原題:Haunt
2019年の映画
おすすめ度:☆☆☆
【一言説明】
お化けじゃなくて殺人鬼DAYO!
TSUTAYA愛好家の心強い味方、TSUTAYAアプリ。定期的に配信される準新作百円クーポンをいそいそと使い、そこで借りた作品がAmazon Prime Videoで無課金配信になっているのを見て血の涙を流し、素敵な映画ライフを楽しんでいたある日。
なんと突如目に入った新作一本無料の文字!
準でなく新!
旧でもなく新!!
ハイヤー、ドウシヨ、コマタアルネー、と散々悩み。結局『ドクター・ドリトル』とどちらにするかを秤にかけ、軍配の上がったのが本作『ホーンテッド 世界一怖いお化け屋敷』。これが吉と出るか、凶と出るか……結果は自分の目で確かめよう!
主演はドラマ『NY ガールズ・ダイアリー』のケイティ・スティーブンスさん。制作は『ルイスと不思議の時計』のイーライ・ロス氏が務めていらっしゃいます。
[adchord]あらすじ
おとなもこどもも、殺人鬼も。
みんな大好きハロウィンナイトがやって来た!イリノイ州はカーボンデールに暮らす大学生ハーパーは、友人ベイリーらに誘われ、気乗りしないながらも街へと繰り出すことになった。
「どこ行く?」
「なんか楽しいことしたい」
「おい、これ見ろよ。『世界一怖いお化け屋敷』だってよ!」きゃっきゃうふふと郊外の廃屋に入っていくハーパーたち。
その先に待ち構えているのは、果たして鬼なのか、蛇なのか……どちらにしろ、ロクなものではねーんだヨ。
※以下ネタバレです。作品の性質上、若干の残虐な描写も含みます。未見の方、苦手な方はご注意ください。
感想
ほとんど何の予備知識もなしに見た本作。『世界一怖いお化け屋敷』と謳ってはいるものの、ポスターにでかでかと映るピエロの仮面はどう見てもサイコ系。
いや……だが、人為的要因と見せかけて、実はお化けでしたとか来るかもしれーヌ。
絶対に予断は許されーヌ。
そんな覚悟で挑んでみれば……あら不思議。
前半ホラーで、後半はツッコミしかないリベンジアクション活劇であったことをご報告申し上げます。
なんというか、世間の評価が低いのも納得で、若干筋が雑、かつ散りばめた伏線要素をうまく活用できていない印象ではあった……ものの、個人的にはなかなか面白かったです。
深夜にTVに向かって、あれほどツッコみ続けたのは久しぶりだで!
大まかな流れは以下。
1.何かの仕掛け作りに勤しむ誰かの手。真っ赤な紙に印刷された文字は、『世界一怖いお化け屋敷』とある。
なるほど、本作の舞台となるお化け屋敷は意外にもDIY&まさかの家庭用プリンターでチラシ印刷という手作り感あふれる仕様。
糸を足元に張り巡らせ、何がしかのトラップを仕掛けたようだが、主役がこれに引っかかるのであろうか?
2.イリノイ州はカーボンデール大学にある女子寮のドアに、ハロウィン用のカボチャがぼひゃんっと投げつけられる。
食べ物を粗末にすんな。
そして食用ではないのを抜きにしても、本場のハロウィンカボチャは何故こうもおいしくなさそうなのであろうか → 食用じゃないからDAYO。
↓
カボチャ殺害犯の下手人は、主人公ハーパーの彼氏サム。
元彼ではなく現彼氏。
アル中かつストーカー気味かつDVをかます暴力野郎という、有り体に言ってク●なのだが、何故か元のつかない関係を続けるハーパー。
呆れた友人のベイリーが、ハロウィンナイトに引っ張り出してくれる。
3.ベイリーのイケてる友人ネイサンと知り合ったハーパー。
どう考えてもお似合いなネイサンを前に、しかし、しつこいサムからの着信に気もそぞろなハーパー。
いいから、今すぐスマホを叩き割ってネイサンに乗り換えろ。
↓
店の裏手に出たところで、ふと目を上げると、金網の向こうに立つ異様な赤いコートの人影。
目を離した隙に消えてしまったが、あれはサムだったのか、それとも……?
