飼い主に大切にされていたのだろう。赤の他人にはただの山羊でも、それは誰かの大切な山羊である。我々はその事実をもっと心に刻むべきである。
と言ってみる。

●サム
ジェーンことローズの旦那。癒し系男子。記憶を失った妻が突然連れて来た指名手配犯にも優しくできる、超いい人である。だから損をしがち。

●監督
カロリーヌ・ラブレシュさんとスティーブ・レオナールさん。
賛否両論はあれど予測不可能な展開で面白かったです。ありがとうございます!

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