4.ネイサンの友人エヴァンの提案で、街中で配られていた『世界一怖いお化け屋敷』に行くことになったハーパー一行。ベイリーの他、同じ寮の友人アンジェラとマロリーも参加。総勢六名でお化け屋敷を求めてドライブすることに。
↓
一台の車が、後をつけてくることに気がついたハーパー。
車を撒くため急遽曲がった道の先で、偶然お化け屋敷を見つけた一行は、意気揚々と入り口へと向かう。
↓
不気味なピエロの大男が同意書を各自に配布。書類には屋敷のルールが記されていた。
1:道順に従う
2:演者には触れない
3:アトラクションに参加する際は、安全のために指示に従う
4:スマホは入り口のBOXに預け、鍵は自分で管理すること
「なんだか本格的〜」と同意書に署名する一行。スマホを預け、いざ内部へ!
5.当初はごく普通のお化け屋敷っぽい内部に余裕をかましていた一行。
だが途中、ガラスに隔てられた部屋で魔女が登場。袋に入れられた女性が、顔に熱々の焼きごてを☆☆☆になるところを目撃。
だが、当たるか当たらないかのところで煙幕が吹き出したため、結局は「ナイスなショーだったね!」という感想に落ち着く一行。
ショーにしては女性の悲鳴がかなりガチだったような気がするが、多分気の所為。
そしてわりと直に当たっていたような気がするが、多分気の所為。
6.次の部屋は迷路。『安全』か『非安全』のルートが選べ、前者はベイリー、ネイサン、アンジェラ組が。後者はハーパー、エヴァン、マロリー組が挑戦。
●安全組
赤い何かがぶら下がった油臭い廊下 → マジックミラー → 3つの穴があり、中に手を入れ、『身体のどこの部位でしょう?』クイズに答えるアトラクションに挑戦。
一個目はヌードルの麺、二個目はぶどうと安全牌。が、三個目に挑んだベイリーに異変 → 腕を引き抜くと、数箇所刃物で切られたのか、血が吹き出す。
●非安全組
蜘蛛の巣 → 3つの棺桶 → 一つだけ上から蜘蛛降ってくる → 這って進むトンネルの迷路に挑戦。
途中、向こう側の通路を怪しい人物が移動しているのを見かけるハーパー。
その時は何も起きなかったが、いざ迷路を脱出すると、後ろにいたはずのマロリーが出てこない。
↓
代わりに出てきたのは、大柄な赤いコートの人物。多分こいつが3で金網の向こうに立っていた人影だと思われる。
とすると、車で後をつけ、一行がお化け屋敷に来るよう誘導したのもコイツだと思われるが、そんなことはつゆ知らずのハーパーたち。
男に促されるまま、マロリーを待たずに滑り台の通路を滑り降り、そこでチェーンソー男と遭遇 → ビビったエヴァンがチェンソーマンを押す=ルールに牴触=死亡フラグを立てる。
↓
その先にあるドアを開け、『安全組』の三人と合流する。
*****『ホラー』と『ホラー?』の境界線*****
(このへんまでは結構怖かった)
7.「ここはヤバい」と主張する『安全組』。
彼らの目の前で、部屋中央にあったカーテンが開き、金網の向こうで先程の魔女が再登場。なんとマロリーに向かって焼きごてを振りかざした……と思ったら、今度は疑う余地のない当たり判定……もとい、完全にこてが頭に☆☆☆。
↓
ヤバーーイ!
脱出だ! となる一行。
↓
「とりあえず、俺が預けたスマホで助けを呼ぶわ」
何故か一人で先に行こうとするネイサン。
「鍵をくれ」とネイサン。
↓
次なる廊下で、足元から上がった蒸気に驚き、鍵を秒で落っことすネイサン。
↓
だが、その場の怖がらせ担当だった白マスクの男がいいやつで、怪我人がいるというネイサンの訴えに応じ、マスターキーを持ってきてくれる。
↓
任せろと言った割に、鍵を失くして数分で戻ってきた男ネイサン。
でも助けを連れてきたかんね!
↓
男の名前はミッチ。
せっかく助けに来てくれたのに、やたら感じ悪く接するネイサンとエヴァン。
「名字もぉーー、名乗んないとぉーーー、信用できませんーーー」
名乗ったところで、それが偽名である可能性が大であることは視野に入れないネイサンとエヴァン。
↓
先程『非安全組』が通ってきた這って入る迷路を抜けて入り口に戻ろうとするが、ミッチの「複数人で入ると中の罠が発動すっから、一人ずつでないとだめだよ」という主張におとなしく従うネイサンとエヴァン。
さっき三人で入ったときはまったく問題なかったと思うのだが?
しかも、入る順番がエヴァン → ミッチ → ネイサン → 女子ーズの順。
エヴァン曰く、「ネイサンがミッチを見張れ」とのことだが、女子を後に残していいのかお前。
しかもその布陣だと、ミッチが裏切ったときに、お前VSミッチの絵面になってしまうぞ → なった。
8.結果、案の定裏切ったミッチが通路の出口を板で塞いで一行を分断。エヴァンはミッチの魔の手にかかり、ネイサンは迷路の床が下に開いて落下。
女子ーズは突如現れた赤いコートの男に襲われ、アンジェラが死亡。ベイリーは迷路に逃げ込み、ハーパーは男に追われて滑り台通路をシュー!
おそらくネイサンが落下したのは、同時期にベイリーも迷路に入った → ミッチの言っていた罠が発動、の流れ。外にいた誰かがネイサンを狙って罠を発動させた……わけではない。
なぜなら、赤コートの男に追い詰められたハーパーを、金網の向こうからかっこよく救うネイサンという絵面が直後に展開 → びっくり赤コート=落下したネイサンの動向を主催側が把握できていない。
わりとざっくりしてるぞ、この屋敷!
9.汚名返上的ネイサンの活躍により、赤コートから逃げ出せたハーパー。
こんな目に遭っても、『バケツに手を入れろ!』という屋敷側の指示を律儀に守るハーパー。
↓
中にあった懐中電灯を手にした途端、暗闇に包まれる周囲。
ってことは、『バケツから懐中電灯が取られた』ことを、屋敷側が何らかの手段で知ったことになるのだが、懐中電灯分の重さが引かれたら仕掛け発動という緻密な仕掛けをざっくりDIYで実現できるとは思えないので、やっぱり誰かが手動で監視しとったんではないかと思うのだが、それにしちゃ落下ネイサンは見逃したわけで、やっぱり監視体制もざっくりしている。
↓
暗闇の中、床に突き出た釘で足を☆☆☆、思わず手をついた床にトリモチが敷かれ、剥がそうとして手の☆を持っていかれるハーパー(ぬんぎゃー)。
しかも天井にはありとあらゆる刃物が吊り下がっており、それらをつなぐ紐をギコギコと刃物で切断しようとしている新たなマスクの男が遠くにいる。
↓
逃げるハーパー。
ギコギコマスク。
がんばるハーパー。
ギコギコマスク。
↓
ギコギコ以外にないのかお前は。
超シュールな絵面を通り抜け、無事に暗闇の部屋から脱出するハーパー。
10.一方ネイサンは、落下した先の部屋でハーパーのスマホを発見。エヴァンを☆☆☆して戻ってきたミッチに襲われるも、でたらめに操作したスマホで、なんとサムに位置情報を発信するという快挙を達成。
なんとかミッチから逃げおおせ、はしごを登って階上=外へと脱出することに成功する。
↓
ハーパーのスマホから送られた位置情報を元に、早速車を発進させる彼氏サム。
てっきり店の裏手にいた赤いコートの男=サムというミスリード要素があったときはよかったが、そうでないとわかった今、じゃあチミは一体何をやっていたんだねと思わんこともない。
11.ハーパーが次に行き着いた部屋には、『THE END』と書かれたドアが。
『THE END』=ここを開けたら脱出できるのね! と湧き立つハーパー。
謎解き文をたどり、ベッドの下で鍵を見つけるが、そこに赤いコートの男が現れ襲ってくる。
↓
実はハーパーには実家にまつわるトラウマがあり、DV男だった父親が母親を床に叩きつけるのをベッドの下に隠れて見ていた。そしてそんなお化け屋敷のような家庭が嫌になり、家を出てもう四年も帰っていないのだという。
↓
近づいてくる男の足が、記憶の中の父の足に重なる。
「お前のマスクを剥いでやる」
↓
ホラーの伝統。覚醒するヒロインがここで発動。
「NO!」と叫び、手にした鍵を男の片目に☆☆☆するハーパー。
この隙に、ドアに鍵を差し込んで脱出だ!
↓
そうは問屋がおろさん屋敷。
なんと、『THE END』とは、文字通り『一巻の終わり』という意味で、歯車が作動し、鍵が開いた瞬間、ドア向こうの奥にあるショットガンが作動。正面に立っていた人物の身体を撃ち抜くという仕掛けになっていたのだった。
性格が悪いにも程ってもんがあるズラ。
↓
幸い、ちょっと疲れちゃったため、ベッドに寄りかかっていた=正面から外れていたハーパーは肩に被弾したのみで済んだ。
その後、ダメ押しのように作動し続けるショットガンを利用し、赤コートの男を始末。
↓
続けて追ってきたドクロマスクの相手を始末した……と思ったら、なんとマスクの下はベイリー。そういや迷路に入ってから行方知れずで、一体どうなっとるんじゃいと思っていたら、敵に捕まり、同士討ちの罠にはめられてしまった模様。
怒りでいよいよ本覚醒するハーパー。
↓
その後追ってきたチェンソーマンもさっくり始末。
銃声を聞きつけ、ネイサンが助けにやってきた……と思ったら、背後から彼を襲ってピンチに陥れたミッチもさくっと始末。
↓
無敵が過ぎるハーパー。
おかしいな。この子、肩に被弾したうえに、左足の甲を釘が完全に貫通してたと思うだが?
*****『ホラー?』と『これホラーじゃねえな!』の境界線*****
(『怖い』がどっかに吹っ飛ぶ)
12.その頃、屋敷にたどり着いたサムが中へと侵入。
DV男だし、一波乱あるのかね……と思っていたら、なんと冒頭で仕掛けられた紐の罠にかかり、あっさり陥落。入り口にいたピエロの大男にハンマーで☆を☆☆☆され、即退場となった。
……チミは一体何をしに来たのかね?
↓
ネイサンと合流したハーパー。
途中、刃物の部屋で紐をギコギコやっていたマスクの男を見つけるも、彼は「サーセン、俺一般人なんす!」と自ら素顔をさらす。
名前はチャーリー。マスクの男たちに嫌々協力させられていたという。
ここまで、マスクの下の顔がアレな人ばかりだったので、DIY用品をどうやって買い出ししとったんかなーと思っていたんですが、一般人の協力があったなら納得デス。
↓
ちゃっかり一緒に脱出するつもりのチャーリーだったが、追ってきたツナギのマスク男に銃で☆☆☆されてしまう。
↓
逃げるハーパーとネイサン。
途中でサムの遺体を見つけるが、とりあえず気にしないことにするハーパー。
そしてついに、(筆者の中で)伝説となるシーンが登場。
先程ネイサンが通ったはしごを登り、地上へと出たハーパー。続いてネイサンも脱出しようと、押上式の蓋を通ろうとするのだが。
突如蓋の上に誰かが乗ってきたため、ネイサンは蓋の下に閉じ込められる形となってしまう。
↓
地上に出たハーパーを待っていたのは、マロリーを殺害した件の魔女。
「ここまで来たのは、お前が初めてだ」
ここ一番のセリフを吐き、一歩踏み出すマスクの魔女。
そう。驚くハーパーを追い詰めようと、魔女は一歩踏み出した……のだが。
踏み出したら、重しのなくなった蓋が開いて、ネイサンが出てきちゃうだろ。
いやまさか、そんな展開があってたまるか。
と思った次の瞬間、案の定フリーとなったネイサンが背後から姿を現し、魔女の足を掴んで引っ張り倒す → ハーパーが蓋を魔女の☆に☆☆☆して始末。という、とんでもな絵面が展開されるのだった。
なんぞこれ。
結局ハーパーがとどめを刺すんかいとか、かっこよい決めセリフが台無しだとか、言いたいことは色々あれど、結局は、下にもう一人いることに気づかなかったんかいと声を大にして言いたいデス。
百歩譲ってネイサンは死角にいたため見えなかったとしても、蓋に乗った後、下からどんどん叩いてたと思うのだが?
それとも、蓋が分厚すぎて振動が伝わらなかったとかなのか?
そんなこたぁないと思うのだが???
……どうしよう。
この映画、好きかもしれん。
13.ようやく娑婆の空気を吸い、意気揚々と敷地外を目指す二人。まずは乗ってきたエヴァンの車に駆け寄るが、あいにくキーがない。
仕方なく、屋敷を取り囲むフェンスを登ろうとする二人。
そこに近寄ってくるツナギのマスク男。
↓
何故かハーパーだけを逃し、踵を返すネイサン。
手にした獲物は野球バット……って、相手は銃を持ってるんだが?
何故わざわざ当たりに行くのだね、チミは。
↓
案の定、腹をズンドコ撃たれたネイサン。
だがマインド野菜人化した彼は止まらない。
野球バットをマスク男めがけてフルスイング! 初の戦績を上げる。
↓
敷地外に停められたサムの車に気づき、乗り込んで脱出する二人。
ここに来て、サムの役目が配車係であったことに気づく視聴者。
ハーパーのスマホで通報したのか、やって来た警察に拾われ、無事に救急車へと収容される二人。
↓
一方その頃、一人生き残った入り口のピエロ=ボスピエロは、油の匂いがした廊下にて放火。すべての証拠を隠滅もしくは、自分も屋敷と運命をともにする……的な?
とにかく、炎に包まれて燃える屋敷。
14.ネイサンの無事を見届けた後、実家に戻る夢を見たハーパー。
迎えてくれた懐かしい母の後ろから、ボスピエロが現れたところで目が覚める。
看護師「退院の書類に署名してくれる?」
↓
署名……そうだ、同意書に署名したんだ!
本名から実家の住所がバレたのかもしれない!
↓
屋敷と運命をともにする気などなかったボスピエロ。
意気揚々と、ハーパーの実家へと侵入を試みる。
↓
まさかのトリモチ → 床に釘のコンボ。
イタタタタと暖炉の上を見上げてみれば、おそらくはショットガンがかかっていたと思しき空の金具がある。
嫌な予感がして振り向くと、ショットガンを構えたハーパー。
「マスクを剥いでやる!」
H★A★P★P★Y E★N★D!
……という。
ホラーを見ていたはずなのに、後半はどこを目指して走っているのかわからない、けれどなんか知らんが面白いという謎の結果に。
追い詰めていたはずが、逆に追い込められていた……というラストは、ツッコミどころ満載なれど、ホラー伝統のカタルシスが得られて満足仕切りな結末でした。
イーライ・ロス氏が名を連ねるだけあり、瞬間的なグロさがプライスレスなシーンがあるにはあれど、一瞬で済むうえに、「これから怖いシーンが来ますよ〜」という警告が大変わかりやすく、目をつぶるかぼやかしていればオールオッケーという親切設計。
決して万人にオススメはしないものの、「ここまで来たのは……」のシーンは別の意味で一見の価値ありなので、もし未見で気になった方がいたらぜひ。
なかなか面白かったデス。
人物紹介
●ハーパー
真面目な清楚系女子……に見せかけて、対マスク怪人における退治率80%という荒ぶる主人公。最終的に、六人いた怪人のうち、五人も彼女が討ち取っている。パねぇ。
「実家はお化け屋敷みたいだった」と語るとおり、暴力的な父親に怯え、逃げ出してきたはずが、選んだ彼氏がDV男だったという悲劇に見舞われる。
赤コートの男に一度目に追い込まれた際も、「お願い、傷つけないで」とただただ怯えるしかできなかったのに、よくぞあそこまで覚醒したもんだよ。
ラスト時点でわりと重傷を負って入院していたはずが、ボスピエロの驚異に気づくや先回り。四年間帰らなかった実家を魔改造し、自分が受けた所業をきっちりそのまま返すという、胸のすくリベンジマッチを見せてくれる。ヒェッ。
ここまで徹底してくれると、ツッコみは野暮ってなもんデス。あっぱれ。
●ベイリー
ハーパーの高校時代からの友人で、DV彼氏と別れない彼女に若干呆れ気味。景気づけにとハロウィンの夜に連れ出したのが運の尽きとなった。
派手系な見た目ではあるものの、友人の大事な指輪を取り戻そうとしたり、死の淵にあってもハーパーの行く末を案じたりと、思いやり深く優しい性格。
この子だけでも助かったらよかったのにと思わないでもない。というか、助けろや。
●ネイサン
ベイリーの友人。
出会いの場となった店にて、店員を呼ぼうとした仕草が自分に向けられたものと勘違いしたハーパーが声をかけ、交流が始まる……という、イケメン前提の登場の仕方をする。多分フツメンではハーパーも勘違いしない。
どう見てもハーパーとお似合いで、屋敷のことがなくても、いずれはこちらとくっついたと思わせるくらいに相性グンバツ。でも案外あっさり死ぬかもしれないと思っていたのが、どっこい生き残った。
外見だけでなく、怪我をした友人のために憤り、先陣を切って危険に飛び込もうとするなど、中身もナイスガイ。
だが戦績に関しては今ひとつ活躍できず、ハーパーのピンチを一度は救ったものの、対ミッチ戦では逆に救われ、その後は結局トドメをハーパーに譲ったりと鬱屈としていたのが、最後の最後でツナギ男相手に会心の一撃をお見舞いした。
彼が何故銃撃の危険を冒して戻ったのかといえば、直前にエヴァンの車のトランクを開けた際、おそらくはエヴァン本人の遺体が詰め込まれていたからだと思われる。
友人の無残な死を前に、怒り爆発……どこまでもナイスガイな男である。
ボスピエロの驚異もなくなったし、その後はハーパーと仲良く幸せになってほしい。
●エヴァン
ネイサンの友人。初登場時に、よりによって『ムカデ人間』のコスプレをしてくるなど、キャラが立っている。
立ち位置的に、早い段階で死ぬんちゃうん……と思っていたら、どっこい中盤まで生き残ったのは御の字だったが、死に方が作中一、二を争う☆☆☆。
迷路を抜ける順番的に、エヴァン → 女子ーズ → ミッチ → ネイサンの順で入ったらよかったんではないかと思うのだが、その場合はネイサンがミッチの餌食になったかもしれないので、なんとも……という感じである。
一応、家屋の外に出た時点で車にダッシュしていれば助かったかもしれないが、そこはまっとうな友情と責任感を持っていた模様。
というか、本作で犠牲になる四人は、一人も嫌みな人物がいないため、ただただ可愛そうという感想しかない。
●マロリー
ハーパーと同じ寮に暮らす大学生。
黄色のドレスを着たかわゆい女子だが、蜘蛛が苦手。そのため、蜘蛛トラップに絶叫するが、何故嫌いな人に限って苦手系の罠にかかるのかほんと謎。
ノリのいい性格だったが、おそらくは迷路でネイサンと同じ罠にハマったのか、気を失ったまま魔女に殺害されてしまった。
●アンジェラ
ハーパーと同じ寮に在籍。マロリーと同じ、ノリのいい賑やかし系女子。看護師のコスプレが実によく似合っている。
何気に本作は、『ホラーの被害者は美女』というルールにおいて、非常に優秀と言わざるを得ない。
迷路を前に、赤コートの男が乱入した際、先にベイリーを逃してやるなど、男前なところを見せてくれたのだが、それが仇となって魔の手にかかってしまった。
なんかもう、いっそのこと全員助かったらいいのにと思っちゃうのだが、それだとホラーにならないのでジレンマ。
●ピエロ
屋敷の入り口で待ちかまえていた人&冒頭でDIYにいそしんでいた人。
登場から終盤まで一言もしゃべらず、このままマイケル・マイヤーズばりに無言を貫くのか、あっぱれ……と思っていたら、最後の最後で手に突き刺さった釘を相手に「ク●がーー」と叫ぶ醜態をさらす。
お前らの餌食になった人、みんなそう思ってたっちゅうねん。
一応、マスク怪人軍団の中ではボス格なのか、入り口にドンと陣取ってあまり動かず、やったことと言えばスマホをレンジでチンしたことと、罠にかかって自滅したサムに止めを刺したことくらいか。
ハーパーとネイサンが逃げた後は、証拠隠滅とばかりに屋敷を燃やし、二人の入院した病院に潜入……ではなく、何故かハーパーの実家を目指して襲撃をかける。
その際も、ピエロの扮装を崩さないのはさすがと言っていいのか否か、住宅地で見かけたら通報待ったなしの怪しい男である。
せめて実家でなく大学の寮に忍び込めば、続編もワンチャンあったかもだが、結果は前述の通りとなった。
●赤いコートの男
脅威という点では二番手を務める男。
アンジェラを血祭りにあげた後、怯えるハーパーの前で満を持してマスクを脱ぐのだが、ぶっちゃけ脱ぐ前とたいして変わらん気がする。
顔中に恐ろし気なタトゥー&棘ヘッドみたいなピアスを皮膚のあちこちから生やしているので、素顔がどんななのかよくわからん。
むしろ脱がないほうがまだ怖くない。
チャーリーの言っていた『表の顔:掘り師』とは、多分彼のこと。
こんなのが真昼に歩いていたら、思わず道を譲りそうだが、本国ではざらにいそうな印象がするのは多分偏見。
ハーパー相手に、やたら「お前のマスクを剥いでやる」と言って迫ってくるが、最期は激高に我を忘れ、ショットガンの罠にかかって頭を☆☆☆された。
●ミッチ
ゴーストフェイスの簡易版みたいなマスクをかぶった男。
ネイサンが蒸気の部屋に行った際に初登場。彼の呼びかけに応じ、当初はこちらを助けてくれるような様子を見せるが、どっこいそんなことはなかった。
塩対応気味だったエヴァンやネイサンはともかく、優しく名前を尋ねてくれたハーパーには紳士かと思いきや、「途中で非常口を見たわ!」という彼女の訴えに、「そういやそこ塞いだんだった」と後になってぶちかますなど、やっぱり殺人鬼というのは人格に難があるという感想を抱く。当たり前か。
他のマスク怪人に比べ、口調が柔らかで口数も多いが、手口は一番凶悪という、殺人鬼バイヤーあるあるを地で行く。
赤いコートの男とは別の意味で、マスク着脱前と後の差異があまりない。
「マスクを取れ」と迫ったことをよほど根に持っていたのか、エヴァンの後は、ネイサンにも手をかけようとするも、覚せい状態のハーパーに頭をぶん殴られ撃沈した。
●魔女
個人的本作の評価を一変させた伝説の女性。多分女性。
エンドクレジットを見るとよくわかるが、彼女が登場する部屋は『魔女の巨釜』という名前が与えられており、赤く熱された鉄の焼き鏝を被害者に振り下ろすのを得意としている。
最期は前述の通りだが、金網に手を突っ込んで火かき棒を取ろうとしたアンジェラの手を踏んづけるなど、どこか意地の悪い行動が目立つ。
●チェンソーマン
初回登場時は、切れるんだか切れないんだかよくわからんチェンソーを振り回し、怒ったエヴァンにどつかれた人。
だが、後の展開を見るに、チェンソーは十分な切れ味を持ったブツだったようで、そうすっとエヴァンの反応は実に真っ当なものだったと思うのだが、やはり殺人鬼というのは常人の感性とは違うのであろうか。
ベイリー亡き後、ハーパーを追って意気揚々とチェンソーを振り回しに来るが、覚醒状態の彼女に返り討ちにされた。
●ツナギを着た男
終盤、チャーリーを銃で殺害した後、ハーパーとネイサンを追ってくるマスクの怪人。
一応、脱出劇のラストを飾る敵ではあるのだが、彼が屋敷の中のどの辺を担当していたのかとんと記憶にないのだが、出番ってあったんだっけ???
尚、作中で唯一ハーパーではなくネイサンに倒された怪人である。
●チャーリー
別名ギコギコ男。
なんでさっさと手にしたナイフでハーパーを襲わんのじゃいと思っていたら、自称一般人だったことが判明。
「彼らは若者を殺しているんだ」という怪人たちの説明の後に、「僕も誰かを殺したらマスクをくれるって、掘り師が」という台詞をぶちかます。
どこが一般人なんだお前。
●サム
配車係。
本編は、こいつの投げたかぼちゃが炸裂するシーンから始まる。
だが、よく考えると女子寮のドアにかぼちゃを投げて何がしたかったんだお前という疑問に行きつく。
しかもその後は、なんちゃってコスプレ画像を彼女に送り、「さて何の仮装でしょう」と問いかけてきたくらいで、お化け屋敷に向かったハーパーの動向をちっとも把握していないというストーカーの風上にも置けない腑抜けっぷり。
そりゃあ配車係くらいにしかなれないわー。仕方ないわー。ハーパーは彼の一体どこがよかったのか謎だわー。
●世界一怖いお化け屋敷
カーボンデールの郊外に、ひっそりとたたずむ屋敷。設計図を見るに、結構な広さがある。
おそらくはピエロの所有物。
本作のコンセプトとしては、お化け屋敷だと思っていたら、本物の殺人鬼が作った殺人ハウスだった……ということらしいのだが、日本人からすると、最初からお化けというよりサイコのためのサイコなサイコハウスにしか見えんので、あまり意外でもなかった。
ピエロによるDIYシーンを見るに、お化け屋敷バージョンはハロウィンの期間限定で、普段はごくフツーに殺人の遺体処理とかに使われている印象。
……というか、殺人鬼って徒党を組んだりするんでしょうか。どいつもこいつも我が強そうで、協調性とか皆無っぽいのだが。
そもそもどこで知り合ったんだ、お前ら。
●先行グループ
ハーパーたちより先に到着し、屋敷に入って行った男女の一行。
入って数分で絶叫が響き渡るが、ハーパーたちに比べて展開が早すぎないかというのはお約束。
もしかすると、先行のさらに先行グループがいたのかもしれん。
そのうちの一人が魔女のショーで出てきたが、残りはちらりとも映らなかったので、その末路は推して知るべし。
●監督
『クワイエット・プレイス』の脚本家スコット・ベック氏とブライアン・ウッズ氏が監督を務めていらっしゃるそうです。
楽しくツッコめる映画をありがとうございます。『クワイエット・プレイス2』も楽しみにしております。
↓Amazon Videoで好評配信中。こちらのピエロさんが入り口でお出迎えしてくれます。